インターネット・ラジオの楽曲使用料を分配、サウンドエクスチェンジの役割とは

コラム 高橋裕二の洋楽天国

アメリカでインターネット・ラジオや衛星ラジオをやりたいのなら2種類の非営利団体にお金を払わなければならない。音楽著作権についてはASCAPやBMIという非営利団体に使用料を支払う。その後これらの団体は作詞作曲家と音楽出版社に使用料を分配する。レコード(原盤権)については「サウンドエクスチェンジ」という非営利団体に使用料を払う。その後この団体は原盤権を保有するレコード会社と演奏したアーティストに使用料を分配する。

従来アメリカのラジオ局は音楽の著作権使用料をASCAPやBMIを通じて支払っていたが、レコード(原盤権)の使用料は全く払っていなかった。ラジオがレコードをかけてやるのはそのレコードの宣伝の為だと。売れたらレコード会社が儲かるじゃないかと主張し続けてきた。

IT時代への突入とナップスターの脅威はレコード会社に防衛策をこうじた。2000年にアメリカ・レコード協会は下部組織に「サウンドエクスチェンジ」を作る。インターネット・ラジオや衛星ラジオでレコードを使いたいのなら「サウンドエクスチェンジ」に使用料を支払えというもの。2003年からこのやり方がスタートした。

現在「サウンドエクスチェンジ」はレコード協会から離れ独立機関となっている。インターネット・ラジオの最大手はパンドラで衛星ラジオの最大手はシリウス。スポティファイのような定額制音楽ストリーミング・サービスはラジオではないので「サウンドエクスチェンジ」に払わない。個別に原盤権保有者に音源使用料を支払っている。以下が先週29日に、音楽業界誌ビルボードが発表した「サウンドエクスチェンジ」のレコード会社やアーティストに分配した金額。赤いラインは対前年比。昨年(2014年)は対前年比で31%も伸び、約928億円(1$120円換算)にも達した。

インターネット・ラジオの楽曲使用料を分配、サウンドエクスチェンジの役割とは

日本は2年前、2012年のレコード売り上げ金額がアメリカを抜いて世界で1位になったとはしゃいだ。それが実売調査会社サウンドスキャン・ジャパンによれば、2014年の日本のレコード売り上げは1965億円で、1995年の調査開始以来初めて2000億円を割ったという。日本が売り上げで世界一になったのはレコード価格が世界一だからだ。今時アルバムを25ドルで売っている国は日本だけ。再販売価格維持という制度に守られている。新聞や書籍と同じ。安売りをしてはならないという制度だ。

いずれにせよ、日本に於いてインターネット・ラジオは多分不可能に近い。何故ならレコード会社が原盤権を持っていないケースが極めて多い。日本では音楽事務所が原盤権を持つ事が多いからだ。パンドラが日本でビジネスをやりたかったら、欧米のようにユニバーサルとソニーとワーナーを押さえれば80%を超えるという訳にはいかない。アイドルから演歌まで、多くの原盤権を持つ音楽事務所を納得させなければならない。

記事提供元:Musicman オススメBlog【高橋裕二の洋楽天国】

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