途切れた音楽の、大事なノウハウを伝えなければいけない 〜「音学校」校長/音楽プロデューサー 牧村憲一氏 × ミューズ音楽院 手島将彦氏 対談インタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

  1. 少しずつ音楽が変わるように、教えることも変わっていかないといけない
  2. 音楽の話をしてきた部屋には目に見えない音楽が張り付いてる
  3. 知った上でやらない。それがいちばんいい

知った上でやらない。それがいちばんいい

——そして、10月からは音学校が動き出しますが、具体的にはどういったことをやっていくんでしょうか?

牧村:そうですね。コースは「音楽制作実践ゼミ」と「音楽制作基礎講座」という2つがあります。「音楽制作実践ゼミ」も「音楽制作講座」も期間は半年。まず「ゼミ」は最初の3ヶ月で「自分はどんな音楽を作るのか?」ということを受講生同士で発表し合ってもらう。僕とゴンドウさんがチームを組んで、作り方や作っていく音楽に対して、プロの目や耳からアドバイスをし、喧々諤々とやっていきますね。その先がポイントなんですけど、その3ヶ月で辿り着いた音楽を社会に出します。つまり、教室の中で終わらせないんですよ。教室で受講生と僕らが共学する音楽が社会に届く。それが「教室と音楽レーベルの二層構造」という音学校の在り方です。

——出来上がって終わりではなく、その先の反応も講義に取り込むんですね。

牧村:予定では「音楽制作実践ゼミ」の前半の3ヶ月で楽曲の意味を最初のリスナーである他の受講生や僕らに説明できるか、できないまでも楽曲自体が伝えるべきことを伝えられているかどうかということをやろうと思ってます。そこで素晴らしいとなった作品をその音楽性を得意としてるレーベルやディレクターにお預けする。そこからはガラス張りですね。

 例えば、「ディーラーへ持っていったときに評判がよかった」みたいな話が戻ってくることもあるだろうし、「海外レーベルへデモテープとして送ったらこういう返事が来た」とかね。受け手の反応をリアルに受講生に伝える。そういった反応をどんどん「実践ゼミ」と「基礎講座」の中に取り組んでいくんです。それこそ、「素晴らしいけど、もっとクオリティの高いモノにして欲しい」という反応があったとして、僕らと受講生が一致すれば、後半の3ヶ月はその作業に費やす。もっというと、特任講師のゴンドウトモヒコと僕とで受講生が作っている音楽を持って一緒にスタジオへ入ることもありえる。受講生と僕たちが共同プロデュースするんです。

 他にも、作ることもできるけどホントは演奏や歌唱は苦手、プロデューサーやレーベルを運営してみたいという人が「実践ゼミ」実学の中にいれば、後半の3ヶ月は教室の中で作られている自分が凄く好きな作品に張り付いてもらってもいい。僕自身がそういうプロデューサーですから。

——それはかなり実験的な試みですね。

牧村:そうすると、6ヶ月で無事にセルフ・プロデュースへの旅が始まる人もいるし、準備だけで終わる人もいるし、旅のパートナーが見つかる人もいる。少なくとも、受講生全員の旅の支度はしっかりと出来るように僕らはやるつもりです。

——では、「音楽制作基礎講座」ではどういったことを学んでいくんですか?

牧村:音楽に関わる知識の構築ですね。「実践ゼミ」でも制作の実務的な流れ等について学ぶんですが、音を作ることが中心ですから、全部を掘り下げる時間が足りないんです。その為、「基礎講座」では音楽をやっていく上で絶対に押さえなきゃいけない部分を学んでいくんですよ。そこがわかってないと、自分が損をしたり、ビジネスを仕掛けたりできませんから。こちらは、僕も入って教えもしますけど、おそらく2回に1回はその道の専門家を招いていきますね。

——講義予定が出ていますが、どういった方がゲストとして予定されているんですか?

