音楽とファッションの密な関係〜A store Robot ディレクター・宮崎洋寿氏インタビュー

インタビュー フォーカス

A store Robot店内

80年代初期に原宿にてオープン、以来、現在に至るまでカルチャーの最前線を走るオピニオンリーダーたちやコミュニティに常に注目をされてきたA store Robot(アストアロボット)。

セディショナリーズ、セックス、レットイットロック、ワールズエンド、アングロマニア、ヴィヴィアンウエストウッド、マルコムマクラーレン、中西俊夫TYCOON TOSH、ファックフォーエバーレザー、フットザコーチャー、小町渉などを取り扱っている。

音楽とファッションとのリンクが非常に強かった80年代〜90年代を経て、2000年代後半以降に一体どのような変化があったのか、今とはどんな時代なのか。A store Robotのディレクター、宮崎洋寿さんに話を伺った。

インタビュアー:三島珠美枝、畑 道纓(Musicman)

 

 

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ラバーソールから始まったA store Robot

──まず、A store Robotの歴史について少しお伺いしたいのですが、オープンはいつですか?

宮崎:1982年オープンなので38年やっています。

──私は学生時代に雑誌でA store Robotのことを見ていたんです。すごく憧れのお店で、東京とかそんなに気軽に行けないんだけど、いつか行ってみたいと思っていました。

宮崎:A store Robot創立者である先代社長からざっくり聞いている話ですと、当時、文化屋雑貨店さんのスタッフだった人が「robotのラバーソールが今一番やばい」「あれを輸入すれば売れるんじゃないか?」と言うのを聞いて店を始めたと。当時、文化屋雑貨店周辺の人たちってめちゃくちゃスノッブだったんですよね。

──コミュニティのようなものがあって話したりしていたんですね、例えば伝説の喫茶店レオンとか?

宮崎:あとそれこそモントークさんだったり。

──カフェ・ド・ロペだった時代ですね。あの頃はまさにスノッブな人たちのたまり場で舘ひろしや岩城滉一とかがよくいたというのは聞いたことがあります。

宮崎:そう、だから意外とそのコミュニティと、プラスチックス(立花ハジメさんや中西俊夫さん)周りも意外と繋がっていたりするんです。その界隈と、宇崎竜童さんだったりとかのロック界隈とかも繋がってて。

──要はその時代にとんでもない洒落た大人たちがいて、みんな繋がっていて、情報交換したりしていたということですね。

宮崎:そうそう。

──それでrobotのラバーソールから始まって、その周辺も取り扱おうと。

宮崎:最初は古着とラバーソールの店だったのかな。

──つまりA store Robotは原宿のコミュニティが生んだ店なわけですね。元々は何をなさっていたんですか?

宮崎:元々が雑貨屋なんです。だからその流れと言いますか、先代は文化屋雑貨店さんの信者だったんですよ。文化屋さんのほうがちょっと年下ですが、文化屋周辺が発信しているカルチャーに対して盲目的だったというか。

──その後、セディショナリーズとかいわゆるPUNKファッションを取り扱うようになりますよね。

宮崎:それこそ当時ヒロシさん(藤原ヒロシ)や完さん(高木完)たちが、「セッズの服、欲しいよね」となって、ロンドンに行って、当時なにもやっていなかったヴィヴィアン(ヴィヴィアン・ウエストウッド)に「セッズのお店、日本に作ってよ」みたいな。彼女自身は自分で作る気はなかったみたいで「robotさんやっていいよ」みたいな流れだったみたいです。

今だととんでもない話に聞こえるかもしれないですが、当時のヴィヴィアンってワールズエンドも終わって自分のブランドを立ち上げる前で、店の電気代も払えないような状況だったはずなので。

──その後、どんどんラインナップを増やしていったのは、お店周辺のコミュニティのニーズを取り入れていったからなんですか?

宮崎:というか多分、新しもの好きだったからですよね。パンクの次の大きなムーブメントってヒップホップで、ヒップホップに向かって行った時期もあったはずなんです。86年ぐらいかな。

──日本でヒップホップがくる、こないみたいな。

宮崎:東京で一番パンクとかに騒いでいた連中って、みんなこぞってヒップホップに行ったんですよね。

原宿「ピテカントロプス・エレクトス」の看板(実物)

──中西俊夫さんとかがけん引して。

宮崎:そうそう、タイニー・パンクスとターミネーター・トゥループスの時代ですよ。

──当時、MELONのレコードとかを買って持っていたからそれを聴くと、そこにいつもa store robotの影があったみたいな印象だったんですよね。完全に音楽ともリンクしているんですね。

