Awesome City Club、中野サンプラザで19曲熱演 グループの軌跡と未来を感じさせるライブに

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Awesome City Club が8月9日、ワンマンライブ「Awesome Talks – One Man Show 2021 -」を東京・中野サンプラザで開催した。当初は今年5月に開催される予定だったが、一度延期になり、ようやく実現した初のホール公演。開演前のアナウンスでは、PORIN がステージに飾られた大きなリースについて、みんなとの再会を祝して飾ったのだと話していた。

開演を待つまでの間、耳を澄ますと、鳥や虫の鳴き声が聞こえてくる。目の前にはガーデン風に装飾されたステージ。都会の喧噪から離れて非日常的な空間にやってきた気分になっていると、いよいよライブの始まりを告げるオープニング曲がかかり会場は大きな拍手に包まれた。モリシーとサポートメンバー、そして atagi と PORIN が登場。ドラマ「彼女はキレイだった」のオープニングテーマとして現在オンエア中の「夏の午後はコバルト」でライブがスタート。音楽の庭で仲間たちと遊ぶかのように、楽しみながら歌い鳴らすメンバーの姿が眩しい。軽やかなリズムが観客の心を自由にさせるのもあっという間。MVに出演していたP→★も登場し、ダンサーとしてステージに華を添える。

ここで、メンバー3人+ベース/ドラム/キーボード&パーカッション/コーラス隊によるアンサンブルに、弦楽カルテットが仲間入り。2015年リリースの初期曲「GOLD」が計12名によるリッチな編成で鳴らされた。コロナ禍以前はみんなでシンガロングしていたこの曲。一緒に歌えない寂しさを上書きするように、同じフレーズを生のストリングスが雄大に鳴らし、PORINが「みんなも心の中で歌ってー!」と観客に投げかける。そのあとに続くのは「アウトサイダー」「僕らはこの街と生きていく」で、カラフルなバンドサウンドに導かれるように観客は体を揺らしたり手拍子したりしている。それを見て「最高の絶景です。どうもありがとう!」と PORIN。ステージ上では、メンバーたちが親指を立てて、互いを讃え合いながら演奏していた。

以降、曲ごとに編成を変え、この日ならではのアレンジを次々と披露。例えば、「ceremony」は、キーボード/バイオリン/チェロとともに演奏。「タイムスペース」は、チェロと鍵盤ハーモニカによる色っぽいフレージングが印象に残った。また、今年2月にリリースされた3rdアルバム「Grower」の収録曲も存在感を放っている。atagi が夜行列車で出雲へ旅したことがきっかけでできた曲「夜汽車は走る」は、3人だけで演奏を始め、徐々にサポートメンバーの音色が加わっていくというドラマティックな構成。P→★が赤い布をはためかせて舞った「tamayura」は、Aメロ〜Bメロは打ち込み、サビは生ドラムにすることで、ダンスナンバーとしての快楽度をさらに高めさせていた。「記憶の海」ではメンバー3名ともギターを演奏。音の層の重なりで静かなる炎を表現していく。

アカペラの歌い出しにグッと引き込まれた「青春の胸騒ぎ」。フルメンバーで奏でた「最後の口づけの続きの口づけを」。6月に配信リリースされたばかりの「color」。好演が続くなか、atagi が「みなさんの拍手に力をもらっていい歌を歌えています」と、MCの度に観客に伝えていたのが印象的だった。ジャジーに魅せる「Okey dokey」が13曲目として演奏された頃には早くもライブ終盤。イントロのストリングスからときめきが止まらない「Don’t Think, Feel」、ボーカル陣の掛け合いだけでなくモリシーの弾く対旋律も最高な「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」というポップな2曲から、「STREAM」に繋げることで手放しで踊れる流れを完成させていく。

そして最後のMC。atagiの「今日時間を作って、いろいろな葛藤を振り払って、ここに来てくださったみなさんに改めてお礼を言いたいと思います。ありがとうございました」という言葉に対する観客の拍手はなかなか鳴り止まず、その熱量がこの日のライブの素晴らしさを物語っていた。本編ラストに演奏されたのは、「まだ見ぬ未来を想って作った曲があります」(atagi)と紹介された「またたき」、そして2021年上半期を代表する1曲となった「勿忘」。いずれもバラードだが、生命力漲るバンドサウンド、そして atagi と PORINの歌声には強い想いが感じられ、本編終了。鳴り止まないアンコールの拍手に応えて出てきたメンバーはステージ上で「いや〜……」と顔を見合わせ、「感極まっちゃうよね」(atagi)、「ちょっと危なかった。モリシーどう?」(PORIN)「最高だね」(モリシー)、「いつも通りだね(笑)」(atagi)、「こう見えて感動してるんですよ、私も」(モリシー)と感慨を言い表す。

その後のアンコールでは、「Awesome City Tracks 2」に収録されている7分31秒の大曲「Lullaby for TOKYO CITY」をフルメンバーで演奏した。演奏前、活動を続ける中でいいこともあればもちろんよくないこともあった、と振り返ったのは PORIN。しかし「その全てがあるからこそ今日みなさんと最高な時間を過ごせました」という実感から、結成初期に作った特別な曲を最後に演奏することに決めたそうだ。

この日発表された通り、12月8日には東京ガーデンシアター公演が控えており、ライブ会場のキャパシティは上がっていくばかり。しかし、ホールの空間を自分たちの音楽でしっかり染め上げたこの日のライブを観た限り、もはや不安に思うことはない。紆余曲折ありながらも、過去を糧に変えてきたそのしなやかさで以って、むしろどんどん進んでいってくれ!という気持ちだ。「ありがとうございました!」と観客にお辞儀したあと、顔を上げた3人は晴れやかな表情。Awesome City Clubのさらなる充実を予感させるライブだった。

なお、このライブのセットリスト配信が各サブスクリプションサービスにて配信中。また、昨日より配信になったABEMAオリジナルシリーズ恋愛番組「明日も好きでいて、いいですか?」の挿入歌に「またたき」が決定。今後の活動にも注目してほしい。

文:蜂須賀ちなみ

セットリスト

1.夏の午後はコバルト
2.GOLD
3.アウトサイダー
4.僕らはこの街と生きていく
5.ceremony
6.タイムスペース
7.夜汽車は走る
8.青春の胸騒ぎ
9.tamayura
10.記憶の海
11.最後の口づけの続きの口づけを
12.color
13.Okey dokey
14.Don’t Think, Feel
15.今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる
16.STREAM
17.またたき
18.勿忘
EN.Lullaby for TOKYO CITY

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