昼は”Woman”、夜は”Man”、二つの顔で魅せるソロライブを行なう音月桂に直撃インタビュー

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音月桂

音月桂  (撮影:山村隆彦)

宝塚歌劇団雪組トップスターを経て、女優として幅広い活動を続ける音月桂のソロライブ「Life-Size 2020」が2020年12月5日(土)に開催される。昼は女性ボーカル曲、夜は男性ボーカル曲を中心にセレクト、昼夜で内容を変えるという趣向で、生配信(Streaming+)も行なわれる。新たな環境のもと歩む彼女に、ライブへの意気込みを訊いた。

――2019年春以来の久しぶりのソロライブとなります。

 コロナウイルスという見えない敵と戦っていて、まだ先は見えないときではありますが、ライブをすることになって、喜んでくださる方、配信で楽しみますと言ってくださる方、皆様がエンターテインメントに対して前向きでいらっしゃることがすごくうれしくて。自粛期間中、私も一回立ち止まってエンターテインメントの必要性について考えたんですけれども、自分自身、映画や韓国ドラマ、アーティストの方々の配信を観て楽しかったですし、元気をもらったりということがあったんですね。

 今回は配信もありますし、私がやるべきことを100パーセントお届けしたいなと、今準備しているところです。芸能生活20周年の節目に紀伊國屋サザンシアターでライブをさせて頂いて以来そのような機会が無かったのですが、歌ってほしいというお声もよくいただいていて。このような状況下にはなってしまいましたが、前を向いて歩いていけるエールをお届けできたらと思っています。

――今回、昼と夜とで内容が変わる趣向となっています。

 自分で思いついてハードルを上げてしまいました(笑)。キーにしても表現にしても、自分が得意とするところは男性パートであるというところがあって。退団してから8年、男役については封印して進んできたんですけれども、ふとそこに戻ると心地いいところもあるんですよね。宝塚時代から応援してくださる方にとってはうれしく、退団後に応援してくださるようになった方にとっては新鮮なんじゃないかなと。単独のライブだからこそできるお楽しみの趣向ですよね。

 昼夜で同じ曲もありますが、昼は女性アーティストの方の曲や、女性が歌うミュージカル・ナンバーに挑戦し、今の等身大の私自身を観ていただくという感じですね。夜の部の方には懐かしいナンバーも登場します。私自身が元気をもらった曲を中心に、男女世代問わず聞いていただけるようなセレクトにしているので、配信をご覧の方には一緒に歌って楽しんでいただけたら。男性バージョンの曲については、宝塚にいた頃とは違う今だからこそできる表現もあるんじゃないかなと思います。

 昼の”Woman”、夜の”Man”、それぞれ、曲を組み合わせて一つの完結したストーリーを作れたらいいなと思っているんです。私の中ではストーリーを決めているのですが、お客様にも自由に想像を膨らませて楽しんでいただければ嬉しいです。

 バンドはピアノとベースとドラムの3人編成なのですが、私はオーケストラの演奏で歌うことが多かったので、逆に濃縮されてシンプルというか、アレンジの違いも新鮮です。アップデートされた感じでまた違った私をお届けできるのではないかと思います。

 宝塚時代、ショーのナンバーはまた別なのですが、お芝居の中の歌は、歌と思って歌っていなかったんですね。音符はあるけれども、メロディだけお借りして、表現の一つとして、あくまでセリフを語るつもりで歌っていたというところがあって。なかなかライブに踏み切れなかったのは、歌だけで世界を作っていくという奥深い作業に、自分自身でも自信がもてなかったということもあるのかなと。今も、バンドマスター&ピアノのYUKAさんにいろいろとヒントをもらって作っている最中なのですが、背伸びしなくていい、今もっているもので100パーセント届けられたらいいからと言われているんです。タイトルの“Life-Size”も「等身大」という意味ですし、今の自分にできることをしっかり伝えていく作業って、シンプルでいいなと。

 自分を見つめる時間が増えて、ライブをすることにして本当によかったなと思っています。できれば毎年のライフワークにしていって、成長していく私を観ていただけたらなと。そういう意味では、いつまでも挑戦だなと思っていて。やればやるほど、いろいろなことに挑戦したくなったり、いろいろな感情もまた出てきますし。

(撮影:山村隆彦)

(撮影:山村隆彦)

――コロナ禍で改めて感じられたこととは?

 映画を観て勉強したり、通信教育で資格をとったり、比較的充実した時間を過ごすことができました。今回、すべてがストップしてしまったことで、役者として、表現者として、自分の身体を通じて観ている方に何かをお届けすることがやっぱり大好きなんだなと改めて感じて。一生続けて行きたいお仕事です。今まで当たり前だと思っていたことが当たり前でなくなって、いつも舞台に立てているということは実は奇跡的なことなんだなと思ったのです。

 宝塚を卒業した後もそんなことを思っていたんですよね。宝塚のときも、稽古と本番であっという間に365日、その繰り返しであっという間に15年間が過ぎて。卒業したときに、こんなに自分の好きなことだけに打ち込めることって、普通はないよなと思ったんです。

 芸事には終わりがなくて、常に探究心をもって課題に向き合っていくことの連続で。苦しいこともありますが、それでもやって行きたい。やっぱりこれが私の天職、使命なんだなと感じますし、このお仕事を始めてよかったなと思います。いくつになっても緊張するので、今回のライブも、ドキドキワクワク、ドキドキの方が先に来ますけれども(笑)。

――今後の展望などお聞かせいただけますか。

 舞台はもちろん続けていきますが、映画やドラマで表現する楽しさをもっともっと学んでいきたいですね。歌うこと、そして、声だけで表現する仕事もさらに経験していきたいです。人に何かを届けたいという気持ちが強いんだと思うんですね。それが自分の幸せとして返って来る感じというか。自分だけが幸せになるのではなく、循環していくことを幸せに感じているんだと思うんです。

 やりたいことは何なのか、改めて深く掘り下げていかなくてはいけない、そのためにも、自分の軸をちゃんともっていなくてはならないなと思って。20歳のころ、宝塚にいたころには想像できなかったような自分になっているなと、今改めて思いますね。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)
写真=山村隆彦
衣装=JOSEPH/アクセサリー=MARIA BLACK

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