撮影=Ryotaro Kawashima
『Newspeak presents “Your Songs”』2025.4.29(TUE)東京・渋谷Spotify O-nest
「いい曲ばかり作ったと思います!」
終盤、Rei(Vo)が言い放ったこの言葉は、決して自画自賛などではなかった。それは曲と曲の間も歓声が飛び交うスタンディングのフロアの熱狂ぶりを見れば一目瞭然。サポートギタリストも含むバンドメンバー達はもちろん、そこにいる誰もがReiとまったく同じことを思っていたに違いない。そこが重要だ。
Newspeakが4月29日(火祝)に渋谷Spotify O-nestで開催したセットリスト投票型ワンマンライブ『Newspeak presents “Your Songs”』。ライブで聴きたいNewspeakの曲を投票してもらい、その結果を基にセットリストを決めるライブを、なぜやろうと思ったのか。その理由を、Reiは「ファンのみんながどんな曲を聴きたいと思っているのか、1回、知っておきたかった。みんなが聴きたいからって、そういう曲をそのまま作るわけじゃないんだけど(笑)」と説明したのだが、「いい曲ばかり」という共通認識を、この日、ライブに足を運んだ観客と分かち合えたことは、本来の目的はさておき、今回のワンマンライブの大きな成果だったと言えるだろう。
そして、そんなライブの成果はもう1つ。それは観客と一つになりながら、ライブをアンセミックに盛り上げることができるライブバンドとしてのポテンシャルをこれでもかと見せつけたことだ。
「Let’s go, Steven!!」(Rei)
幻想的なリフレインと、そこにSteven(Dr)が加えたパワフルなコーラスとともに悠然と始まった1曲目の「White Lies」から一転、バンドの演奏はStevenによるドラムの連打とともに一気にテンポアップ。タフなロックナンバー「RaDiO sTaTic」から、ファンキーでワイルドな「Wide Bright Eyes」とたたみかけるように繋げ、早速、観客を跳ねさせると、「歌える人は歌ってください! もっと行けるでしょ!? Say!!」(Rei)とコール&レスポンススタイルのシンガロングに観客を巻き込み、序盤から観客に声を上げさせる。
「みんなめっちゃいい顔してる! 今日は長いから抑えようと思ってたけど、みんなのせいで、テンションが上がってます」と観客の盛り上がりにReiは大満足。しかし、「まだまだこんなもんじゃないだろう。もっともっと観客とともに盛り上がりたい」と考えていたことは、メジャーデビューを飾った「Leviathan」、Newspeakで初めて作った曲だという「Wall」を含め、9年に及ぼうとするNewspeakのキャリアを行き来しながら、アンセミックかつダンサブルな曲の数々を繋げていったセットリストからも明らかだった。
「今日はレアな曲から定番曲まで盛りだくさんで、Newspeak史上最長のライブになるから覚悟しておいてください! 過去の曲をたくさんやるからって、後ろ向きとか、懐かしんでいるとか、そういうイベントにするつもりはなくて……。ずっと聴いてくれていた人達も最近聴き始めた人達も全員ひっくるめて、次のステップに向かいたいと思って、こういう企画をやらせてもらいました。今日はNewspeakの未来を考えながら楽しんでください!」(Rei)
今日のライブに臨む意気込みを改めて言葉にしながら、Yohey(Ba)のグルービーなベースプレイも聴きどころだったファンカラティーナな8曲目の「Lake」へ。前述した「まだまだこんなもんじゃないだろう」というバンドの思いは、ひと際大きなシンガロングと観客全員がワイプしながら一つになる壮観な光景に結実。「「Lake」史上一番(シンガロングの)声がでかかった!」というReiの快哉からもその盛り上がりは伝わると思うが、「みなさん一緒に歌いませんか?」と歌ったReiに応えるように観客がオーオーオーと声を重ね、そこからReiの合図で演奏になだれこむライブアレンジのかっこよさたるや。この日のハイライトの1つとして挙げておきたい。
中盤では、Newspeakのバラードの魅力を見せつけるように「Jerusalem」と「Be Nothing」を披露。「次の曲はすべてを捨て去ってしまいたいという曲です。そんな人がいたらあなたの曲です」と「Be Nothing」に込めた思いを語ったReiは、今回、聴きたい曲の投票を募ったとき、「Newspeakの曲に救われた」というコメントが多かったことに言及すると、「そんな大層なことをやっているつもりはないんだけど、誰かを救う音楽を作れているんだったらめちゃくちゃうれしいし、バンドを始めたことを後悔することは絶対ないと思いました」と逆に救われたことに対する感謝を言葉にすることも忘れない。
