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シンガーズハイ・内山ショートが語るバンドの成長と変化ーー『HeartBreak』におけるクリエイティブで見えたもの

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ロックバンド・シンガーズハイが、4thミニアルバム『HeartBreak』をリリースした。SPICEでの前回のインタビューからちょうど1年。全国で大型フェスへの出演が増え、東名阪ツアーやZepp公演は軒並みソールドアウト、KANA-BOONやキュウソネコカミ、ハンブレッダーズら先輩バンドとの対バンを果たし、ワンマンのライブチケットは入手困難と言われるまで動員数を伸ばした彼ら。持ち前の実力とスター性であっという間に人気バンドの仲間入りを果たしていった。今回は内山ショート(Vo.Gt)に、現在のバンドの状況やクリエイティブについて語ってもらった。地道に活動を積み上げてきたからこその成長や変化を、うかがい知ることができた。

1段ずつ階段を上ってきたからこそ感じられた、先輩バンドのすごさ

ーーこの1年でどんどん勢いが増しているといいますか、ノリに乗っている印象です。忙しい日々を過ごされていると思いますが、いかがですか?

内容だけを見るとすごく充実してるなと思います。最近は特に、僕が学生時代の時に聴いてた先輩たちと同じステージに立てる場面が多くて、シンプルに楽しくやらせてもらってます。でもライブに関して言うなら、自分たちの乗っかってる今の段階にちゃんと追いついていかなきゃいけないなと思っていて。ここ2年くらいは「パッション」をスローガンに掲げてやってきて、僕たちの気合いを感じてもらうのも大事だけど、勢いや気合い任せになってしまうのもさすがに限界があるかもしれないよねという想いもあったので、2025年は「しっかりどっしり構えて、メリハリをつけて演奏を魅せていくにはどうしたらいいんだろう」ということを考えていますね。

ーー実際、ライブの度にメンバー1人1人の存在感が増しているというか、パフォーマンスからまさにパッションを強く感じます。ご自身ではメリハリをつけられるようになってきた手応えはありますか?

ライブの演奏においてはパッションがめちゃめちゃ大事だと思うんですけど、熱量を見せる中でも芯の部分は冷静というか……ある程度の体温を保っていないと、自分たちの思う100%以上のものを引き出すのが意外と難しいのかもしれないなと思っていて。それも含めて表面上のパッションがスローガンだったんですけど、最近は良い感じに狙い通りというか、掲げていた通りにまとまってきている感じはありますね。

ーー着実にステップアップしているんですね。先輩たちとの対バンから得るものはありましたか?

四つ打ちのフェスシーンを生き抜いてきた先輩たちと一緒にやらせてもらったので、お客さんを巻き込む力、惹きつける力はやっぱりすごく強いなと。自分たちもフロアは結構熱い方だという自信はあったんですけど、同じステージで同じお客さんを相手にやるからこそ思い知らされたというか、肌で実感しましたね。あとはシンプルに昔から聴いて知っているので観てて楽しいし、当時とは違ってちゃんと素直に「こういうふうになりたかったよな」と心を動かされるようになりました。そういう変化を自分の中で感じられたのは、すごく良いことでしたね。

ーーそれは、若さゆえの尖っていたところから歳を重ねて素直になってきた、みたいなところですか?

どうなんでしょうね。自分たちも先輩と同じように、ちゃんと階段を1段1段踏んできたからこそたどり着いたというか。メディアさんに紹介していただく時って、「再生回数が何回回った」とか、やっぱりバンドが1番広がるキッカケになった曲が紹介されるんですよね。だけど、傍から見るとそうは見えないかもしれないけど、こっちなりにしっかり積み重ねているものや、抱えていた苦労がある。そういうところがようやく先輩たちのライブから感じ取れる気がして。だからこそ(先輩は)すごいなと思いました。とはいえ、自分たちは自分たちで、新しい別のルートやゴールを探していけたらまた面白いんじゃないかなとも思います。

ーー先輩たちの後を追うのではなく、自分たちの道を作って、自分たちらしく進んで上に上がっていくと。

そうですね。でもやっぱりずっと観てきた先輩たちだったから、結局自分の童心が出てきてしまうところはありますよ。ちょっとアホになってしまうというか。

ーーキッズに戻るというか?

