PassCode 撮影=ヨシモリユウナ
PassCode YOKOHAMA BUNTAI 2025 “DESTINEX” 2025.11.09(sun)横浜BUNTAI
11月9日(日)・神奈川・横浜BUNTAIで開催された『PassCode YOKOHAMA BUNTAI 2025 “DESTINEX”』。PassCodeがアリーナ会場のステージに立つのは2022年2月に行われた日本武道館公演以来、約3年9ヶ月ぶり。精力的に重ねてきたライブで育んだパフォーマンス力を発揮し、力強く前に進む姿も観客に印象づけたこの公演の模様をレポートする。
オープニングムービーがスクリーンで流れ、SEに合せてハッカー(PassCodeファンの呼称)が打ち鳴らした激しい手拍子。バンドの演奏が始まった後、PassCodeの4人、南 菜生、高嶋 楓、大上 陽奈子、有馬 えみりが、アリーナ席のエリアにT字型に食い込んでいる花道に飛び出してきた。「横浜BUNTAI、ぶち上がっていこうぜ!」――大きなフラッグを担いだ南が叫んで「DESTINEX」がスタート。歌いながら激しく踊る彼女たちを熱い歓声が包んだ。続いて「ONE STEP BEYOND」「Ray」「VIRIVIRI」も連発されたが、会場全体がものすごい熱気で覆われている。飛び交うレーザー光線、轟くバンドサウンド、4人の歌声とダンス、観客の盛り上がりが完全に一体となったオープニングであった。
南菜生 撮影=ヨシモリユウナ
「3年ぶりのアリーナ公演です。あの頃はコロナ禍で、みんなの歌声、歓声を聴けなくて、スタンディングでライブをすることもできなかったでしょ? あの時、みんなと約束したよね? 『いつかちゃんとPassCodeらしいアリーナをやります』と約束をして、3年かかったけど、やっとみんなとの約束を守ることができました。最高の日になるようにたくさん準備してきたので、思う存分楽しんで帰ってください」――南によるMCを経て、エネルギッシュなパフォーマンスがさらに届けられていった。ハッカーの大合唱、言葉にならない叫び、振り上げる拳が生み出す熱量、波動は本当にものすごい。「SKILLAWAKE」「Club Kid’s Never Die」「FLAVOR OF BLUE」「Future’s near by」「Voice」……様々な曲がPassCodeの歌とダンス、バンド演奏だけでなく、ハッカーの力でも輝いている。2022年の日本武道館公演では形にできなかったものが鮮やかに開花していた。
有馬えみり 撮影=ヨシモリユウナ
2026年3月4日にリリースされるシングルのタイトル曲「Liberator」が、1月から放送開始予定のテレビアニメ『「お前ごときが魔王に勝てると思うな」と勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい』のオープニングテーマとなる旨が発表されたMCタイム。「せっかくたくさんのみんなが集まってくれたから、やっちゃいますか? ハッカーたち、知らない曲でも盛り上がれるのを知っているんです」という南の言葉通りの風景を「Liberator」は作り上げていた。何本もの真っ赤な火柱が上がるステージから届けられる歌声、シャウト、爆音が起伏に富んだ展開を遂げながら響き、ハッカーは思い思いのスタイルでダンス。初披露の新曲が大歓声と共に祝福されていた。そして、『「お前ごときが魔王に勝てると思うな」と勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい』の映像がスクリーンで流れた後、ライブは後半に突入。有馬の激しいシャウトから幕開けた「MIRAGE WAKER」を皮切りに「GROUNDSWELL」「Freely」「Anything New」も届けられ、会場内の熱気はさらに上昇。猛烈なエネルギーの中心にいる4人の姿が、とても雄々しかった。
大上陽奈子 撮影=森好弘
片時も目を離せない場面の連続を経て再び迎えた小休止。メンバー各々が想いを語った。「先月、メジャーデビュー9周年を迎えたんですけど、活動はもう十数年。『好き』だけじゃ続けられないと思っています。こうして来てくれるみんなのおかげで成り立っているので、これからもどうかよろしくお願いします――という感謝を伝えられる1日にできたらなと思って今までライブをしていました」(高嶋)。「前回の武道館は私が入る前に決まっていたから、『実質初、有馬のアリーナ』みたいな(笑)。早いもんだね。さっきフード被ってシャウトした。何も見えんかったから、すぐに脱いだけど(笑)。これもアリーナでできたおかげです」(有馬)。「大上が入ってもう9年。9年、10年やると考えることも出てくるやん? 『いつまでやるの?』って訊かれたりして考えるけど、この景色を見たら、『いつまでもこの景色を見てたいな』ってなる。メンバー、良い人たちなんです(笑)。スタッフさんもずっと同じ人が支えてくれているのがありがたいなと思っています。そして何より、みんなのことがLOVEです」(大上)。「ソールドアウトさせたいと言っていたと思うんですけど、ちょっと空席があるんですね。これは完全に私たちの力不足で、すごく悔しい。でも、目標を掲げたり、言ったことを実現するのはPassCodeを続けていく意味になってたから、ここで約束をしてもいい? メンバーにもスタッフさんにも言ってないんやけど、またいつかアリーナでライブをします。その時は絶対にソールドアウトさせて満員のアリーナでみんなの声を聴きたい。その時もいてくださいね。いなくならないでね。私たちもステージに居続けるから」(南)――そして「アスタリスク」「MISS UNLIMITED」「Tonight」「rise in revolt」も披露され、ライブは終盤に差し掛かっていた。「いつも来てくれるみんなに、PassCodeを好きでいてくれるみんなに何かあげたいなと。苦しいとか、悲しいとか、いろいろあるけど、『PassCodeを観たら明日も頑張れそう』とか思ってもらえたらいいなと考えながらステージに立ってるけど、結局いつも勇気を貰ってるのはこっちの方です。本当にありがとうございます。みんながいなかったらこんなに続けてこられなかったよ。そんなみんなの歌を聴かせてほしい」――ハッカーに呼びかけた南。激しいコール、大合唱を巻き起こした「WILLSHINE」と「It’s you」は、本編を締めくくるのに最高にふさわしかった。
高嶋楓 撮影=森好弘
鳴り止まない手拍子応えたアンコールでは2曲が披露された。南、高嶋、大上、有馬が花道を巡りながら手を振り、リラックスしながら歌声を響かせた「Echoes」。そして、ラストを飾ったのは「Clouds Across The Moon」。飛び跳ねながら踊るハッカーの一体感がものすごい。ステージから見える景色をじっくりと受け止めた4人は、とても優しい表情を浮かべていた。「また一緒にたくさん歌を歌いましょう!」と南が呼びかけてエンディングを迎えると、大きな歓声が会場いっぱいに響き渡った。
バンドメンバーたちと一緒に記念撮影をした後、余韻を噛み締めていた彼女たち。「帰りたくないよお!」と名残り惜しそうにしていたのが微笑ましかった。「またアリーナでライブします。それまでもライブハウスでたくさんライブをしますので、これからもよろしくお願いします。PassCodeでした!」――メンバーを代表して南が挨拶。手を振ってステージを後にした4人を力強い拍手が見送った。そして終演を迎えた『PassCode YOKOHAMA BUNTAI 2025 “DESTINEX”』。ライブハウスでも圧倒的に輝くPassCodeだが、アリーナ会場もよく似合う。掲げた目標へと進んで行く彼女たちへの期待が高まるライブであった。
取材・文=田中大
PassCode 撮影=森好弘

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