【特集連載】震災から1年、東北の音楽関係者に聞く 〜 TONEGROUND/TAKE UP SEED RECORDS インタビュー

インタビュー 特集

「続けていくこと、まずはそれが一番」


TONEGROUND/TAKE UP SEED RECORDS 高橋剛史氏

地元仙台に密着し、イベント企画制作・レーベル運営から、フリーペーパー、ラジオ番組の制作まで、幅広く仙台の音楽シーンをバックアップしている、TONEGROUND/TAKE UP SEED RECORDSの高橋剛史氏にお話しを伺いました。

——震災からこの1年を振り返ってみて、まず一番に思われることはどのようなことでしょうか。

高橋:あっという間の1年で、震災がつい昨日のことのようです。

市街地は以前のように復旧していますが、沿岸部や原発周辺の地域はまだまだ「被災したまま」の状況で、それに比べて世の中の話題や関心は薄まってしまっているように思います。

——震災当日のご様子というのは。

高橋:震災当日は偶然イベントとイベントの間の空き日でした。事務所に戻ると書類棚や機材が全て倒れており、入り口から中に入れない状況で散乱したガラスや壁の破片を踏み越えて、ようやく室内に入れました。まもなく停電したので、翌日からのイベントの出演者にも連絡が取れず、ラジオの情報を聞いて一晩暗闇の中で過ごしました。

——その後の営業状況はどうだったのでしょう。

高橋:3月は卒業シーズンで、ほぼ毎日様々なイベントを開催予定でしたが全て中止となりました。

一部のライブハウスは、電気が復旧した3月末頃から使える状態にはなっていましたが、交通網が全滅し、お客さんが足を運べる状況ではありませんでした。

——営業再開の経緯は、どのような感じでしたか。

高橋:再開したのは4月24日。ちょうど県外からのアーティストを10組以上仙台に招いてのイベントを企画しており、直前まで開催できるかどうかわからない中、出演予定だった全バンドが快く仙台に来てライブをしてくれることになりました。会場の仙台CLUBJUNKBOXもビルの安全点検が長引き、ちょうど24日から営業再開できると決まった、その初日のイベントで300人近い方が集まってくれ、ものすごく感動しました。

——この1年間において、活動の支えとなったのは。

高橋:営業再開した、第1回目のイベントで、どのバンドもお客さんも最後まで一つの空間で音楽を楽しみながら、暖かい言葉をかけてくれた、その一言一言が、「これからも頑張っていこう」と思える原動力になりました。

——東北の音楽業界にいらっしゃるという事に関して、今回の震災で考え方の変化はありましたか。

高橋:「復興支援」の言葉の裏に、様々な思惑があるということも目の当たりにしました。

一時的な支援や盛り上がりだけで終わってしまうのではなく、継続していくことが大事だと思います。他の地域の支援に頼るのではなく、地元の一音楽人として、やはり地元の音楽環境を維持していくこと、次の世代につなげていくことの大事さへの思いがよりいっそう強くなりました。

——東北の音楽シーンの回復具合は。

高橋:地元バンドの数は減り、全体的な集客や売り上げは落ちています。
また、チャリティーや震災復興名義のイベントが無料で行なわれているため、地元に密着したイベンターとしてはなかなか厳しい状況にあります。

——東北におけるアーティストの活動は現在どのような状況なのでしょうか。

高橋:1年を経て、震災需要も一段落したように思います。
ただ、以前に比べて東北に訪れるアーティストの数は増えましたし、そういったアーティストと共演する機会も増えたと思います。

——今後の展望に関してはいかがでしょうか。

高橋:続けていくこと、まずはそれが一番です。

——音楽関係者やこれを読んでいる方へ一言お願いします。

高橋:東北は元気です。音楽を楽しめる力がある方は、ぜひ東北に足を運んで、東北のアーティストのメッセージに耳を傾けてください。僕らも精一杯、地元の音楽を発信していきたいと思います。

また、4月1日より杜の都仙台に新たなライブハウス、LIVE&BAR Sendai Milkywayがオープンします。私は、そこで制作&ブッキングを担当することになりましたので、そちらも宜しくお願い致します。

TONEGROUND/TAKE UP SEED RECORDS

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