PAN結成25周年記念『25祭やDAY!』特別編、新たな試み満載の無観客配信生ライブは、ライブハウスの醍醐味ある最上の夜に

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『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』2020.6.25(THU)心斎橋BIGCAT

今年、結成25周年を迎えた大阪フロム吹田の笑って泣ける4人組ロックバンド・PANが6月25日(木)、大阪・心斎橋BIGCATを舞台に無観客配信生ライブを開催した。

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

まずはFM802 DJ樋口大喜と、コンサートイベンター・清水音泉の田口真丈氏が登場し、会場に集ったスタッフの感染防止対策もバッチリ取られていることをアピールしながら、ゆる〜く開幕宣言。ステージ上には、事前に公式Twitterでアップされていたイメージ画像どおり、大小さまざまなモニターが並べられている。ここにはメンバーの姿はもちろん、オーディエンスのチャット画面も流れるというから、一体どんな景色になるのか。馴染み深いライブハウスが未知の空間へと変貌する今宵、4人のシルエットがステージに現れるや、まるで脳内のジクソーパズルがピタッとハマるような「あぁ、コレだ!」という膝を打つ感覚……そう、ライブ直前特有の高揚感が、画面越しにも関わらずしっかりと伝わってくる。

PAN

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「いけるか大阪! いけるか日本! 誰もが予想しなかったこの未来、どんな想像して生きてきましたか!? 今日、その想像を超える1日を楽しんでいってくれよ!」と川さん(Vo)の怒号か如くの始まりの合図で、ド頭から涙のライブアンセム「想像だけで素晴らしいんだ」をブッ放す! チャット上でも「もう想像超えてるで!」など涙顔の絵文字が飛び交い、見守るオーディエンスの言葉たちはライブの一体感そのものだ。<想像を近づける 現実に近づける>という詞世界をまさに具現化したオンラインライブ。

川さんへのレスポンスが瞬時にチャットを埋め尽くす新時代のコール&レスポンスを見た「人生の湯」や、タツヤ(Dr)がパンキッシュなリズムで攻め立てる「フリーダム」を経て、改めてこのステージへの想いを口にする。「こうやってライブハウスでやるのは4カ月ぶり。配信ライブやけど、みんなが参加してくれている、みんなが観てくれている、それを感じながらライブをやれてんねん。今ある配信ライブという形、その壁を飛び越えられるか、そんなことを考えてきました」と、ここでカメラマンに自らの足元を映すよう促す川さん。

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

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「今日は、配信ライブのシステムに一石を投じるために来ました。こうやってライブをやってる間、(メンバーの足元にもモニターがあり、それを見ながら)曲中でもみんなの声がコメントで届くようになっている。普段ライブハウスで行われていることと同じです。一緒に歌ったり、曲間の歓声……何でもええよ! 思ってることを言えるのがライブハウスやと思うから。(そういうライブハウスらしさを)配信でどうやって実現できるかを考え抜いてきました。これが何かのきっかけになれば」現実をあり余る情熱で覆していくPANの勇姿に、チャットも「うちらの声が聞こえてる!」「うれしい!」と熱いリアクションで一層ヒートアップ!

ダイスケ(Ba)

ダイスケ(Ba)

「PANは配信ライブで何かができると思ってここに立ってるからな。それのいいところ、全部持って帰ってや!」(川さん)と再び爆音を打ち鳴らす4人。ソリッドなムードと挑発的な歌詞に踊らずにはいられない「カマす犬」、キレキレのガレージロック「レモン KISS」では、飛び跳ねながらリズムを刻むダイスケ(Ba)を筆頭に、フロント3人での華麗なステップも披露!

ゴッチ(Gt)

ゴッチ(Gt)

まるで観ているこちらの気持ちを代弁するかのように「……やっぱライブ楽しいな!」(川さん)、「最高や!」(ゴッチ・Gt)とはにかむ彼ら。その一方で、「ライブの感覚を取り戻すなんて、ライブハウスでしかできひんと思うわ! 早くみんな帰ってきてくれよ。早くそんな状況を作ろうぜ!」(川さん)と熱く語る姿を観ていると、ライブハウスというかけがえのない空間への渇望が増すばかりだ。

続く「今夜はバーベキュー」では、歌詞を「4カ月間がんばってきたもんね」と歌い変えるなど、お祭り男たちによる<最高の瞬間>は進行形でアップデートされていく。さらにイントロから涙の顔文字がチャットに乱舞した「ザ・マジックアワー」では語りかけるようなリリックが甘酸っぱいメロディと共に、心の奥までじんわり染みわたっていくようだ。

