来年秋にもAmazonやGoogleなど海外事業者が配信するコンテンツに課税、一刻も早い対応を求める緊急フォーラムが開催

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10日、インターネットを通じたオンラインコンテンツやネット広告等を海外拠点から配信する事業者に対して、適正な消費課税を求める緊急フォーラムが開催され、約300人が参加した。

現行の税制では、海外拠点から配信される音楽、電子書籍、ソフトウェアなどのコンテンツの購入、広告サービスを日本で受けても消費税が課税されず、国内から同様の配信をした場合は課税対象となっているため価格差が生じている。このため、国内事業者は海外事業者に対しても公平な課税をするよう求めていた。

この問題を改善するため、政府は2015年3月に消費税法を改正し、早期に課税を開始する方針を表明している。

「海外事業者に公平な課税適用を求める緊急フォーラム」肥田美代子(海外事業者に公平な課税適用を求める協議会会長)

肥田美代子氏(海外事業者に公平な課税適用を求める協議会会長)

冒頭、海外事業者に公平な課税適用を求める協議会会長 肥田美代子氏が登壇し、「我が国の税制度は国際環境や国内市場の激しい変化に十分な対応ができず、日本のインターネット事業者も海外と比べて不利益を被っています。このフォーラムを新たなステップにして引き続き海外事業者への適正課税を求めていきたい」と開催の挨拶を述べた。

「海外事業者に公平な課税適用を求める緊急フォーラム」桜内文城議員(日本維新の会)、三宅伸吾議員(自民党)、大久保勉議員(民主党)

左から:桜内文城議員(日本維新の会)、三宅伸吾議員(自民党)、大久保勉議員(民主党)

その後、桜内文城議員(日本維新の会)、三宅伸吾議員(自民党)、大久保勉議員(民主党)が登壇し、国会での取り組みを報告した。

三宅議員は、課税開始の時期について、「海外事業者に対する消費課税について、平成27年度改正に向けて具体的に検討すると26年度税制改正大綱に明記されました。早ければ来年秋、遅くとも再来年春までには、消費課税が開始できるよう、詳細を進めております」と言及した。

「海外事業者に公平な課税適用を求める緊急フォーラム」植村八潮(専修大学文学部教授)

植村八潮氏(専修大学文学部教授)

また、これまでの経緯と政府各党の動向について、植村八潮氏(専修大学文学部教授)が登壇。

2012年7月の段階で、総務省がこの問題に関する研究会を開催し、会合を終えたが、衆議院解散・政権交代の影響で中間報告書は公表されなかった。2013年3月に桜内文城議員が予算委員会で質問をしたことをきっかけとして、2013年6月に超党派の議員連盟「IT推進と公正な消費課税を実現する議員連盟」が設立され再び議論が盛り上がった。また、同時期に、出版業界とインターネットサービス業界もフォーラムを開催。共同で消費課税の是正に向けた活動を始めている。そして今年4月4日には、税制調査会国際課税ディスカッショングループから今後の立法化に向けた検討状況の報告が行われ、海外事業者への課税を平成27年度税制改正大綱に盛り込む方針を固めるに至った。

この税制調査会の発表によると、インターネットによるサービスの市場規模は、およそ2兆円となり、そのうち海外との取引が6550億円となるそうだ。

なお、4月17日、18日には、経済協力開発機構(OECD)「消費税グローバルフォーラム」が開催され、2015年を目処に消費課税について国際的な方針をまとめるほか、100カ国が集まり指針を検討する会議を開催。各国に採用を勧告し新興国にも活用を働きかける。

「海外事業者に公平な課税適用を求める緊急フォーラム」三木義一(青山学院大学法学部教授)

三木義一氏(青山学院大学法学部教授)

続いて、三木義一氏(青山学院大学法学部教授)が登壇し、海外事業者と消費課税問題について講演を行った。

現在見直しが検討されている課税方法として、既に法が整備されつつあるEUを参考に、消費者向け取引(BtoC)は「国外事業者申告納税方式」、事業者向け取引(BtoB)は「リバースチャージ方式」があると説明。

国外事業者申告納税方式は、電子書籍・音楽の配信等の消費者向け(BtoC)および、クラウドサービス等消費者・事業者(BtoC・BtoB)双方に提供されているもので、事業者向け(BtoB)であることが明らかでない取引。海外の事業者が、日本の税務署に申告納税を行う。

リバースチャージ方式は、広告配信・法務サービス等の事業者向け取引(BtoB)および、クラウドサービス等消費者・事業者(BtoC・BtoB)双方に提供されているもので、事業者向け(BtoB)であることが明らかな取引。海外事業者は免税で配信し、日本の事業者が申告納税を行う。

また、国内か国外かの判定については、これまでは配信拠点の所在地で判断されていたが、コンテンツの購入やサービスを受けた場所によって判断される内容に現行制度から見直す案が検討されている。

「海外事業者に公平な課税適用を求める緊急フォーラム」高井昌史(紀伊國屋書店代表取締役社長)

高井昌史氏(紀伊國屋書店代表取締役社長)

その後、肥田美代子氏が再び登壇し、声明文を朗読。終わりに紀伊國屋書店代表取締役社長 高井昌史氏が「先日の税制調査会でも平成27年度の改正案がしめされる中、一部であれ、是正される見込みがたったことは大変喜ばしいことだと思っています。ここにお集りの皆様の力を引き続き結集し、最終的な格差是正の実現を図っていきたいと思います」と述べ、閉会の挨拶とした。

フォーラム終了後に行われた記者会見には、肥田氏、高井氏、植村氏、三木氏が参加。

「海外事業者に公平な課税適用を求める緊急フォーラム」記者会見

左から:植村氏、高井氏、肥田氏、三木氏

 

海外事業者との消費課税の格差について、高井氏は「書店は営業利益1%程度しかない。その中で8%の差は大変なハンデ。全商品がそのハンデを負うわけではないが、電子書籍や海外の学術書等が直接販売される状況が続くと、これまで以上に国内の業者が廃業することになる。公平な競争であれば負けても仕方ない。しかし、不公平な競争をしいられて国内の業者が撤退すれば、日本の文化にまで影響する。それを一番懸念しています」と答えた。

また、植村氏は「4月の税率の引き上げをきっかけに見極めが始まっていて、この1年で電子書籍市場から撤退する動きがでてくる。8%に上がるタイミングで税制が行われていたら違う展開があったのではないかと思う。来年秋から課税の見通しはたったが、IT業界は移り変わりが早く、この1年を乗り切れないと判断する企業が出てくる。一刻も早く課税を始めてほしい」と早期の対応を求めた。

AEBS 電子出版制作・流通協議会http://www.aebs.or.jp/

 

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