自分はどちらかというとフェスには行かずに家に引きこもってたタイプだったので、キッズだった記憶もそんなにないんですけれど、それでも当時の自分よりも素直になれてる気がするし、今更青春を取り返してるような気がしなくもないです(笑)。

「自分と外に対して何を歌うか」がシンガーズハイの音楽の全て

ーー『HeartBreak』の楽曲を聴いていると、今おっしゃったような「心に秘めた情熱」が表れていると思いました。さらに今作は「離れていったもの、離れていった人」のことを歌った曲が多いということで、『HeartBreak』=「心の痛み」という意味合いのタイトルになっています。これまでもシンガーズハイには、思い出せない人や記憶の中で忘れゆく人への気持ちを歌った曲がたくさんあったと思いますが、今回はより物理的に離れてしまう人へ意識を向けたということでしょうか?

そういう身近な人に対して何かを歌いたいと思ったのは、ここ最近なんですよ。去年リリースしたミニアルバム『Serotonin』あたりから、「今だったら書ける気がするな」というので徐々に楽曲に表れ始めたなと思いますね。

ーー具体的な「誰か」を思い浮かべながら書いた曲が多い?

そうですね。古い同級生の友人だったり。または自分自身に対して言い聞かせるつもりで歌った曲もあります。

ーー「燁(あきら)」は<消えない火と><消えない人>をダブルミーニングにして情熱と人への想いの両方を歌い、「Youth」「サンバースト」は情熱を、「薄っぺらい愛を込めて」「Liquid」は離れていった人への気持ち、「延長戦」は先ほど言われた自分への言い聞かせを歌っているのかなと思いながら聴いていました。

僕の認識では少し違うような気もするんですけど、これは明確化するのが正しいのかどうなんだろうと思ってしまうところもあるので、難しいですね。

ーーなるほど。順番的には「サンバースト」が先にできたんですか?

そうです。「サンバースト」を書いたあたりから、これまで自分がごまかしごまかし歌っていたものを、ちゃんとアウトプットできるようになってきたといいますか。言葉で上手に説明できないと、周りから見えている世界と自分にとってのギャップや摩擦で「どうすればいいんだろう」ともどかしい思いをすることが未だに多いんです。だから「サンバースト」で<Everything’s gonna be alright.>=「すべてうまくいくよ」と歌ってはいるけど、これは本当にそう思ってるから言ってるわけでもなくて、どちらかというと「そう唱え続けることが大事だよね」という意味で、仏教の「南無阿弥陀仏」に近いような感覚で歌ってるなって、自分の中では思います。

ーー本当の自分はこうなのに、周りから見られる理想像に作り上げられてしまうような感じですか?

そういうのもありますし、あとそれは結局僕が勝手に思い込んでしまっているだけかもしれないので、勘ぐりすぎはよくないかもしれないなとも思いつつ。でもやっぱり結局、自分と外に対して何を歌うかが全てだと思っていて。自分は結構「普遍的なものを歌うのが好き」と言ってきて、今までは「自分と他者」みたいな言い方をしてたけど、「自分と外の全てのもの」という言い方が正しかったのかもしれないなと思いましたね。

ーー2番の歌詞には<祈り続けても意味ないって兄弟>など、周りから言われそうな言葉が出てきますね。

ハハハ(笑)。誰かに言われたというよりかは、自分の中でも仮想敵みたいなものがいるんですよね。「自分は正しい」と思って今の生き方をしているとは思うけど、自問自答の中でそれ自身を疑ってしまう、もう1人の自分もいたりするじゃないですか。人間には多面性があるし、「こう思っている自分がいれば、全く逆のことも正しいよねと思ってしまう自分もいるな」と思うので、その思考がこの辺りの歌詞に出ているのかもしれないな。(歌詞で)画数が多くなっているところは、大体僕の中で勝手に悩んでたりすることだったりします(笑)。

ーー自分のピュアな部分が外の醜い世界に飲み込まれないよう抵抗しているようにも感じられますが、世界を諦めていないというか、内山さんの歌詞には未来への希望がずっとありますよね。

そうですね。でももしかしたら逆かもしれなくて。醜く見えてることが世の中じゃなくて、自分じゃないのかという。僕には世の中が綺麗に見えてしまうことの方がむしろ多くて、対照的に「自分はどうなんだ」と見ているといいますか。たまに目にする「狂っているのは自分なのか、世の中なのか」という問いには正解がないし、僕も同じことを思ってしまうところもありつつ。

ーーなるほど。

だからもっとさらけ出せる勇気を持たなきゃいけないなとも思っているし、「周りや世界をちゃんと信じられるようになるにはどうしたらいいんだろう。そういう勘ぐりを持ってる限り、僕が幸せになれる世界は多分作れないんだろうな」と思ってしまうんです。

ーー「サンバースト」を書いて、何か見えたことや感じたことはありましたか?

