メジャーレーベルの創った「究極のソーシャルミュージック」はなぜ失敗したのか「未来は音楽が連れてくる」連載第05回 

コラム 未来は音楽が連れてくる

July 20th, 2011--Aspen, CO, USA Courtney Holt speaks at the "Drive Time: The Battle for Online Listeners at Fortune Brainstorm TECH at the Aspen Institute Campus. Photograph by Stuart Isett/Fortune Brainstorm TECH

▲元MySpaceミュージック社長のコートニー・ホルト。インターネットの登場で停滞したMTVを、あらゆるインターネットメディアと結びつけて再建した手腕を買われ、ニューズ社の帝王マードックにヘッドハンティングされた
出典:flickr ( Some rights reserved by Fortune Live Media)

 

MySpace本体の凋落だけではない? MySpaceミュージック、3つの失敗

サービスインからわずか3年後の2011年。

「MySpaceミュージックを覚えていますか?」

という書き出して始まる記事がITニュース・ポータルのテッククランチに掲載された。2010年の1年で、半分のユーザーを失ってしまったのだ。マードックに見放されて、たたき売りにされた2011年には下降トレンドはさらに悪化し、MySpaceミュージックは死に体となりつつある。

今、発表当初の記事を読んでいるのだが、あれほどの鉄壁の布陣がなぜ失敗したのか、よく分からない気分になる。MySpace本体と一体にしたことが裏目に出たことは確かに間違いないが、内容さえよければソーシャルミュージック単体としては生き残る道もあったはずだ。

だが、目を凝らして見れば、MySpaceミュージックは3つの面で、ソーシャルミュージックの競合から個別撃破を食らっていることに気づく。

まず1点目は、音楽再生プレイヤーとしての使いにくさだ。

MySpaceミュージックには素晴らしいアイデアとコンテンツが溢れていた。中でも、その後Spotifyの十八番となってしまうプレイリスト共有は人気があった。MySpaceミュージックのプレイリストは、サービス開始のわずか1年で1億枚に到達した

じぶんの好きな曲を並べてプレイリストをつくり、みんなに公開する。これはソーシャルネットワークと相性が抜群によかった。現代版のミックステープとも呼べるプレイリスト共有は、無料で聴き放題無しには成り立たなかった。有料なら相手が買っていない曲がプレイリストに入っていたら機能しないからだ。

1年で、1億枚のミックステープがつくられたのと同じといえる。

だが、サービスの核となる、ブラウザベースの再生プレイヤーがとにかく重かった。

クリックしてもなかなか反応しない。アプリの動作の重さという点ではiTunesも悪名高いが、そんなものではなかった。社長のコートニー・ホルトも「激重」というクレームが集まっている事実を認めた

MySpace本体も、「激重」という悪評がユーザー離れを起こしていたが、対抗サービスのFacebookは、システムが磨き抜かれていて、軽快な操作感を維持していた。

そしてー。MySpaceミュージックの勢いが落ち着いた頃、くだんのSpotifyが快進撃を始めていた。

MySpaceミュージックと同じく「無料で音楽聴き放題」を標榜していたSpotifyだが、システム面では雲泥の差があった。Spotifyはとにかく軽快だったし、MySpaceミュージックと同じストリーミング配信なのに、驚異的なことに、クリックしてから再生が始まるまでのタイムラグ(バッファ)が0に近かった。

コンテンツ業界や既存メディア産業が、ITメディアに参入した際に、よくやる失敗がある。システム軽視だ。

これらの企業の本業では、システム部門はノンプロフィット・セクターに置かれており、システム開発はおおむねコストであって投資ではない。だが、ウェブ・アプリケーションの世界においては、システム軽視から来る操作レスポンスの重さは致命的な顧客流出を起こす。

Spotifyは、クリックしてから楽曲の再生までのタイムラグを250ミリ秒以下に保つことに全力を注いでいるが、SpotifyのCTOはそのビジネス的根拠を、Googleの例を使って説明している(P7)。

Googleのデータによると、検索ボタンをクリックしてから検索結果を返すまでのタイムラグが100~400ミリ秒増えると、0.2〜0.6%の顧客流出が起きるという。Spotifyがクリック後、遅延時間ほぼ0秒で音楽を再生させている一方、MySpaceミュージックではクリックして音楽がかかるまで2秒かかっていたとすると、最小で0.2%の5倍の1%、最大で0.6%の20倍で12%の顧客流出が起こってしまう、ということになる。

一ヶ月毎に12%の顧客流出が起きれば、ユーザーの半減まで半年もかからない。システムの遅延はここまで致命的な事態を起こしうる。実際、MySpace本体はそうやってFacebookへユーザーが流出したのだが、MySpaceミュージックからはSpotifyなどへ流出していった。

ふたつめの失敗は、レコメンデーション機能の劣化だ。

これまで知らなかった未知の曲からお気に入りを発見する、という体験(セレンディピティと呼ぶ)ではPandora RadioやLast.fmのようなパーソナライズド・ラジオに勝るものは無い。とはいえ、人間の口コミの力は偉大だ。MySpaceからは、アウルシティのような若手アーティストが、少なからず輩出した。

アウルシティ(Owl City)のアダム・ヤングは、寝室のPCで創った曲をMySpaceにアップロードしたところ、評判が評判を読んでメジャーデビューに至っただけでなく、アップロードした曲がミリオンヒットにもなった

Owl Cityのアダム・ヤング
▲Owl Cityのアダム・ヤング。寝室のPCで創った曲をMySpaceにアップロードしたところ大人気となり、ユニヴァーサルミュージックからメジャーデビュー。USチャート8位をつけた
出典:flickr (Some rights reserved by Florencia Tomas)

