Augusta Camp 2022、オフィシャルライブレポート到着

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Photo:岩佐篤樹

オーキャンが3年ぶりに帰ってきた!

青く澄んだ空と海、そこに映えるステージ、そして何より来場と配信視聴合わせて1万2000人のオーディエンスの姿がそのことを強く実感させる。会場は横浜赤レンガパーク野外特設ステージ。

2019年以来、3年ぶりの有観客での開催となった今年の「Augusta Camp 2022 〜Office Augusta 30th Anniversary〜」は、サブタイトルからもわかるとおり、オフィスオーガスタ設立30周年の節目にあたる。さらに、杏子のソロデビュー30周年と元ちとせのデビュー20周年も重なり、まさに惑星直列の奇跡的な巡り合わせとなった(奇跡といえば、前日まで台風15号の影響が心配されたのが嘘のように晴れたのも奇跡と言えるだろう)。

オープニングアクトを務めたのはReiRay。ヤジマレイとレイ キャスナーのツインボーカルユニットで、1stシングル「Typhoon」と2ndシングル「Skate Girl」を立て続けにリリースしたばかり。伸びやかな歌声と抜群のメロディセンスを感じさせる3曲を披露した。ステージ袖から大きな掛け声が響き、全アーティストが登場。山崎まさよしの「ようこそー!」の声とともに今年の「Augusta Camp」がスタートした。1曲目は福耳「DANCE BABY DANCE」。ディストーションの効いたギターリフが印象的なロックナンバーで、リードをとるのはもちろんオーガスタの長女・杏子だ。

「次は自分のデビュー曲を歌います」と杏子が言うように、今回のオーキャンはオーガスタ設立30周年の節目ということで、それぞれのアーティストのデビュー曲を披露、さらに事前にファンから募集したリクエストも参考にしながら各自のセットリストが構成されていた。

杏子のデビュー曲「DISTANCIA〜この胸の約束」ではアーティスト全員がそれぞれギターやベース、三味線を持ち、改めて皆でお祝いするように一緒にパフォーマンスした。曲終わり、いったん全員が捌けると、ヴィジョンには1992年から現在までの杏子のアーティスト写真をまとめた映像が流され、再び杏子が登場。黒のサマーロングコートにブーツと先ほどまでの白のワンピースとは打って変わってロックないでたちに。90年代オルタナサウンドを今の感覚で解釈した最新配信シングル「30minutes」を杏子、福田真一朗(Gt)、あらきゆうこ(Dr)の3人編成で魅せた。

杏子のあとを受けて登場したのは長澤知之。デビュー曲の「僕らの輝き」からライブは始まった。独特の声が言葉とサウンドを強固に結びつける役目を担っている。最後に披露した9月25日に会場と通販限定でCDリリースしたばかりの最新曲「知らないことはこわいかい」の一節〈真っ青な空があるそれだけで最高さ〉がこの時この場所にぴったりだった。

続いてデビュー曲「天才ヴァガボンド」を、オリジナルを想起させるバンドサウンドで披露したのはCOIL・岡本定義。自身のパフォーマンス後そのままステージに残り、先ほどまでドラムを叩いていたあらきゆうこを迎え和やかにトーク。「私にはデビュー曲がないので皆さんのリクエストで人気だった曲をやります」とMI-GU名義でリリースした「Train run」を披露。ところで――。ドラマー不在なはずなのに聴こえるドラムの音はいったい誰が? なんとヴィジョンに映し出されたのは杏子だった。なんだか心地よいグルーヴのバンドだ。

「大人の階段 駆けおりない?」で登場した杏子の姿(前髪パッツンでショートボブのウィッグ)に度胆を抜かれて思わずの冒頭を歌い損ねそうになった松室政哉。「生きづらい世の中を強く生きようとする皆さんに届いてくれたら」と言って最後に松室政哉がパフォーマンスしたのは、ドラマ「六本木クラス」の挿入歌としても話題となった「ゆけ。」。大きな愛が会場を包んだ。

2部は、元ちとせ20周年スペシャル。まずは故郷・奄美大島のシマ唄「ヨイスラ節」を三味線で弾き語り、Nice Bandが加わって2002年リリースのデビュー曲「ワダツミの木」を披露。続いて「KAMA KULA」をさかいゆうと、「虹の麓」を長澤知之と、それぞれの曲のソングライターとともにパフォーマンスした。この2曲も収めた14年ぶりのオリジナルアルバムは彼女がずっと抱き続け、今届けたい気持ちが形になったものだ。「平和であることの大切さを皆さんに受け取ってもらいたい、そういうことを伝えられる歌い手になりたいと思いました」