僕の中で「サンバースト」は、『Serotonin』の「STRAIGHT FLUSH」とほとんど同じことを歌っているつもりなんです。でも「サンバースト」の方が自分の言葉で歌えるようになってるかもしれないですね。

ーー「STRAIGHT FLUSH」も「愛があるから怒りがある」という2面性を歌った楽曲ですね。それが自分の言葉でより歌えるようになったと。

そうですね。ここ最近、自分の中でコード進行やメロディーにおいて、キャッチーなのは変えずに、少し違うアプローチの仕方をし始めてるなと思うんです。例えばサビの頭でいきなり高いキャーという声を出さないみたいな話なんですけど、そうなった瞬間使える言葉も結構変わってきちゃうなと思えて。「STRAIGHT FLUSH」の時は、大阪に引っ越してきたばかりの人間が慣れない関西弁を使ってるみたいな感じだったなと思うんですけど(笑)。そこが自分の中で馴染んできたような気がする曲でもありますね。

4人で楽しみながらトライした楽曲制作

ーー「サンバースト」ができてから、他の楽曲たちを書いていかれたんですか?

正直、「サンバースト」で僕がやりたいなと思ってたことが結構しっかりできた実感があったので、あとはもう作る過程自体を楽しめるようになれたらいいなと思って。それで今回はいつも以上に、単純にスタジオで4人でやってるだけでも「楽しいな」と思えるような作り方をしていった曲が多いかもしれないですね。

ーーメンバーさんにお題をもらい、そこに応える形で書いていった曲もあるとうかがいました。

結局その作り方をしたのは、「薄っぺらい愛を込めて」と「燁」ぐらいになってしまったのかな。「燁」に関しては、本当にシンプルに「歌い出し始まりの曲ってそういえばあまりないよね」というところから作りました。今までは「楽器とロック」をメインに制作していたけど、ちゃんと歌謡として歌にフォーカスを当てて曲を作るやり方は、去年リリースした「紫」(『Serotonin』収録)という曲でちゃんとし始めた感じがありました。そういうアプローチをした上で歌い始めると、もっと僕たちの可能性が高まったり、聴いてくれる人たちの中でも引っかかりになるものが増えるんじゃないかなという意見もあって、やってみようかなと思いました。

シンガーズハイ「燁」Music Video

ーー「燁」が完成してどうでした?

なんだかんだ、楽器の弾き方とかは「燁」が1番従来の自分たちっぽいところが出てる気がしていて。レコーディングの仕方も他の曲に比べてシンプルめだった気がします。

ーー新しいことに挑戦しつつも、自分らしさが1番出たと。

はい。でも最近、AメロBメロあたりの歌詞がすごく自分の中でちゃんと書きたいことを書けてる気がするなと思うことが増えてきました。

ーー<世の中じゃ誰かを簡単に 変えられる魔法があるんだって>のところですか。

はい。

ーーいつも弾き語りでメロディーと歌詞を同時に作っていかれることも多いそうですが。

今回もそうだった気がしますね。この曲はあまり躓いた覚えがなくて、多分歌詞は1〜2日で仕上がった気がします。

ーーしかも言いたいことが書けたと。

結局僕らは楽曲でいろんなことを言ったり、いろんなアプローチの仕方をすると思うんですけど、例えば歌う内容が変化していくのも、いろんなテーマを歌うのもいいと思うんですけど、同じひとつのテーマを、いろんな言葉や表現を使って何個も作ることができる人の方が一貫性があってカッコ良いなって、先輩たちを見てても思ったりするので、最近は結構そういった傾向が強めに出てる気がしますね。だから歌う内容に関しては、だんだんとフォーカスが絞られてきちゃっているなと。

ーーテーマを絞ると言いたいことを言いやすくなったりしますか?

