松本幸四郎、尾上松也の配信後コメントが到着 「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」視聴体験レポート

アーティスト

SPICE

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」 松本幸四郎、尾上松也(右から)※配信前撮影

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」 松本幸四郎、尾上松也(右から)※配信前撮影 提供:松竹

オンラインのトークイベント「歌舞伎夜話特別編『歌舞伎家話(かぶきやわ)』」の第一回が、2020年5月29日(金)に開催された。第一回は、松本幸四郎がホストをつとめ、尾上松也と対談。生配信ならではのライブ感あふれるトークが行われ、大好評のうちに終了した。配信を終えた幸四郎と松也のコメントとともに、当日の視聴体験をレポートする。

『歌舞伎家話』は、通常の歌舞伎公演ができない状況の中で、松竹株式会社の若手社員たちの発案により立ちあがった企画であり、イープラスの新サービス「Streaming+(ストリーミング・プラス)」において行われた。動画配信プラットフォームはVimeoが採用され、当日は視聴者がチャット機能(※)でコメントを寄せることもできる。6月5日(金)(アーカイブは翌日20時まで)には、はやくも第二回の開催が決まっている。

※Facebook、またはvimeoのIDがあればスマホからチャットのコメントを閲覧・参加ができる。PCからは、登録不要のゲストIDで、閲覧・参加が可能。

はじめての『歌舞伎家話』をふり返って

ーー配信を終えて、何か気づき(新たな可能性、想像より良かったこと、大変だったこと等)はありましたか?

幸四郎:あっという間の時間で、焦ってしまいました。ですが、役者が発信する場ができたことにとても嬉しさを感じました。

松也:リモート生配信は初めての経験でしたし、どの様に視聴者の皆様に伝わるのか心配でとても緊張しておりました。しかしチャットにおいて、皆様から待っていたとのコメントや喜びのコメントをいただき、開催出来た事がとても嬉しくなりました。国や地域が違っても繋がる事が出来ますし、今後は二人以上でのトークなど、番組として幅が広がると思います。

ーー対談をふり返り、幸四郎さんから松也さんへ、松也さんから幸四郎さんへ、それぞれ一言お願いします。

幸四郎:二人で会う、話すということは初めてじゃないかと思います。画面を通してですが、芝居への想いを話し合えたことが嬉しかったです。その思いを形にしていきましょう。

松也:第一回ゲストに呼んで頂いた事がとても嬉しかったです。初めてのことでとても緊張していたのですが、開始直後からいつもと変わらないマイペースな幸四郎さんの雰囲気を感じて、私もリラックスして楽しくトークをする事が出来ました。幸四郎さんが次回ホストを務める際、どんな方を呼ばれるのか、そして良い意味で先の読めない幸四郎トークがとても楽しみです。

ーー配信をご覧になった方々へ、メッセージをお願いします。

幸四郎:ご覧いただきありがとうございました。まだまだ舞台へ上がるまでは時間がかかりますが、様々な形で想いを、芸を発信していきますので、是非ともお付き合いいただきたいと思います。また、この『歌舞伎家話』が長く続きますよう楽しんでまいります。

松也:ご視聴いただき誠にありがとうございました。この先いつ舞台でお目にかかれるかわからない状況の中で、皆様に何か発信出来ないかと考えスタートしました。不安もありましたが、暖かい喜びのコメントを頂戴し、私自身勇気と元気をいただきました。一日も早く皆様とお会いできる日を願いつつも、日常が戻ってもこの番組を楽しみに思って頂ける様に頑張ります。
まだまだリモート生配信は手探り状態ですが、毎回の経験を活かしてより楽しんでいただけるよう精進してまいります! 何卒末永く『歌舞伎家話』を御贔屓に!