牧村:現時点で予定してるのが、日本のこれまでの20年間のパンク、ハードロックを確立したハウリング・ブル小杉茂さんに来てもらって「アーティストのマネージメントは何が重要であるか?」ということを話してもらったり、今やティーンネイジャーの支持を最も受けているKEYTALKをプロデュースしてる古閑祐くんに自らが主催するインディーズレーベルKOGA RECORDSについて語ってもらったりと考えています。この古閑くんを招くというのは、ポール・マッカートニーの学校であるLIPA(Liverpool Institute of Art)をヒントにしたんですよね。チラッと聞いただけなんですけど、講座の中で今まさに売れてるグループのマネージャーをゲストに呼んで講義をしてるそうです。しかも、KEYTALKは僕にとってはダブルミーニングで、メンバー4人のうち2人が昭和音楽大学の教え子なんですよ(笑)。

——これもまた、不思議な縁ですね。

牧村:古閑くんは90年代の日本のサイケデリック/シューゲイザーの筆頭格だったVENUS PETERのベーシストでもあり、僕が小山田圭吾くんたちとTrattoria Recordsをやっていたときの所属アーティストなんです。だから、さっき話したことが全部そこで立証できるという。僕、古閑くん、KEYTALKという世代が繋がるんですよね。そういう20年も続く文脈でやっていきたいという「学校」になってる。

——しかも、実際に現場で起こっている話が聞けるわけですし、貴重な体験になると思いますよ。

牧村:どっかの本を抜き書きして構成したモノではなくて、今まさにビジネスの最前線に立ってる人に最前線の話をしてもらう。そこには非常にリアリティがあるじゃないですか。他にも、スケジュールの都合上、まだ調整中ですが、津田大介さんもいる。今から音楽で活きていくための講座をやってもらおうと思ってますね。

——大きく分けるとするならば、「音楽制作実践ゼミ」はミュージシャン向け、「音楽制作基礎講座」は制作スタッフ向けになるんでしょうか?

牧村:そうではなくて、「ゼミ」の受講者は「講座」に無償で参加できるようになってるんです。つまり、音楽を制作することだけじゃなくて、そのさらに周りにあるビジネスの仕組みが本当はどうなっているのか?ということもきちんと学んでもらいたいんです。

——ミュージシャンによっては、音楽以外のことを排除したいタイプもいますよね。

牧村憲一

牧村:これからのミュージシャンにもプロデューサーにも音楽ビジネスも最低限の教養として身につけて、あなたの作り出す音楽がどういう人の手に渡るのか、どういう仕組みで売れてくのかも分析して欲しい。だから、「音楽制作実践ゼミ」と「音楽制作基礎講座」の境はどんどん無くしていきます。どちらかを学べば済むということはない。長く愛される音楽を作るならば、その音楽を長く愛してもらえる方法を知らなければなりません。その二つが断絶しないための「音学校」なのです。

——音学校として何か心がけていることがあれば教えてください。

手島:学校という場所は特にそうなんですが「誰に褒められたいか」を結構勘違いするんですよ。先生に褒められるのも悪くないけど、その先をわかって欲しいし、誰に向けて音楽をつくっているのか、設定を間違えちゃいかないっていうところが大切だと思います。

 少子高齢化に伴って、僕の世代以上は人口的に圧倒的多数派なんです。逆に言うと若者は最初から少数派になってしまった。だから、僕ら以上の世代は、ただ存在するだけで若者に対して強い圧力を、昔よりもかけていますし、若者は、単に最初から少数派であるが故に、世の中的に声が小さく聴こえてしまうことを、自分の方が間違っているのかもしれないと、自信を持てなくなってしまうこともあります。たぶん、そういうことに昔よりも意識的にならないといけなくて、僕らは彼らに「どこへ向かっていきたいのか?」を優しく言ってあげないといけない。

 今の若者はほっといたら自然と保守的になりますよ、最初から少数派だから。そういう意味で、少数派になってしまった彼らに対して、教育の現場では意識をあげていくというか、自分の表現したいことをちゃんと明確にさせてあげたいなと思いますね。

牧村:好きな音楽を自由に話すっていうことは全然怖くないし、まずはそこからだということをポンっとおいてあげたい。もちろん、僕らの概念の押し付けは凄くよくないから、そうじゃなくて、選択肢はたくさんあるんだということを丁寧に教えるのが「音学校」です。

牧村憲一「音学校」

ページ: 1 2 3

関連タグ

オススメ