いや、どうなんでしょうね……結局いろんな言葉でひとつのことを歌えるようになるのは、多分1番それに向き合っているからこそだと思いますし。

ーーひとつのことを多角的に言葉で表現するために、何かインプットされますか?

インプットという感じで音楽は聴いてないんですけど、自然と時期によってハマる音楽も変わっていきます。僕って、1ヶ月にひとつのバンドをめちゃめちゃ聴きまくって、次の月には全く違うアーティストさんをずっと聴きまくるというような音楽の聴き方をしてしまうんですけど。

ーー「燁」を作っていた時は何を聴かれていましたか?

アニソンとかが多かったかもしれないな。歌いたいことを歌うのも大事だし、結局お客さんからしたらバンドを見る上では「カッコ良いかカッコ良くないか」が大事だと思うけど、やっぱりメロディーが1番大事だと思う。僕もそこを未だに大事にできてるなと1番思えるのが「燁」だったかもしれないですね。正直「燁」に関しては「サビはもう意味なんか伝わらなくていい!」と思って書いていたところがあって、ほんとにキャッチーに鬼振りにしてしまおうと思っていたので。

ーー美しい曲ですね。

ありがとうございます。意外とそれくらいのスタンスで、もっと無心にものを作っていってもいいのかもしれないですね。毎回自分の中で要らない品評会が始まってしまうので(笑)。そのせいでどうしても制作が遅くなってしまうところはあったんですけど。

ーー品評会をしつつも、楽しみつつできた感じですか?

そうですね。自分が1番やりたいサウンドだったと思いますし、楽しめました。

みんなで歌える曲を目指した「薄っぺらい愛を込めて」
初心に立ち戻った「Liquid」

ーー「薄っぺらい愛を込めて」も王道ポップスというか、歌始まりでメロディーもキャッチーです。

「薄っぺらい愛を込めて」は、それこそお題系のやつです。これは「早すぎないテンポで、大団円的にみんなで歌えるような曲があったらいいよね」という話も出ていたので「確かに」と思って。それで僕の中の縛りで、「どういうことを歌うにしても、明るいメロディーで作ろう」と決めてたんですけど、思ったより詞に力が入りすぎてしまって(笑)。

ーー歌詞を書いている時にですか?

そうですね。僕が「力んでしまっているな」と思う時は、結構綺麗事を言ってしまいがちだと思っていて。

ーーそれで「薄っぺらい」なんですか?

そうなんですよ(笑)。これは半分自傷的というか、「傍から見るとそういうふうに見えるかもしれないけど、愛ですよ」という感じで、結構ずっと自分の中のキャッチコピーとしてあった言葉だったんですけど。さっきの話で、先輩たちと一緒にやってる時に「素直に楽しんだり喜んだりできるようになった」と言ったんですけど、この先もずっとそうじゃないと思いますし、多分自分の言動もその時々によって大きく変わってくるんだろうなと。僕、日頃あまりお酒を飲まないんですけど、それでもやっぱり感極まった時とかは、シラフでもどうしても綺麗事を言わずにいられないというか、綺麗な言葉で喋りたくなってしまう時もあるなと。それは、日頃の僕はこっ恥ずかしくて避けてしまう表現の仕方ではあるんですけどね。

ーー今回は素直に書けたんですね。「薄っぺらい」の中には照れみたいなものもあったりするんでしょうか。

ああ、あるかもしれないですね(笑)。

ーーサビ終わりの間奏のギターリフの重なりも綺麗です。

ありがとうございます。「薄っぺらい愛を込めて」に関しては、鳴ってる楽器自体はギター、ベース、ドラムといつも通りなんですけど、トラック数がすごく多くて。これは、ほりたいが(Gt)くんがすごく頑張ってくれました。たいがくんとディレクションで手伝ってくれた方と僕のギタリスト3人で「どうしたらいいんだろう」と考えて。リフ自体はシンプルだけど、その中でどうギターを重ねていくか。特にたいがくんは同じフレーズをユニゾンさせて弾くのが大好きなので、結構そこで空気の揺れ感が出たりするのかなと思ってます。でもギターソロではしっかりと遊んでもらってる曲ですね。

ーー次の「Liquid」も音数が多いですが、DTMで作られたんですか?

「Liquid」でちゃんとマイクを通して録音したのはギターと歌ぐらいです。

ーー鍵盤は打ち込みですか?

