【9000字】MUSIC AWARDS JAPAN業界シンポジウム「音楽、感動から産業へ。世界進出へ向けた課題と可能性。」

5月22日、記念すべき第一回目となる国内最大規模の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」主要6部門の授賞式の前にシンポジウムが開催された。ノミネート曲発表後に世界でストリーミング数が2割伸びたこと、J-Popの世界的シェアの成長といった貴重なデータの他、レコード演奏・伝達権の整備、コンテンツ庁創設のアイデアなど音楽輸出の増大へ向けて様々な重要な話題が取り交わされた。Musicmanではシンポジウムの全内容を当日の資料と共に余すところ無く掲載する。
(2025年5月22日 於:ロームシアター京都 取材:Musicman代表 屋代卓也、Musicman編集長 榎本幹朗)
開会
司会者(三菱総合研究所・杉浦) MUSIC AWARDS JAPANシンポジウムを開始させていただきます。
本シンポジウムは、グローバルシーンで加速度的に評価される日本の音楽やアーティストをさらに拡大していくために開催されました。2033年に政府が目指す海外売上高20兆円というコンテンツ産業の目標において、音楽産業が重要な一翼を担っていくことを狙い、音楽ビジネスのグローバルでの経済規模拡大に向けた課題や可能性について、専門家の皆様方にディスカッションしていただきます。
パネリスト紹介
- 神戸大学大学院法学研究科教授 島並良先生
- 経済産業省商務・サービスグループ文化創造産業課課長 佐伯徳彦様
- 文化庁著作権課課長 籾井圭子様
- ビルボードジャパン編集長 高嶋直子様
- 一般社団法人日本レコード協会専務理事 佐藤朝昭様
モデレーターは、東京大学大学院経済学研究科教授 柳川範之先生です。
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科教授) 私は経済学者として、経済全体の中でのコンテンツ産業のあり方、その中での音楽産業の可能性に関心を持っております。
日本のコンテンツは今、世界で非常に注目されており、ビジネスサイドから見ても大きな可能性が出てきています。特に音楽産業には大きな可能性があり、MUSIC AWARDS JAPAN 2025のようなイベントが開かれていることからも、世界に大きく開かれる可能性が高まっていると思います。
コンテンツとしての音楽が世界で認知されるだけでなく、産業全体として、企業の様々な活動としてグローバル展開していくことが、音楽そのものや音楽産業の発展につながると考えています。
それでは、まず日本レコード協会の佐藤専務理事に、我が国の音楽産業の現状と可能性についてお話しいただきます。
日本の音楽産業の現状
佐藤朝昭(日本レコード協会専務理事) 2023年のコンテンツ産業の輸出額は5.8兆円の規模があります。日本の主力輸出産業というと自動車、半導体、鉄鋼が挙げられますが、実はコンテンツ産業は半導体や鉄鋼よりも大きな産業になっています。
2022年が4.7兆円でしたので、1年で1.1兆円も伸長しました。総理の施政方針演説でも、2033年にはこの規模を20兆円にする方針が示されています。
我々音楽業界は、このイベントを皮切りに5団体が結集して、MUSIC AWARDS JAPANという形で日本の音楽を世界にアピールしていきます。個々のアーティストもアジアや欧米で、音楽業界の大谷翔平になろうという勢いで頑張っており、業界としても、こうしたアーティスト達の海外展開を支援したいと思っています。更に、海外展開における収益化を図るためにも、国際的な観点から制度の不均衡が生じているレコード演奏・伝達権について、我が国においても諸外国と同様の制度整備の導入に向けて、政府のご助言を賜りながら現在推進しているところです。
トヨタ自動車さんもこうした取り組みに「MUSIC WAY PROJECT」という形でご支援をいただき、今年3月にロサンゼルスで「matsuri’25」というイベントを実施しました。Ado、新しい学校のリーダーズ、YOASOBIが出演し、7000人のキャパシティがほとんど現地の人で埋まりました。人種的にはラテン系の方が多かったです。
私が若い頃は、日本で売れたアーティストが海外公演をしても、観客は日本人の留学生や駐在員ばかりでした。しかし今は完全に現地のファンが埋め尽くしています。アーティストのMCは英語ですが、歌唱は日本語で歌っても、現地のオーディエンスは大盛り上がりです。サブスクやSNSで瞬時にコンテンツがダイレクトに届けられる時代が来たと実感しました。
