米米CLUB、全国ツアーNHKホール公演の放送を前にカールスモーキー石井&リーダー・BONが見どころを語る

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2017年8月に3枚組のオールタイムベストアルバム「LAST BEST 〜豊作参舞〜」をリリース、同作を携えて約4年半ぶりとなる全国ツアーを9月から展開してきた米米CLUB。変わることのないしゃれっ気、高いパフォーマンス力で衰えることのない高い人気を保ち続けており、今回のツアーも追加公演が行なわれるほどの盛況ぶりとなった。そんな最新ツアーの追加公演の中から1月9日に東京・NHKホールで開催されたライブの模様を3月4日 22:00からWOWOWで独占放送するにあたり、カールスモーキー石井とBONにライブの演出や番組の見どころについて伺ってみた。

――NHKホールのライブでは、カールスモーキー石井さんが登場するや否や、ファンから「待ってました!」の掛け声がかかっていましたね?

カールスモーキー石井(以下、石井):事前に「声かけてくれよ」って頼んでたわけじゃありませんよ。ロックバンドのライブなのに、なんだか旅芸人みたいですよね(笑)。誰も僕がマドロス姿で出てくるなんて思ってもいなかっただろうね。

BON:あははは。声をかけてもらえるなんて嬉しいことです。

――マドロス姿で演出は柔軟な発想に驚かされましたが、着想はどのように?

石井:“あの頃の米米CLUB”を見せようというのが今回のコンセプトなんです。新曲は控えめにして、往年のヒット曲を満載にした。古いことをあえて見せるつもりで取り組んだんですが、自分たちが「古いこと」を改めてやることが実はすごく新しいことだったんですよ

BON:うん、そうだったね。

石井:マドロスの小芝居も基本的には流れやセリフも決まっています。だけど、僕がそれを素直にやらない(笑)。ああいう(コミカルな)ものってきっちり練習してその通りにやるほどつまらなくなるんですよ。ある程度の筋は守りつつ、その場のノリで対応する。同じ小話も噺家がその時々でアレンジする落語と同じようなものですね。毎回違うから面白いし、また見てみたいと思うんじゃないかな。『マドロス・ショータイム』も、アドリブでしくじった後に僕がどう乗り切るか、そこがライブならではの楽しさだったりする。もし毎回同じセリフで100%完璧なものを見たいなら、練習を重ねた劇団四季さんの舞台を観るべきですよ。

BON:実名は控えめにお願いします(笑)。

石井:(笑)。生だからこそ、何が起こるかわからないスリリングさがある。最初は自分でもどこまで消化して見せればいいか悩んだりもしましたが、あまり杓子定規にやるよりちょっとくらい間違えても、そこをどう切り返すかも含めて見せようと。 何度か足を運んでくださるお客さんは、「今、間違えたな」って分かるけど、僕がその場に応じて対処するのを見て『そうか、こう切り返してきたんだ』って楽しくなると思うんです。歌もそうですよね。フェイクも何もない音符通りの歌を毎回聴かせていたら『CDを聴けばいいや』ってことになってしまう。僕らはライブであることを大切にしています。
 

カールスモーキー石井

――メンバーにとっては、次に何が起こる予見できない緊張感が高いステージですね?

BON:かなりの唐突なところで入ってきたりしますし、タイミングは石井を見て常に細心の注意を払ってますね。

石井:人を飛道具みたいに言わないでよ(笑)。アドリブが利くってことは、強力な「キメ」ができてるってことなんです。それがあるから、アドリブを入れても成り立つ。音楽の流れの中で僕が入るべきところを読み間違えると成立せず、単なる「おバカなバンド」になってしまいます。見てる側も緊張感がなくなり、ダレたライブになってしまうでしょうね。

BON:今回はそれにしてもひどかった(笑)。本来なら一度舞台裏に下がってクールダウンしたり、次の準備をしているはずなところで急に飛び出してきたり。あるときなんて、僕らがカッコよく演奏しているところにすごい気持ち悪い笑顔を浮かべて出てきて、お客さんの視線がみんなそっちに釘付けになってました(笑)。あまりに自由なので、バンドメンバーは妙に試されている気分でしたね。

石井:あははは。でもさ、舞台袖で見ていて『あれ?クールダウンしすぎちゃってるな』って思うと、いてもたってもいられず。会場ごとにお客さんのノリは全然違いますから、その場所ごとに緩急はつけたいですね。

――正統な中に、異質なものや違和感を取り込むパランス感が素晴らしいなと。

石井:米米CLUBってバンドは、ライブ中に休んじゃいけない。そういう意味で、在り方としては本来のパンクに近いのかなと。昨今のパンクロックは、音楽的な形式とかファッションに始終してしまうことが多いと感じますが、もともとは反体制の精神だったり反骨の姿勢だったりします。米米CLUBでは、単にスタイルのパンクはありえない。常に何かに対して争ってなきゃいけないし、それを示し続けなきゃいけないんです。僕らが今争うものの1つに『疲労』があるんだけど(笑)。もちろん分かるよ、ベースを2時間半以上も首からぶら下げてたら、重たいし疲れる。でも、それがお客さんに見えてるなと感じたら、僕は容赦なく石を投げつけます。

BON:(笑)。きびしいね。

石井:僕は、米米CLUBにおいて全体を見るMCだと思ってるんですよ。メインキャラクターはあくまでジェームス小野田で、彼が登場するまでの前座のような役割なのかなと。メインの前にお客さんのテンションを下げちゃダメじゃないですか。そのために、BONと示し合わせてスパイスを効かせることもあるし、リーダーであるBONが演奏していて気づかない時なんかは、「3階のお客さん元気ですね!1日3回?」とか、どうしようもないジョークを言って盛り上げたりするわけです(笑)。
 

BON

――アイデアが豊富だからこそ「おせきはん」ツアーで実現が難しかったこともあるのでは?

