第一興商、20年4月〜21年3月期は187億円の赤字

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第一興商

第一興商は5月13日、2021年3月期の連結業績(2020年4月1日〜2021年3月31日)を発表した。

当連結会計年度のカラオケ業界は、緊急事態宣言とそれに伴う休業・時短要請等により、ナイト市場・カラオケボックス市場ともに多くの店舗が長期間の休業あるいは時短営業を余儀なくされるなど、コロナ禍の影響が長期化しており、厳しい経営環境が継続している。

このような状況のなか、同社グループにおいても、感染拡大防止と利用者および従業員の安全確保の観点から、4月にはカラオケ・飲食店舗事業において1か月以上にわたり全店舗を休業としたほか、一時的に営業部門や本社業務を縮小するなどの対応を行った。6月中旬以降は店舗も含め概ね通常通りの営業体制となり、秋口には回復基調も見られたものの、いわゆる第2波、第3波といった感染拡大に加え、1月には2度目の緊急事態宣言が発出されるなど、中核事業である業務用カラオケ事業及びカラオケ・飲食店舗事業のいずれにおいても、年度を通じて新型コロナウイルス感染拡大のマイナス影響が継続したことから、手元資金の流動性を確保し財務基盤強化を図るとともに、コスト削減等、収益の改善に努めた。

なお、コロナ禍における緊急事態宣言や各種要請を受け、こうした対応に起因する費用を「新型コロナウイルス関連損失」として、88億8,300万円を特別損失に計上したほか、店舗の固定資産及びのれん等の減損損失として126億600万円を特別損失、また、雇用調整助成金や時短協力金をはじめとする各種給付金を「助成金収入」として、37億8,100万円を特別利益に計上している。

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高は933億1,600万円(前年同期比36.2%減)、営業損失は26億9,300万円(前年同期は190億5,800万円の利益)、経常損失は11億9,400万円(前年同期は201億3,300万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は187億8,200万円(前年同期は125億5,500万円の利益)となった。

業務用カラオケの業績は、コロナ禍の影響により、2019年10月に発売した「LIVE DAM Ai(ライブダムアイ)」を含め商品出荷が軟調に推移したほか、顧客店舗の休業や減免対応による機器賃貸料収入及び情報提供料収入の一時的な減少、及び閉店や減室に伴う稼働台数減少などの影響により、売上高は前年同期比20.9%の減収となり、営業利益は前年同期比20.4%の減益となった。なお、減免施策に係る固定費18億8,700万円を「新型コロナウイルス関連損失」に振替え計上している。

カラオケ・飲食店舗の事業ではコストの削減と新たな収入の獲得に注力している。コスト削減に向けては、店舗家賃の減免交渉など固定費の低減に努めるとともに、コロナ収束後における各店舗の収益性を検討し、カラオケ43店舗、飲食25店舗の閉店を行った。一方で新たな収入の獲得に向け、学生・若年層をターゲットとした「メガビッグカラオケ」や、東京・丸の内エリア初の大型エンターテインメントスペースとなる「MARUNOUCHI BASE」など厳選のうえ、カラオケ16店舗、飲食8店舗を出店。また、カラオケルームをテレワークスペースとして活用できるテレワークプランの推進や、既存の飲食店舗のキッチンを活用したデリバリー専門業態として「壱の釜飯」ほか13業態を立ち上げるなど、新業態の開発及び新規顧客の開拓に努めている。以上の結果、売上高は前年同期比59.6%の減収となり、120億8,800万円の営業損失となった。なお、休業期間中の店舗の固定費69億3,500万円を「新型コロナウイルス関連損失」に振替え計上している。

音楽ソフト事業では、新型コロナウイルスの影響による新曲の発売延期などの影響を受けるなか、販売費等のコストコントロールに努めた結果、売上高は前年同期比14.4%の減収となったものの、営業費用が減少したことにより、営業利益は前年同期比45.3%の増益となった。

その他、外出自粛に伴う巣ごもり需要により、家庭用カラオケサービス「カラオケ@DAM」は好調に推移したものの、飲食店・カラオケ店への設置が多いBGM事業などにおいてはコロナ禍のマイナス影響を受けている。新規事業として「ザ・パーク」ブランドで推進しているコインパーキング事業は感染拡大時に外出機会減少による稼働の低下が見られたものの、駐車場の新規開設が好調に推移しており、当期末においては1,200施設、14,000車室を超える規模にまで拡大している。以上の結果、売上高は前年同期比2.3%の減収となり、営業利益は前年同期比64.2%の減益となった。

次期の業績は、売上高1,138億円、営業利益16億円、経常利益25億円を見込む。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益に計上する助成金収入の予測が難しいこと、2023年3月期以降にも新型コロナウイルス感染症の影響が残る場合、2022年3月期決算において店舗設備の減損が発生する懸念があることなどを考慮し、現時点で特別損益についての合理的な算定が行えないことから未定とした。

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