柳川 総理の施政方針演説のご紹介もありましたが、私は政府の新しい資本主義実現会議と経済財政諮問会議の委員をしており、政府全体の政策の中で、コンテンツ産業のグローバル展開は大きな政策の柱になっています。
今お話があったように、海外では日本の音楽ファンが、もしかすると日本の普通のファンよりもずっと詳しくて熱心な人が集まってくるという特徴的な動きをどう大きな流れにしていくかがポイントだと思います。
高嶋様に、J-POPの人気の急速な高まりをどのように把握されているか、お話しいただけますか。
J-POPの海外展開の現状
高嶋直子(ビルボードジャパン編集長) 私からは、日本の音楽の輸出力が世界でどのくらいの位置にあるかをご紹介します。
ルミネートという会社が発表しているエクスポートパワースコアというランキングでは、1位がアメリカ、2位がイギリス、3位がカナダ、日本は14位でした。スコアとしては、日本はアメリカの1.7パーセント、韓国の3分の1ほどのポイントだったので、もっと伸びしろがあると感じます。
ただ、少しずつ伸びています。2024年1年間の海外でのJ-POPのプレミアムストリーミング数は約100億回に近づいてきました。
どういうきっかけで伸びているかというと、例えば去年の紅白歌合戦後、各国でストリーミング数が伸びました。米津玄師さんの「さよーならまたいつか!」の韓国でのストリーミング数、B’zの「ultra soul」のアメリカでのストリーミング数、星野源さんの「ばらばら」のイギリスでのストリーミング数、西田敏行さんの「もしもピアノが弾けたなら」の台湾でのストリーミング数、いずれも放送後に伸びています。
また、XGがコーチェラに初出演した際は、グリーンデイやレディー・ガガなどのヘッドライナーよりも大きな伸びを見せました。YouTubeでの配信も含め、世界中で反応がありました。
今日のMUSIC AWARDS JAPAN 2025も、4月17日にノミネート曲が発表されただけで、平均22パーセント、約9割の楽曲のストリーミング数が伸びました。
フェス、ライブ、配信放送を立体的に組み合わせることで、世界中にファンダムを形成することが可能だと感じています。
柳川 ストリーミング数を細かくクイックに把握できるので、何が起きるとどう伸びるかが瞬時にわかるというのは、テクノロジーの進歩が音楽産業に大きく影響していますね。
高嶋 そうですね。現状を知ることは、アーティストにとっても重要ですし、我々もそういう事象を伝えていくことで、日本の音楽をより広げていけると思います。
柳川 日本国内で多く見られていると思われるイベントでも、海外でリアルタイムで注目されているということですね。佐藤さん、このデータを見て、現場の実態との違和感はありますか。
佐藤 紅白の出演効果は昔から気にしていました。フィジカルの時代は、正月休み明けの出荷数で効果を測っていました。年明けの出荷数が異様に伸びたら紅白効果があったと判断していました。
ところが、今のデジタル時代は、リアルタイムで瞬時に出演効果がストリーミング数に現れます。デジタル、サブスクの時代を非常に感じます。
柳川 昔はCDの売り上げ増加を正月明けに確認し、品切れにならないよう在庫管理が必要でした。デジタル化によって産業全体のビジネスモデルが随分変わりましたね。
それでは、政府も政策としてこの分野に力を入れているということで、経済産業省の佐伯課長から、音楽産業への期待についてお話しいただけますか。
政府の音楽産業への期待
佐伯徳彦(経済産業省商務・サービスグループ文化創造産業課課長) 政府全体でコンテンツ産業の海外売上高を2033年までに倍増する目標がありますが、その中で音楽の特徴は3つあると考えています。
第一に、音楽は最も身近なコンテンツです。本を読むにはちゃんと読む環境が必要ですし、映像を見るには見る環境を整える必要がありますが、音楽はどこでも楽しめます。非常に多くの方が楽しめる、広がりのあるコンテンツです。
第二に、音楽は他のコンテンツに付加価値をつけます。映画、ドラマ、アニメ、ゲーム、それぞれの分野で「この曲だったよね」と、その曲を聴くと作品をもう一度楽しみたくなる、そうしたきっかけになります。
第三に、音楽はデジタル技術の影響を長らく受けてきました。カセットテープ、レコード、CD、MD、ダウンロード、配信と、常に新しいビジネスモデルを作ってきました。今はAIも出てきており、技術の最先端に常にいる分野です。
そういう意味で本当に大事な分野ですので、我々としても様々な支援をさせていただきたいと考えています。
