「届けたい思いはいつも、七夕にのせて」手越祐也、ソロデビューから駆け抜けた2年間を振り返る「SUPER SESSION」リリース記念インタビュー

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手越祐也

手越祐也 写真=フォーライフミュージック提供

2021年7月7日にソロデビューしてから丸2年。その間、アーティスト・手越祐也はフルアルバム2枚とミニアルバムのリリース、自身の冠番組の立ち上げ、4度のツアー開催、海外を含む数々のフェスへの参戦、オーケストラとのコラボなど、精力的に音楽活動を続けてきた。そんな彼が3年目のスタートとなる7月7日(金)にリリースした「SUPER SESSION」に込めた思いとは──。これまでの2年間を振り返りつつ、語ってもらった。

「SUPER SESSION」ジャケット

「SUPER SESSION」ジャケット

「現状維持は退化と同じ」アップデートしないと退屈になる

──2ndアルバムを引っ提げ、4月12日のZepp Hanedaを皮切りに5都市をまわった『手越祐也 LIVE TOUR 2023「CHECKMATE」』。改めて振り返ってみて、どんなツアーになったと感じていますか?

新しいツアーが始まるときに、僕は毎回「これまでのツアーを超えていきたい」と思いながら演出や曲の完成度を高めていくんですが、『CHECKMATE​』は間違いなく今までで一番かっこいい手越祐也をお見せできたと思っています。それぐらい充実したツアーだったので「あっという間に終わっちゃったなあ」という気持ちが強かったですね。

──ツアー最終日には『2ペプラ手越 –TWO MAN ZEPP TOUR-』や『手越祐也 Symphonic Concert 2023 Vol.2』の発表もありました。

何かが終わるときに、次の始まりが見えていたほうが人って頑張ることができると思うんです。それは僕もそうだし、応援してくださっている皆さんもそうだと思うので、「次はこんな楽しいことが待っているんだよ」と提示できるように、常に何かを用意しておきたい。SNSで発表することももちろんありますが、できるだけ自分の口から発表したいという思いがあるんです。

──サプライズといえば、2ndアルバムにも参加した16人のコーラス隊が登場し、「この手とその手」「Peaceful for you」を一緒に歌いましたね。「スペシャルゲストとして、ファイナル公演に出演してほしい」とレコーディングの場で手越さんからオファーされたとのことですが?

僕はその場で閃いたことをすぐに言ってしまう性格なので(笑)、「横浜でツアーファイナルをやるんだけど、みんなの家ってそんなに遠くないよね? 最終日来てくれる?」と。最初はみんな冗談だと思っていたようですが、「せっかくの機会だから、最終日にサプライズとしてやろうよ。ファンのみんなも喜ぶだろうし」「え、マジですか?」みたいな感じで決まりました。

──音大生の皆さんがプロのステージに立つというのは、大きな経験になったと思います。

そうですね。僕は彼らの先生でも何でもないから、「色んな経験を積ませたい」と思ってオファーしたわけではなく、彼らと一緒にステージに上がることでより良いものを皆さんにお届けできるだろうと純粋に思っただけなんですが……たしかに、1000人を超える人たちを前にしてステージ上で一発勝負で歌を披露するという経験は、彼らにとって大きな財産になったと思います。僕自身も今、どんなステージに立っても動じることなく、緊張しないでのびのびと楽しくパフォーマンスできているのは、若い頃から色んなステージに立たせていただいた経験があるからこそだと思っています。そう考えると、人生の先輩である僕が若いみんなに場を作ってあげられたことは……自分自身にすべての責任と決定権がある、今の境遇だからこそだと思います。

──今回のツアーでは、LEDスクリーンを使わなかったことも驚きでした。

これまでのツアーでは僕の背後にLEDスクリーンを設置して、色んな演出を試みてきましたが、今回は思いきって無くしてみたんです。舞台装置ってそれぞれ一長一短があって、LEDスクリーンに関して言うと……映像と生のパフォーマンスをリンクさせる面白さがありますよね。一方で、LEDの場所に照明が仕込めなくなってしまう。Zeppだったらスクリーンがなくても肉眼でステージを見渡すことができますから、僕の背後にも照明を仕込んで、後ろからレーザーを当てたりするほうがかっこよくなるんじゃないかと思ったんです。

──照明チームとの連携も重要ですよね?

