フレディ・マーキュリー、ソロ作「MR. バッド・ガイ」豪華40周年記念特別盤LPで再発決定
クイーンの伝説的ヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーの絢爛壮麗なるデビュー・ソロ・アルバム「MR. バッド・ガイ」の発売40周年を記念し、豪華な最新LP盤の再発が決定した。
日本では12月19日に、180gの半透明グリーン重量盤LPによる豪華仕様での再発、さらにUNIVERSAL MUSIC STORE限定で、ピクチャー・ディスクLPも発売される。なお、日本のみ40周年記念スペシャル・エディションLPのアートワークを使用した初の紙ジャケット仕様のSHM-CDも同日発売が決定した。
1985年4月末にオリジナル盤がリリースされた「MR. バッド・ガイ」は、マーキュリーがその15年前に仲間と結成し、芸術的・商業的成功を築き上げてきたバンド、クイーンとは別に、独自で制作した初めてのアルバムである。本作では、バンドという枠組みから解放され、クイーンの持ち味であるアリーナ規模の変幻自在な音楽から一転し、彼の独創的なソングライティングと、ダンスやポップから影響を受けたサウンドが融合した楽曲群が展開している。
このアルバムについて、マーキュリーは当時、「アイデアが溢れんばかりに湧き上がっていて、探求したい音楽の分野が色々と沢山あったんだけれど、クイーンではそれをあまり実現できなかったんだ」と語っていた。
それまでのフレディとは大きく異なる側面が現れている「MR. バッド・ガイ」の萌芽は、その数年前に発表されたダンス志向の強いクイーンのアルバム「ホット・スペース」で既に認められていた。本作は、フレディが傾倒していたクラブ・シーンへのラヴレターであると同時に、今までにないほど自分自身を曝け出す機会ともなっている。
「MR. バッド・ガイ」は、クイーンが直近のアルバム数作を制作したミュンヘンの〈ミュージックランド・スタジオ〉で、数ヶ月にわたってレコーディングが実施された。共同プロデューサーを務めたのは、マーキュリーとラインホルト・マックである。マックは、1980年のヒット作「ザ・ゲーム」以降、クイーンと仕事をしてきた人物である。
フレディがソロ活動のきっかけを作ったのは、1984年のシングル「ラブ・キルズ」である。ディスコ音楽の巨匠ジョルジオ・モロダーがプロデュースしたこのダンス・トラックは、伝説的サイレント映画『メトロポリス』のレストア版サウンドトラックに収録された。この「ラブ・キルズ」の成功が、ソロ路線をさらに推し進めていく勇気をフレディに与えたとされる。
アルバム「MR. バッド・ガイ」では、全楽曲の作詞・作曲をマーキュリーが単独で担当した。クイーンのメンバーの参加を意図的に避け、ドラマーのカート・クレス、ベーシストのステファン・ヴィスネット、ギタリストのポール・ヴィンセント、クイーンのツアー・キーボード奏者のフレッド・マンデルら、精鋭ミュージシャン達が起用された。
「MR. バッド・ガイ」は、ミュンヘンという街の影響を部分的に受けながら形作られた。スタジオでの作業の他、マックやその家族と過ごした時間を除いて、フレディはこのドイツの都市のナイトライフを満喫した。バーやクラブでの体験で得た自由奔放な鼓動が、アクロバティックなヴォーカル・パフォーマンスとスキャット風の歌唱が光る「リヴィング・オン・マイ・オウン」や、多幸感に満ちた「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」、そしてファンキーな「レッツ・ターン・イット・オン」といった楽曲に反映されている。
本作収録曲の幾つかは、クイーンのアルバムに入っていたとしても違和感がなかったように聴こえるかもしれない。遠大な「メイド・イン・ヘヴン」は、マーキュリーの壮大なバラッド歌手としての側面を際立たせており、後にクイーン自身によって、1995年の追悼アルバム「メイド・イン・ヘヴン」にてリメイクされることとなる。また切望のこもった「生命の証」(フレディによれば、”孤独な二人の物語”)は、元々「ホット・スペース」のために書かれた曲であり、一時はマイケル・ジャクソンとのデュエットも検討されていた。
