【ライブレポート&写真到着】「yonige〜Homing tour〜」変化を恐れない両者の饗宴 yonige×ストレイテナー Zepp DiverCity Tokyo公演ライブレポート

全国47都道府県を回る「Homing tour」を開催中のyonige。31公演目となるZepp DiverCity Tokyoは、バンドがリスペクトを注いで止まないストレイテナーとの共演だ。並々ならぬ思いが繋いだ一夜は、yonigeにとって今年の5月から続く長いツアーのハイライトでありながら、変化を恐れず未来に邁進していくお互いの存在を素朴に喜び合うような時間となった。
最初に登場したのはストレイテナー。「Homing tour」ではワンマンや後輩世代との対バンが多かったyonigeだが、彼らは近い距離で数歩先を歩いてきた先輩バンドだ。4人は胸を貸すかのように「リヒトミューレ」から開放的に始め、曇天模様の下を潜り抜けて集ったオーディエンスにバンドのありったけを捧げる。続く「COME and GO」も昨年リリースのアルバム「The Ordinary Road」からのナンバー、孤独から肯定へと向かっていく言葉を疾走感のあるサウンドが加速させていく。間髪を入れずにホリエアツシの歌とギターから始まる「シーグラス」では夏の終わりが仄めかされ、今ここの季節ともリンク。少し肌寒くなってきたタイミング、しかし目の前に広がる景色はストレイテナーによってどことなく爽やかだ。
「知り合ってからだいぶ長いけど疎遠だった」とMCで振り返るホリエアツシ。対バンの機会に感謝し、yonigeに送るセットリストを宣言して始めたのは「246」。ナカヤマシンペイのドラムに“ひなっち”こと日向秀和のベース、そこに大山のギターとホリエアツシの歌が重なって東京の乾いた空が描かれる。立て続けに物々しいベースラインの「宇宙の夜 二人の朝」に暴風雨のようなアンサンブルの「シンデレラソング」、付点8分のディレイとキーボードの連なりで空間をたっぷりと使う「Skeletonize!」でライブ全体の流れに波が生まれる。
ライブの前に行われたホリエアツシと牛丸ありさの対談を受けて披露された「Lightning」は青いライティングが瑞々しく映えるナンバー、これは牛丸が「能動的に聴いた」(©︎ホリエアツシ)という体験を踏まえての選曲とのこと。さらに10月末にリリースを控える「Next Chapter EP」のタイトル曲である「Next Chapter」を挟み、「Melodic Storm」と「REMINDER」という牛丸が中学時代にコピーした思い出深い楽曲で締めるという構成には愛が溢れている。しかし単なる回顧のみではなく、──セットリストに差し込まれた「Next Chapter」という最新曲のタイトルが示しているように──次のページに祈りを込めたポジティブな形で、4人は後輩へとバトンを繋いだ。
ストレイテナーの伸び伸びとしたステージを受けて登場したyonige。冒頭の「Super Express」で煌めくようなダウナー風味のシークエンスを示し、ぶっきらぼうにバンド全体で走る「顔で虫が死ぬ」を投下した頃には、ツアーで温まったバンドの体温が会場の隅々まで行き渡っていた。ハイテンションで我を忘れるのではなく、生活の実感と絡みついた歌を届けるyonigeにとって、“生きること=ライブをすること”というシチュエーションへとバンドを誘った「Homing tour」というチャレンジは、既に成功していると言えるのかもしれない。最新曲「strattera」では照明の激しい点滅と共にホリエのドラムと土器大洋のギターが昂っていき、牛丸とごっきんも応えるように掻き鳴らす。
先にパフォーマンスを終えたストレイテナーのライブを観て、改めて感化されたという牛丸。自身がコピーした楽曲を惜しげもなく演奏した姿から「有名な曲を聞けるって嬉しいね、「アボカド」もっとやろうって思いました」と素直な感想をMCで述べると「学んでる〜」とごっきんが緩く返す。「あのこのゆくえ」に「スラッカー」とキャリアを彩るナンバーに昨年発表のアルバムから素朴なミドルチューン「愛しあって」を繋げるなど、活動の全てを余すところなく見せようという気概に溢れたセットリストだ。「Homing tour」ではセットリストの被りを極力避け、ライブをルーティンワークにしないように注力しているとのことで、まさに自分たちへの挑戦だ。2020年のアルバム「健全な社会」からの唯一の披露となった「あかるいみらい」も、今年頭にリリースされたドリーミーな「Without you」も、分断されることなくyonigeの豊かな表現の海の中で同居している。
再びのMCでは学生時代のストレイテナーのコピーバンドのメンバーが来場していることを明かし、土器の初めてのバンド体験もストレイテナーだったと明かされる一幕も。「みんなの聞きたい曲を聞いてほしいなって、大人になりました」と自身の変化を語る牛丸、その象徴は代表曲でありながら封印している時期さえあった「アボカド」の素直な演奏だろう。セットリストを練っている「Homing tour」だが、「アボカド」だけは外さずに演奏しているという。その後の「リボルバー」もバンドの歴史と並走してきた一曲、過去を今へと持ち込むストレイテナーの覚悟に呼応したかのような流れだった。最新アルバム「Empire」からの「スクールカースト」でしっかりとyonigeの道のりを示すと、本編ラストは“またね”と“じゃあね”がコーラス部でリフレインされる「春の嵐」で万感の思いで見守るオーディエンスに別れを告げた。
ハンドクラップに導かれ、アンコールで披露されたのは2015年の初作「Coming Spring」収録の「恋と退屈」。リスナーの淡い記憶とリンクするナンバー、フロアから歓声が起こる。次の一曲が想像できない「Homing tour」ならではの光景だ。これからツアーは12月初頭のセミファイナル・Zepp Shinjukuと沖縄でのワンマンライブまで続く。ストレイテナーとの忘れがたい一夜を携えて、バンドは次の街に向かう。
撮影:河本悠貴
文:風間一慶
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