Spotifyなど、AI乗っ取り問題が深刻化 著名ジャズミュージシャンら相次ぎ被害報告
米国のジェイソン・モランや、デンマークのカーステン・ダール、トーマス・ブラックマン、クリス・ミン・ドーキーらを含む多くのジャズミュージシャンが、自身の作品とは全く無関係なAI生成楽曲が、無断で公式ストリーミングプロフィールに大量にアップロードされる事態に直面。デジタル音楽配信事業者(DSP)側の対応が遅く、不十分であると指摘している。Digital Music News(DMN)が伝えた。
モランは友人からの指摘を受けて、自身のSpotifyプロフィールに紐づけられた偽アルバムの存在を確認。直ちにSpotifyに連絡するも、削除まで約72時間かかった。「アーティストが自ら発見して確認しない限り、ストリーミングサービスはそのまま放置してしまう。われわれに課される要求は多くの点で不公平で、特に自分のようにSpotifyに楽曲を配信していないアーティストや、既に亡くなっているミュージシャンにとってこの問題はとりわけ深刻だ」
ドキーも同様の経験をし、SpotifyとApple Musicに直ちに被害を報告。しかし、両社は責任を逃れようと、出版社に責任を押し付けたという。徹底的な調査により首謀者を突き止めるもDSPからは前向きな反応を得られず、結局、最も効果的な対処法はソーシャルメディアでこの問題を訴え、ファンに通報を呼びかけることだった。その後、短い期間で問題が再発するも、ファンからの大量の通報も手伝ってDSPが特に注意深くチェックするようになり、偽のトラックが出現しても、以前よりずっと早く削除されるようになったという。
Spotifyは3月、楽曲の公開前にアーティストが内容を確認・承認できるオプトイン機能「アーティストページの保護」の試験運用を開始。故人のアーティストの遺産管理団体や権利保有者は、Spotify for Artistsアカウントを保有していれば、同ツールを利用できるとしている。
(文:坂本 泉)
榎本編集長
ある日突然、自分の新アルバムが勝手にSpotifyに上げられていて、ファンの報告で知る。これはストリーミング詐欺で、アーティストの新アルバムと信じたファンが再生すると、詐欺集団に音楽配信事業者から支払いが行われるという仕組みだ。ジェイソン・モランをはじめ多くのジャズミュージシャンが被害を報告しているが、「アーティストが自ら発見して確認しない限り、ストリーミングサービスはそのまま放置してしまう」という現実がある。削除まで72時間、しかも本人が連絡しなければ動かない。Spotifyに楽曲を配信していないアーティストや故人のミュージシャンには、気づく手段すらない。Beatdappの調査では全ストリームの1割以上が詐欺で毎年最大30億ドルが失われているとされる。Spotifyが3月に「アーティストページの保護」機能の試験運用を始めたことは前進だが、オプトイン方式のベータ版では全アーティストを守り切れない。被害の規模に対し、プラットフォームの対応が追いついておらず、IFPIが今年のGMRの巻頭言で世界の音楽産業全体で取り組むべき課題として提示している。ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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