AIの最新ツアー「和と洋」がWOWOWで1/7放送、和の伝統と洋のトレンドが融合

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AIの最新ツアー「和と洋」がWOWOWで1月7日に独占放送される。

スキルフルかつハートフルな歌声と人懐っこいキャラクターで、世代を問わず愛されるアーティスト、AIが2017年6月に約4年ぶりのオリジナルアルバム「和と洋」をリリースした。同年10月には話題のドラマ主題歌「キラキラ feat. カンナ」などの新録ボーナストラック7曲を加えたデラックスエディションを発表するなど、デビュー15周年を経てますます精力的だ。

きっと家族を始めとする大切な人との絆や愛情が、AIの活力になっているのだろう。東京国際フォーラムで開催されたAI TOUR「和と洋」のパワフルなパフォーマンスはそれを雄弁に物語っていた。前半「和」セクションは、日本の伝統美や芸能の素晴らしさを再認識させてくれる、まさに温故知新のライブだった。

ステージ中央に威風堂々と組まれた櫓(やぐら)に浮かぶ2人の影。太鼓打ちが体を仰け反らせるようにして、全身全霊をかけて叩き始めると、あまりの迫力に観客は驚いたようだ。背景には、風神雷神図や富嶽三十六景が巨大な金屏風に描かれ、モダンで雅やかな世界を創り上げていた。

そこへ、まるでくノ一のような黒づくめの衣装に身を包んだAIと3人のコーラス隊が、静かに参上。「来てくれてありがとう」の言葉で、幕は開けられた。ゆったりとした「Wonderful World feat. 姫神」を堂々と歌い上げたかと思えば、祭囃子のような高揚感のあるビートに血が騒ぐ「最後は必ず正義が勝つ」では、櫓によじ登ってパフォーマンス。拳を突き上げる姿は、オーディエンス1人ひとりを励ましているようだった。

「東京!サイコーだね。あの太鼓、やばくない? 今日は自由に、ハッピーになって帰って」と、まるで親しい友達に話しかけるように観客に語りかけるAI。この垣根のなさもまた、彼女のライブの魅力だ。

「ママへ」で「今日はうちのママも来ています」と話すと、客席から母君が手を振るというアットホームな場面も。ただ、照れ臭さかったのだろうか。ステージに招いたのはこの曲を捧げた本人ではなく、コーラス隊の1人の母だった。かつてその母親と一緒にツアーを回ったこともあるそうで、AIにとっても特別な存在なのだという。誰もが自分のことのように感じられるメッセージは心を揺さぶり、会場のあちこちからすすり泣く声が漏れていた。柔らかな太鼓や三味線の音とバンドサウンが絡み合う「ママへ」は、新鮮な響きをたたえていた。

AIの溢れんばかりの愛情は、家族以外にも注がれている。「IT’S GONNA BE ALRIGHT」では、ALSという難病と闘う友人をベッドのままステージに招き入れた。「本人を目の前にして歌うのは初めてで恥ずかしいね」と言いながら、その病床のかたわらに歌いかける姿は、実に感動的だった。まだまだ認知度が低いALSという病を少しでも知ってもらいたいという彼女のピュアな想いが分かるからこそ、歌い終わると割れんばかりの拍手で包まれた。

後半「洋セクション」では、打って変わってクールでサイバーな世界を展開。ピンクのゴージャスなファー・コートとロングブーツに着替えたAIもまたかっこいい。

「東京の皆さん、まだまだ盛り上がっていけますか!」と号令をかけ、「Welcome To My City feat. Junior Reid、Eric Bellinger~MORIAGARO feat. ジェレマイ」メドレーの煌めく世界と約5000人を誘った。「The One You Need」でピンク色に包まれたスイートな空間で優しく歌ったかと思えば、「WHAT I WANT feat. Jinmenusagi」ではアルバムでフィーチャリングしていたJinmenusagiがゲストで参加。ラップバトルで火花を散らしあいながら、互いを高め合う様を見るのはなんともスリリングで心躍る体験だ。

「ここからまた“グイグイ”いくよ!」と、ファンキーでグルーヴィーなアップチューン「グイグイ」へとなだれ込んだと思ったら、AIはステージ狭しと走り回るではないか。ライブ終盤にきて、あのパワフルさ。脱帽だ。

「次の歌は、人生で一番歌いました。いまだになんて素晴らしい歌詞なんだろうと思います」と名曲「STORY」を紹介。シンプルで愛情豊かなメッセージは、何度聴いても胸を打つ。それは紛れもなくAIという人の温かさが、そこに間違いなく宿っているからだ。

「Music Is My Life」では、「どんなときも音楽に助けられてきた。自分の人生を書いた曲です」と伝えて歌い始めたAI。三味線とバンドのなめらかなサウンドに乗せ、自分自身に言い聞かせるように歌う姿がとても印象的だった。

本編ラストは、AIが観客に最も伝えたいメッセージが込められた楽曲「HOME」だった。つながっていると語りかける言葉に、胸がじんわりとあったかくなった。

温かな気持ちの余韻に浸っていると、アンコールの大合唱が。カジュアルな装いで再び姿を見せたAIは、ドラマ主題歌としてヒットした「キラキラ feat. カンナ」を披露。ハッピー感いっぱいのナンバーに乗せ、なんとムーンウォークを始めたではないか。AIのライブは最初から最後まで、サプライズとサービス精神に満ち満ちている。

続いては、映画「パディントン2」のテーマソングとして書き下ろした「Little Hero」だった。「世界中が友達になればいいと思って書きました」と本人が述べたように、ラテンポップな楽曲には普遍的なメッセージが込められている。母となった彼女だから説得力を持って歌えるピースフルなナンバーだ。

オールラストは会場全員による「ハピネス」で大団円を迎えた。約5000人の「ららら~」は圧巻で、互いの声に支えられるような不思議な感覚を覚えた。AIの音楽が紡ぎ出す温かさに身も心も満たされた夜だった。

(橘川有子)

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