そうです。

ーー「薄っぺらい愛を込めて」にも「Liquid」にも<ラララ>のコーラスが入っていて、リンクしますね。

ほんとだ。意識してたわけじゃなかったけど、ほんとにそうなってる。

ーーどちらも願いを唱える歌詞という繋がりも感じつつ。これはラッパーのNF Zesshoさんが配布していたトラックを使ったそうですね。

そうです、そうです。これはサンプリングを使ったキッカケが、1個1個の音をサウンドメイクするのは本来アーティストじゃなくてエンジニア側の仕事のはずで、そこを突き詰められない人間が「ああでもないこうでもない」と言って音を作るのもすごく楽しいんですけど、なかなか難しい。だから「楽しむ」という意味では、1回逆にそういうところでズルをしてみてもいいのかもしれないなと思ってそうしました。使ったトラックは、僕が1番疲れてる時に車の中で聴きたいアルバムの曲たちのサンプリングだったので、個人的には1番好きな音たちが鳴っています。

ーー確かに癒しの空気が流れていますね。少し悲しくて切なくて、優しいハイトーンボーカルが美しいです。

とはいえ慣れないことをしてるので、そういう意味では、拙さと言うと悪く聞こえるかもしれないけど、粗さが感じられる曲です。自分がバンドを始めた時や、自分がお客さんで他の駆け出しのバンドを観ている時、初期特有の慣れないながらも荒削りにやってる姿が良かったなと思うことがあるんですけど、「Liquid」に関しては僕が同じような状況に戻って、初心を思い出しながら作ったかもしれないです。わからないなりにやってみることに立ち返れてやれている感じもありつつ、だからこそちょっと恥ずかしい。でもそれをちゃんと見せることも等身大だなと思うので。サウンド自体も「いつだって立ち止まって、ちょっと後ろに戻ってみることをやってもいいだろうな」と思うようになりました。

胸を張って「今観て! カッコ良いでしょ!」と言えるツアーになる。
10月からは最大規模のZeppシリーズへ

ーー今作もバラエティ豊かな6曲が揃いましたが、シンガーズハイ的にはどんな立ち位置の作品になりましたか。

1番バンドらしい過程を歩めてるなと思います。自分の理想や引き出しをテーブルの上にいっぱい並べてみて、そこから実現可能なところだけ引っ張っていく。モノづくりにおいては、どんなものでもその過程があると思うんですけど、技術的にも体力的にも、結構無理をして遠くのものを取りに行くこともあると思うし。僕たちは脳筋バンドなので、例えば「歌えない、弾けない」となったら、「じゃあできるようにすればいいじゃない」というタイプなので(笑)。モノを作る過程で、ちゃんと自分たちがバンドとしても成長できているなと思うし、その過程があるから作れるグルーヴや、メンバーに対する信頼があると思います。メンバーたちを見た時に、そういう変化が見られるのがすごく楽しいですね。

ーーそしてまたひとつ、歩みのツアーを積み重ねられます。9月2日(火)の神奈川・CLUB CITTAを皮切りに全国8都市のライブハウスを回りつつ、10月からは全国5都市でZeppシリーズが始まります。バンド的には最大規模ですか?

そうです。なんか恥ずかしいですね。毎回最大規模になってしまってる(笑)。でもやっぱりすごく嬉しいです。毎回少しずつしっかりキャパを広げられているので。去年の『Serotoninリリースツアー ワンマン編』での規模感あたりから、またちょっと違う脳みその使い方をしながらライブをすることが増えたという実感があって。ステージとお客さんとの距離感も変わってくるので、5月の『サンバースト』東名阪ツアーの時は、物理的な距離までちゃんと音が届くようにするには、どうしていったらいいんだろうという視点で演出も考えました。そのあたりのアプローチに関しては先回りして、自分たちの成長スピードに自分たち自身の中身が追いついていけるようにしていきたいというのは、ずっと強く感じていたし、そこを1番大事にやってきたという自負がある。だから次のツアーは1番「今観て!」と言えるものになるんじゃないかな。久しぶりにシンガーズハイを観るお客さんがいたとしても、胸を張って「僕たち今こういうふうに変わっているんだけど、カッコ良くない?カッコ良いっしょ!」と言えるような気がします。

取材・文=久保田瑛理 撮影=桃子

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