石井:たとえばジェームス小野田はほとんど足元が見えないため、高い場所から登場して自力で降りるのも一苦労です。踏み外したら大怪我になりかねないし、それをショーとしてどう下せばカッコよく見せるか考えましたね。でも、それはこれまでの経験でなんとでもなる。最も頭を悩ませたのは、2部構成にしたライブの2部の一発目に何を魅せればお客さんがすんなりライブに戻れるかってことでした。

BON:15分の休憩を挟んで、お客さんは一息ついて落ち着いていましたからね。

石井:そう。僕らは熱いままだけど、それで「ジャーン!」と勢いよく出て行くとお客さんと乖離しすぎてしまう。2部はジェームス小野田が上段から出てくるところから始まるんですが、フルバンドで華々しく出て行かない方がいいなと思いました。それで、ボイスエフェクトをかけた声や打ち込みで徐々にテンションを上げていくようなテーマ曲『GETS THE OSEKIHAN』で始めたんです。それによってお客さんも僕らのペースについていけるのかなって…。(急に考え込んで)こんなことを言えるなんて、大人になったなぁ。

BON:本当にそう(笑)。大人になりましたね。

――近年では、かぶり物をしたりバンドメンバーにダンサーがいるのも不思議ではありませんが、その源流はここなのかなとハッとさせられました。

石井:人の目を向けさせる、注意を引くって簡単なことではないんです。そのために、勇気とポリシー…と言えるかどうかわかりませんが、そういう(信念)ものが必要です。ちょっと面白そうだからとか、話題になりそうだからというだけでかぶり物をして人前に出て行くのと、これをかぶってどんなことをすれば人は驚くだろう。ここまでやれば諦めるくらいの気持ちになるかなとか(笑)、考え抜いてやるのとは全然違うとおもいます。そのギリギリのラインがどこかは見極めたいですね。

――歌や踊り、コントなどを織り交ぜた唯一無二のライブを魅せる側としてのこだわりは?

石井:米米CLUBは、得体が知れちゃダメなんですよ。世の中ですごく面白いなと惹かれるものって、100%理解できるというより、「これ、本当かなぁ」みたいな疑いの余地があるものだと思うんですよね。今回のツアーも、会場に入った途端に紅白の垂れ幕がかかっていて、そこに「おせきはん』って書かれていたら、もうそれで「やられた〜」ってなる。なんでこんなものにお金かけちゃったんだろうって思うでしょう(笑)。それでいいんです。今を生きる大人たちは、苦しくても地道に頑張ってますよね。そんな人たちに、米米CLUBがものすごい真面目に歌って「明日も頑張ろう」って言うのは違うのかなと。僕らくらいは、馬鹿やろうよって言いながら一緒に笑い飛ばしたい。ありがたいことに、僕らは大口叩いてもあまり怒られない(笑)。だったら、大人たちが日常をしばし忘れられるくらいバカをやりたい。理屈とかじゃなく、「ここに居たい」って心から思える空間にできるかどうかが僕らの勝負って気がするよね。

BON:(何度もうなづきながら)うん、そうだよね。

石井:近年は、“お客様のためのライブ”ではなく、僕らが楽しめるライブになってきています。アリーナクラスのライブばかりをやっていた頃は、後方のお客さんまで楽しめる内容にすることに腐心しました。ですが、ホールクラスは僕らが楽しめるものを魅せれば、それがお客さんにもちゃんと伝わります。僕には後ろに立つメンバーが笑っているのは見えないけど、お客さんからはメンバーの笑顔が見えますよね。

BON:(石井が)しくじるとつい僕らは笑っちゃうんですよ(笑)。

石井:そんなふうに、笑顔がどんどん波紋になって広がっていくライブができていますね。

――では最後に、アイデア満載で唯一無二のライブを放送で楽しむ皆さんへメッセージをお願いします!

石井:音楽ライブだとかミュージカル、コント、舞台…などなど、型にはめて見るんじゃなく、「これは、米米CLUBという新しいジャンルなんだ」という気持ちで見ていただけたら。なんだかよく分からない珍しいものを見る気持ちで見てください(笑)。音楽ってこんな表現もある、あんな見せ方もあるって驚いていただけると思うんです。見た後は、「一体、あれなんだったんだろう」って嵐に巻き込まれた後みたいな気持ちになるんじゃない?

BON:そうだね(笑)。見終わった後、ポーッとしちゃうと思います。

石井:それ、いいね! 珍しいものを見て、是非ともポーッとしてください(笑)。

(橘川有子)
 

カールスモーキー石井&BON

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