Re:name Encore Live Tour 2025 「Genius Boy’s」2025.7.11@大阪・難波Yogibo HOLYMOUNTAIN
最新アルバム『GENIUS FOOL』を携えRe:nameが今年3月に行ったツアーの追加公演となる『Re:name ONE MAN LIVE Encore Live Tour 2025「Genius Boy’s」in OSAKA』が、7月11日(金)に大阪で開催された。ライブの時点ではまだリリース前&情報解禁前だった新曲「I’ve」をいち早く披露。ソールドアウトとなり会場を埋め尽くすオーディエンスを前に、高木一成(Vo)が「最高の景色です。ありがとう」と感慨深げに語った、地元大阪でのワンマンライブを振り返りたい。
黒地に白でバンド名のロゴが描かれたシンプルなバックドロップがかかったステージに、開演前、「Genius Boy’sツアーへお越しの皆さまへ」と題したメッセージフィルムが映し出された。映画館で上映前に流れるマナームービー(映画泥棒が登場するアレ)を模した遊び心あふれるもので、「ライブを全力で楽しむマナーとお願い」として「喧嘩は禁止」「スマホでの撮影はOK」「居眠りしている人は起こしてあげて」といったクスッと笑えるもの。最後に「楽しみ方にルールはない。一緒に忘れられない夜を作りましょう」というメッセージが流れると、音声にエフェクトがかかりメンバーの登場SEへつながる。MCで明かしていたが、この映像はSoma(Gt)が編集し高木が音声を手がけたもの。Re:nameはDIYバンドでもあるのだ。映像はSNSでも公開されたので会場に来れなかったファンも目にしているであろう。ライブへの期待が高まる中、ヤマケン(Dr)、サポートのひがし(Ba)、Somaそして高木が盛大な手拍子で迎えられた。
1曲目は「BABY BOY」。バンドサウンドにオートチューンを通したボーカル、ハッピーで軽快なメロディが溶け合ったワクワクするようなオープニングだ。ステージにスマホを向ける人たちも撮影しながら曲に合わせて体を揺らしている。この曲をはじめ、最新アルバム『GENUIS FOOL』全12曲の中の5曲をライブ前半の軸に、あと5曲を後半の軸に据え、バンド初期の曲もちりばめこれまでにない試みも織り交ぜたセットリストが組まれていた。それは、来年結成から10年を迎えるRe:nameのこれまでとこれからを、ストーリーのように見せて感じさせて強く印象付けるライブとなった。冒頭の映像に「忘れられない夜を作りましょう」とあったが、演奏はもちろんのこと、高木がこの夜何度も「大阪!」と呼びかけ顔をほころばせたように、彼らの地元でありRe:nameというバンドが誕生した街が持つ空気感も、この忘れられない夜の誕生に一役買っていたように思う。
ダウナーな曲の入りから、気づいたらフロアの温度を確実に上げるダンスチューンへと変貌している「People」。UKインディーロックから得た栄養が行き渡った「sorry my bad:(」や、疾走感あるポップパンク「Living Fool」で駆け抜けたところへ、「この日のために持ってきた新曲やっていいですか」といきなりのサプライズ。このライブの数時間後に情報解禁になったその曲「I’ve」は深くえぐるベースラインが特徴的な、エッジの効いたスリリングな曲。高木曰く「ロックな曲!」であり、グイグイと引き込まれる強さと華やかさ、何より踊れる曲であるのがRe:nameらしい。
歌詞の面では英語詞と日本語詞を行き来し、その一人称は時に「私」だったり時に「僕」だったり。音の面ではシーケンスも駆使し80、90年代のJ-POPやUKロックから近年のK-POP、R&Bやディスコ、ファンクまでが当たり前のように同居。さらにこの日、ひときわカラフルな照明のもとで鳴り響いた「Vague(feat.Kafu)」はAIによる音声、可不とバンド・サウンドが合体した新感覚な曲。その意欲的な試みをオーディエンスがどんなふうに受けとめているかは、無数の手がゆらゆらと心地よさそうに揺れながら多幸感あふれるムードが埋め尽くしたフロアに現れていた。
ライブ前半のクライマックスはSomaをフィーチャーしたギターセッション。そして後半のスタートはヤマケンのドラムバトル。
「初めてよな?こんなん」(Soma)
「そう。お前にピンスポ当てて、お前を主人公にしたくて」(高木)
「イケたんちゃう?」(Soma)
という、MCというよりなんとも素の会話が微笑ましい。それを見守るヤマケンの笑顔に彼ら3人が中学、高校時代の同級生だったことを思い出す。
ライブ後半、高木が長めのMCタイムをとり、噛みしめるように話し始めた。大阪はメンバーと出会った街であり、その大好きな街でライブがソールドアウトしたことがうれしい。自分の周囲にも上京するバンドはいるが、大阪出身の自分が「大阪がめっちゃ好き」と言える現状が素敵だし、生まれ育った場所、メンバーと出会った場所、すべてが誇らしい。2026年3月でバンド結成から10年を迎えるがこの10年ずっと大阪が拠点であることは変わらなくて、今日のセットリストには新作の曲だけじゃなく過去の曲が何曲も入っているが、それをみんなが知ってくれていることがうれしい。完売でパンパンの会場でライブがやれていること、自分たちの演奏をみんなが手を上げて楽しんでくれていること、すべてを誇りに思っている──言葉の端々に、目の前にいるオーディエンスと、見えないけれどそのもっと奥にいるRe:nameのリスナーたちへ「ありがとう」の思いをちりばめながら高木はそう話した。
そこからはラストスパート。BTSなどK-POPのポップなファンク、ディスコの影響をクールに研ぎ澄ました「KISS ME HONEY」。TikTokをキッカケに人気に火がついた「24/7」では大勢がステージにスマホを向け、あいている手で「2、4、7」と指でサインを作る。フロアを見渡すメンバーの顔に喜びの笑みが広がっていた。本編最後は「Happy End Roll」。クライマックスを飾るに相応しいこの曲に乗せ、「最高の景色。今日は俺たちを選んでくれてありがとう!」とフロアに贈った。
アンコールに応えて登場すると、改めて新曲「I’ve」に触れ、「2026年のRe:nameに期待しといて欲しいな。めっちゃ曲も作ってるし、ライブもどんどん進化していってる」と胸を張る。「もうライブ終わっちゃうってこと?」(高木)と名残惜しそうに最後に「SEE THRU」とショートチューンの「Hereʼ s to Us」を。高木は「最後は全員の目を見て歌おうかな」とグッと目線をフロアに向けた。2曲ともRe:nameが3ピースバンドとして、3人だけで完結する音作りを目指していた頃の曲だ。それを今のRe:nameが演奏する。
Re:nameとは?バンドとは?自分たちが鳴らす音楽とは?自身を深掘りしつつ、音楽のジャンルに囚われることなく自由に快活に音楽の海を泳ぐ彼らが、この先どんな心地良い音楽でリスナーを沸かせ、踊らせるのか、期待している。
取材・文=梶原有紀子 撮影=Fuki Ishikura
広告・取材掲載