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

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「今までやってきたもの、自分の耳で聴いたもの、目で観たもの。自然とそれが聴こえてくる、その光景が観えてくる」と、眼前に広がる「満員のフロア」を表す川さん。画面を軽々超えてくるフロントマンとしての存在感は何と大きいことだろう。かと思えばシリアス一辺倒なわけもなく、「今夜はバーベキュー」のサビでは「(チャットで)「私はカレーでした」とか晩飯の報告されても! 知らんがな(笑)!」(川さん)と、オンラインライブの利を活かしたオーディエンスとの愉快な掛け合いも。

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

 

続いて極彩色のオリエンタルムードをギュッと包んだ「ギョウザ食べチャイナ」ではタイトなリズムが実にスリリングで、川さんはアジアンスターばりの足さばきで魅せる魅せる! ドライブするギターリフが最上にクールな「直感ベイベー」、一転してしっとりしたイントロが導く「悪魔塔」へ。エレキを手にした川さんとゴッチの眩いツインギターに、青いライティングがドラマチックさを加速させていく。<ずっとドキドキしていたい>とまっすぐに歌う少年のような4人の笑顔は何ともピュアだ。

タツヤ(Dr)

タツヤ(Dr)

そもそもこの日は、結成25周年を記念し毎月25日に行う予定だった『25祭やDAY!』福岡公演の日。コロナ禍の影響で延期を経て中止となった同ツアーは、アニバーサリーらしく趣向を凝らしたイベントで、それゆえ延期にしても「企画をフルで表現できへん! それやったら今はやめとこうと」(川さん)と、苦渋の決断をした背景がある。「その楽しみにしてくれていた気持ちを少しでも埋められたらいいなと思って、今日のステージをやらせてもらってる。いろんな人の力を借りて、いろんな人の力が集まって楽しいものができてると実感しています。また必ず全国へ行きますので、その時はどうぞ、ライブハウスに遊びに来てください。『25祭やDAY!』への想いを1曲に込めて伝えたいと思います。未来を信じていこうぜ!」と、川さんが切々と語りつないだのは「マイル」。

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4人のバックモニターには、中止となった3月の札幌から12月の渋谷まで、全10カ所にわたるライブハウスの名前や写真が次々と流れていく。希望をもたらすメロディ、生命力あふれるリズムにのせ、改めて大きな決意と感謝を感じさせる仕掛けには、思わず拳を握らずにはいられない。画面いっぱいに「中止になったけどこのまま終わらせへんからな!」という力強いメッセージも投影。

と、ここで突如ゴッチがアップに。「えーと、後藤さん泣いてます(笑)」(川さん)、「ちゃうちゃう! 泣きそうになってます! 実は僕、序盤でもうダメでした。あかんわ!」と、場も一気に和む。以前、青森のライブハウス・ROXXで思いがけず誕生日のサプライズを受けたゴッチがケーキを見た瞬間に泣いたという、ゴッチのさらなる純真ぶりを証明するエピソードを話しながら、川さんは思い出したことがあったようで……。

川さん(Vo)

川さん(Vo)

「忘れもしません、島根・松江のライブハウスcanovaで」と、川さんが口を開けば「伝説の話」「根に持つ川さん(笑)」と、チャット上もにわかにザワザワ。かつて松江でのライブ後の打ち上げ中、「そういえば俺、誕生日やな」と気付いた川さんは、サプライズに備えてテンションを上げるべく珍しくお酒を飲んだり、ケーキ準備の邪魔をしないようトイレを我慢するなど極力無駄な動きを制限していた……にも関わらず、目が覚めるとそこは帰りの機材車の中だったという。とりあえず、誕生日を完全に忘れ去られた悲しみをTwitterにぶつけ再び眠ったという。帰路につくと「そのつぶやきを読んだゴッチが「川さん、何もないよりマシやろ」と、ぬる〜いブラックの缶コーヒーをくれてん(笑)」(川さん)と続ければ、ゴッチは「そのセリフ今聞いてゾッとしたわ(笑)」と即座に反応。加えてチャットには「(次の誕生日には)必ず松江でお願いします!」とcanovaの三瓶店長が降臨し、リベンジをお約束する一幕も!

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そんなMCを経て、PANの良心=ゴッチについて歌った「ゴッチメン」でライブは再開。チャット上には「給料が下がりました」「太った」など、ゴッチメンへ助けを求めるコメントが続々アップされていくなか、突然「ゴッチメーン! 助けておくれー!」と来襲するメンバー以外の人影が!