柳川 コンテンツ全体の中での音楽の相乗効果は確かに大きいですね。音楽が他の産業を引っ張ってくる部分も随分あると思います。トヨタさんが関わっているのも一つの表れでしょうし、CMで使われた音楽が製品の売り上げにつながることもあります。
技術革新によってビジネスモデルが変わり、音楽関連のハード技術革新にもつながるという意味で、産業全体に大きなインパクトがあると感じました。
コンテンツビジネスは物を売るのとは違う特性があると思いますが、著作権の専門家である島並先生から、その特徴を解説いただけますか。
コンテンツビジネスの法的特性
島並良(神戸大学大学院法学研究科教授) 法律家の目から見た産業の特徴は、取引の対象がコンテンツという無体物、つまり情報財だということです。情報は机や土地・建物と違い、他人の利用を物理的に阻止することができません。国際的な拡散も税関で止めることができず、インターネットで即座に世界中に広がります。
そのため、人工的に法制度によって取引の基盤を整える必要があります。近代著作権法の起源は1710年のイギリスのアン法ですが、これは著作者の権利を守りつつ、実質的には海賊版出版への対策として生まれました。著作権法は生まれた時から最古のコンテンツビジネスである出版と共にあったのです。
その後、映画、ラジオ、テレビ、インターネット配信とコンテンツビジネスが拡張するのに応じて、著作権制度も変化し、新たなビジネスを支える機能を果たしてきました。著作権法制度が重要な役割を占めていることも、コンテンツビジネスの大きな特徴だといえます。
柳川 グローバル展開では、法律で権利が守られていても、国によって法律が違うと、コンテンツは国境を超えるけれど法律の規定は国境を超えないという問題がありますね。
島並 著作権法などの知的財産法は、さまざまな制度の中でも、世界で最も古くから国際的なハーモナイゼーションが図られてきたものの一つです。条約や国際組織が整備され、明治の初めからグローバルな制度でした。
とはいえ、権利制限など国によって微妙な差異もあり、その効力は原則として各国内でのみ働きます。しかし侵害コンテンツがひとたびネットにアップロードされると、アクセス可能な世界各地で損害が発生するのですから、国際的な制度の協調は今後も必要です。
柳川 前半は海外展開の可能性と期待の話でしたが、もう少し課題について掘り下げたいと思います。佐伯課長から、産業育成や発展に関する課題を整理していただけますか。
産業発展における課題
佐伯 音楽業界の大きな課題は、配信のストリーミングで世界中に楽曲が流れているのに、マネタイズの形がまだ確立されていないことです。
国内では、ファンクラブを活用したファンダム形成、ライブイベントとグッズ販売で回収を図っていますが、海外でそれをやろうとすると、日本の音楽関係企業は海外拠点をあまり持っていません。
人材育成も課題です。現地でのライブ開催には現地関係者のサポートが必要ですし、ツアーが国境を跨ぐ場合の円滑な調整も必要です。ビジネスとして回収できる形で継続的にライブを行える企業は限られています。
私どもも海外ライブ公演への補助制度はありますが、利用実績はまだ多くありません。
また、音楽を作る会社と芸能プロダクションの連携も課題です。海外でのファンダム形成には、現地ニーズに合わせた高品質なグッズ提供も必要です。ファンとアーティストのデジタルコミュニケーションも重要ですが、アーティストへの負担も考慮する必要があります。
国内のライブイベントをサポートする方々の高齢化も大きな課題で、政府としても検討しているところです。
柳川 サブスク時代のマネタイズ、特に海外でのライブでのマネタイズが大きなポイントですね。私も20年位前に「フリーコピーの経済学」で結局はライブで儲けるしかないと書きましたが、儲けられるアーティストが一部に集中してしまっています。
ライブ運営の方々の高齢化は、どの産業でも大きな課題ですね。次に、文化庁の籾井課長から著作権の課題についてお話しいただけますか。
著作権の課題
籾井圭子(文化庁著作権課課長) 著作権制度は、契約でビジネスをやっていく上でのインフラ的な制度です。音楽の海外展開に向けて、著作権関連の大きな課題は2つあります。
第一は海賊版対策です。音楽分野でもJ-POP MIXという海賊版サイトがありました。日本コンテンツの海賊版被害額は2兆円に上るという推計もあります。海賊版撲滅は、20兆円目標に音楽産業が寄与していく上でも重要です。
ただ、海賊版は人気の裏返しでもあります。正規版ビジネスを戦略的に展開し、世界中の人々がJ-POPに手が届きやすい環境を作ることで、ファン層を広げ、結果として海賊版撲滅という好循環を生み出せると思います。
