YOUはどうしてフジロックへ? アジア最大級の音楽野外フェスティバル『FUJI ROCK FESTIVAL』が海外音楽ファンに支持される理由、海外音楽ファンの目に映る『フジロック』の魅力とは

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『FUJI ROCK FESTIVAL'23』撮影=SPICE編集部

『FUJI ROCK FESTIVAL’23』撮影=SPICE編集部

2023年7月28・29・30日に新潟県湯沢町苗場スキー場にて開催され、大盛況だった『FUJI ROCK FESTIVAL’23』(以下、フジロック)。開催中止となった2020年、規模縮小を余儀なくされた2021年、“いつもの『フジロック』”を目指した2022年を経て、深夜を盛り上げるエリアやステージが復活し、総勢212組のアーティストの音楽で彩られた2023年は前夜祭からの4日間で延べ11万4,000人が来場。13万人を動員したコロナ前の2019年にほぼ近づく結果となり、4年かけて完全復活を遂げました。

FOO FIGHTERS 撮影=大橋祐希

FOO FIGHTERS 撮影=大橋祐希

LIZZO 撮影=大橋祐希

LIZZO 撮影=大橋祐希

THE STROKES 撮影=大橋祐希

THE STROKES 撮影=大橋祐希

完全復活と言われる主な理由として挙げられるのは、フー・ファイターズ(FOO FIGHTERS)、リゾ(LIZZO)、ザ・ストロークス(THE STROKES)のヘッドライナーをはじめとする海外アーティストのラインナップと来場者数の2つ。特に海外からの来場者の姿が多く、日本にいながら異国情緒を感じられる景色も多々ありました。主催者によると来場者のうち10%以上がインバウンド、さらにその数は2019年と比較して100%戻ったそうです。

そこでSPICEでは、海外からの『フジロック』来場者を中心に現地インタビュー取材を実施。アジア最大級の音楽野外フェスティバルと称される『フジロック』は、彼らの目にどのように映り、どんな魅力を感じているのかについて迫りました。

■ところ天国にいたJamesさん from United Kingdom

初めて『フジロック』に参加したというイングランド出身のジェイムスさん(38歳)。来場した理由を尋ねると「子どもが生まれる前はよく行っていたけど、子どもと一緒に音楽フェスに戻ってきたんだ」とのことで、今回は妻と、7歳と10歳の娘二人と参加。お目当てのアーティストは「ALANIS MORISSETTE、CAROLINE POLACHEK、JATAYU。あと、SLOWDIVEとFOO FIGHTERS。一番見たいのは、FOO FIGHTERS! 明日はWEEZER。タノシミ〜」とコメント。

『フジロック』の魅力については「KIDS LANDいいよね。キッズを夢中にさせておける(笑)。あと森のあるAVALON。FIELD OF HEAVENも雰囲気がすごくいいよね。それと、川。のんびりできるし、暑さから解放してくれる。キッズたちは今、川で遊んでるよ」とコメント。『フジロック』までの道のりについては「群馬・渋川に滞在していて、関越自動車道を使って2時間かけて車で来たけど困ったことは何もないよ。カンタンデス!」『フジロック』にまた来たいですか?という問いには「子どもたちが好きと言えば来たい。マタクルヨ〜!」と明るく答えてくれました。

■ところ天国にいたMichelleさん from Australia

オーストラリアから女友達と二人でやって来たミッシェルさん(37歳)。「『フジロック』をメインに、2週間のバケーションで来ました。他の都市も観光する予定です」とのこと。『フジロック』に来た理由を尋ねると「FOO FIGHTERSよ。私たちは彼らの大ファンなので、『フジロック』にFOO FIGHTERSが出演すると発表された瞬間に『Let’s go to Japan!』ってことになったの。いよいよ今夜彼らのステージを観られると思うと大興奮よ!」と笑顔で語る彼女のTシャツには亡きテイラー・ホーキンスの名前が。

