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QOOPIE×EYRIE、インストゥルメンタルバンドの新しい地平を切り拓く2トップが東阪で饗宴

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『QOOPIE×EYRIE SPLIT TOUR 2025「DEEP DOWN」』2025.7.19(FRI)大阪・心斎橋CONPASS

『SUMMER SONIC 2024』への出演や、今春の『SYNCHRONICITY’25』では会場に入場規制がかかるなど熱狂のステージが注目を集めているドラム、ベース、ツインギターによるインストゥルメンタルバンド、QOOPIE(クーピー)。手塚治虫『火の鳥』連載開始70周年記念アルバム『火の鳥』で昨年メジャー進出を果たした、鈴木瑛子とRina Kohmotoによるピアノ連弾とドラムで新たなジャンルを開拓するEYRIE(エイリー)。以前から交流のあったインストバンド2組によるスプリットツアー『SPLIT TOUR 2025「DEEP DOWN」』が大阪、東京で開催された。ライブに向け、両バンドがコラボ演奏したスナーキー・パピーのカバー動画がSNSで公開されるなど、期待が高まる中でツアーが開幕。初日となった7月19日(金)大阪・心斎橋CONPASSでの大興奮のステージをレポートする。

EYRIE

先攻は、サポートドラムの真船駿を伴ってステージに登場したEYRIE。ステージ向かって左に位置するキーボードの前に瑛子とRinaが揃い、向かい合うように右手にドラム。真船の速いカウントから始まった1曲目は「Ga-oh」。瑛子とRinaの連弾は、目が追いつかないほどの圧倒的な指さばき。そうかと思えば一音一音が雨の雫のように静かにこぼれ落ちる瞬間もあったり、はたまた強い風に舞い踊る花びらのように軽やかだったり、1曲の中でどんどん表情が変化してゆく。続く「Star Crossing」は、繊細ながらも口ずさめてしまうような親しみやすいメロディがフロアを揺らす。

最初のMCで瑛子が、QOOPIEとの出会いに触れた後、「QOOPIEとEYRIEは全然違う世界観の音楽をやっているけど、歌のないインストで、楽器だけで皆さんの心を動かしたいって思いは同じだと思う」と。先ほどまで超絶プレイを叩き出していたとは思えない、穏やかな口調でさらりと本質をつく。スペイシーな「Backlash」では、Rinaの奏でるショルダーキーボードが空に七色の虹をかけるようなきらめく音色を放つ。その虹を渡ってぐんぐん高みへと登って行けそうな高揚感を味わわせてくれた。

MCでRinaがいきなり真船に「何か一言を」と無茶振りし、「めっちゃ緊張してます」(真船)という渾身の一言を引き出すと、場内を温かい笑いが包む。「QOOPIEとツアーできることも、みなさんとこの時間を共有できてることも嬉しい」と話す口調は、瑛子同様にゆるっとふわっとしていて癒し作用がある。

「私たちの名前を言わなくていいの?」(瑛子)、「そうだった!(笑)」(Rina)と、「瑛子です。えいちゃんです」「Rinaです。りっちゃんと呼んでください」とお互いに紹介すると早速フロアから名前を呼ばれ、「嬉しい!」と顔をほころばせる。彼女達はともにバークリー音楽大学を最優秀で卒業し、2021年にEYRIEを結成。同年の『FUJI ROCK FESTIVAL’21』でデビューステージを飾った。そんな華々しい経歴とも、ついさっき今立っているステージでめくるめく音世界を構築していた時の姿とも、良い意味でギャップのあるトークはなんとも微笑ましい。

最後の曲を前にRinaが「そろそろ待ち詫びているQOOPIEにバトンを。大阪にまた来たいね」と言うとフロアから「来て!」「マジ来て!」と声が飛ぶ。最後は『火の鳥』未来編をテーマにした未発表曲「Endgame 3404」を演奏。真っ赤な照明とも相まったスリリングなプレイに、ジリジリと何かが迫ってくるような緊張にも似たものを感じる。Rinaも瑛子も、表情がよくわからないぐらい頭を振りながら一心に鍵盤を叩く。赤く激しい音の波が徐々に高さを増し、頂点に達するかと思った瞬間、すべての音が止まりジ・エンド。フロアに盛大な拍手と歓声が沸き起こった。音の宇宙に漂い、遊泳した濃密な時間が、過ぎてしまえばまるで一瞬の夢のような出来事にも感じられた。

