logical emotion
まらしぃ(Piano)、drm(Bass)、タブクリア(Drums)による3ピースインストバンド的な何か、もしくはサークルのような何かというlogical emotion。東方Projectやボカロカバーなどの演奏してみた動画でニコニコ動画をはじめとした、SNSを中心にゆるいスタンスで活動を続けてきた。そんな彼らから2017年の東名阪ツアー以来となる、まさかの9年ぶりのワンマンライブ開催の報が飛び込んできた。らしいと言っては元も子もないが、久しぶりのワンマンへ臨む3人にその想いを訊いた。
──ワンマンライヴ『STAYING ALIVE』を、8月22日(金)に渋谷クラブクアトロ、9月5日(金)に名古屋クラブクアトロにて行なわれます。久々のライブになりますけど、どういった経緯で開催されることになったんでしょうか。
まらしぃ:ろじえもは、「バンド組もうぜ!」っていう感じで発足したというよりは、みんなで集まってセッションして遊んだ後に、一緒にラーメンを食べて帰るみたいな。そういうノリの延長で、ちょっとやってみますかみたいなところから始まったんです。お互いちょっとバタバタしたり、タイミングが合わなかったり、あとはコロナ禍もあったりして、ライブをするのは少し間が空いてはいたんですけど、定期的にインターネットの生配信で集まったりしていました。
──そうですよね。先日もやられていて。
まらしぃ:そういう場で「ライブやりたいですね」みたいな話題も出ていたんです。コメントにも「待ってる」と書いてくださっている方もいらっしゃって。だから、やりたいと思ってはいたんですけど、具体的に音頭を取る人がいなくて(笑)、永遠に棚上げになっていたんです。でも、今回「やりたいですね」っていう話を制作の方にご相談させてもらったタイミングがすごくよくて、クラブクアトロという歴史あるライブハウスでやらせてもらえることになって。だから、以前から水面下で動いていたというよりは、生放送みたいなライブ感のある感じの決定というか。結構ふわっとした感じで決まりました。
──リアルライブとしては、2023年の『まらフェス2023』振りぐらいになるんですかね。
まらしぃ:それ振りぐらいになりますね。ワンマンライブとなると何年振りになるんでしょうかね?
タブクリア:9年振りって言ってた気がする。
まらしぃ:9年……はははは(笑)。
drm:「やろうよ」って言っている回数はたぶん結構ちゃんとしてたんですよ。
タブクリア:そこはろじえもの良いところでもあり、良くないところでもあるんですけど。仕事をやっていて「なんで俺はこんなにやってるのにそっちはやんねぇだよ」っていうダメなスパイラルがあるじゃないですか。ろじえもは全員ストレスを溜めないスタンスでいるので、「なんでやんねぇんだよ」じゃなくて、「あ、やらないなら俺もやーめぴ」って全員やらなくなるので。
まらしぃ:ははははは(笑)。
タブクリア:それで毎回「やろうよ」って言いながらも立ち消えることが多かったんですけど、今回は本当にまらしぃの言う通り、タイミングがよくて。やっぱりろじえもでライブをするのは楽しいですし、いまだに「楽しみにしてる」と待ってくれている人もいるので、そういった人たちに会えるのも楽しみですね。やっぱりバンドはライブをやってなんぼっていうところはあるので、生でできるのはすごく楽しみです。
──「全員ストレスを溜めないスタンス」というお話もありましたが、そのゆるさがろじえもらしさというか。
タブクリア:気が付いたら14周年らしいんですけど、10周年のときに「10周年だからなんかしよう」ってすごく言ってた覚えがあるんです。でも、気づいたら4年経っていて。しかも15周年とかキリが良くないのも我々らしくていいかなっていう気もするし、こういうスタンスだったからここまで続いた気もしますね。バンドというか、サークルとか寄り合いみたいになってるんで。
──生配信以外の場面で音を合わせるというのはあまりしていなかったんですか?