第二は、レコード演奏・伝達権です。これは条約には書かれていますが、日本では導入されていない権利です。作詞家・作曲家には認められていますが、アーティストやレコード製作者には、どこかで音楽が流された場合の対価が入ってきません。
この権利は世界142カ国で導入されており、韓国は2009年、中国も2020年に法改正しています。長年にわたり、音楽業界から導入についてご要望をいただいていましたが、これまで実現しておりませんでした。しかし、今、日本の音楽産業が世界に打って出る時、この権利がないことは対価回収の機会を失うことになります。継続的に収入を得る機会として非常に重要な権利だと考えています。
佐藤 レコード演奏・伝達権について簡単に説明します。街中の商業施設で音楽がかかった時、現在は作詞家と作曲家にだけ使用料が支払われ、レコード会社やアーティストには支払われません。世界142カ国でこの法律があり、ないのは日本ぐらいです。
相互主義なので、日本に法律がないと、海外でヒットしても徴収できません。今日のミュージックアワードもそうですが、日本の音楽を世界にアピールしても、マネタイズの道が限定されてしまいます。
柳川 法律のハーモナイゼーションは昔から重要な課題ですが、技術やビジネスの変化に合わせて対応する必要がありますね。海賊版対策は法律だけでなく、運用や各国との協力も必要です。
事業側のビジネスモデルの工夫でファンが増えれば、正規版を買うファン心理も働くでしょう。演奏・伝達権は、日本が世界に合わせていくべき方向性だと感じました。
佐藤さんから、海外展開の事業者側の課題についてお話しいただけますか。
海外展開の事業者側の課題
佐藤 世界の音楽市場は2013、14年から綺麗に右肩上がりで、ストリーミングが大きな割合を占めています。一方、日本は98年にフィジカルだけで6000億円の規模がありましたが、最近は微減するなど、グローバルに比べて伸び悩んでいます。
このままでは、少子化で新しい音楽ファンが生まれにくい状況が重くのしかかります。日本は世界2位の音楽市場規模があるので、昔は国内でヒットを作ることに終始していましたが、これからの若い人たちはグローバルマーケットでヒットを出す必要があります。
課題は、日本のお家芸とも言えるファンダム形成です。アニメ主題歌をきっかけとして海外で流行っても、それが点で終わってしまう。曲のヒットをアーティストのヒットにつなげることが肝要ですが、海外では難しいのです。
人材不足も深刻です。クリエイティブの感性、プロモーションノウハウ、デジタル知識、語学力を兼ね備えたプランナーがいません。自動車産業や金融産業など、昔からグローバルで戦ってきた他産業とコラボするというのも手かも知れません。とは言ってもBTSのような成功例を生み出せれば一気に景色も変わると思いますが。
柳川 スライドを見ると大きな可能性がありますね。人材や新しい知見を持った人が産業に入ってくることが重要です。他産業とのコラボレーションやノウハウの取り入れが必要ですね。
音楽産業の人の視点から製造業を見ることで、お互いに新しい発見があるかもしれません。時間も限られているので、皆さんから今後の展望を一言ずつお願いします。
今後の展望
高嶋 J-POPといっても多様な音楽があります。ボーカロイドも、アジアでは考察系の作品、アメリカではダークな作品がヒットするなど、国と音楽の相性は様々です。その辺りを分析することで、いろんな国でファンダム形成が可能です。ビルボードは15カ国で展開しているので、パートナーと連携しながら日本の音楽を広げるお手伝いをしていきたいと思います。
柳川 ビルボードのデータを活用することで、ビジネス展開の高度化が可能ですね。
高嶋 我々のツールでは、2日前のストリーミング数、しかも世界中の、アメリカなら各都市のストリーミング数まで分かります。自分のアクションやSNSの反応がどう楽曲のヒットにつながるか可視化されています。データの重要性は増していくと思います。
柳川 データを見て、どう活用するか考えられる人材も課題ですね。島並先生、お願いします。
島並 著作権法の観点からは、法制度の整備と適切な運用ということに尽きます。その際に大切なのは、第一に、著作権制度はコンテンツ創作へのインセンティブだけでなく、創作されたコンテンツの伝達・流通、社会による享受、そして創作者への対価還元という、文化の発展のためのサイクル全体を支える基盤となる必要があるということ。
第二に、権利を強めれば良いというものではなく、次世代の創作者が育つ自由な環境の確保と常にバランスを採ることです。