宮崎:メチャクチャそうですね。

──とにかく新しくて恰好いいものに対する好奇心みたいななのが、すごく強かったんですよね。

宮崎:そうそう、その通り。

──確かに、あるときからヒップホップの影響とかでアメリカのカルチャー色が濃くなってきましたが、それ以前、カルチャーの最前線はロンドンでしたよね。

宮崎:80年代はロンドン一辺倒でしたよね。当時ってやっぱり、情報を持っている人と持っていない人の差が本当にすごかったから、持っている人に対する憧れってすごく強かったんじゃないかなって思います。

──それでA store Robotにそういうカルチャーやそれに関わる人たちに憧れて来ていた。自分もそれを着てみようかな、とか、その音楽を聴いちゃおうかな、とか。

宮崎:まさにそうですね。

──お店のお兄さんからいろいろ聞くのが楽しみだった時代もありましたね。音楽についてもレコード屋さんに行って店員さんと話しながら貴重な情報をいただいたりしていました。ただ、洋服に限っては今もあまり変わらないんじゃないですか?

宮崎:いや、結局ネットで調べられるという先入観があるから、今は情報を持っている人に対してのリスペクトはあんまり感じないですね。でも、ロンドンでもニューヨークでも、実際に行ったのとネットで調べたというのは全く別じゃないですか。

──全然違いますね。だけど、行った気になっちゃっている。

宮崎:調べることは誰でもできますからね。でも、現地へ行って情報を持っている人に対して「すごい」という感覚は、今はそんなにないんじゃないのかなと思っています。

A store Robot外観と入口

店を畳むか、お前がやるか

──宮崎さんがA store Robotに入ったのは何年ですか?

宮崎:90年代半ばくらいです。それまではA store Robotのことを少し遠巻きにしてみていたところがありましたね。90年代って音楽的にはクラブカルチャーがすごかったんですが、僕は完全にそっち側だったんですよ。

──私もクラブカルチャーに洗礼を受けた人間ですが、90年代初頭はまだ80年代的なものが続いていた時代と言いますか、そういう好みの人がまだまだ多かったですよね。

宮崎:多かったですね。結局90年代前半までって、そこまで情報も浸透していませんでしたし、結局80年代にずっと憧れていた子たちが東京に来て、というのもあったと思いますしね。

──ちなみに宮崎さんご自身は当時どこから情報を手に入れていたんですか?

宮崎:うーん、めちゃくちゃ雑誌とかも買っていましたし、なんだろうな…。やっぱり中西さんとか常に早かったじゃないですか。だから中西さんたちを追いかけていると勝手に入ってくる情報も早くなるというか、そういうのはあったかもしれないですよね。あと、中西さんもヒロシさんもみんな音楽的にフラットじゃないですか? 別にあるジャンルに特化していないというか。その影響で、自然と柔軟な聴き方になっていったというのはあると思います。

──遠巻きに見ていた場所に、なぜ入ることになったんですか?

宮崎:入るもなにもすごくシビアな話で、ここに残っているスタッフを全員クビにするという話になって、そのあと店を潰すか、僕がやるか、という選択しかなかったんですよ。

──「のるかそるか」みたいな状態だったんですね。

宮崎:そうです。本当に当時は「来週までに全員クビにして、この店を畳むか、お前がやるかどっちかしかないぞ」という選択肢だったんですよ。僕が断ったら店自体なくなるわけですから、そこで断るという選択肢は僕にはなかったんですよね。

──必然的な。

宮崎:必然というか、強制ですよ(笑)。

──(笑)。そこからの取り組みは結構大変でしたか?

宮崎:そうですね。良くも悪くも一人きりだったので、自分が決めた風にやれたのはよかったと思うんですが、日々試行錯誤ですよね。

──買い付けとか、それこそなにを入れようとかも全部自分で決めて。

宮崎:ええ。オリジナルを作る権限は当時の自分にはなかったので、自分がいいなと思うものを店に置こうと思ったら、買い付けるしかなかったです。

2000年代前半がファッションと音楽との最後の蜜月期

──買い付けで言ったら、A store Robotってキム・ジョーンズとかを取り扱うのがすごく早かったですよね。

宮崎:ああ、あれは褒めてもらいたいですね(笑)。

──(笑)。今でこそキム・ジョーンズはディオールオムのデザイナーをやっていますが、全く無名なときに一早くA store Robotでは取り扱っていて。

宮崎:キム・ジョーンズを最初に買いつけたのは俺、って言ってもいいと思います。

──何をきっかけにキム・ジョーンズの存在を知ったんですか?