ソロデビューしてからずっと一緒にやっている照明チームなので、「この曲はこういう色で、こういったイメージがいい」と伝えるだけで、ものすごくかっこいい、僕好みの照明を最初から作ってきてくれるんです。今回もLEDスクリーンを使わないという僕の意向を汲みつつ、完璧にプロフェッショナルな仕事を最初から見せてくれました。それを元に、リハーサルやツアー中に微調整していって。結果的に、思った以上にかっこいい演出となりました。

──ツアーファイナルではYOASOBIの「アイドル」を「歌ってみた動画」として YouTubeに公開するためのライブ撮影も行われ、後日アップされた動画はかなりの反響でしたね。

僕のSNSに「『推しの子』の 「アイドル」を歌ってほしいです」というリクエストがたくさんきたのがキッカケでした。それで『推しの子』を観て、YOASOBIのパフォーマンスも観て、「どういう風に歌ったらいいだろう?」と考えて。「歌ってみた動画」を作ったり、ほかのアーティストとコラボするときはいつも、元になる楽曲を歌うアーティストをリスペクトして歌い方などの特徴をしっかりと捉えつつ、モノマネにならないように僕の中に落とし込んで「自分が歌う意味って何だろう? どういう歌い方がいいんだろう?」と考えるんです。特に今回は髪型やメイク、衣装にもこだわっていて……。

──ライブ中に撮影した素材のほかに、2パターンの衣装で撮った素材も入っていましたね。

それぞれイメージがあるんです。ヒョウ柄の衣装のときは、アイドル時代のことを思い出しながらアイドルっぽい表情で歌っていて、もうひとつの衣装のときは、ソロデビューしてからの「今の手越祐也」を表現して攻める感じで歌っています。それぞれリハーサル中に撮影したものですが、ライブ映像に差し込むことでアイドル時代の手越祐也を思い出せるし、今の手越祐也を知らない人にも知ってもらえるかなと思って作りました。

──アイドルについて歌っている曲ということで、なおさら入り込めたのでは?

そうですね。『推しの子』も「アイドル」も、アイドルという存在の陽と陰を表現している素晴らしい作品、素晴らしい曲なので、僕自身もベストなものを出したいと思いました。原曲となるYOASOBIのパフォーマンスが最も完成し尽くされているものだというのは大前提として……アイドルを経験した自分にしかわからないこともありますし、アイドルの中心にあると言ってもいいくらいの場所にいた僕だからこそ、表現できることがあるんじゃないかと思ったんです。

──MCで「現状維持は退化と同じ」とお話しされていたのも印象的でした。

当然ながら、ファンの皆さんは「今回は何を見せてくれるんだろう?」と期待して来てくださるわけですから「前回よりもつまらなかった」という感想を抱かせてしまったらおしまいなんです。かつ、現状維持も僕はダメだと思っていて……何事もそうですが、アップデートしないと退屈になりますよね。例えば、付き合いたては新鮮に見えた恋人が、1年後にはその新鮮さがなくなってマンネリを感じてしまうとか(笑)。それはアップデートをしていないからだと僕は思うんです。どうしたって、人は慣れてくると飽きますから。同じように、現状維持のステージを見せてしまうと「マンネリでつまんないなあ」とオーディエンスは感じてしまうんです。成長していない証拠ですからね。だから僕は「現状維持は退化と同じ」と思って……ハードルはどんどん上がっていきますが、絶対にアップデートした自分を見せたいんです。アイドルは歌と踊りの実力が極論なくてもビジュアルでなんとかなるけど、年齢を重ねていくとそれでは通用しなくなるから、体力をつけて、歌を磨いて、演出の完成度を上げながら、「前の自分を超える戦い」だと思って一つひとつのステージに臨んでいます。

「今、俺はすごく幸せです」確固たる自信と絆を確立した現在地と未来

──ソロデビューから丸2年。音楽と向き合い続けてきたなかで特に感じたことは?