たとえば実演家のレコード演奏・伝達権の整備は、次世代の創作環境への影響があまりない店舗等での音楽の商業利用について、演奏者等への対価還元を図るものです。先行する諸外国の制度運用も参考にしながら、文化発展のためのサイクルを回していくことが必要だと思います。
籾井 政府として、アーティストやクリエイターへの対価還元は大きな政策課題です。音楽業界からご要望をいただいてきたレコード演奏・伝達権の導入は、この文脈でタイムリーな議論です。文化庁は今年度この議論を深めていきます。
ただ、関係者の理解と、実際のオペレーションを音楽業界が一丸となって考える必要があります。音楽は作って終わりではなく、多くの人に聞いてもらってメッセージを届けることに意味があります。著作権の保護と円滑な利用のバランスが取れるよう、関係者と丁寧にコミュニケーションを取りながら議論を進めます。
佐藤 ダブルパスポートの導入も提案したいです。特にアメリカのビザ取得は難しく、費用も期間もかかります。ビザ申請でパスポートを預けている間は他国で活動できません。ビザ申請用と渡航用の2種類のパスポートがあれば、もっと活発に海外展開できます。
最後に、韓国のKOCCAのような、機能も予算も一つの窓口で統括するコンテンツ庁を日本でも設立していただければ、民間事業者と二人三脚で世界に向けた産業を育成できると考えています。
柳川 ビザの話は音楽産業だけでなく、どの産業でも課題ですね。佐伯課長、課題と展望についてお願いします。
佐伯 コンテンツ庁については横断的な議論が必要ですが、まずは課題を把握し、しっかりサポートすることが大事です。
2033年に20兆円の海外売上高実現において、音楽は先端的エンターテインメントとして、多くの人が視聴する可能性があり、日本のコンテンツや一般商材への需要を喚起する重要なツールです。
音楽はデータが開示されているので、どこの国でどんな楽曲が聞かれているかを分析することは、物を販売する上でも重要です。
ストリーミングだけでは回収が難しく、実ビジネスとして海外展開するハードルは大きいです。レコード演奏・伝達権も、海外でマネタイズする上で重要な権利だと考えています。
海外の実態把握が不十分なので、今年度から音楽産業の海外売上調査を始めます。音楽業界の皆様にご協力いただきたいと思います。
柳川 実態把握、データ把握は重要ですね。政府のデータ把握は進んでいますか。
佐伯 国内はレコード協会さんのデータである程度分かりますが、海外は十分把握できていません。ストリーミングの視聴数ではなく、売上高ベースの数字がないので、調査を始めます。
柳川 高嶋さん、協力できる部分はありますか。
高嶋 売上データはありませんが、ストリーミング数、ダウンロード数、北米のフィジカルセールス数など、都市別データも含めて協力できる部分があります。
柳川 民間事業者が持つデータを国が活用して政策に使うコラボレーションも重要ですね。リアルタイムに近いグローバルなデータを取って、産業全体のグローバル展開に使っていく方向性は重要だと思います。
最後に私からも。音楽産業は様々な企業、ビジネス、産業とコラボレーションしながらグローバル展開することに大きな可能性があります。
コンテンツビジネス全体の中で、音楽が他のビジネスに与える相互作用は非常に大きく、その連携を単に視聴者やファンが感じるだけでなく、企業間の連携、ビジネスの連携として作っていくことがグローバル展開では重要です。
コンテンツビジネスだけでなく、製造業や化粧品業界などとの間でも音楽産業は大きな役割を果たせます。CMで音楽やアーティストが使われ、それが製品の売上につながることは多く経験していますし、韓国は戦略的に音楽を有名にすることで製品を売るビジネスモデルを作りました。
CMだけでなく、もっと多様な展開の仕方があるはずです。音楽やアーティストの求心力は非常に大きく、彼らが海外に発信することが製品の売上やビジネス展開につながる可能性があります。
楽曲レベルだけでなくビジネスモデルや経営戦略レベルで様々な産業とコラボレーションすることで、音楽産業自体が大きく活性化し、グローバル展開の新たな可能性を見せてくれるでしょう。
もちろん課題はあり、法律や政策、人材、組織のあり方の工夫が必要です。ただ、人材については楽観的です。音楽産業は多様なジャンルの音楽が生まれ、工夫やアイデアを持った若い人が入ってきやすい産業です。そういう方々の知恵とアイデアを活かせば、産業として大きな可能性があると思います。
時間となりました。皆様、ご清聴ありがとうございました。
(了)
関連リンク
関連リンクはありません
広告・取材掲載