左:HEY-SMITH・猪狩秀平(Gt) 右:ゴッチ(Gt)

左:HEY-SMITH・猪狩秀平(Gt) 右:ゴッチ(Gt)

何と盟友HEY-SMITHの猪狩秀平(Gt)が突如ステージに。「いやぁ最高ですね。1曲目から聴いてたんですけど、話が長い! 早く出たかった」(猪狩)と、祝祭にふさわしいゲストの登場に「わけわからん! びっくりした」(ゴッチ)と4人も驚きを隠せない。さらに、得てしてこういった企画はメンバー以外には周知のことであったりするが、「(出演は)無許可です。BIGCATの裏から勝手に入りました、動線を把握してますから」(猪狩)というのだから、これぞ正真正銘のサプライズ。去り際には「川さん、何もないよりマシやろ」と缶コーヒーを投げて帰るなど、最後の最後までさすがの一言!(笑) 「対バンのわちゃわちゃした感じ、ライブっぽかったな(笑)」(川さん)との言葉にも大いに納得する、配信ライブとは思えない見所の連続だ。

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お次は6月24日(水)にリリースしたばかりの新曲「究極の幸せ」へ。ちょうどこのライブから1週間前にファンがコーラスに参加するリモート・レコーディングを試みたという同曲は、今回のステージの模様をMVにするという嬉しい企画も。「後ろのモニターに、チャットの文字を大きく映すから一緒に参加してMVを完成させよう。お前らの言葉で埋め尽くしてくれ!」(川さん)。コロナ禍のフラストレーションをまるごと吹き飛ばす陽光あふれるアッパーなサウンド。チャットには「PANと出会えた事」「この曲聴けたのが幸せ!」などさまざまに<究極の幸せ>が書き連ねられ、その流れは今宵最高速度をマークしたに違いない。

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

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そしていよいよ終盤に向かうなか、ダイスケも爽快な歌声を聴かせてくれる「Z好調」、緊張感たっぷりのベースリフをトリガーにした「我ニBET」を経てもなお、まだまだハイライトがあるのだからひと時も目が離せない。「暴飲暴食マシンガン」では川さんがフロアに降り立ち、画面の向こう側へ届けるべく咆哮する様は、純然たるライブバンドの姿そのものだ。かと思えば「ジャパニーズソウル」では、マイクの音声が途切れるアクシデントが発生。

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

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チャットには「聴こえたので大丈夫です!」「こっち(オーディエンスたち)で唄おう」とバンドを支える言葉が瞬時に並び、その様子にゴッチも「聴こえた!」と胸を叩くのだから涙腺はとうに決壊! 向かい合って弾き暴れるゴッチとダイスケ、熱量高い破裂音を刻むタツヤ、川さんはステージ中を乱舞し、ラストの「天国ミュージック」で本編は締め括られた。

『PAN結成25周年記念イベント「25祭やDAY!」特別編 PANマン LIVE STREAM』

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即座に「アンコール!」の言葉がチャットを埋め尽くし、再び4人はステージへ。現場で直接会うことができなかったバンドとオーディエンスが、ここまでで作り上げてきた新たなライブ。だからこそ、お祭り感ある「がんばりまっせ」は一層沁み入るし、はちゃめちゃに自由度の高い「TシャツGパン」だって汗なのか涙なのかわかりゃしないほど、多幸感いっぱいな心地をもたらしてくれるのだ。

「ありがとう! みんながライブハウスに行きたいと思ってるやんな、それがわかる。よっしゃ! その気持ちを汲み取りますよ」(川さん)と、エンディングに投下するのは「初日ファイナル精神」! バンドのポリシーを表すような1曲に持てる全ての力を振り絞り、全25曲、約2時間半にわたった宴はあっという間に幕を閉じた。

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当たり前の日々を失っている今、改めてライブバンドとしての生き様をBIGCATに、いや画面を通して世界中に刻み付けたPAN。終演後のチャットも「良い夢みれそうー」「チャットも楽しかった」「抜けたくないんだけど」としばらく更新が続き、それはまるでライブハウスから出て余韻を楽しむオーディエンスたちの会話そのものだ。ライブ中、川さんが何度も繰り返したのは「生でライブができる、観れることが一番いいのはもちろんわかってる」という言葉。それが今すぐは叶わなくとも、想いを伝える、伝えてもらえる場を設け、新たな可能性を引き出したPANに大きな拍手を贈りたい。

取材・文=後藤愛 撮影=雷

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