しかし、クイーンという母船から離れることにより、フレディは音楽面での実験的な試みを行うことが可能となった。ドラマチックなピアノのオープニングが印象的な「恋のかけ橋」では、遊び心のあるエネルギーが噴出している。「ラヴ・イズ・デンジャラス」は、レゲエ・ビートを土台に構築されている。一方、「男のパラダイス」でマーキュリーが披露しているオペラ調ヴォーカルは、数年後にモンセラート・カバリエとコラボした「バルセロナ」へと至る道筋を示唆している。
全曲の中で最も斬新なのは、アルバム同名曲の「Mr. バッド・ガイ」である。ここではミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団をバックに、マーキュリーが自身の悪行に対する評判を嬉々として楽しんでいる様子が表現されている。
「これまでのクイーンのアルバムを全作聴いてみても、本格的なオーケストラが参加している曲は1つもないんだ」と、後者について、マーキュリーは誇らしげに語っていた。「「僕が一番乗りでそいつをやってみよう」と思ったんだ。かなり斬新な試みだったよ。僕は彼らに、「これまでの人生で一度も演奏したことのない音符を全て弾いてください」とだけ言ったんだ。すると、彼らは、完全にはしゃぎまくっていてね。その結果がこれさ。実に仰々しくて、非常に尊大で、まさに僕らしい曲になった」
1985年4月にリリースされた「MR. バッド・ガイ」は、全英アルバム・チャート6位を記録した。同作からは、「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」「メイド・イン・ヘヴン」「リヴィング・オン・マイ・オウン」(1993年、フレディの没後2年を経てリミックス版が再リリースされ、全英1位を獲得)、そして「明日なき愛」の計4曲がシングル化された。
各シングルのため、それぞれの特徴を反映したプロモーション・ビデオが制作された。「メイド・イン・ヘヴン」では、イゴール・ストラヴィンスキーの「春の祭典」及びダンテの「神曲 – 地獄篇」の場面を再現するため、ロンドン北部の倉庫にロイヤル・オペラ・ハウスの舞台レプリカが設営され、撮影が行われた。また、「リヴィング・オン・マイ・オウン」のビデオは、フレディの39歳の誕生日パーティで撮影されたもので、ドラァグ・クイーンの宴がテーマとなっている。
今回、新たにリリースされる半透明グリーン盤LPには、長年にわたりクイーンのサウンド・チームの一翼を担ってきたジャスティン・シャーリー=スミスとジョシュア・J・マクレイによるアルバム・リミックスを収録する。同リミックスは、2019年のボックス・セット「ネヴァー・ボーリング – フレディ・マーキュリー・コレクション」に初収録された音源で、フレディが当初描いていた構想を忠実に再現しつつ、1980年代には存在しなかったテクノロジーとリソースの恩恵を受けたものとなっている。
「我々はオリジナルのマルチトラック・テープに立ち返って作業を行いました」と、シャーリー=スミスは語る。「これは素晴らしい楽曲の集合体であり、フレディのヴォーカル・パフォーマンスは全くもって桁外れです。我々の目的は、それを現代的なサウンドに作り変えるのではなく、より優れた技術とより多くの時間がもし当時あったなら、こんな風に仕上がっていただろうという音を再現することでした。もちろん、何であれ、フレディの作品に携わることは非常に光栄ですし、常に最大限の敬意を持って取り組んでいます」
発表から40年を経た今日もなお、「MR. バッド・ガイ」がフレディ・マーキュリーにとって重要なアルバムであることは間違いない。この作品で、彼は自身の創造性を存分に発揮し、新たなサウンドとスタイルを追求。エネルギーを充電し、活力を取り戻して、クイーンに復帰する礎となった。
「「MR. バッド・ガイ」に僕は心血を注いだし、実に自然なアルバムだと思っているよ」と、マーキュリーは語っていた。「とても感動的なバラードもあれば、悲しみや苦しみを扱っている曲もあるけれど、同時にまた、かなり軽薄だったり、ふざけているような曲もある。なぜなら、それが僕の本質だからだよ。このアルバムの楽曲には、僕の人生の状態だったり、様々な感情の抜粋だったり、僕の人生そのものの全体像が反映されていると思うんだ」
本アルバムを、我が愛猫ジェリーに ― そしてトム、オスカー、ティファニーに、また全宇宙の愛猫家達皆に捧ぐ ― 他の連中なんて知ったこっちゃないね。
フレディ・マーキュリー
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