Sou
eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-
2025.8.7 Zepp Shinjuku(TOKYO)
細分化されたネット音楽を網羅するために立ち上がったプロジェクト・『FAVOY』。そのライブイベント第1弾となる『eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-』が、8月7日(木)・8日(金)にZepp Shinjuku(TOKYO)にて開催された。このレポートでは、缶缶、超学生、Souの3組が集った7日公演の模様をお届けする。
トップバッターを飾ったのは缶缶。1曲目の「ビータ」が大音量で鳴り響く中、「新宿、盛り上がっていくぞー!」とダッシュでステージに入ってくるや否や、オーディエンスの声を求めると、緑色のサイリウムが輝くフロアの熱が一気に高まった。真っ赤な照明がステージを染める中、持ち前のハイトーンボイスを炸裂させる缶缶は「歌える人は一緒に歌ってください!」と叫び、「Bloody Mary」へ。躍動感たっぷりのエレクトロスウィングにフロアから大量の手が上がる中、ラップを交えつつリズミカルに言葉を吐き出し、序盤から凄まじいテンションで駆け抜けていく。
缶缶
『FAVOY TOKYO』では出演者同士によるコラボパフォーマンスが行われることが事前にアナウンスされており、缶缶は超学生と共同制作した「ドロシー」をライブで初披露することが発表されていた。缶缶は「“超”が付く兄貴を呼ぶ前に……」と、同曲の前日譚にあたる「リ・ユーク」を披露するという粋なセットリストでフロアを喜ばせた後、超学生を呼び込んで「ドロシー」へ。ステージ上手側に立つ超学生はガナり気味に艶のある低音を響かせると、下手側に立った缶缶が歯切れよく高音を畳み掛ける。途中、お互いが向き合って声をぶつけ合うバトル的な展開も飛び出し、フロアをおおいに熱狂させていた。
缶缶、超学生
熱狂の余韻が残る中、「せっかくなので“歌ってみた”もやろうかなと思って……」と、「ベノム」をタイトルコールすると、フロアからは大歓声。コール&レスポンスを交えながら激しく盛り上げると、「まだ動画にもしていなくて、今日のために用意してきた」という「マトリョシカ」を披露。ボカロ文化を象徴する名曲でフロアの熱をさらに高めていく。そこからミディアムな「睡魔」でフロアを心地よく揺らした後、「マーナガルム」でラストスパートに突入。凄まじい勢いで言葉を発射していくと、そのまま「不夜城」へなだれ込み、超アッパーな和風エレクトロスウィングでフロアをブチ上げてフィニッシュ。徹底的にアグレッシヴなステージでオーディエンスを魅了していた。
缶缶
缶缶
2番手の超学生は、「pa pa pa」のイントロが流れる中、ステージに登場。オレンジ色のサイリウムが灯るフロアに「絶対最高の夜にしましょう!」と告げ、そのまま同曲を歌い始める。バックバンドが放つ重量感のあるサウンドに乗りながら、ステージの縁ギリギリのところまで出てきて、艶のある歌声で捲し立てていくと、「こんなもんじゃねぇだろ! この曲でもっと踊り狂ってください!」とオーディエンスを焚きつけて「Untouchable」へ。フロアにマイクを向けて、〈無理ゲー〉のシンガロングを熱く求める。続く「ラヴィブルーム」では、ときに怪しく囁くようにメロディを紡ぎ、官能的な世界へ深く引き摺り込んでいった。
超学生
ここで超学生×Souのコラボステージへ。2人はそれぞれが歌ってみた動画を投稿している楽曲をパフォーマンスすることになっていたのだが、楽曲名が事前に告知されていたこともあり、オーディエンスにタイトルコールをしてもらおうという流れに。超学生が「一生に一度だと思って!」と先導し、オーディエンスが「混沌ブギ」と大声で叫んで曲がスタート。超学生は赤い照明、Souは青い照明をバックに背負いながらアップテンポナンバーを熱唱。美麗かつ迫力のあるユニゾンを響かせていた。
