テイラー・スウィフトと「再レコーディングの制限」

コラム 高橋裕二の洋楽天国

歌手がいる。レコード会社と契約をする。CDが1枚売れたらアーティスト印税がいくら貰えるかを決める。レコードの権利である原盤(マスター)の権利は当然レコード会社が持つ。そうでなかったらレコード会社は成り立たない。

アメリカのレコード業界で、アーティストとレコード会社が結ぶ契約書には必ず、「再レコーディングの制限」という項目がある。皮肉にもテイラー・スウィフトの弁護士であるドナルド・パスマンが書いた音楽ビジネスのハウツー本である「音楽ビジネス成功の條件(リットー・ミュージック刊/内藤篤・訳)」にこう書いてある。

「どの契約書にも、契約期間中にレコーディングした曲は契約が切れた後しばらくは再レコーディングが出来ない。これは『再レコーディングの制限』とよばれるものだ。よく考えてみれば全く論理的な規定だ。もしこれがないと、契約が終わった後、アーティストは別のレコード会社で前と全く同じアルバムを作ることができる。最低期限として契約終了から3年から5年は禁止される」

テイラー・スウィフトは再レコーディングがすぐには出来なくなった。とりあえず「フィアレス」は録音出来た。残す5枚のアルバムはどうするのだろう。コロナの為、世界ツアーは中止。録音する時間はいくらでもある。

「フィアレス(テイラーズ・ヴァージョン)」の発売初週の売り上げは291,000枚だった。発売2週目の売り上げは、ラジオ業界誌ヒッツによると61,000枚だそうだ。80%もダウンする。それでもテイラー・スウィフトは再レコーディングするのだろう。スーパースターの意地。

高橋裕二の洋楽天国記事提供元:洋楽天国
高橋裕二(たかはし・ゆうじ)
インタビュー

関連タグ

関連タグはありません

オススメ