ソニー 英EMI音楽出版買収でCEO含む数十名を解雇

コラム 高橋裕二の洋楽天国

先月6月29日、アメリカ連邦取引委員会(FTC)はソニー/ATV音楽出版によるEMI音楽出版の買収を承認した。早速幹部社員の解雇が始まった。業界誌ヒッツやビルボード誌が伝えている。

昨年11月の買収発表当時、既存のEMI音楽出版の制作(A&R)スタッフは削減しないと言っていた。しかし今年4月、買収の為の資金を提供した投資家に向けて、今後1年間で152人を削減、2年目は174人を削減、トータルで326人(全スタッフの60%)の削減案を提示した。制作スタッフがどのくらい占めるかは明らかになっていない。

先週ナッシュビルやロサンゼルスで、今週はニューヨークで7人の幹部社員が解雇された。その中にはEMI音楽出版の最高経営責任者ロジャー・ファクソンも含まれる。出版部門とレコード部門を兼務していたロジャー・ファクソンは買収完了までレコード部門に専念する。また関係者の話だと、30人から40人の社員の解雇も始まったという。

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EMI音楽出版はソニー主導で形成されたコンソーシアムが買収した。コンソーシアムはソニー・アメリカ、マイケル・ジャクソン遺産管理財団、アブダビ首長国の投資会社であるムバダラ開発公社、投資会社Jynwel キャピタル、投資会社ブラックストーングループのGSOキャピタル・パートナーズと音楽事業家で投資家のデヴィッド・ゲフィンだ。経営や日常の業務はソニー/ATV音楽出版が担当する。ソニー/ATVはこれらの投資家に対して、買収によってコストが削減できる事を示さなければならない。

買収が承認された日、ソニー/ATV音楽出版のマーティン・バンディアー会長兼最高経営責任者はニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに、「今日で会社は一緒になった。1人の人間によって運営される。それは私だ」と答えた。

ユニバーサルミュージックによるEMIミュージックのレコード部門の買収は、欧州やアメリカでは未だ承認されていないが、承認されたら現会長のロジャー・ファクソンはEMIを抜けてワーナーミュージックの会長兼最高経営責任者になるという噂がある。そうなると新たにEMIミュージックのトップをどこからか持ってこなければならない。アメリカのレコード業界、「好きな奴としか仕事をしない」という良いルールがあるので、ユニバーサルミュージックのルシアン・グランジ会長兼最高経営責任者は既に候補者選びを初めているのだろう。

余談だがロジャー・ファクソン、ゴールデン・パラシュートと呼ぶ、敵対的買収を行った企業は、買収された側の取締役の解任もしくは退任に際して、巨額の退職金などを支払わなければいけないという契約があり、おおよそ6億5千万円(1$80円換算)を受け取る事になるそうだ。この金額が高いか低いか。ワーナーミュージックがアクセス・インダストリーズに買収された際、ワーナーミュージックのエドガー・ブロンフマン会長兼最高経営責任者は約13億5千万円を受け取った。

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