タブクリア:まったくしてなかったです(笑)。
まらしぃ、drm:はははははは(笑)。
タブクリア:生配信のときも、配信する前にリハに入ったりもしていなかったし、やる内容も決めずにやるという感じなので。でも、我々としては「音楽をやるのは楽しい」というのを活動理念のひとつにしていて。後付けですけど(笑)。
──ははは(笑)。
タブクリア:ひとりで演奏するのも楽しいけど、やっぱり集まって音を出すのってすごく楽しいんですよね。そういった部分を伝えられたらなというところ込みで、生放送でまだやったことのない曲をやってみようって3人でイジったりしていく過程を見せるというのも、普通のアーティストはあんまりしないじゃないですか。パッケージングされたバシッ!としたものを出すことがメインなので。そうじゃない部分を見せていけるのは我々のゆるさゆえの楽しいところ、ということにしておきます(笑)。
──(笑)。drmさんは、ろじえもをやるにあたって、大事にしているというとちょっと言葉が違うかもしれないけど、気付いたらこれって自分たちらしいものなのかなと思うことってあったりします?
drm:なんでしょうね……さっき話にも出た、びっくりするぐらいのゆるさというか、距離感を取るのがみんなすごく上手なので、とても心地がいいものというか、そういうところかなぁとは思うんですけど。僕個人としては、末っ子みたいな扱いをしてもらっているというか、僕だけ本当に自由にさせてもらっているんですよ。ライブのときも、2人は座って楽器を弾いているなかで、何をやってもいいよみたいに言ってもらえていたり、音楽を作るときとかスタジオに入ったときも、2人がどんどん進んで行っちゃうから、僕は付いていくのが大変で。だから、気付いたらいつも勉強させてもらっているバンドっていう感じではありますね。
──気付きもあり、学びもあり。
drm:そうですね。だから(2人は)お父さんとお兄ちゃんみたいな感じになってます。年は僕が真ん中なんですけど。
──まらしぃさんはいかがでしょうか。気付いたらこれが自分たちらしいのかもと思うことというと。
まらしぃ:これは悪い意味ではなくいい意味でなんですけど、僕としては何か大きな理念を掲げたり、何か目標を持って活動しているわけでもなくて。年齢の話も出ましたけども、ろじえもを始めた当時、僕は20歳になるかならないかぐらいで、自分よりも年上でカッコよく楽器を弾いている2人と一緒に音を出せるのがただ楽しかっただけなんですよ。ちょっと年上のカッコよく楽器を弾いてる人への憧れってあるじゃないですか。
──ありますね。
まらしぃ:気が付いたら僕もいい年になってしまいましたけど、スタンスに関してはその当時と何も変わっていないんです。一緒にスタジオで遊んで、僕は当時免許持っていなかったので、「ちょっとラーメン食べたいんで、ラーメン屋さん行きませんか? あわよくば帰りに僕を家まで送っていただけませんか?」みたいな(笑)。そこから始まって、ありがたいことにライブをやらせていただいたり、アルバム2枚をメジャー流通でやらせていただいたり、あるいは即売会で自分たちが大好きな『東方Project』の楽曲をバンドアレンジさせてもらったり。そうやって音楽を楽しくやらせてもらってはいるんですけど、何かを目指すというよりは、僕としては2人と一緒にやれるのがただ楽しいから続いていると思っていて。僕にとってのろじえもはそういうところだと思うので、20年経とうが30年経とうが、これからも同じスタンスで僕はやりたいですね。
──言ってみればライフワークみたいな?
まらしぃ:そういう感じというよりは、家が近い年上のお兄さんたちとたまに遊んでいる感覚というか。
drm:イメージだと、ゲーセンに行ったらいる人。
まらしぃ:ああ! すごい近いです!
drm:なんとなく行ったらいて、「これで遊ぼうよ」ってみんなで楽しく遊べる人たちっていう感じ。
まらしぃ:かといって、そこから踏み込んでべったりになるわけでもなく、すごくいい距離感でワイワイ遊んでいたら、それを楽しみに聴いてくれる人たちがいて……みたいな感覚ですね。
──ゲーセンに行ったらいる人の距離感、確かに心地いいですね(笑)。
drm:下手すると本名も職業も年齢も分かんないですからね。
──だけど会って遊んだら楽しいという。タブクリアさんとしても、この3人の距離感ってそんな感じだったりします?
