[海外]ワーナーミュージックとクリア・チャンネルが歴史的提携、ラジオとレコード会社の関係を再定義

コラム All Digital Music

ワーナーミュージックとクリア・チャンネルが歴史的提携、CEOいわく「デジタル時代のラジオとレコード会社の関係を再定義」

Warner Music Group

世界第3位のレコード会社ワーナーミュージック・グループと、米国最大のラジオ・ネットワークのクリア・チャンネルは、レコード会社とラジオのプロモーションで歴史的な提携を締結しました。

クリア・チャンネル
ClearChannel

今回の提携内容はレコード会社に所属するアーティストにとって非常に大きなメリットを生み出します。具体的には、ラジオでオンエアされればされるほどプロモーションと収益化へとつながるのです。

まず、ワーナーミュージックは所属アーティストをクリア・チャンネルが保有するラジオ局850局やオンライン・ストリーミング、iHeartRadioの番組で優先的にプロモーションを行うことが可能になります。

また今後クリア・チャンネルは新しいユーザーインターフェースを構築して、リスナーが聴いた楽曲を購入しやすいデザインに変えて行きます。さらに、ラジオのCMでワーナーミュージックの新曲を多くプロモーションできるように広告の配分を調整して行きます。

そして、ワーナーミュージックはクリア・チャンネルの屋外広告、ウェブサイト、iHeartRadio Music Festival, iHeartRadio Ultimate Pool Partyなど音楽フェスやイベントでもプロモーションする機会を手にします。

クリア・チャンネル
Clear Channel Communications, Inc.

一方、クリア・チャンネルはワーナーミュージックの楽曲をコンテンツとして優先的に利用することができるようになります。そしてクリア・チャンネルは同社の全プラットフォーム上からの収益をワーナーミュージックに分配するレベニューシェアを行います。

iHeartRadio
iHeartRadio

クリア・チャンネル・コミュニケーションズのラジオ事業クリア・チャンネル・メディア&エンターテイメントは月間リスナーが2億4300万人、150以上の都市で840局以上のラジオ局をアメリカ国内で運営しています。またクリア・チャンネルのネットラジオ・サービスiHeartRadioは米国では最大の自動車向けデジタル・オーディオ・サービスで累計2億2500万回以上ダウンロードされています。iHeartRadioなどクリア・チャンネルのデジタル放送でのリスナー数は月間6000万人を超えています。

iHeartRadio Festival
img via iHeartRadio Festival

ワーナーミュージック傘下には、sylum, Atlantic, Big Beat, East West, Elektra, Fueled by Ramen, Nonesuch, Parlophone, Reprise, Rhino, Roadrunner, Rykodisc, Sire, Warner Bros., Warner Classics, Warner Music Nashville, Wordなど有名レーベルがあります。また音楽出版会社大手Warner/Chappell Musicには100万曲以上の楽曲カタログがあります。

クリア・チャンネルのCEOのボブ・ピットマン(MTV創業者の1人)は、

「私達の決断は、デジタル時代におけるラジオと音楽レーベルの関係を再定義するものです。私達は広大で揺るぎない成長著しい市場を開拓してきました。もし私達がこれからも成功できるなら、消費者にとってすばらしいことにつながるでしょう。また私達全てにプラスとなる収益源にもなるはずです。」

とコメントしています。

ワーナーミュージック・グループのCEOのステファン・クーパー(Stephen Cooper)は、

「私達は今回の複合的な提携を結べたことをとても嬉しく思っています。これによって、私達はよりたくさんのオーディエンスに向けてリーチできる信頼の置ける新しいプロモーション機会を提供できるようになったため、所属アーティストとレーベルに更なる収益をもたらすことができると確信しています。」

と述べています。

今回の提携の額は明らかになっていません。

現在アメリカでは、AM/FM放送局はパフォーマンス・ロイヤリティ料(楽曲使用料)をレコード会社に支払う義務が課せられていません。そのためレコード会社やアーティストはラジオ放送から、マネタイズする手段を模索してきました。

全国のラジオ局を束ねるアメリカ最大のラジオ・ネットワークであるクリア・チャンネルは、そのような流れに反し、昨年から独立系レコード会社と独自に楽曲使用の契約を締結してきました。例えばテイラー・スウィフトが所属するインディーズ「Big Machine Label Group」とはレベニューシェアをしています。

ワーナーミュージックとの提携は、クリア・チャンネルにとって初のメジャーレーベルとの提携です。

ワーナーミュージックとクリア・チャンネルの戦略は、ロイヤリティ料の価値を根本から変えてしまうレベルの提携です。なぜならこれまでは、レコード会社はラジオ局からお金を得ることができなかったのわけですから、今後は収益化だけでなく、プロモーションする機会も得られるとなると、大物アーティストや新人アーティストのプロモーションがこれまでよりはるかに簡単にできるようになります。企業の利益だけでなく、アーティストの利益もちゃんと考えられているところが、感動的ですし、ラジオだけでなくデジタルでも圧倒的なプレゼンスを持っているクリア・チャンネルとの提携という点でも、ワーナーミュージックはいい企業と関係を作ったと思います。

このような提携が増えると、今後独立系レコード会社はどうなっていくのでしょうか?ワーナーミュージックのように規模も資金力も持たないレコード会社は、ラジオでオンエアできるチャンスが狭まってきます。しかし、最近では前途のテイラー・スウィフトやマムフォード・アンド・サンズ(Glassnote Records所属)のように、小さなレーベルでも良いコンテンツを作れる裁量を持てるようになってきています。これらの企業が収益化を最大化するためにはどうすれば良いのか、iTunesやSpotify、iHeartRadioなどマネタイズする機会を冷静に見極めて次の行動を起こす段階に海外では来ているようですね。

■記事元http://jaykogami.com/2013/10/4377.html


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