『歌舞伎家話』視聴レポート

生配信の開始5分前、チケット購入時に届いた専用URLを開き、イープラスのIDとパスワードでログインすると、すでに400人以上がスタンバイ。『歌舞伎家話』第一回は、翌日の20時までアーカイブによる見逃し配信も用意されていたが、多くの人がリアルタイムでこの配信を楽しんだようだ。リアルにご本人が登場する、100人規模のトークイベント『歌舞伎夜話』とは別物になると想像していたが、実際その考えは間違っていなかった。しかし意外だったのは、テレビともリアルイベントとも異なる、生配信ならではの距離感の魅力だった。

自宅で楽しむ幸四郎×松也

はじめに幸四郎は、医療従事者への感謝と敬意を伝えた。その後、幸四郎が松也を呼び込むと、パソコン上の画面は左右に分割され、向かって左側に幸四郎、右側に白い壁。そして下から「どぉーもー!!」と松也がセリ上がりで登場。ふたりの対談がはじまった。

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

まずは近況報告として、ふたりは自宅にいる時間の長さに感じた戸惑いを語った。そして幸四郎は台本や資料の整理、さらにヘアカラーにチャレンジしたことを告白。金髪を経てアッシュグレーに染めた過程を、写真で披露した。松也は、断捨離中に見つけたアロマキャンドルを使ってみたところ、癒し効果にすっかりハマったと報告。そのエピソードに、チャット欄は盛り上がるも、幸四郎は興味をそそられない様子。それを察した松也が「興味あります?」とツッコミを入れると、幸四郎は「興味がある人も……いると思います。蝋燭って、電気止められたの?」と切り返し、視聴者の笑いを誘う。

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

続く話題は、2019年6月に上演された新作歌舞伎『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』へ。松也の役の、とある演出は、幸四郎の無茶ぶりからはじまっていたことが明らかに。さらに幸四郎と松也ならではの共通の話題として、劇団☆新感線の、中島かずき作・いのうえひでのり演出の作品についても語られた。話題が「オンライン歌舞伎の可能性」に及ぶと、歌舞伎演出を取り入れた映像の可能性について、ジョーク混じりに、時に前のめりに、ふたりは想像を膨らませていた。

『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』舞台写真  提供:松竹

『三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち』舞台写真  提供:松竹

次に歌舞伎NEXTをやる時がきたら「ぜひ僕も出してください」と申し出る松也。「観にきてください」と笑顔でかわす幸四郎。 提供:松竹

次に歌舞伎NEXTをやる時がきたら「ぜひ僕も出してください」と申し出る松也。「観にきてください」と笑顔でかわす幸四郎。 提供:松竹

質疑応答に見る、役者魂と使命感

事前にSNSで募集した質問に答えるコーナーでは、「宇宙人に遭遇したら?」など、ユニークな質問が視聴者を楽しませた。興味深かったのは幸四郎が選んだ質問、「タイムマシンがあったら、どの時代に行きたいか?」への、ふたりの答えだった。

松也は「芝居の原点を観に行きたい。その舞台で芝居をしてみたい」と答えた。「錦絵に描かれた芝居小屋は、ものすごく楽しそう。枡席に色々なお客さんがいてお茶子さんもいる。本当か嘘か舞台の裏にまでお客さんがいます。あの空気感で、しかも蝋燭の灯りだけで(キャンドルの伏線がここで!) 。非常に興味があります!」と声を弾ませた。タイムマシンにのろうとも芝居小屋へ行き、芝居見物ではなく舞台に立つ側でのコメントで、生粋の表現者としての顔を垣間見せた。

 「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

幸四郎は、「明治時代」と答えた。歌舞伎では、江戸時代から時代劇(江戸より、さらに前の時代をモチーフとした演目)が親しまれ、「歌舞伎は昔から、昔のものが人気」だったという。同時に歌舞伎は、当時の、色彩やファッションの流行の最先端でもあった。しかし明治期に入り、世の中で髷を切ることが一般化していく中で、歌舞伎はあえて髷を切らないことにし、現在に至る。幸四郎は「それが歌舞伎が残った要因のひとつでは」と考え、「切らない方向、変化を止めることに決めた人に話を聞いてみたい」と語った。

