ジョン・コルトレーン、名作「至上の愛」未発表ライヴ音源を10/8に世界同時リリース

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ジョン・コルトレーン「至上の愛 ~ライヴ・イン・シアトル」

ジャズ史に輝く名盤をいくつも残し、ジャズ史上最大のカリスマとして知られるサックス奏者のジョン・コルトレーン。その中でも、特に出色の一枚として名高い「至上の愛」の1965年10月2日にシアトルで録音された未発表ライヴ音源が発掘され「至上の愛 ~ライヴ・イン・シアトル」として10月8日に世界同時リリースされることが発表された。

そのプレ・オーダーが開始され、「パート1:承認(原題:Acknowledgement)」のスペシャル・エディット・バージョンが先行シングル曲として解禁となり、日本盤オリジナル・ティザーが公開された。

ジャズ・ファンでなくとも一度は耳にしたことがあるという人も多いだろう「至上の愛」は1965年にリリースされ、現在も多くのリスナーを虜にし続けている名盤中の名盤で、「ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500」では47位にランクイン。アメリカを代表する科学、産業、技術、芸術を研究/展示しているスミソニアン研究所のコレクションにも選ばれ、アメリカ歴史博物館には“アメリカ史の宝”として所蔵されている、まさに音楽史に刻まれる一枚だ。これまで「至上の愛」は、スタジオ盤と65年のフランスのジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音の2種類の演奏がリリースされている。

「至上の愛」はジョン・コルトレーンにとってもとても意味深い作品で、彼はこの作品を「神への捧げもの」とし、レコードの内ジャケットに作品を紐解く糸口となるような自作の詩を掲載したが、このようなことをしたのは後にも先にもこの作品のみ。そして、今回の発見が「奇跡」と呼ばれるのは、その演奏の希少性にある。コルトレーンは公の場で「至上の愛」を演奏することは滅多になく、自分の感情、バンド・メンバーのコンディション、会場の雰囲気、そして何より観客がそれを求める時にしか演奏しないと決めていたと言われ、ライヴ・ハウスやジャズ・クラブでこの組曲のすべてが演奏されたという記録はこのテープが発掘されるまで残っていなかった。

当時は録音されたこと自体が公に知られておらず、録音を行ったのは、コルトレーンがシアトルに滞在していた1週間の間、コルトレーン・バンドの前座(昼の公演)を任されていた、自身もサックス奏者でコルトレーンの友人であったジョー・ブラジルという人物。公演最終日の当日、自分のバンドを録音しようと録音機材をセットしたところ、バンド・メンバーであったカルロス・ワードがコルトレーンのステージでも演奏をすることになったため、結果、彼は録音機材を回し続けることに。公演が行われたシアトルの「ペントハウス」にはオーナーの音楽好きが高じて当時最先端だった録音機材が一式揃っており、良好な音源が後世に残されることとなった。しかし、もともとリリース目的ではなくプライべートな記録用に録音したため、ブラジルは2008年に亡くなるまでテープは彼の自宅に保管されており、生前、親しい友人にこのテープを数回聴かせたことがあったことから、それが噂として広まって今回の発掘に至った。

また、今回のライヴ音源を貴重たらしめている理由はそのアバンギャルドさにもある。参加メンバーは、ジョン・コルトレーン率いる黄金のカルテット+ファラオ・サンダース(ts)~カルロス・ワード(as)~ドナルド・ギャレット(b)の計7名。この公演はコルトレーンのフリー・ジャズ宣言と言われるセンセーショナルなアルバム「アセンション」のレコーディングの後に行われ、今回の作品はこれまで音源として残っているスタジオ盤・ライヴ盤とも全く異なるアバンギャルドながらも圧倒的な力強いサウンドが特徴だ。生涯、新しい挑戦をやめることのなかったコルトレーンの生き様を表現している重要な発見で、まさにこれまで誰も聴いたことのない鮮烈な「至上の愛」となっている。

今年はコルトレーンの生誕95周年にもあたる。その誕生日である9月23日に、ブルーノート東京にて記念イベント「Re:コルトレーン」が開催される。ジャズ・シーンの未来を担う精鋭7名が集結し、4本のサックス・アンサンブルでジョン・コルトレーンのオリジナル・ナンバーを大胆に再解釈するライヴ。当日のステージでは、「至上の愛」も演奏予定。ライヴに参加する4名のサックス奏者のインタビューが、ブルーノート東京のHPにて公開されている。

https://www.youtube.com/watch?v=uPSPiD9DNYI

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