QOOPIE

EYRIEからバトンを渡されたQOOPIEのステージは「VAN」からスタート。軽いジャムから始まり、まるでメロディーを口ずさむようなギターが聴こえ、そこからさらに音が重なってゆく。徐々に大きなうねりへと展開し、演奏も次第に熱を帯びてゆく。「VAN」という曲には、目的地へと向かう旅の始まりのようなじわじわと高揚する感覚が重なる。曲の途中で渡辺成祐(Gt)がマイクを通さず「大阪よろしくお願いします!」と一声挟むと、すぐさまウォーと熱い声援がステージに向かう。数日前に渡辺が今日のライブに向け、「大阪では初めての主催企画です」と緊張の入り混じった心情をSNSにポストしていたが、この日のフロアはとっくに準備ができているどころか冒頭から沸騰直前といった具合だ。

そのまま「Naked」「O.D.D」「DANG」と畳み掛ける。テッパンのセトリで、一瞬一瞬が見逃せないドキュメントの連続。曲調が変わるとフロアの手拍子のリズムも変わる。トリッキーな変拍子ももはや気持ちがいい。手を上げ体を揺らすフロアを見つめるメンバーの顔にも笑みが浮かぶ。そんな中、渡辺が感無量といった面持ちで「やっぱりこれが一番効くー!よっしゃノってきたよ!」とギターを引き寄せ、心の声をあらわにする。「最高や!」という声が飛ぶのは大阪ならではか。

メロウでアーバンなムードもある「MOONLIGHT」は、ライブでは音源とはまた違った生命力を満々と湛えていてワクワクする。渡辺によれば、今回のツアータイトルの『DEEP DOWN』は「音楽の沼に深く深く潜っていきましょうというツアー」とのこと。続く「Cycle」そして「Oliver」はR&B、ソウル色濃いナンバーでまさにどっぷりと深く彼らの演奏に潜り、浸ることができるひとときだった。

最後の曲を前に「大阪にいい話を持ってきました」と、11月23日(日)に初の大阪でのワンマンライブが決まったことを告知。正式な発表は8月10日(日)の『DEEP DOWN』東京編までお預けで、この場だけの嬉しすぎるサプライズに会場は大いに沸いた。それに続けて渡辺はこんな話もした。――インストバンドは日本ではニッチなものかもしれないけど、自分たちは歌のある音楽となんら変わりなく、この4人の旋律とグルーヴで感動できるし感情を揺らすことができると信じている。インストバンドというくくりの中で、先人たちが積み上げた伝統とアカデミックな学問を学んで継承して、その上で誰もやったことがない何かをやりたくて、そこに辿り着きたくて、このバンドをやっている。自分が感動した音を信じているし、メンバーを信じているし、皆さんをすごく信じている――と。賛同の拍手や声が飛び交う中、最後は「Crybaby」。壮大な曲調に4人の熱量がガッチリと噛み合い、神々しいほどの演奏が会場を満たしていった。インストゥルメンタルは歌のない音楽だけれど、ギターが声を張り、ベースが低音を唸らせ、ドラムが吠える、まさに楽器が歌うQOOPIEの音楽がもたらすエネルギーと情熱は計り知れない。

アンコールはQOOPIEとEYRIEの6人によるセッションでQOOPIEの「VAN」を披露。この曲だけは特別に撮影OKで、フル尺ではなく曲中の1分間だけSNSに公開してもOKとのことだったので今からでもぜひ探して聴いてみて欲しい。RinaはQOOPIEのライブの盛り上がりを讃え、「お互いリスペクトしあって切磋琢磨できる仲間ができてすごく幸せ。これからもQOOPIEとEYRIEで日本のインスト界の上に上がっていきたい」と意欲を見せる。

キーボードの音色が一体になった「VAN」はさらに奥行きを増し、各楽器の音色の鮮やかさが楽曲の世界を一層押し広げていた。見事な化学反応。演奏中にお互いに顔を見やり、目が合うと顔をくしゃくしゃにして笑っていたのも美しい光景だった。

1曲1曲に情景が目に浮かび、風の匂いや星の煌めきを想起させ音の旅へ連れ出してくれるEYRIEと、ダイレクトに身体に流れ込んできて心臓をとらえ、音楽と共鳴する歓びを味わわせてくれるQOOPIE。インスト音楽シーンを切り拓いていく2組の眼前にはまばゆい未来が広がっている。

取材・文=梶原有紀子 撮影=冨永倖成

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