タブクリア:そうですね。非常に腑に落ちる表現のひとつだと思います。今年の初めに生放送をやったんですけど、それがまた久し振りで、半年以上経ってたのかな。自分も仕事が忙しくてあまりドラムに触れていなかったりもしたんですけど、例によってリハなしでぶっつけ本番だったので、久し振りだから揃うかなとか、結構引き出し減ってるだろうなとか、いろいろ不安はあったんです。でも、キメをするときのタイム感って、合わない人とやるといまいちしっくりこなかったりするんですけど、すごい久し振りなのにスパッと縦が揃った瞬間があったんですよね。やっぱり付き合い長いとこういうところが楽しいしラクだなって(笑)。それこそゲーセンに行って、何をやっている人か分からないけど、対戦したらこの人はここで絶対小キック出してくるというのが分かっていると対戦しやすいんですよね。「ほら、やっぱり!」っていうのがあると楽しいと思うので。
logical emotion
──drmさんはろじえもで音を合わせているときにどんなことを感じます?
drm:年を重ねていくうちに、こうしたらどう返ってくるかとか、そういうものもどんどん増えていったんですけど、それこそ久し振りにやるとプレイの内容が変わってたりするんですよね。特にまらしぃからよく感じるんですけど、そのときの個人の流行りみたいなのってあるじゃん。
まらしぃ:ありますね、マイブームが(笑)。
drm:そうそう。こういう弾き方、流行ってんだなぁみたいな。そこは毎日やっていないからこそ、お互いのそういうところに気付けるのかもしれないけど、それがどんどん混ざっていく過程が楽しくて。それこそ(タブクリア)店長さんもドラム叩いていて、「あ、今日疲れてるな」とか。
タブクリア:ははははは(笑)。
drm:なんか叩いてる感じが前と違うから、ちょっと考え方が変わったのかなとか。パッケージングされている音楽はポップミュージックだとは思うんです。ジャズとかフュージョンではないはずなので。そんな音楽をやっているにも関わらず、そういうアドリブ的なところをすごく感じられるし、ライブでも毎回決まっていないことが突如起きるんですよ。キメのときに、俺入ろうかなって思ったら、まらしぃが「溜めますよ」っていう顔をしてきて、ウソ!みたいな。そうやって常にお互いがお互いをびっくりさせようとしているというか。いつもいたずらし合ってる、いいバンドではありますね。
タブクリア:d(drm)さんもまらしぃも音の解像度がすごく高いから、一般の人が聴いてバレないことも、2人にはバレたりするんですよね。今ちょっとスネア溜まったなと思うと、そのもたったスネアに合わせてこようとするから、うわ! 合わせてきた!って(笑)。で、それをちょっと戻すかってやると、戻しやがったなみたいな。そういう演奏でのコミュニケーションと空気読みができるっていうのは、やっぱり人と合わせるときの楽しみのひとつとしてあって。
──そうですね。
タブクリア:コロナのこともあって、最近YouTubeを観ていると、『ぼっち・ざ・ろっく!』のぼっちちゃんみたいな人がすごく多いんですよ。個人技はめちゃくちゃ上手いのに、人と合わせるとなんかイマイチだなっていうプレイヤーさんが結構いて。僕としては、そういう人たちに、人と合わせるとすごい楽しいよっていうのを伝えられたらいいなっていう気持ちもあって。押し引きとか読み合いとか、それこそ格ゲーじゃないですけど、飛び込んで大技が来ると思ったら小キックだったみたいなやり取りを読み合える楽しさ。それがこのバンドは結構多いし、レコーディングもどうやってやったのか全員覚えてないんで(笑)、一生再現できないんですけど、それを楽しめる土壌があるのはすごくいいことだなと思うので。そこはあくまで最低限の演奏が担保された上での話ではあるんですけど、そういう楽しさはろじえもをやっているとありますね。
まらしぃ:もちろん“楽しい”に焦点を当ててやらせてもらってはいますけど、せっかくこういう風にライブをやらせていただけるので、真面目にっていう言い方がどうなのか分からないですけど(笑)。でも、それに向けて3人で集まって準備したりとか、久しぶりにグッズを作ってみるのはどうだろうかとか、そういう話をしていると、3人が今同じ方向を向けているなっていう感じがあるのが、僕はすごく嬉しくて。何年か先の理念を掲げてやっているわけじゃなくて、その場で面白そうだなと思ったものを一個一個全力でやらせてもらうというのは、まらしぃとしての活動も同じではあるんです。ろじえもとしても、いろんな幸運が巡り合ってライブをやらせてもらえるのだったら、それを全力で楽しみたいと思いながら向き合えているのが僕は嬉しいなと思うし、これが次にどう膨らんでいくのかはまったくわからないですけど、何か楽しい展開があるかもしれないし。そういったところも含めて僕はすごいワクワクしてます。
──ちなみに、新しい曲を作ろうという話も出ていたりするんですか?
