中澤卓也、歌手人生の原点の会場でワンマンライブ開催

アーティスト

「中澤卓也 コンサートツアー2021~約束~」

17歳の時に地元・新潟県長岡市のアオーレ長岡アリーナで開催されたNHKのど自慢に出場し、森山直太朗「さくら(独唱)」を歌唱して今週のチャンピオンとなり、その放送を見ていたレコード会社・日本クラウンのディレクターにスカウトされたことがきっかけで歌手デビューした中澤卓也だが、デビューから5年目にして、同会場で「中澤卓也 コンサートツアー2021~約束~」を開催した。アリーナでのワンマンライブは自身初。

同公演は2021年のツアー初日として1月11日に開催予定であったが、緊急事態宣言の発令により延期となったための振替公演。チケットは事前に完売となったが、世相を顧みて来場を断念したファンのために、ライブ動画配信チケットも販売された。(アーカイブ配信あり)客席は、ソーシャルディスタンスを保つために配席されており、約1500人の客席は声援を禁止されていたがそれを感じさせないほどの大拍手で包まれた。

幕開きは前日の東京駅から会場入りまでの道中に撮影された密着VTRからスタート。自身の生い立ちから歌手デビューに至るまでの話、そして、この会場は夢を掴んだ大切な場所であり、ここでプロ歌手としてソロコンサートを行うことは上京時に胸に刻んだ自分との約束だったと語った。

そしてステージ中央に立った中澤にピンスポットが当たり、1曲目から話題の最新曲「約束」のサビをアカペラで披露。「会えなくても、僕達は繋がっている」という自身の想いも込めた心と心を結ぶメッセージソングは、客席からのすすり泣く声を誘発した。温故知新を重んじる中でも予定調和を壊していくこれからの中澤卓也のスタンスが垣間見えたような気がする。最新曲に続いてはデビュー曲「青いダイヤモンド」で一気に客席のボルテージが上がり、声を発せられない中でもペンライトを必死で振り、興奮と喜びを中澤に伝えたいという想いが溢れ出ている様子がよくわかる空気だった。

この曲終わりのMCではチャップリンを思わせる扮装をしたベテラン司会者の牧野尚之氏が登場し、2人で軽妙なトークを繰り広げた。
「初めての君」「彼岸花の咲く頃」と、2曲続けてしっとりと聴かせる歌謡曲を歌唱。

ここで客席センターに配置されたステージに移動すると、アコースティックギターが持ち出され、様々なジャンルを歌いこなす中澤卓也ならではのステージを展開。このアコースティックギター1本でありながらバラードの名曲「シングルベッド」では静寂を生み、ウルフルズ「バンザイ~好きでよかった」ではルーパーで自身のギターの音をパーカッションのように入れて音を刻み、ステージが回転し、客席全方向の手拍子を誘い盛り上げるという2つの顔を見せた。ちなみにのど自慢に出演した時のゲストには「シングルベッド」オリジナルを歌うシャ乱Qのつんく♂氏がいた。

続いて本人は苦手だと語るダンスに挑戦。その言葉通り拙いダンスながらも母性本能をくすぐる「抱きしめてtonight」に続き、過去の歌唱時に業界関係者からの評価も高かった難曲「君は薔薇より美しい」を披露し、ステージには花火が噴射される演出が施された。これだけ難易度の高い曲をここまでの歌唱ができる若手も他にはいないであろう。

ここからが更に、ジャンルの架け橋となることを目標としてデビューした中澤卓也ならではとも言える、演歌・歌謡曲チャートにランキングされる歌手のワンマンライブとしては異例な光景を見せた。フロートに乗り込み、スタンドで観覧している方の目線まで上がり、オリジナルの中でもアップテンポな「俺の愛だから」「冬の蝶」「江の島セニョリータ」「青山レイニーナイト」と会場内を移動しながら全体を盛り上げた。

ステージに戻った中澤は、カップリングの中でも抜群の人気を誇るバラード「東京タワー」で25歳が歌う歌謡曲とは思えない成熟した歌声で会場の空気を一変させると「泣かせたいひと」「心変わり」「黄昏に」と、3曲の世界観を表したストーリー仕立ての自身のナレーションを駆使し、聴き入るバラード・歌謡曲を続けた。中澤の歌うバラードは特に、音楽業界からも評価が非常に高い。また「本来はやりたかった演出も、ソーシャルディスタンスの関係で泣く泣く断念せざるを得なかったものもあった。」と語る他「この会場で毎年やりたいという希望があるので、色んなことをここでやってみたい」と語った。

続いて、昨年のコロナ禍に入る前に発売したものの思うように活動できなかったが、オンラインなどでも歌い続けてきた「北のたずね人」を歌唱。そして最後にこの会場とこの曲がレーシングドライバーの夢を諦めざるを得なかった時の自分に希望の光を当ててくれた、と語り、その思い出の曲、同会場で開催されたNHKのど自慢に出場した時の曲「さくら(独唱)」で地元のファンが感涙にむせぶこととなった。こ歌唱後、まさに、歌手とファンという関係でありながら、お互いが支え合ってきた関係の継続でこの日を迎えていることがよくわかる現象が起きたと言えよう。そして鳴りやまない拍手の中、デニムと「ち~む中澤」とデコレーションされたTシャツ姿でアンコールに登場。自身が作詞した中では初めて商品化された曲「ありがとうあなたへ」(同作はペンネーム・里実徹也で作詞)で応えた。また、今日のステージが最高に楽しかったと言わんばかりに「終わりたくねぇなぁ…」としみじみ。

そして「会いたい人に会えないことも、やりたいのにできないこともあるけど、こんな時代だからこそ強く感じることができるものもある。」という前向きな希望と、今日のステージと今日に至るまでの感謝を語り、配信でご覧いただいた方も含めて、会えなくても繋がっていることを伝えたいと、再度「約束」を熱唱すると大拍手を浴び、三方礼の後、笑顔で手を振りながら約2時間半に及んだステージをあとにした。

今回のライブは無線制御型ペンライト「FreFlow」を導入し、随所で活用。声援を出せない中でもお客さんも一緒になった演出を取り入れたいという中澤の想いから導入し、会場で得られる一体感を数倍にも思わせる演出に一役買っていた。

卓越した歌唱力と日に日に成長していく表現力。形無しではなく、日頃から型破りなこともできるバイタリティは、ジャンルの架け橋となりたいという壮大な夢を実現させられるのではないかという期待を持たざるを得ない。今後も中澤卓也から目が離せないと思わせるのには十分な全てにおいてハイクオリティなライブとなった。

「中澤卓也 コンサートツアー2021~約束~」セットリスト

M1「約束」
M2「青いダイヤモンド」
M3「初めての君」
M4「彼岸花の咲く頃」
M5「糸」カバー
M6「バンザイ~好きでよかった~」カバー
M7「抱きしめてtonight」カバー
M8「君は薔薇より美しい」カバー
M9「俺の愛だから」
M10「冬の蝶」
M11「江の島セニョリータ」
M12「青山レイニーナイト」
M13「東京タワー」
M14「泣かせたいひと」
M15「心変わり」
M16「黄昏に」
M17「北のたずね人」
M18「さくら(独唱)」カバー
EC1「ありがとうあなたへ」
EC2「約束」

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