宮崎:「装苑」かなにかで紹介されたのを見てピンと来て、たまたまその直後にロンドンに行く機会があったので直アポしたんです。でもそれは結構楽だったというか、意外と近い位置に彼はいたので「なんだ、すぐ繋がるじゃん」という感じでしたね。

──それこそヴィヴィアンのときと同じで、タイミング的に割と繋がりやすかった?

宮崎:そうそう。でもキム・ジョーンズに関わっていたのは最初のほうだけで、すぐに僕は切り離されたんですよ。キム・ジョーンズって誰が見ても値上がりしそうな株みたいな存在だったので(笑)。本当はみんな自分が囲いたいじゃないですか? それで僕は遠ざけられる感じに社内の中でなっていったというか。彼とはイベントとかもやったんですけどね。

──そのイベントってどんな感じだったんですか?

宮崎:2003、4年当時っていわゆるニューリバイバルの頃で、80’sリバイバルとか、ニューレイヴみたいな時期だったんですよ。ロンドンのクラブ「The End」とかその辺で、ホワイト・トラッシュ系のパーティがすごく人気で、そのパーティのパッケージをそのまま日本に持ってきてやりたいという在日外国人のDJとかが結構いたんですよ。それで、その人たちと一緒にキム・ジョーンズのDJとかやって。

──当時はどのあたりのアーティストが人気だったんですか?

宮崎:ラプチャーとかその辺ですよね。あとはフランツ・フェルディナンドがデビューをしたり、ロンドンがもう一回盛り上がっていたんですよね。

──メインストリームとは少し違う盛り上がり方だったですよね。

宮崎:メインストリームじゃなかったですね。カウンターカルチャーなんですが、すごく力があったというか。ニューリバイバルって、結構世界同時だったような感じですよね。アメリカもそうだったし、ベルギーもそうだったし、パリもそうだったし。

──確かにリバイバルが同時進行していましたよね。そのときもやっぱりまだファッションと音楽はすごくリンクしていた印象があります。

宮崎:その頃まではすごくリンクしていました。もしかしたらそれが最後かもしれない。

──どうしてそうなったんでしょうか。音楽の中にもそういうハッキリとしてムーブメントがなくなってきたというか、もっと多様化してきたからなんでしょうか。確かに2007年頃からEDMがぼちぼち出てきたり、様々な音楽フェスが完全に定着してきた時代ではありましたね。そこには最初の話に出てきたスノッブな人たちみたいな存在がないというか。コミュニティもないというか、そういうことと関係していますか。

宮崎:もうそういうことが求められてない気がしますね。だってみんなファッションのお手本にするのもインスタだったりするわけじゃないですか?ちょっと前にあった、例えばスタイリストさんがカリスマだったり、そういう裏方の人をまつり上げるような文化も、今の子には多分ないですね。

──SNS見て自分で選んだり、友だちが好きなものをチェックしたり、とかそういう感じなんでしょうかね。

宮崎:やっぱり業界の人は自分たちにとって身近でもないしリアルじゃないですから、今は身近な人とのコミュニティ内で完結している気がしますね。

──情報はすごく広いところから取るけれども、コミュニティは狭いみたいな。

宮崎:本当にそうですね。でも、今の子は逆に海外の情報とかに興味がないですし。

──それは音楽もそうですよね。

宮崎:例えば、2007年の流行とかを見ても、なにもピンとこないですよね。

──では2000年代前半がファッションと音楽との最後の蜜月だったんですかね。

宮崎:ファッションに関してはそうかもしれないですね。それ以降はファッションじゃなくてライフスタイルと言われるようになっちゃったというか。

──ライフスタイルという言葉がやたらと使われるようになってきたというのは確かにありますよね。でも、その一方でコスプレみたいなことはみんなすごく好きじゃないですか?

宮崎:でも、それもライフスタイルの一部ですよね。その人たちにはそういうコミュニティがあるわけで。例えば、90年代とかって、そのとき一番格好いい恰好をして注目されていたら、その先に何かあるんじゃないか?という幻想があったと思うんですが、今って別にないんですよ。

──なるほど。

宮崎:だったら別に自分の周りの気が合う人の中で認められていればいいというね。90年代はもっと漠然と、お洒落な恰好をしていたら誰かに見つけられてフックアップされるんじゃないか? みたいな淡い幻想があったと思うんですが(笑)、今の子は絶対にそういうのはないので。