いま歌舞伎界は、with コロナ(あるいはいつかの After コロナ)社会における、歌舞伎のあり方を模索している。その真っ只中にいる幸四郎が、文明開化というパラダイムシフトを経験した明治期の先人に話を聞く構図は、令和二年の歌舞伎が向き合っている課題の大きさ、切実さを物語るようだった。同時に、当事者としての目線の高さが、清々しいまでの覚悟を感じさせた。

配信ならではの親密さ

3月に幸四郎は、YouTubeで配信するべく『三月大歌舞伎』の演目を無観客で演じた。それを終えて歌舞伎座を後にする時、「根拠はないけれど、次に歌舞伎座にくるときは、演者・スタッフ・お客様、全員ひとりも欠けず満杯であけたいと強く思った」と言う。松也は深く頷き「今、内から出てくるエネルギーを、その時に発散できるようストックしておきたい」と続いた。松也は「生で見ていただき、感動や空気を共有するのが歌舞伎や舞台の醍醐味。それが制限される中でも、歌舞伎の新たな道を拓けるように考えていきたい」とも語っていた。

 「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

「歌舞伎夜話特別編 第一回『歌舞伎家話』」より 提供:松竹

そして幸四郎は「もとに戻ることはないと思う」と語りつつも、いつか舞台の幕が開く時に、まずやりたい役として『沼津』の十兵衛、『義賢最期』の義賢をあげた。さらに『助六』にも意欲を見せた。松也は『渡海屋・大物浦』の知盛をあげた。

松也が「幸四郎のお兄さんが助六をやるとき、僕は出していただけるんでしょうか」と尋ねると、「ぜひ観にきてください」とかぶせ気味に答える幸四郎。これを見た視聴者は、笑いとともに「出してあげて!」のコメントを続々とよせていた。チャット欄は、時に大向こうさながら、イベントを盛り上げていた。

最後に松也が「やはり自分の生きがいは、お客様の前に立ち表現することだと、つくづく感じました。お芝居したい」と思いを吐露する一幕も。これは対談相手が幸四郎だったからこそ聞けた、本音の一つではないだろうか。

次回は6月5日(金)20時より生配信

初回はふたりだけで、トークがすすめられた。ホストの幸四郎は、エンディングに向けて話をまとめに入ったかと見せかけ、「何か運動してる?」と新たな話題をふる等、アクロバティックな舵切りで、松也や視聴者を大いに楽しませた。司会者によるスマートな進行があれば、生まれなかったであろう間合いや、話が行き来する余白から、ふたりの個性や思いが浮かび上がっていた。思えば、テレビならカメラが切り替わるであろう時間も、配信ではふたりの表情が映り続ける。リアルな会場でみるよりもずっとアップでそれを見る。新鮮で親密な魅力を感じるイベントだった。

第二回 歌舞伎夜話特別編『歌舞伎家話』出演者 中村七之助 、小栗旬、尾上松也(左から)

第二回 歌舞伎夜話特別編『歌舞伎家話』出演者 中村七之助 、小栗旬、尾上松也(左から)

出演者の顔ぶれにより、回ごとのカラーが大きく変わることになるのだろう。第二回は6月5日(金)20時より生配信。今回は、尾上松也がホストとなり、中村七之助小栗旬がゲストとして登場する。配信時間は70分程度で、翌日20時までアーカイブ配信が用意される予定だ。歌舞伎界、演劇界が、次の一歩を模索する今、生の思いが語られる場で、時代の変わり目の躍動感を感じてほしい。

配信に利用されるイープラスの新サービス「Streaming+」や、チケットの購入方法は、幸四郎さんによる解説動画の、こちらの記事(https://spice.eplus.jp/articles/269736)をご覧ください。

 

関連タグ

関連タグはありません

オススメ