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HYDE、狂騒の坩堝と化したKT Zepp Yokohama公演オフィシャルレポート

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HYDE

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HYDEが8月10日に KT Zepp Yokohamaで開催した『「HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR BEAUTY & THE BEAST』のオフィシャルレポートが到着した。


想像をはるかに超越するシナジー。コンセプトである“BEAUTY & THE BEAST”を具現するようにして男性エリアと女性エリアに二分したフロアに渦巻いているのは一体感という言葉ではとても表現しきれないほどの濃厚にして途轍もない熱狂だ。まさか、これほどの相乗効果が生み出されようとは、首謀者・HYDEも予想だにしていなかったのではないだろうか。

最新アルバム『HYDE [INSIDE]』を携え、日本7都市と中南米・アジア・ヨーロッパ9都市を約5ヵ月間にわたって巡る自身最大規模のワールドツアー『HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR』を開催中のHYDEが、8月9日、10日に神奈川県・KT Zepp Yokohamaにて『BEAUTY & THE BEAST』として追加公演を行った。ちなみに “BEAUTY & THE BEAST”とは、男性客と女性客をエリア分けしたHYDEのライヴにおける人気企画。これまでは男性を1階スタンディングフロア、女性を2階指定席に分ける形で開催されてきたが、ファンからの要望に応えて、今回は1階フロアを縦に二分するという初の試みで敢行されるという。なお、ファンの間では語呂合わせで“HYDEの日”として呼び親しまれている8月10日の公演は日本全国及びアジア8都市の映画館でライブ・ビューイング、さらに全世界配信も行われ、この歴史的一夜は各所で目撃された。

両日ともにチケットはソールドアウトとあって、ステージ上手側フロアのBEAUTY(女性)エリアも下手側のBEAST(男性)エリアも開演前からすし詰め状態。俯瞰するに両サイドの体格差は歴然としているものの、ひしめく熱量は互いにひけを取っていない。この2日間のオープニングアクトを務めたASH DA HEROによる全身全霊のパフォーマンスが逸る期待を否応なしに煽り、そうして迎えた開演時刻。ゆっくりと開いた黒幕の向こうに高くそびえる演説台と、その頂からオーディエンスを睥睨するHYDEが姿を現すや、黄色い嬌声と野太き歓声が一斉に噴き上がった。待ってましたとばかり、ステージめがけて一気呵成になだれを打つのが目に見えるかのごとき凄まじさだ。

だが、HYDEはまるで怯まず、むしろ不敵な光をその瞳に宿して「LET IT OUT」を投下。アルバム『HYDE [INSIDE]』の実質的1曲目であり、今ツアーの全公演でオープナーを担ってきたアグレッシヴなこの曲がたちまちBEAUTYとBEASTの理性を等しくぶち壊し、場内は瞬く間に狂騒の坩堝と化していく。物々しい仮面姿でステージを跋扈するバンドメンバーの動きもこの日はいちだんと激しい。

「男子! 女子! 今日という日を楽しみにしていたぜ。今日は遠慮なくいっちゃっていいんじゃない? お互い、気を遣わないでいこう。相乗効果が起こるのを楽しみにしてます。やれるか?」

HYDEにそう問われて「ノー」と答えるファンなどこの場にいるはずもなく、ステージが間髪入れずに畳み掛けてくる「DEFEAT」に全力で跳ね躍るフロア。HYDEの闘志にも本格的に火がついたのだろう、顔面を覆っていたハーフマスクを自ら剥ぎ取り、その美貌をあらわにしてはひときわ猛る。ステージ端に積み上げられたスピーカーアンプによじ登ったかと思えば、フロア最前列に身を乗り出して四方八方から伸びる手にもみくちゃにされながらグロウルからハイトーンまで自在に轟かせたり、軍帽をかぶってフラッグを高々と掲げる勇姿でオーディエンスを鼓舞したり、一瞬たりと目を離す隙を与えない。

「6or9」では「さあ、Zeppでどこまで遊び尽くせるか、君たちならできるよな? 俺たちとぶっ飛ぶ準備はできてるか!」と呼びかけ、「3, 2, 1」の合図で全員同時にジャンプを決めさせ、続く「MAD QUALIA」では「BEAUTY! BEAST! どっちがイカれてんだ? 決着つけようぜ」と男性エリア、女性エリアを容赦なく焚きつけて、イタズラっぽく舌を出すHYDE。激化する熱情の最前線に進んで身を投じ、「もっともっと」と熱狂を求めて血をたぎらせるHYDEこそは最強のBEAUTYでありBEASTに違いない。もちろんオーディエンスも負けじとHYDEの本気に喰らいついていく。演奏後、「頭おかしいんじゃないか? おまえら」と嬉しそうに声を弾ませるHYDE。これほどの褒め言葉もないだろう。