──現実的といえば現実的ですよね。

宮崎:そうそう。

模倣や形の先にあるものの大切さ

──先ほども少し話に出ましたが、なぜファッションが他のカルチャー、例えば音楽とリンクしなくなってきたのかやはり気になります。

宮崎:そうですね。でもファッションと音楽って、全部のジャンルがリンクをしていたわけでもなくて、例えばニューウェイヴとかはすごく近いけど、他のジャンルも同じかと言ったらそうでもなかったりしますよね。

──全ての音楽がファッションとリンクしていたわけでもないと。

宮崎:あと、今は「このジャンルのファッション」ではなくて、今流行っているファッションを音楽に当てはめていくという作業をしているような気がしますね。だから別にそれがヒップホップだとしてもEDMだとしても、音楽に付随するファッションではなくて、今一番イケてるファッションをそこに当てはめているというかね。

──なるほど。

宮崎:仮にそれがシュプリームだったら、EDMだろうがヒップホップだろうがどっちもシュプリームというね。ちょっと雑なまとめかもしれませんけど。

──でも、わからないでもないですね。

宮崎:だから自分たちのライフスタイルというか、もっと自然発生的なファッションが中心で、「じゃあPVを作るからそれを当てはめよう」という発想なんだと思います。

──アーティストが別にそのバックグラウンドを持っている持っていないに関係なく、マーケティングされたものを組み合わせているというか。

宮崎:そうですね。「今人気のものはこれだから」って感じでしょうかね。

──もちろん全員じゃないかもしれませんが、マーケティングっぽい動きは確かに多いかもしれませんね。要はSNSで「いいね」の数が多いものが正解みたいな。

宮崎:「今一番イケてるのはこういう感じでしょう?」っていうのを当てはめているというか。

──「いいね」が多いからいいとは正直全然思わないんですけどね。

宮崎:その通りなんですけど、若い子ほどそういうことをすごく気にするじゃないですか?それで言ったらRobotって、別に「いいね」の数には何の意味もないって店なんですけどね。あくまであるものを見て「いいね」って押した人の数であって、決して共感した人の数でもないですしね。

──でも、大多数は現場もそういった数字を気にしている?

宮崎:ええ、みんなTwitterのフォロワー数とか「いいね」の数をすごく参考にしますものね。それこそ、今はそれなりのクオリティをみんな保っているじゃないですか? きちんとテクニカルなこととマーケティングをして、ダサいことはそんなにやってないんだけど、かといって特別響かないっていうのはあると思いますね。

──とんでもなくダサい人は少なくなったけど、とんでもなく洒落た人も少なくなった?

宮崎:そうですね。やっぱり自分の内面から出てきたものじゃないからかなと思ったりすることはありますね。それこそトシさんが言っていた話ですけど、Macが出てきてデザインの幅が広がったっていうけど、それって結局その人がすごいんじゃなくてMacがすごいだけじゃん、っていうね。それによって国ごとの差別化がなくなった、みんな均等になっちゃったみたいなことを言っていましたけどね。

──テクノロジーにいいところと悪いところが両方あるということですね。

宮崎:使っているか、使われているかの違いかな。

──でも確かに音楽だって聴かされているか聴いているかって話ですし、服も着させられているか着ているかみたいな話で、どんな分野でも同じですよね。

宮崎:もちろん最初は模倣や形から入るのはいいんですが、大切なのはその先ですよね。

 

半分期待に応え、半分は裏切る店でありたい

──宮崎さんは2000年からかれこれ20年ぐらいA store Robotにいるわけですが、その間にお客さんもどんどん変わってきている感じはするんですか?

宮崎:いや、うちの店に関しては実はそんなに変わっていません。基本的にはうちに来る時点でメインストリームではないので。メインストリームのものがつまらないからうちの服を着ているというのはずっと変わらないですね。世代交代をしたとしても別に変わらないです。

──若い子でも、ちょっとありきたりなものじゃないものが欲しくて来ている?

宮崎:もちろん。あとは、うちみたいなスタンスでやっている洋服屋というのが、他にほとんどないと思うので、そういうマインドのお客さんの拠り所みたいなものにはなっているのかなと思ったりもします。

──ちなみにA store Robotのようにカウンターカルチャーと密接だった他の洋服屋さんって今どうなっているんでしょうね。

宮崎:どうなっているんだろう…もうなくなっているんじゃないですかね。カウンターカルチャーのところって。

──でも原宿はまだ多いほうなんじゃないですか?