会場までの道のりは「新幹線を使ったりするのは初来日の私たちにとって複雑そうに思えたので、羽田空港から東京へ出て、オフィシャルツアーのシャトルバスを使いました。結果、大正解!」と満足そう。地元オーストラリアでは『Beyond The Valley』『Pitch Festival』『Golden Plains』『Dragon Dreaming Festival』など多くのフェスに参加している彼女は、『フジロック』について次のように語りました。「とても美しいフェス。『フジロック』の情報はオーストラリアにいてもたくさん聞こえてきていたし、ここに来ることをずっと夢見ていたの。初めての日本で、こんなに素晴らしいフェスで素敵な時間を過ごせて最高よ! 今回初めての参加だから、このフェスの良さをこれからもっと見つけていくわ」

■FIELD OF HEAVENにいたFynnさん from New Zealand

ナイスなTシャツを着ていたオークランド出身のフェンさん(32歳)は、夫婦で初参加。たくさんの友人たちとは『フジロック』で合流したそう。来場した感想を尋ねると「デカい。巨大なフェスです。オーディエンスはみんないい人で、思いやりを感じるし、参加者同士がお互いのことを考えて行動している。こうした大型フェスで人々が大勢集まる時に、それはとても重要なこと。『みんなで楽しもう!』というのが大切だし、私も同じ気持ちです」

日本では『Rainbow Disco Club』と『MURO FESTIVAL』に参加経験があるという彼が今回『フジロック』に参加した一番の理由は、同じニュージーランド出身のアーティスト「BENEE」。そのほか「FOO FIGHTERSもとても良かった。今日楽しみにしているのはWEEZER。BLACK MIDIも去年の公演を観て良かったから楽しみ。前夜祭はマジシャンがジャグリングやチェーンソーを使ってパフォーマンスしていたのがクールだった。今日の昼にPYRAMID GARDENで観た綱渡りなどのアクロバットをやっていたクロワッサンサーカスも楽しんだよ」とのこと。

キャンプについては「『フジロック』のキャンプサイトは丘の上だからちょっとタフ。日本人の習慣に“early bird”(早起きの人、定刻より前に来る人)があるけど、早く来た人がいい場所を取れて、遅く来たら急斜面しか残っていないのはキツい。私たちが来た時はもう丘の上しかスペースが残っていなかったから」といった文化的な違いの指摘もありました。

■ORANGE CAFEへ続く道にいたAlisaさん&Juliaさん from Japan/United States

大学時代からの友人であるアリサさん(27歳)とジュリアさん(21歳)は、中国から来ている友だちと参加。アリサさんは2013年に初『フジロック』に来て以来、2017年の参加を含めて3回目。初参加のジュリアさんは「今日は私にとっての初めての『フジロック』であり、初めての音楽フェスティバルなんです!」と気合い十分。予想よりも規模が大きくてビックリしたそう。

そんなジュリアさんは、「LAWSONでチケットを買ったのですが、発券するのを忘れて新幹線に乗ってしまって。でも越後湯沢駅の周りにはLAWSONがなく最寄りの店舗が次の駅付近だったので、そこまで電車で行って発券したのはいいんですけど帰りの電車がなかったので、越後湯沢駅まで40分ぐらい歩いて戻りました。完全に私のミス(笑)。でも景色がとっても綺麗だったからいい散歩になりました!」驚きのエピソードを披露してくれました。

お目当てのアーティストについて尋ねると、「100 gecsがめちゃくちゃ楽しみです! それと私たち二人ともWEEZERを楽しみにしています」とのこと。「ALANIS MORISSETTE。彼女、最高だった〜」と語るアリサさんに他のフェスについて尋ねると「行かないですね。興味があるのは『フジロック』だけ。好きなアーティストが一番来るのが『フジロック』なので、『フジロック』が好きかな。『サマソニ』もたまに行きたいと思うんですけど、『フジロック』って木とか自然がめっちゃあって、それが好きなので」と話してくれました。