それまで居た場所が本当に恵まれていたこともあって、ある意味「世間知らず」だったと思うんです。15歳でデビューしたときから「自分には歌しか武器がない」と思ってやってきていましたが、ソロになって、ひとりでアーティストとして勝負していくことのタフさを痛感しました。これまでも必死で歌を磨いてきましたが、それだけでは足りない。もっともっと努力して、学んで、吸収して、力をつけていかないといけないと思って一心不乱にやってきたなかで……以前の場所では会えなかった人たち、一緒にステージに立つことができなかった人たちとこの2年間でたくさんご一緒できるようになって、僕の音楽の世界が一気に広がったんです。彼らと一緒に立ったステージの一つひとつが学びとなり、僕のなかの栄養となってアーティスト・手越祐也を成長させてくれる。2年前のステージに比べて、今ははるかにレベルアップしている自信があって……それはすべて、僕をサポートしてくれるスタッフの皆さん、一緒にステージに立ってくれたアーティストの皆さん、いつも信じてついてきてくれるファンの皆さんのおかげだと思っているんです。

──「シナモン」から始まって、いろんなジャンルの楽曲を数多く歌ってきたなかで、3年目が始まる7月7日(金)に「SUPER SESSION」をリリースすることの意味とは?

改めて振り返ると、毎年7月7日にリリースする楽曲には「そのときに伝えたいもの」が色濃く出ていると思うんです。デビューした2021年7月7日にリリースした『シナモン』は、「手越祐也は今後、どんな音楽をやっていくんだろう?」と注目されるなか、初心に戻ってそれまで培ってきたボーカリストとしての側面を素直に見せられるような、色付けがされていない純粋無垢な曲になりました。

──2022年7月7日は「OVER YOU(feat. マイキ)」をリリースしましたね。

デビューから1年間いろんなステージを重ね、新しい曲が増えていくなか、伝えたかったことがこの曲に入っていたと思います。<何十回も何百回も足掻いて描いていこう 負けられないから 終われないから 僕は何度だって立つよ>という歌詞は、きっと1年前の僕の心情だと思うんです。実際に活動している僕を知らない人たちが色々と言っていましたが、そういった声に惑わされることなく音楽活動を続け、強くて太い幹ができたことで僕のメンタルはとても充実していました。

──そして、2023年は「SUPER SESSION」ということですね。

ツアーやフェスに参加させていただき、さらに充実していく活動のなかで、3年目に突入する7月7日に伝えたいことは、「チャレンジし続けたら、誰だって絶対に幸せになれるぜ」という確固たる自信なんですよね。だって、僕自身がそうですから。『シナモン』でデビューするまでは色んなことを言われていましたが、僕自身は音楽というブレない軸を自分のなかに持って、一緒に歩んでくれる人たちへの感謝を忘れずひたすらチャレンジし続けてきた結果、「今、俺はすごく幸せです」という状態なんです。この幸せを、一人でも多くの方に味わっていただきたい。そういったことを考えながら「手を挙げていこうぜ!」と伝えているのが今回の「SUPER SESSION」です。

──「ダンスナンバーがくるのかな?」とも思いましたが、力強い歌詞とロックサウンドが印象的な楽曲となっています。

最初はもっとダンサブルで踊りながら歌う曲にしようかなと思ったんですけど、7月15日(土)の『JOIN ALIVE』をはじめとして、フェスや対バンに出て色んな人に自分の曲を披露する未来を想像したときに、知らない曲でも一緒に拳を突き上げて盛り上がることができると、きっとオーディエンスも楽しいと思うんですよね。そういった意味でも、「SUPER SESSION」がいいんじゃないかなと思いました。

