■2025.05.11『MARiA MUSIC LAND tour 2025 in TOKYO』@東京・大手町三井ホール
5月11日、MARiA(GARNiDELiA / Vo.)のライブツアー『MARiA MUSIC LAND tour 2025』の東京公演が、東京・大手町三井ホールで開催された。MARiAがソロツアーを行うのは実に3年ぶり。アジア各都市を回るこのツアー唯一の国内公演だったこともあり、当日の大手町三井ホールには満員の観客が集まった。
ドラム、ベース、ギター、キーボードからなるツアーバンドと2人のダンサーとともにステージに現れたMARiAは2020年リリースのアルバム『Moments』収録の「Star Rock」でライブを幕開け。オリジナルバージョンはエレクトリックなダンストラックであるこの曲をヘヴィながらもスウィンギンなロックに翻案してみせた彼女は、ドリーミーな「Think Over」はシャープで軽快な8ビートナンバーに、世界標準ともいえるダンスナンバー「Hertabreaker」はパワフルに頭拍を打つドラムとピーキーなギターソロが印象的なヘヴィロックにお色直し。かと思いきや、正統派J-ROCK・邦ロックといった趣の「Asterisk」は原曲に忠実なアレンジに。ボーカルと高速スラップベースの掛け合いなど、オリジナル同様、テクニカルなアンサンブルで魅せるなど、この日の彼女はバンドという武器を手に自らの音楽で自由に遊び続け、会場を踊らせまくっていた。
「私の声で遊園地のような環境を作りたい。声に乗せてみなさんをいろんな世界に連れて行きたい」とツアータイトル「MUSIC LAND」に込められた想いを明かしたMARiAは『Moments』収録のフォークロア調のミディアムなワルツ「Pray」と、2012年発表のソロ1stアルバム『aMazingMusiQuePaRK』収録のバラード「mere」をパフォーマンス。自らのキャリアを横断してみせた。そして客席最前列に「mere」に感動するあまり涙する女性を認めると、そのファンに優しい笑顔を向けつつ「さらに懐かしい曲でみんなと一緒にあの頃へとタイムスリップしたいと思います!」と高らかに宣言。自らが音楽シーンで注目を集めるきっかけであり、またGARNiDELiA結成の契機にもなった往年のボーカロイド・アニメナンバーメドレーを披露する。
ここでもMARiAとバンドのスタンスは変わらない。スマートな8ビートロック「ブラック★ロックシューター」や、大会場のフェス映えしそうな四つ打ちロック「ブリキノダンス」を原曲をなぞるようにカバーしたかと思えば、ドラムンベースナンバー「炉心融解」はカッティングギターが冴える高速ダンスロック仕立てに。さらにファンクチューン「夜咄ディセイブ」とポストロックライクな「daze」という、自身がゲストボーカルを務めたじんの楽曲2曲を叩き込んで、大手町三井ホールを熱狂の渦に包み込んだ。
メドレーのエンディング、「最高だね!」と満面の笑顔とともにMARiAがステージをあとにし、バンドが幕間のそれと言うにはあまりにもリッチでピーキーなシューゲイザー的なセッションを披露すると、それまでのスポーティでセクシーな出で立ちから、淡いブルーとホワイトのコントラストが映えるドレス姿のMARiAがステージに舞い降りる。これに歓声が起こる中、彼女はこれまで海外公演では披露していたという中島美嘉「雪の華」をジェントルにカバーすると、続けて「大大大先輩の曲」と、angela「Shangri-La」をドロップ。ノリのいいファンが〈さよなら 蒼き日々よ〉の歌詞になぞらえてペンライトの色を青に切り替え、また別のファンはangelaのライブよろしくマフラータオルを振り回すなど、会場の熱気はさらなる高まりを見せていた。
音楽フェスで競演すると、同じ男女2人組だからかangelaのatsuko(Vo.)が決まって「こんにちは、GARNiDELiAです」と自らを“詐称挨拶”することの「逆をやらせていただきました」と、「Shangri-La」をカバーした経緯を冗談交じりに語ったMARiAは「ここから後半戦のブチアゲコーナー」に突入することをアナウンス。直後に「でもMARiAソロの特徴としてテンションの上がる曲って難易度も上がるんだよね」と苦笑いしていたが、ライブ本編終盤のセットリストはまさに言葉どおりの構成に。
ラテンフレイバーの横ノリナンバー「ガラスの鐘」、MARiAの高速ボーカルと細かくブレイクやキメが入りまくるリズムパターンが魅せ場を作る「おろかものがたり」、電子楽器を多用したロックナンバーを、この日の楽器編成でプレイ可能な“人力ビッグビート”にリアレンジした「Galactic Wind」、じんによる今のシーズンにぴったりなラブリーな歌詞とメロディと、本間昭光によるスムーズながらも明らかにストレンジなアレンジが絡み合う「ハルガレ」を4連発。BPMの速い楽曲を集めて“ブチアゲ”るのではなく、多彩なグルーヴとアンサンブルでオーディエンスを”ブチアゲ”た彼女は、大歓声の中、ひとまずステージをあとにした。
熱烈なアンコールに応えて、リメイクしたツアーTシャツ姿でステージに現れたMARiAは「アンコール、どうもありがとう」の声とともにストレートなバラード「コンコース」を優しく、しかし高らかに歌い上げる。そして「歌、歌、歌、歌って感じで歌いまくって、私は本当に歌うことが好きなんだな」「歌とケンカすることもあるし、歌が私の言うことを全然聞いてくれないこともあるんだけど、でも愛しちゃってるんだろうな」と続けつつ、「歌う道をみんなと歩んでいけたらいいなと思っています」と想いを新たにしたのち、この日のラストナンバー、ハードロックバラード「Labyrinth」を文字どおり熱唱。「今日が楽しすぎたのでMARiAソロ、またやってもいいですか?」「また絶対会おうね」と、この日、大手三井ホールに集まったオーディエンス1人ひとりと固い約束を交わして、ソロとしては3年ぶりの東京公演を締めくくった。
この日のMARiAは例えるなら「偏差値も高ければ、体育の成績も5段階の5」。ソロワークでの彼女はその時々のコンテンポラリーなダンスナンバーを指向しており、その楽曲は基本的にエレクトリックなものが主体だ。しかし本稿のとおり、本公演で彼女はそれらの楽曲を大胆にリアレンジ。オールドスクールなものから、ごくごく現代的なものまで、多様なバンドサウンドに変身させてみせていた。しかも彼女はそれらの楽曲に合わせて圧倒的なボーカリゼーションを発揮するのはもちろん、ときにはダンサーとともにキレのいいダンスを披露し、またときにはバンドの的確かつエモーショナルなプレイに呼応するかのように高々と拳を振り上げ、ジャンプを連発するなど、いかにもロックボーカリスト的な佇まいで客席を煽りまくっていた。
音楽リスナー的感性を発揮して自らの曲をリファインするセンスや素養と、オーディエンスを魅了する身体性の高さの両方を存分に見せつけてくれたMARiA。それだけに終演後の言葉どおり、ソロシンガーとしての彼女のこれからもぜひ追いかけたくなった。
取材・文:成松 哲
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