■ORANGE CAFEにいたAshleyさん&Nicoさん&KENJIさん from Peru/Italy/Japan

全員『フジロック』初参加のアシュリさん(28歳)とニコさん(27歳)とケンジさん(25歳)。今回お目当てのアーティストを尋ねると「LIZZO〜!」と大合唱。「人生初です」と目を輝かせるアシュリさんは、そのほかにも「never young beach、初めて観ました。3曲しか知らないですけど、フロントマンがめちゃくちゃカリスマがあって、すごい楽しいと思いました。夜はREDできゃりーぱみゅぱみゅ観ます。私たち外国人ですから、どちらかといえば洋楽のアーティストの方が知っているのでLIZZOもですけど、日本人のアーティストも楽しみです」とのこと。ケンジさんは「いろんなステージ回って、こういうアーティストがいるんだなって観ながら楽しんでます。あと、GINGER ROOT観ます。明日仕事ですけど(笑)」と夜まで楽しむことを宣言。

ニコさんは『フジロック』の印象を「いろんな人がいる」とコメント。ケンジさんは「音楽もあるけどキャンプもアートもあるし、歩き回るところもいっぱいあるのが他のフェスとの違うところ」と語り、アシュリさんは「大自然。それにオブジェとかも魅力的だし、ワークショップが多くありますよね」と分析。

そのほか「土曜の夜に新幹線で来た私たちはシャトルバスにも並ばずにスムーズでしたが、土曜午後に来た友だちは越後湯沢駅でシャトルバスに乗るのに結構待たされて強烈だったみたいです」という話も。また、「彼(ニコさん)は耳が不自由なので…アメリカとかのフェスだと最近は手話通訳があるので誰でも行けるっていうのがあるんですけど、『フジロック』でもそこら辺を充実してもらうとより多くの人が楽しめるんじゃないかと思います」と話してくれました。

■森の中にいたClareさん from United Kingdom

アメリカ、フランス、イギリス、東京から来た友だちと参加していたのはイングランド出身のクレアさん(40歳)。『フジロック』には6回目の参加で、「『Glastonbury Festival』や他のイギリスのフェスには行ったことあるけど、『フジロック』には山があって、森があって、毎回毎日がビューティフル。なんて素敵なのってところが好き!」と大絶賛。目当てはIDLESで「彼らが一番! 最高だった!」と語るも、「今朝のFIELD OF HEAVENでのOKI DUB AINU BANDがめちゃくちゃ良かったの。何が起きるかわからない新たな出逢いというサプライズと、音楽は美しく、フィールドは愛で満たされていて、みんなが本当に楽しんでいた。『フジロック』の持つすべての魅力があのショーには込められていたわ。今日初めて知ったバンドだけどTシャツ買っちゃったもの!」と大興奮。

『フジロック』までの道のりを尋ねると、「私、ここまで自転車で来たの。青森から」と耳を疑う返答が! 普段は都内のインターナショナルスクールで教師をしているクレアさんですが、休日には日本中を自転車で旅しているそうで、「今回は青森から三陸海岸を通って仙台へ、そこから秋田へ行ってから苗場まで2週間の旅。山道でシャトルバスのみんなが手を振ってくれて楽しかった〜!」とタフ過ぎる話を聞かせてくれました。「毎回来るたびにその年がベストイヤーになる。そんな『フジロック』を私は心から愛しています。もちろん来年も来るわよ!」と大きな『フジロック』愛を語ってくれました。

■RED MARQUEEいたHABIBAさん&HUGOさん from United States

ワシントンD.C.からやって来たハビバさん(38歳)とフーゴさん(41歳)夫妻。「今回初めて来ましたが、『フジロック』は素晴らしいフェスね。いいバンドがたくさん出るし、価格もリーズナブル。フードは美味しいし、自然は豊か。たくさん歩いていい運動になるから、とってもいい時間を過ごしているわ」と語るのはハビバさん。アーティストについては、「SUDAN ARCHIVES、ALANIS MORISSETTE、FOO FIGHTERS、北海道から来てたOKI DUB AINU BANDを観たわ。歩きながら出逢う、それまで知らなかったたくさんのバンドの音を聴いて、新たな発見を楽しんでいるの」とニッコリ。

