Deep Sea Diving Club、バンドの地力の強さを感じさせたツアーファイナルをレポート

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Deep Sea Diving Club

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Early Dive tour 2022
2022.1.23 SHIBUYA WWW

ジャンルレスな音楽性が早耳のリスナーたちの心を掴み、いまじわじわと人気を集めているTENJIN NEO CITY POPバンド・Deep Sea Diving Clubが、年明けから地元・福岡を皮切りに開催してきた全国ワンマンツアー『Early Dive tour 2022』のツアーファイナルをSHIBUYA WWWで開催した。2019年に結成されたDeep Sea Diving Clubがツアーをまわったのは今回が初めて。全公演でセットリストやアレンジを変えてまわったというストロングスタイルなツアーを経て辿り着いたこの日は、まさにバンドの地力の強さを感じるライブだった。

谷颯太(Vo/Gt)、大井隆寛(Gt)、鳥飼悟志(Ba)、出原昌平(Dr)に加えて、サポートキーボーディスト・中野ひよりの5人がステージに登場すると、気持ちをひとつにするように向き合ってからライブがはじまった。1曲目は「CITY FLIGHT」。大井が奏でるクールなカッティングギター、ストラップを短めに構える鳥飼が生み出すうねるベースラインのうえで、ボーカルの谷は全身でそのグルーヴを感じながらハンドマイクで歌唱する。90年代シティポップやヒップホップの文脈を受け継いだメロウなナンバーが早速フロアを柔らかく揺らした。昨年、同郷の女性シンガーソングライター・kiki vivi lilyをフィーチャリングしたダンサブルな「Just Dance」のあと、最初のMCでは「ずっと来たいと思っていたハコでした。本当に嬉しいです!」と歓びを伝えた谷。大井の「2曲目で楽しくなって前に出ちゃった。普段は絶対に動かないんだけど(笑)」という言葉からも抑えきれない興奮が溢れていた。

Deep Sea Diving Club

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細やかにキメを重ねる息の合った演奏に目を奪われるアーバンな「OLD TOWN」、大井がワウを踏みながら聴かせるギターが陶酔感を生む「しじま」のあと、次々に各パートをメインの座を譲りながら、ぐいぐいと未開の地を開拓していくようなジャムセッションもとてもよかった。ロック、ソウル、ジャズ、R&B、ヒップホップなど幅広い音楽を吸収し、2020年型のポップミュージックを届けようとするバンドはたくさんいるが、Deep Sea Diving Clubのように、そこに各プレイヤーの個性をふんだんに散りばめ、リファレンスの枠を超えて自由に遊べるバンドは多くない。そんなバンドのオリジナリティが全開で発揮されたのが「あくまとおどる」だった。テンポを自在に変え、大胆な緩急をつけながら聴かせるソウルフルな楽曲は、その土台を支える出原の表情豊かなドラムの存在感が光った。お互いの演奏を感じ合い、まずは自分たちが心底楽しいと思える音楽こそを追求していこうとするミュージックフリークスぶりが、そのステージからは伝わってくる。

Deep Sea Diving Club

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ハイライトは、ゲストにMichael Kanekoを呼び込んだ「SUNSET CHEEKS」だ。昨年、Deep Sea Diving Clubは様々なアーティストをフィーチャーしたコラボ三部作をリリースしてきたが、そのなかでメンバーが深く敬愛するシンガーソングライターとして迎え入れたのがMichael Kanekoだった。ちょうど1年前にzoomでの打ち合わせに端を発して制作がはじまり、「SUNSET CHEEKS」という楽曲を作り上げたが、実際に会うのはこの日が初めてだという。そんな説明のあと、谷とMichaelというタイプの異なるボーカリストの歌声が美しく重なり合って聴かせたサマーチューン「SUNSET CHEEKS」は、真冬の渋谷を眩しい陽光で照らすような極上のひとときだった。

Deep Sea Diving Club、Michael Kaneko

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さらに「1曲だけじゃ終われんじゃろ(笑)」(大井)ということで、今度はMichaelの楽曲「Breakdown」を美しいピアノをフィーチャーしたスペシャルアレンジで披露。ラッパーにDaichi Yamamotoを迎えていたエッジの効いた原曲よりも、より甘く旋律的に聴かせていくアプローチはDeep Sea Diving Clubとのコラボレーションならでは。大井のギターにアドリブで絡んでゆくMichaelのパフォーマンスに会場もステージも大盛り上がりだ。握手の代わりにメンバーとグータッチを交わしてMichaelが退場したあと、「いやー、このまま帰ってもいい(笑)」と大井。「バンドって夢があるよね。憧れの人とステージに立てるなんて」と感慨を滲ませた。

Deep Sea Diving Club、Michael Kaneko

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二度目のセッションで助走をつけて、谷が「また週末に集まって一緒にパーティしていけたらと思います。今日は本当にありがとうございました!」と言うと、ラストは、ファンクからサザンロック、レゲエへと次々に景色を変えてゆく昂揚感のなかで、谷のファルセットボーカルが伸びやかなスキャットを聴かせた「T.G.I.F」で終演。「Thank God, It's Friday.」の略として知られるスラング英語で、つまりは週末がくることを祈り、様々な仕事で忙殺される日々を生きる人々への想いが込められたという楽曲は、このライブハウスを出たあと、再び日常へと帰っていく私たちにエールを送るようなハッピーなフィナーレだった。

アンコールでは3月30日にリリースされる1stフルアルバム『Let's Go! DSDC!』に収録される新曲「SARABA」でハンドクラップを煽って会場を一体にすると、谷がソウルフルなボーカルで<自分の感情くらい 流行り言葉にのせてやるなよ>というフレーズを力強く歌い上げた「cinematiclove」で、全15曲、90分のライブを締めくくった。

Deep Sea Diving Club

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なお、メンバー全員が作曲を手がけたという3月30日リリースのアルバム『Let's Go! DSDC!』については、谷が「血と汗と涙の結晶ですね」とライブ中に手応えを語っていた。なかにはベースの鳥飼が作詞を手がけた楽曲もあり、「俺の思うLOVEをテーマにしています」と明かす場面もあった。アルバムには、この日披露された「CITY FLIGHT」や「おやすみDaydream」「cinematiclove」のほか、フィーチャリング三部作、人気曲「あくまとおどる」のアコースティックver.などが収録されることが発表されている。この作品のリリースを経て、2022年、さらにDeep Sea Diving Clubの勢いは加速していきそうだ。

文=秦理絵 撮影=Kaito Shibata

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