宮崎:うーん。たとえば高円寺とかにもあるんだろうけど、それはまた違うし。

──それで言ったらカルチャーを持ったお店がどんどん少なくなってきているということですよね。A store Robotが砦です、宮崎さん(笑)。そういう意味で本当に貴重なお店ですよ。

宮崎:(笑)。気が付いたら誰もいないですね。周りからどう見えているかはわからないけど、アップデートはしているつもりですし、半分は期待に応えたいし、半分は裏切りたいんですよ。

──その「半分裏切りたい」とか「半分期待に応えたい」ということに対して、宮崎さんは今何からインスパイアされているんですか?

宮崎:なんだろうな…特別なにかからとか、どこかから情報を得ようとかはそんなに日々考えているわけでもなくて、なんとなく日々生活をしていて「これをこう見せたら面白いじゃないか」とか、全然違うものを見て「こういうアプローチをしたら面白いんじゃないか」みたいな、もともと自分の中にあったものを今の時代でどう見せたら面白いかという思いが根底にあるかなと思うんですよね。

──それは宮崎さんのインプットがいろいろあるからですよね。

宮崎:そうなんですかね(笑)。

──いろいろなインプットが宮崎さんの中にあって、それをどう組み合わせていくかっていうことをA store Robotでやっている印象がありますよね。

宮崎:そうかもしれないですね。格好良く言うとカットアップですよね。

──DJのサンプリングみたいな。でも確かに宮崎さんのお店ってちょっとDJっぽいかもしれないですね。DJってやっぱりある程度「この人はこういうDJ」って色はゆるやかにあるんだけど、その中でも時代時代で音を追っているじゃないですか? 宮崎さんはそれと同じことをファッションで、お店で、やっている感じがします。

宮崎:そうだね! それそのまま使おう(笑)。

──(笑)。あまり独りよがりになりすぎないというか、その辺のバランスが絶妙だと思うんです。

宮崎:独りよがりな部分を求められている人はそれでいいと思うんですが、そうじゃない人ってただの意固地な人ですものね。ヒップホップのDJをやっている人と話をしていたら、ヒップホップでも「この時代しか認めない!」みたいな意固地な人とかいるみたいなんですよね。

ヒップホップって傍から見ていると、どんどんとアップデートされていていいなと思っていたんです。でもその真ん中にいる人から見たら「この時代しか認めない」という人はやっぱりいるって言っていましたね。それはテクノでもハウスでも、何のジャンルでもいるんじゃないですかね。

──もちろんそこは個人の自由ですし、好みの問題なのでしょうけど。

宮崎:でもヒップホップってずっとアップデートをし続けてきたから今日まで残っているジャンルじゃないですか? ヒップホップとパンクってほぼ同時期に生まれて、それぞれ黒人と白人のユースカルチャーで生い立ちも似ているのに、なぜこんなに差がついたんだろう? といつも思っていて、「ヒップホップいいなあ」と思っていたんですけどね。

──つまりパンクはアップデートをしてこなかった?

宮崎:僕はそう思いますね。ファッションもそうじゃないですか? パンクのよくないところって、新しいことをやると「そんなのパンクじゃない」ってみんなすぐに言い出すんですよね。ヒップホップで「そんなのヒップホップじゃない」って、あまり聞いたことがないじゃないですか。

──しかも成功した旧世代が若い人たちをフックアップするためにプロデュース側に回っていきますよね。

宮崎:そのフックアップの差はすごく大きいと思っていて、パンクには基本的にフックアップがないんですよ。

──先輩がいつまでも先輩というか…。

宮崎:そうなんです。これは大きいのかなと。パンクは怖い先輩に道を開けなきゃいけない文化なので(笑)。威張るけど別にフックアップはしない。

──でも音楽に限らず、そういう現象は各所で起こっているような気もします。

宮崎:まさに音楽だけじゃないと思いますよ。あと、仮にカニエ・ウエストが怖い先輩だとしても「頑張ったらあんな風になれる」と思えたら我慢するかもしれないけど、パンクの怖い先輩を見ても「頑張ったところで…」と今の若い子たちは憧れないんじゃないかなと思うんですよね。

──でもA store Robotはもともとパンクからスタートしているお店ですし、そのいい部分というか、お客さんが期待している部分は残しつつ、常に時代に合わせてアップデートをしながら生き残ってらっしゃるわけですよね。

宮崎:ええ、そのつもりで日々試行錯誤しています。でも、周りを見渡したら音楽でもファッションでも、ずっとアップデートしている人のほうが少ないわけで、そこは意識しないと止まっちゃうので、そこは絶えず心がけてこれからもやっていきたいなと思っています。

店舗情報

A store Robot
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-31-18
TEL&FAX:03-3478-1859
営業時間:OPEN14:00以降~20:00位(不定休)

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