さくらしめじ、全国12箇所21公演におよぶ「桜TOUR 2024」東京公演を開催「今日みたいな日をもっともっと積み上げていきましょう」

アーティスト

写真:鈴木友莉

さくらしめじが4月14日に東京・キネマ倶楽部にて、全国12箇所21公演に及ぶワンマンツアー「さくらしめじ 桜TOUR 2024」の東京公演を行った。6月に結成10周年を迎えるさくらしめじは、田中雅功(たなか・がく)と髙田彪我(たかだ・ひょうが)からなるギターデュオ。2023年の「桜TOUR」は2人だけの弾き語りの<早春>とバンド編成による<晩春>という2つの異なる編成のツアーを行った。

2年連続2回目となる今年の「桜TOUR」は雅功が従来のアコースティックギター、彪我がアコースティックとエレクトリックの両種類の音色を融合したハイブリットギターを弾き、二人だけでバンドサウンドを鳴らすことをテーマに<フォークデュオからギターデュオへ>の進化と成長をしっかりと見せつけたツアーとなっていた。

客電が落ち、さくらしめじの2人がステージに上がると、ソールドアウトした満員のフロアからは大きな拍手が上がった。2人は用意された椅子に座り、ライブの導入となるインストナンバーをギターで合奏し、大正ロマンのオペラハウスを再現した昭和のグランドキャバレーをライブハウスに転用したレトロでゴージャスな雰囲気の会場全体にギターの音色をゆっくりと広げていく。

アコギを抱えた2人が立ったままで向き合い、目と息を合わせて“せーの”で勢いよく始めていた“これまで”とは異なるムードにいやがうえにも期待が高まっていったのちのMCで「昨年からやっている、皆さまに春をお届けするツアー。いつもとは違う雰囲気になってますが、ゆったりまったりと自由に楽しんでいただければと思います」と語っていたが、「桜TOUR」の基本のコンセプトは、歌で新しい季節を届けること。まずは、「はじまるきせつ」「えそらごと」「ひだりむね」と恋の始まりを告げる、甘酸っぱくて淡いラブストーリーを続けると、客席からは自然と手拍子が湧き上がった。

そして、雅功が「今年10周年なんで、ちょっと懐かしい曲もやります」と語り、日替わりコーナーへと突入。東京公演の1部では、雅功が高校1年生のときに作った「天つ風」と中学3年生の時にリリースした「またたび」の2曲で会場全体を温かくノスタルジックなムードで満たし、観客の体を心地よく揺らした。一方の2部は、シンガーソングライターのひらめとコラボした女性目線のラブソング「ストーリーズ」と中学2年生の時にリリースした2ndシングル「きみでした」という流れで、言えない思いを抱えた切実な恋心を体現。彪我ギターソロで観客の心を惹きつけ、雅功が痛みを伴ったロングトーンを放つなど、22歳になった今だからこそできる新たな表現を存分に発揮した時間となっていた。

「春といえば卒業ということで、卒業ソングを何曲か歌いたいと思います」という雅功の言葉に導かれ、1部では彪我によるサビのイントロがついた「合言葉」、2部ではドラマチックさの増した「ゆめがさめたら」に続き、<まだまだまだ/居たいよ>という別れに対する寂しさと未練を描いた「花びら、始まりを告げて」を時に呟くように、時に叫ぶように熱唱。1つ1つのフレーズに対して、生々しく激しいエモーションを込めていくボーカルとギターの熱量は、この日のハイライトと言っていいほど、胸に迫るものがあった。

雅功の「みなさんの心に綺麗な桜を咲かせにきました。次の曲はより一層、春をお届けしたいと思います」という言葉から始まった「かぜだより」で会場を薄紅色に染め上げると、シームレスで「靴底メモリー」に繋ぎ、迷いながらも<ボクらの道>を進むスピードを上げていき、「My Sunshine」の<跳べないなら/歩いていけるさ/道は続く>というフレーズにたどり着く。白く強い光に照らされながら、これまでの歩みも刻み込んだ歌声を解き放つ二人の姿もまた圧巻だった。

そして、雅功が「作りかけの新曲を1番だけやります」と語り、未発表の新曲「大好きだったあの子を嫌いになって」では明るく楽しいハミングに自然とクラップが起こり、<何度でも思いを届けよう/あなたの胸に>という決意表明にも似たフレーズが響き渡った「simple」からライブは終盤へ。彪我作の「エンディング」では<愛想笑う日々にエンディングを>というフレーズで大合唱となり、雅功が「皆さん一緒に謝ってくれますか?」と呼びかけた「あやまリズム」では最後の<ごめん>を観客全員で叫び、雅功作の「なるため」でも手拍子とシンガロングが起こり、<そうだ 今日が僕たちのスタートだ>というポジティヴなフレーズを共有。会場全体が親密で和やかなムードで包まれた。

本編の最後は今年2月16日に配信リリースされた新曲で、雅功作のバラード「ただ君が」。雅功は「帰り道に今日のことを思い出してくれたらいいなと思います。僕は不器用だし、できないことが多くて、落ち込むばかりなんですけど、それが歌になって、今日みたいに楽しかったって思える時間を作る材料になってると思えるようになりました。僕が僕のままでいいんだって思えているのは、こうやって集まってくれてる皆さんのおかげです。皆さんも、僕たちの歌で、これでよかったと思える日を1つずつ重ねていけたらと嬉しいです。今日みたいな日をもっともっと積み上げていきましょう」と語り、<君が明日笑えますように>というシンプルで強いメッセージを観客一人一人の胸に届け、ライブはエンディングを迎えた。思いを込めたパフォーマンスで全16曲を歌い切ると、2人は「楽しかった」と何度も口にしながらバルコニーに登り、笑顔で手を振ってステージを後にした。

新しい季節に歩み出すスタートを感じさせる楽曲群は、彼らのこれからの道のりにも期待を抱かせるものとなっていた。なお、さくらしめじは、4月21日に兵庫・クラブ月世界にて、本ツアーを締めくくり、結成10周年の記念日の翌日となる6月15日には、東京EX THEATER ROPPONGIにてワンマンライブ「さくらしめじ 10th Anniversary Live -しめたん-」の開催を予定している。

(文:永堀アツオ)

セットリスト

M1. はじまるきせつ
M2. えそらごと
M3. ひだりむね
M4. 天つ風(1部)/ ストーリーズ(2部)
M5. またたび(1部)/ きみでした(2部)
M6. 合言葉(1部)/ ゆめがさめたら(2部)
M7. 花びら、始まりを告げて
M8. かぜだより
M9. 靴底メモリー
M10. My Sunshine
M11. 大好きだったあの子を嫌いになって
M12. simple
M13. エンディング
M14. あやまリズム
M15. なるため
M16. ただ君が

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