その「Be Nothing」はピアノの弾き語りからバンドインして、慟哭するように鳴らしたエレクトリックギターをはじめ、メンバー全員で繰り広げた渾身の演奏が観客を圧倒した。それもまたこの日のハイライトの1つとして数えておきたい。
ところで、この日、Newspeakが演奏したのはファンの投票によるランキングの上位23曲。
そこに2019年3月に会場限定でリリースしたEP「Maybe You’re So Right, Gonna Get My Shotgun」の収録曲が入るところがNewspeakのファンのロイヤルティを物語っていると思う。同EPのタイトルナンバーから始まった後半戦は、シンセをバレアリックに鳴らしたファンクナンバー「Media」でフロアを揺らしていくと、観客が声を上げながら、踊る光景はさながらダンスフロアの様だ。
「Come on! Put your hands up! Put your hands up!!」と煽るStevenに観客はハンドクラップで応える。そこから一転、ファンファーレ風のイントロで繋げた「Weightless」は観客を煽ったり、シンガロングに巻き込んだりせずに、じわじわと熱を込めたミッドテンポの演奏に観客の気持ちを釘付けにする。自分達の演奏と観客の反応によほど手応えを感じたのだろう。
「(Newspeak史上最長のライブだから)長いと思ったけど、全然、余裕です。ですよね?(笑)」とReiの、その言葉からはライブバンドとしての自信がまた新たに芽生えたことが感じられた。そこに繋げたギターロックナンバー「Clockwise」はタイトなアンサンブルの中、Yoheyがベースプレイに加えた大胆なグリッサンドやReiがキーボードで閃かせたパッセージも聴きどころ。シャッフルのリズムが跳ねる「Let Down」は、Newspeakのポップセンスが光る隠れた人気曲だ。
そして、そこから「次の曲がトップ3!」とラストスパートを掛けるように「Hear It Out」「24/7 What For?」「July」の3曲をほぼノンストップで繋げ、まさにクライマックスという言葉がふさわしい熱狂を作り出す。その熱狂はハンドクラップやシンガロングを求め、「もっと大きな声で!」「一緒に歌いましょう!」と観客を巻き込みながら、バンドがこの日一番と言える渾身の演奏とともに曲が持つダンサブルでアンセミックなポテンシャルを最大限に引き出したパフォーマンスを繰り広げたからこそだ。そして、そのカタルシスを観客と分かち合えたところに、前述したこのライブのもう1つの成果があったのだと思う。
ディズニープラスで全世界配信されるアニメ『BULLET/BULLET』のエンディングテーマとして書き下ろした新曲「Glass Door」のリリースパーティーを、8月1日(金)に代官山SPACE ODDで開催することを発表して、観客に声を上げさせたが、この日のバンドの仕上がり具合からすると、きっと、いや、絶対に見逃せないライブになるに違いない。
アンコールでは「Bonfire」を含め、さらに3曲を披露した。お気に入りの曲であるにもかかわらず、ライブで滅多にやらないバラード「See You Again」を聴けてうれしかったというファンは多かったはずだ。歌いながら感情が爆発するReiのボーカルと、バラードとは思えないくらいダイナミックなバンドの演奏が再び観客を圧倒する。そして、その振り幅も明らかにNewspeakの魅力なのだが、そこから一転、Stevenがブルンジビートを鳴らしながら、Newspeakにとってターニングポイントの1つになったダンサブルなロックナンバー「State Of Mind」になだれこむと、逸る気持ちを躍動するビートに乗せ、ダメ押しするようにフロアを揺らしたのだった。
撮影=Ryotaro Kawashima
「Newspeakの帰る場所が目の前にあると思いました」というReiの言葉が印象に残っている。この日、それを確信できたことは、今後、Newspeakにとって大きなモチベーションになっていくはずだ。
取材・文=山口智男 撮影=Ryotaro Kawashima
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