超学生、Sou
バンドメンバーの紹介を挟み、「まだまだぶち上がる覚悟はありますか!?」と、「Innocent Tyrant」「ファントム」を披露。様々な声色を操りながらダークかつリズミカルなアッパーチューンを連打すると、「サイコ」ではしなやかなダンスでもフロアを魅了する。そして「名残惜しいんですが、あと2曲歌ってインターネットに帰ろうと思います。この曲で僕のご主人様になってくれる人を募集します!」と、「しゅきしゅきメイドマスカレイド」へ。ポップでキャッチーでありながらも、不気味さ漂う超絶ハードなバンドサウンドが高鳴らされる中、コール&レスポンスを巻き起こしてフロアの熱を最大まで高めたところで、ラストナンバーの「ルーム No.4」をドロップ。終始フロアをどっぷりと自身のカラーに染め上げるパフォーマンスを繰り広げ、ステージを後にした。
超学生
超学生
トリを務めたのはSou。バックバンドが「ロケットサイダー」の演奏を始めると、「『FAVOY』に夏を届けにきました!」とSouが叫びながらステージに駆け込んできた。清涼感と感傷が絡み合うバンドサウンドを背中に受けながら歌い上げる彼の声を、フロアを染める青いサイリウムが美しく彩る。間髪開けずに「あの娘シークレット」へ。甘酸っぱさのあるアップテンポナンバーを畳み掛けると、「雨は大丈夫でした? この会場内は僕が晴らすんで、みんな負けないようにたくさん盛り上がってください!」と宣言。ダンサブルな「トマドイリズム」でクラップを巻き起こしつつ、Souはバンドメンバーにも視線を送り、アンサンブルを楽しみながら歌を届けていた。
Sou
そこから缶缶とのコラボパフォーマンスへ。昔から知っていたけれども、実はこの日が初対面。これまで交わることがあまりなかったという2人は、和やかに談笑した後、動画を事前に投稿して期待を高めていた「花弁、それにまつわる音声」を披露。ときに叫ぶように、ときに囁くように、ダウナーながらも躍動感のある同曲をグルーヴィーに上げていく2人。Souは「一緒に歌って!」とフロアにシンガロングを求めつつ、ラストは2人が強烈なハイトーンを響かせる圧巻の共演となった。
Sou、缶缶
中盤では、彼の透明感のある歌声がハマりにハマっていた「ことばのこり」や、凄まじい勢いで言葉を畳み掛けてセンチメンタルを爆発させる「ただ、君のままで」といった楽曲で、オーディエンスをエモの海にどっぷりと浸らせていく。そして、「残り3曲は夏をみなさんに体感して帰っていただきたいと思います!」と前置きして歌い始めたのは、「Fire◎Flower」だ。シンガロングを求めながらパワフルに歌い上げると、「サマータイムレコード」に繋ぐ。オーディエンスそれぞれが自身の脳内にあの夏の記憶を呼び起こさせるエモーショナルな楽曲たちを立て続けに届けると、波の音が場内に響く中、「またいつか出会えることを祈っています」と「バブル」を披露。叙情的なバンドサウンドとボコーダーを使った彼の歌声が美しく絡み合うドラマティックなエンディングとなった。
Sou
Sou
この日の出演者は3組共“歌ってみた”文化出身だったこともあって、イベントとして統一感があり、オーディエンスも会場に足を運びやすいプログラムになっていた。また、Souが「こうやって新たな出会いがあるのっていいですよね」とMCで話していた通り、出自は同じながらも、三者三様の異なる魅力を存分に楽しめるものになっていたところは、〈インターネットを超えリアルで推しを実感し、新たな推しとの出逢いに繋がるきっかけになってほしい〉という『FAVOY』に込められた願いがしっかりと具現化されていた1日だったとも言えるだろう。大盛況で終えた初日の熱を持って、『FAVOY』は2日目に続く。
文=山口哲生
撮影=Kota Maruyama
Empty old City、水槽、DAZBEE(ダズビー)出演のDAY2のライブレポートは9月5日(金)18時に公開予定。
広告・取材掲載