それにしてもなんと伸び伸びとしたフロアの盛り上がりだろう。リフトアップもクラウドサーフも、どちらのエリアでもひっきりなしだが、その違いは明確にわかる。HYDEが言っていた通り、エリア分けされたことで男性も女性もお互いにより遠慮なくそれぞれの本領を発揮、それが相乗し合って想像以上のパワーを生んだのかもしれない。男女の垣根のないカオティックな盛り上がりも捨てがたい魅力である一方、こうした試みによって拓かれる可能性もきっとある。ここにきてHYDEのライヴはまた一つ、新たな武器を手に入れたと言えそうだ。

「SOCIAL VIRUS」では男女双方のエリアでウォールオブデスが発生、「MIDNIGHT CELEBRATION II」で上半身裸になったHYDEは血糊を頭からかぶるとステージ狭しと暴れ倒し、ついには今ツアーのセットリストにおいて最大のハイライトと呼ぶべきバラードナンバー「LAST SONG」に突入した。流麗なピアノの調べをよすがに、主人公の孤独と狂気を歌にして紡いでいくHYDEの繊細なヴォーカリゼーションと血糊を滴らせながら身を捩る圧巻のパフォーマンスを、ひたすら息を呑んで見守るフロア。派手にはじけた直後だからなおのこと楽曲がはらむ悲しみ、痛みが胸に生々しく刺さる。

しばしのインターバルののち、メンバーによるソロプレイからインストセッションを経て、再びHYDEが登場したのは2階席だった。「PANDORA」の屈強なロックサウンドに乗せて朗々と歌声を放ち、右手に握ったウォーターガンで1階フロア、2階のオーディエンスにたっぷり水を浴びせかける、その嬉々とした笑顔がまたたまらない。1階フロアにはミニ風船を内包した巨大なバルーンも飛び交うなど、お祭り騒ぎの様相を取り戻した場内は天井知らずに再度ヴォルテージを高めていく。

「今日は本当にいい熟し具合で、素晴らしいね。けっこう長い間、スタンディングライヴをやってきてるけど、こんなすごいことになるとは。(この形で)やってみてよかった」

ステージに戻ったHYDEは狂熱を極めたこの日を振り返り、感慨深げにそう口にし、国内公演は残すところ宮城県・仙台PITでの追加公演のみとなった今ツアーに触れると「この勢いをワールドツアーに持って行きたい。この勢いのまま、南米からヨーロッパまで回りたいなと思っています」と意気込んだ。その後、テレビアニメ『鬼滅の刃』柱稽古編のオープニング主題歌としてMY FIRST STORY × HYDE名義でリリースした「夢幻」、映画『NANA』の主題歌であり、主演の中島美嘉に提供した楽曲「GLAMOROUS SKY」を立て続けに披露。オープニングアクトとして出演したASHもオーディエンスとしてフロアで一緒に暴れ、クラウドサーフからのHYDEとグータッチという胸熱な場面もあった。さらにはこの日、8月10日に誕生日を迎えたhico(Key.)のバースデーを会場の全員で祝ったあとにはHYDEとhicoのツインヴォーカルでリンキン・パークの「Faint」をカバーする一幕も。そしてラストは「SEX BLOOD ROCK N’ ROLL」が飾り、昂揚を極めた『BEAUTY & THE BEAST』は幕を閉じた。

この日のMCにてHYDEが明かしたところによれば「このツアーは狂っていて自分的にもすごくハッピーだけど、来年はこういうライヴハウスツアーは予定してない」のだという。それと同時に来たる10月25日、26日の2日間、千葉県・幕張メッセにて『HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR -JAPAN FINAL-』を開催することが彼自身の口から発表された。ライヴ中、幾度となく「命を燃やせ」「悔いを残すな」「今を楽しめ」と叫んでいたHYDE。日本における今ツアーの集大成となること間違いなしのJAPAN FINAL公演を見逃すわけにはいかない。

文=本間夕子 撮影=石川浩章、行本正志

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