元ちとせの歌い手としての芯の強さと圧倒的な表現力に加え、長澤やさかいをはじめとしたオーガスタ所属アーティストの才能がいかに豊かなものであるかも改めて感じることができた。最後は「やわらかなサイクル」を杏子、そしてこの楽曲をプロデュースした“さだまさよし”こと山崎まさよし、COIL・岡本定義とともに。エンディングにはステージの両サイドからアーティストたちがコーラスしながら全員集合するサプライズ。「元ちとせ、20周年おめでとう!!」という山崎まさよしの音頭で客席から贈られた祝福の拍手の中、笑顔が弾けた。

3部のトップバッターは竹原ピストル。打ち込みのトラックを“DJあらき”がスタートさせると、それに合わせてハンドマイクで歌うというスペシャル仕様。「オーガスタに拾ってもらってすぐにリリースした曲で、おれにとってはデビュー曲みたいなもんです。いつか恩返しするからねって誓いに代えさせていただきます」と言って佐藤洋介制作のトラックにのせて放ったのは「俺のアディダス〜人としての志〜」。言葉とメロディとリズムがはらむ緊張感が日々の悶々を吹き飛ばしてくれる特別な瞬間だった。

浜端ヨウヘイは9月21日にリリースされたばかりのメジャー1stアルバム「Things Change」からの楽曲を中心に披露した。アルバムタイトルとは真逆の意味を冠した楽曲「変わらないもの」を歌っている彼の表情が感極まっているように見え、その純粋さが浜端ヨウヘイというシンガーソングライターの根っこにあるものなのだと思えた。オーディエンスの心にまっすぐ届いた。

さかいゆうは「高知県土佐清水市からやって来ました。オーガスタ14年生」という前口上も軽やかに、メジャーデビュー曲「ストーリー」からスタート。久しぶりの有観客開催が叶った喜びが抑えきれず、なんとアクロバット技まで披露!ゆったりとたゆたう波のようなリズムが心地よい「故郷」に続き、自分を音楽の道へと導いた亡き親友へ捧げた「君と僕の挽歌」を。シルキーヴォイスがマジックアワーを迎えた横浜の空へ天高く昇っていった。

デビュー曲「月明かりに照らされて」で始まった山崎まさよしのステージ。前夜祭ということで特別に公開された山崎の前日リハーサルを観た人はどう思っただろう。おそらく、リハと本番との違いにびっくりしたはずだ。何が違うのか――。それは何より満員のオーディエンスの存在に違いない。3年ぶりに眺めるその光景を感慨深げに見つめていた。最新アルバム「STEREO 3」から「Updraft」を、そして最後は歌詞に横浜の地名も登場する自身の代表曲「One more time, One more chance」を会場に響かせ締めくくった。

最新シングル「up!!!!!!」のアップテンポ、かつ様々な音楽的要素が溶け合ったサウンドが会場を一気に盛り上げる。スキマスイッチの登場だ。デビュー曲「view」をパフォーマンスする前にこんな秘話が語られた。「初めて参加したオーキャン(2002年)で、「view」をやったんですけど、実は卓弥が2番を飛ばした(笑)。だから今日オーキャンでは初めて完成される」(常田)。ハープのソロも完璧にキメたあとはラストに「されど愛しき人生」を披露した。

最後に登場したのは秦 基博。デビュー曲「シンクロ」のあと、「トリですよ。盛り上がってもらわないと困るんですよ。3年ぶりの有観客です。一緒に踊りませんか?」の呼びかけに袖から出て来たのは、全身紫色の杏子。彼女をコーラス&ダンサーに迎えて「スミレ」をパフォーマンス。楽曲の終盤には、元ちとせ、浜端ヨウヘイ、松室政哉の3人も“スミレダンサーズ”として参加し会場を沸かせた。7月28日に配信リリースしたドラマ「六本木クラス」挿入歌「残影」に続いて、最後は「鱗(うろこ)」。「素晴らしい音楽を30年届けている尊さ、そこに自分も参加させていただいているうれしさ、何よりまた皆さんにお会いできていることを噛み締めて、これからもよろしくお願いします」とステージを後にした。

アンコールはオールキャストで福耳の「惑星タイマー」と「星のかけらを探しに行こう Again」で大団円。周年を迎えた杏子と元ちとせへの改めての祝福と花束が贈られた。オーディエンスもスマホライトで加わり、みんなでつくった素敵な場所の輝きはきっと来年ともっともっと先まで届いているに違いない。

Text:谷岡正浩
Photo:岩佐篤樹

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