会場までは、羽田から新宿駅へ。そこからツアーバスを利用してスムーズに来れたそう。「LIZZOをものすごく楽しみにしてるの。初めての大型フェスで、初めて観るLIZZO。この枯れた声を聞けば、いかに私がエキサイトしてるかわかるでしょ?(笑)」と話す声はガラガラ。夫のフーゴさんがここで登場。『フジロック』の感想は「アメリカでは小さなフェスに行ったことはあるけれど、ここまで大型のフェスは初めて。人がとにかく多いよね(笑)」と少し戸惑っている様子でした。

■KIDS LAND前にいたBenjaminさん from Germany

ドイツ出身のベンジャミンさん(44歳)は、現在暮らしている香港から『フジロック』のために来日したそうで、「金曜の夜に香港から羽田に来て、ここには土曜に着きました。チケットをTicketflippingで買ったら駐車券を一緒に買えなくて。だから電車で来ることにしましたが、トラブルもなくスムーズに来れました。宿泊先は越後湯沢駅近くの旅館で、シャトルバス乗り場からも近く大変便利」とのこと。『フジロック』について尋ねると、「初めて来ましたが、快晴で雨もないし、フードのクオリティも高い。とても楽しんでいます」と満足顔。

「目当てのアーティストは、FOO FIGHTERSとWEEZER。歩きながら観たいものを探しています」と語るベンジャミンさんは、ドイツの『Rock Am Ring』などヨーロッパのフェスに行ったことがあるそうで、「『フジロック』は山の中で開催されているのがヨーロッパのフェスとの大きな違い。とても良くオーガナイズされているところや、参加者がサスティナブルな傾向にあるのもいいですよね。リサイクルとか、その辺の意識がヨーロッパとは大きく違いますね」と他国との違いについて語ってくれました。

■フジロックの森にいたDAVEDさん&TILARさん from Spain

スペインから来た夫婦、ダヴィさん(41歳)とティラさん(40歳)は、『フジロック』初参加ながら前夜祭からのフル参戦。何年も前から音楽フェスティバルに参加したいと思ってはいたものの、今回ようやく実現できたそう。ティラさんは「FOO FIGHTERS。本当に最高でした!」、ダヴィさんは「ALANIS MORISSETTEも良かったし、Anderson .PaakのNxWorries、DANIEL CAESARも良かった。それから、EIKICHI(矢沢永吉)。僕たちは先月、彼を知ってすごく好きになったんです。そんな彼が『フジロック』のステージに立つと知り、本当にいいタイミングで観ることができました。すごく格好よかった」とコメント。日本ロック界のレジェンドをしっかりとチェックされていました。

『フジロック』参加においてはひとつも困ったことがなかったそうで、「新幹線で来ました。私たちは2番目に発車したシャトルバスに乗れたので、すぐに会場に来れてラッキーでした」と笑顔のティラさん。また『フジロック』に来たいかどうかを尋ねると、即答で「イエス!」と回答。ダヴィさんは「ラインナップがよければ来年も来たいです」と穏やかに語ってくれました。

<総評>

このインタビューは『フジロック』場内にて2023年7月29・30日の2日間にわたって実施しました。全体的に初参加の人の割合が多く、『フジロック』についての共通意見としては「音楽もいいけれど、自然が広がっているのがいい」といった、世界でも他に例を見ない特殊な開催環境を高く評価する声が全員から聞かれました。さらに会場へのアクセスでのトラブルが一切なかったという人がほとんどで、車での参加者は1組のみ、そのほかはオフィシャルツアーと新幹線利用が半々で、フェスの運営、特にシャトルバス運行への好感度は非常に高いものでした。

宿泊は2組を除く全組がキャンプサイトを利用しており、「森に囲まれ、山々が望める環境でのキャンプ。稜線が美しく、太陽は輝いていて、すべてが最高だと思う」といった意見が多い反面、「太陽が昇ると同時にテント内部が暑くなるからあまりよく眠れなかった」「スペース確保が難しい」といった声も。そのほか「日帰り参加なので朝まで踊って明日帰る」という0泊2日を楽しむ強者や、「今回来た理由はU22の割引が使えたから」という意見もあり、新サービスとして打ち出された「U22チケット」の有効性も認められました。

文=早乙女 ‘dorami’ ゆうこ

 

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