BUCK-TICK、武道館特別公演「バクチク現象-2023-」ライブレポート到着

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WOWOWでは、2月24日20:00から「BUCK-TICK バクチク現象-2023-」を独占放送・配信する。この放送・配信に先駆け、ライブレポートが到着した。

昨年10月19日。BUCK-TICKのヴォーカリスト櫻井敦司はライブ本番中にステージで倒れ、搬送先の病院で急逝した。突然の悲報は国内外に衝撃を与え、12月29日に予定されていた恒例の東京・日本武道館コンサートは一旦中止が決定。後日、「バクチク現象-2023-」として代替開催されることが発表された。

1987年のインディーズアルバム発売時のライブからバンドが新章に突入する際のライブ、ターニングポイントとなる作品に冠してきたキーワード「バクチク現象」。「さあ、始めようー」という短い言葉だけが掲げられた特別公演には、大きな注目が集まった。

形容しがたい緊張したムードが漂う中、場内が暗転しオープニングSE「THEME OF B-T」が流れる。樋口豊(B.)、ヤガミ・トール(Dr.)、星野英彦(G.)、今井寿(G.)が順に登場した後、スクリーンが真っ赤に染まり櫻井敦司のシルエットが浮かび上がる。

「さあ、始めようぜ!BUCK-TICKだ!」
今井の叫びで始まったのは「疾風のブレードランナー」。センターの足元にはライトが埋め込まれ、空高く真っ直ぐ光り輝く。“今夜 お前に届けよう 宝物だ 約束だ” 姿は見えなくても、櫻井の歌声を全員で受け止める。

「独壇場Beauty -R.I.P.-」では、彼らの真骨頂とも言えるアッパーチューンが観衆を高揚と喪失に引き裂く。3曲目の「Go-Go B-T TRAIN」で櫻井の姿が初めてスクリーンに登場すると、言葉にならない幾つもの絶叫が共鳴する。

定番曲のひとつ「GUSTAVE」へと続き、櫻井と今井のツインヴォーカル曲「FUTURE SONG -未来が通る-」では、星野も櫻井のパートを歌う。舞台上の4人が大きくフィーチャーされ、“蹴散らせ 引くな 怯むな そうだ 未来だ”という彼らの意思を浮かび上がらせる。

ヤガミと樋口のリズム隊による跳ねたグルーヴが心地好い「Boogie Woogie」を経て、ゲストヴォーカルとしてDER ZIBETのISSAYが参加した「愛しのロック・スター」では、在りし日の二人のセッション映像が映し出される。わずか2カ月違いで急逝したふたりのカリスマは、天国で再会を果たしているのだろうか。感傷的な空気が客席を包む。

そんな追憶を分かち合いながらも、“最後は愛と笑うから”と歌われたのが「さくら」だ。櫻井が亡き母親に綴った歌が、今度は彼のために贈られる。燭台に立てられた三本の蝋燭の火が橙色に輝いた「Lullaby-Ⅲ」「ROMANCE」では、ミディアムテンポにして厳かな音色が震える想いを静めていく。葬送曲に乗せて彼の魂を蒼天に送り出す儀式のようだった。

ラテンフレーバーな「Django!!! -眩惑のジャンゴ-」で、今井による振り切った歌詞が表示され独自の世界観の“奥行き”が示された後、星野作曲・櫻井作詞による「太陽とイカロス」へ。櫻井が立つべき場所から放たれる光が色彩を変え、最後は赤く燃える太陽にシルエットが重なり消えていく。旅立つ彼に捧げるレクイエムが、余韻と共に眩い光を放っていた。

櫻井の声によるメンバー紹介から、沖縄民謡へのオマージュも込められた「Memento mori」へ。“人生は愛と死”というリフレイン。櫻井の死をネガティブに受け取るのではなく、その愛をポジティブに捉えよう。そう伝えているように感じた。

「夢魔 -The Nightmare」では十字架が出現し、ステージにスモークが焚かれる。彼の叫びが木魂する中で、星野と今井は上手・下手へと進み客席と心を紡ごうとする。赤く染まりなびく旗が、何かを象徴しているようにも見えた。

最後に「DIABOLO」で乾杯を分かち合い、本編は終了した。そして、ヤガミのドラムソロから始まったアンコール。4人は「バクチク現象」と書かれた黒いTシャツを着て「STEPPERS -PARADE-」を演奏する。デビュー25周年記念映画『劇場版BUCK-TICK〜バクチク現象〜』主題歌として書かれたナンバーだ。

そして、この夜初めてメンバーが重たい口を開き聴衆に語り掛ける。ひとりひとり、追悼の言葉に万感を託す。それぞれの気持ちの表し方に違いはあれど、志はひとつ。BUCK-TICKのパレードは続く。いつまでも5人一緒に。「みんなも連れて行きたいと思ってます」今井のその言葉に、涙があふれて止まらなかった。

続いて披露されたのは「ユリイカ」。繰り返される“アブラカダブラ”というフレーズは、「私が思うように物事は進む」という力強い宣言だ。その言葉は、喪失を乗り越えようとするバンドを鼓舞するかのようでもあった。

「また逢いましょう、必ず」櫻井の言葉が胸の中でリフレインした「LOVE ME」に続き、「愛だけがそこにある」と全員で大合唱した「COSMOS」。讃美歌のような2曲を連ね、全身全霊のコール&レスポンスで交感する。生と死、光と闇、哀しみと歓び。この背反する融合こそが、彼らの音楽の魅力のひとつなのだと再確認した。

最後は同年4月発表アルバム「異空 -IZORA-」収録曲「名も無きわたし」。別れを告げる作品を半年前に書き残していたことに数奇な運命を感じながら、それでも「咲き乱れる花」に自らの生を全うした彼の姿を重ね合わせて肯定したいと強く願った。

二度目のアンコール、最後の最後に届けられたのは「New World」。「行こう、未来へと」櫻井の言葉が、明日へと向かう勇気を与えてくれた。「ありがとう、また会いましょう!」今井のメッセージが歌と同期し、胸の中でリフレインした。

再び場内が暗転し、彼らの足跡を追体験するような映像がコラージュされる。そして、過去から未来へのカウントダウン。1987年から始まり、2023年、そして、2024年。「2024」「12.29」「日本武道館」の告知に、大きなどよめきが起こり、しばらく収まることは無かった。

詳細が一切明かされない中で開かれた「バクチク現象-2023-」。それは、櫻井敦司への追悼を込めながら、決意を込めて彼らが刻んだ新たな第一歩だった。ニューアルバムの制作、そして、1年後の武道館公演も発表された。彼らの活動の軌跡=パレードは続く。比類無き“BUCK-TICKサウンド”は、幾多の街で幾多の人々の心で、いつまでも鳴り響くことだろう。

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