タブクリア:できたら素敵だと俺は思ってますけど、どうでしょうね?
ろじえもスタッフ:僕、言いましたよ。今回のツアータイトルが『STAY ALIVE』なので、d(drm)さんにそのタイトルで曲を作りましょうっていう話をしたんですけど。
drm:ありましたねぇ。僕、曲を作るのがすごく遅いんですよ。できるまでにやっている内容はたいしたことないはずなんですけど、1個のヒントが出てくるまでにものすごく時間がかかるので。締切も決まっていたから、この期間で俺はこれができるのか……!って日和ってしまった挙句、まだできてないです。
──頑張ってください……! ここからライブに向けていろいろと調整していくと思うんですが、現時点で解禁しても大丈夫なことってあったりします?
drm:ライブします!
タブクリア:はははは(笑)。僕らまだやってましたっていう。
drm:まだ生きてます。
タブクリア:疑われてますからね。グッズとかは僕が一応やっているんですけど、今回のライブビジュアルも作ったはいいものの、写真素材は9年前のものなんですよ。深刻な素材不足からむりくりひねり出した感じなので(笑)。
──今回のライブでまた新たな素材ができて、それがまた次に繋がったらいいですね。
タブクリア:それができたら素敵ですね。9年って小学1年生が高校生になる時間なので、「logical emotion、なにそれ知らない」っていう人も結構いると思いますし、「待ってました!」の人も「はじめまして」の人も、どちらも楽しめるものにできたらいいなとは思ってます。あと、これは俺の影の野望なんですけど、ライブを観てもらって「バンド楽しそう。俺もバンドしたい」って、バンド人口を増やしたいっていうのがあるんですよ。だから、もし問題なければ、客席で「俺も弾けます!」って言ってる人がいたら、「ちょっとおいで、一緒にやろうよ」ってステージに上がってもらうぐらいのライブが本当はしたいぐらいなので。バンドやりたいなって思ってもらえるようなライブをしたいですね。
drm:「俺も始めてみたい」っていうところで言うと、ベースとかをしている人がいたら、9年も経っていたらまぁまぁ上手になっていると思うんですよ。そこで「まだまだですね」って言えるようなね。
タブクリア:ははははは(笑)。
──「君はまだそこなんだね?」みたいな。
drm:そうです。「俺はもっと先を歩いているよ?」って言いたい。「来いよ」って。そう言えるような努力を自分がしているのかは別ですけど。
──ははははは(笑)。
drm:ライブはいつもその場で思いついたことをやって、それが成立するようにみんなが支えてくれてっていうのは大前提なんですけど、いつも店長さんを笑わせに行こうとするゾーンがライブに1回はあるんですよ。いかにしてドラム叩けなくなるぐらい笑わせたろかなみたいな。でも、いまだに演奏が破綻したことないんです。まらしぃにそれをやっちゃうと本当に破綻するんですけど。
まらしぃ:はははははは(笑)。
drm:なかなか笑ってくれないんですよね。慣れてきちゃったのか、俺がトラブったときしか笑ってくれない。
まらしぃ・タブクリア:ははははは!(笑)
drm:その壁を乗り越えられるかなっていうところですね。
まらしぃ:僕はずっと変わらず、とにかく2人と一緒にやるのが楽しみなので。昔と比べて変わったのは、お酒が好きになって飲めるようになったので、ライブが終わった後に飲んだ一杯が最高に美味しくなるような、そんな時間にしたいなと思います。いいライブの定義みたいなものでいうと、僕は最後の曲を弾き終わったときに、もうちょっと弾きたかったなって思うときは結構いいライブだったなと思うので、そういうライブにできたらいいなと思います。そういうふうに思えたら、おそらく観てくださっている方も、「もう少し観たかったな」とか「いい時間だったな」と思ってもらえるのに繋がってくるんじゃないかなというのは、普段ひとりでやっているときも思っているので。なので、僕は誰かに何かをというよりは、自分が一番楽しい時間にしたいですね。
タブクリア:そういうのは大事だと思う。やっぱり熱が入っている風のライブをしても、こいつら演技してるなってみんな分かると思うんですよ。「なんか楽しいぶってるな」とか「気合い入ってるぶってるな」とか、「ぶってる」ところが見えちゃうとやっぱり冷めるので。まずは自分らが楽しむことが大前提だと思うので、そこは大事にしたいですね。
取材・文=山口哲生
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