──3年目の狼煙をあげるにピッタリの曲ですね。

「今年も攻めるぞ! 俺と一緒にポジティブに幸せになろうぜ!」という楽曲だと思います。これまでの2年間でどんどん実力がついて、音楽仲間もオーディエンスも増えてきているという自信があるので、これからも一つひとつの曲と真摯に向き合い、一つひとつのステージを全力でやり続ける。どれだけ僕が本気で音楽をやっているかは、見てもらえばわかると思うのでね、僕は自分のパフォーマンスをもっともっと磨いてブラッシュアップしていくだけだと思っています。そう思えたのもこの2年間があったおかげですし、ソロになって自分がやってきたことに間違いはなかったんだと実感できているので、続けていくだけです。この先どんなステージに辿り着けるのか、それは僕にはわかりません。マーケティングについては僕の周りで協力してくれている方たちに委ねることしかできないので、僕はパフォーマンスという素材を磨き上げて、彼らにパスするだけですよね。

──8月31日(木)から始まる2マンライブツアー『2ペプラ手越 –TWO MAN ZEPP TOUR-』も楽しみですね。

ライブ自体も楽しみですが、僕はバックヤードも全部見ることができるのが楽しみなんです。昨年開催した『スぺプラ手越フェス』でもそうでしたが……各アーティストがどういった音作りをしていて、どんなチームで動いていて、どうやってスタッフ陣とコミュニケーションをとっているのか。リハーサルはどんな感じでやるのか。そういったすべてを見ることができるのは、僕の特権だと思っています(笑)。今回の6組は僕のホームに来ていただくので、照明も音響も僕がずっと一緒にやっているチームが担当するんです。だからこそ、6組がそれぞれに輝けるように、僕もすべてに立ち会って一緒にステージを作っていきたいと思っています。ゲストに来ていただくからには、かっこいい彼らをファンのみなさんにお見せして、喜んで帰っていただきたい。きっと、とびきりかっこいい彼らが見られると思います。

──改めて、3年目を迎えるうえでファンの皆さんにもメッセージをいただけますか。

僕も僕のファンの人たちも、きっと「手越祐也はこの先どうなっていくんだろう?」と心配になることってもうないと思うんです。あとは、「いかに幸せになっていくか」ですから。最初の頃は「手越祐也についていって大丈夫かな?」と思わせてしまったでしょうし、僕自身も「ひとりでやっていけるのかな?」といった不安や心配もありましたが、「もう俺ら、大丈夫だよね?」と、今は確固たる自信と絆を確立しているので……しかも、その輪がどんどん広がってきているんです。そんななかで僕にできることと言ったら、先ほどの話の繰り返しになりますが、パフォーマンスを磨いて進化し続けるだけなんです。次のツアーがもしあったら、『CHECKMATE』よりもカッコいいものを作ることは間違いないし、1年後の7月7日には今この時点の手越祐也を超えている自信があるので。もう十分に信頼関係は築けているけれど、「これからも信じてついてきてくれたら絶対に幸せにするので、期待していてください」ということですかね(笑)。

──2年後に今のような景色を見ているだろうと、デビューするときは予想していましたか?

まったくしてないです!(笑)とにかく曲を増やさないとライブができないから、6か月連続リリースを妥協することなくやり遂げるという目の前の課題がありました。あの時は本当に大変でしたが、そういったものを乗り越えて「スぺプラ手越」が実現して、素晴らしいバンドの方たちに出会えて、色んなフェスからもお声がけいただいたりと……どんどん広がってきたんです。それはもう、一つひとつを妥協することなくやり続けてきた僕らへの、神様がくれたご褒美だと思っています。

──そういう意味では、この先も何が待っているのかわかりませんが、それがまた楽しみにもなりますね。

そうですね。将来が決まっていたら人生はつまらないと僕は思うんです。どんどん相手が強くなっていって、それに対して武器や仲間を集めて挑んでいくからゲームって楽しいんですが、僕は人生もある意味ゲームだと思っているので……最初からレベル100で余裕で勝ってしまうなんて面白くないじゃないですか。いいことも悪いことも含めて、未来に何が待ち受けているのかわからないからこそ、僕は人生というゲームを楽しんで歩むことができる。当然マイナスなことも訪れると思いますが、戦うチームが強ければ、マイナスのことだって跳ね返すことができますから。仲間を増やしてどんどんチームを強くしていきたいですね。

取材・文=とみたまい 写真=フォーライフミュージック提供

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