だが、皮肉なことにメジャーレーベルがこうした事例を評価して、全面バックアップの元にMySpaceミュージックを立ち上げると、新しい音楽を発見し輩出する機能(セレンディピティ)は劣化してしまった。

というのはメジャーアーティストの宣伝にMySpaceミュージックをフル活用したのが裏目に出て、サイトの編成カラーがメジャーレーベルの公式ホームページのようになってしまったからだ。

メジャーレーベルに悪気は無かったと思うのだが、一対多を基本とするマスメディアと違って、多対多の有機的な共振がヒットを産むソーシャルミュージックでそんな運営をしたら、ソーシャルメディアのコア・コンピタンスであるセレンディピティ(未知のコンテンツとの感動的な出会いを促す機能)が死んでしまう。

音楽ファンたちは、未知の音楽との出会い、未知の感動の発見を求めて、音楽ソーシャルネットワークに来たのだ。それがないならテレビやラジオで十分である。MySpaceの初期にあったセレンディピティに惹きつけられて集まっていたユーザーたちは、Last.fmやPandora Radioへ流出してしまった。

特にヨーロッパではインディーズレーベル連合のMerlin(マーリン)がMySpaceミュージックに資本参加しなかったことが響いたろう

Merlinは、欧州の音楽市場で10%のシェアを持っている。ワーナーミュージックのシェアが15%であることを考えると「五番目のメジャーレーベル」を自認するのもうなずけるはずだ。Appleが、MerlinのイギリスにおけるパートナーAIMとの交渉をしくじって、インディーズシーンの特に強いイギリスでiTunesの進出がピンチになったことすらあるくらいである

インディーズのシェアが7.2%しかない日本とは異なり(2007年の数字。ただし4大メジャー以外のレーベル、例えばエイベックスやジェイストームは世界ではインディーズに分類されるので、これを勘案すると日本のインディーズのシェアは2011年上半期で64.1%という巨大なものとなる。この数字はSpotifyの日本進出時、交渉に大きな影響を及ぼすだろう )、ヨーロッパのインディーズシーンは音楽市場の22%を占め、特にイギリスでは25%を占めている。たとえばアデルやビョーク、レディオヘッドは四大メジャーに属していない。インディース連合の雄、Merlinを敵にまわしては、欧州で音楽配信を成功に導くのは難しい、ということだ。

(※1 2007年の数字。ただし4大メジャー以外のレーベル、例えばエイベックスやジェイストームは世界ではインディーズに分類されるので、これを勘案すると日本のインディーズのシェアは2011年上半期で64.1%という巨大なものとなる。この数字はSpotifyの日本進出時、交渉に大きな影響を及ぼすだろう。

この点でもメジャーレーベルよりもダニエル・エックの洞察が勝っていた。Spotifyは四大メジャーレーベルだけでなくMerlinも株主に迎えたからである。2012年5月にはSpotify経由の売上が、Merlinで急増していることが報道された。Spotifyの抜け目ない戦略は、インディーズシーンにも大きな還元をもたらした。

MySpaceミュージックの大きな判断ミスのみっつめは、フリーミアムモデルの構築に失敗していたことだ。

MySpaceミュージックのビジネスモデルは、まず音楽を無料で聴き放題にしてユーザーを集め、そこで広告売上を建てる。その後、mp3販売、CD販売、チケット販売、グッズ販売という流れでマネタイズしてゆく。つまり、Eコマース重視のフリーミアムモデルだった(サブスクリプション・モデルが検討されているという噂が立ったことはある)。

だが、そもそもITの世界では、Eコマースはマネタイズの最終段階である。

たとえショッピングサイトであっても訪問者が購入行動に移ってくれるコンヴァージョン・レートは2.8%程度である。ショッピングサイトではなく、無料コンテンツで惹きつけられたサイトであったならコンヴァージョン・レートはその三分の一にも満たないはずだ。

厳しいようだがMySpaceミュージックは、フリーミアムモデルの死活を決める「コンヴァージョン・レート」に対する考察が、まともになされていたとは言い難い。

さらに、Eコマースの中身を個別に見るとすべてに問題がある。

まずmp3販売、CD販売だ。レコード業界の気持ちはわかる。Last.fmでは、楽曲のフル試聴を設けたところmp3やCDの売上が倍増した。だが、無料ストリーミングからダウンロード購入へのコンヴァージョンは、ITのビジネスとしてみると敷居が高すぎる。

無料ストリーミングと楽曲販売の間にもうひとつ、ゆるやかなマネタイズの仕組みを設けるべきだった。サブスクリプションモデル(定額制の音楽聴き放題)だ。ただ、音楽聴き放題のサブスクリプションモデルが機能するようになったのは、スマートフォンの普及後だ。スマートフォンの登場で、

「PCではだいたいタダ。でも音楽を持ち歩きたいならお金を払ってね」

という、コンヴァージョンを促す分かりやすいメリットを、無料ユーザーへ伝えることができるようになったからだ。MySpaceミュージックを着想した2008年初頭には、まだスマートフォンの普及率は低かった。

残りのチケット販売、グッズ販売であるが、まずチケッティングサービスというのは粗利率が数パーセントしかない手数料ビジネスである。粗利を稼げるのはチケッティングサービスではなくイベンターの方なのだが、メジャーレーベルはそもそもイベンターではない。

もうひとつのグッズ販売は確かに利益率が非常に高い。だがグッズ販売は音楽ビジネスの最終段階である。音楽を無料で聴いて、音楽を買って、ライブに来て、最後にようやくグッズを買ってくれる超優良顧客に至るコンヴァージョンレートの低さは、それこそ業界人なら理解していたはずだ。

最後に、無料を補うはずだった広告売上の部分だ。MTVから社長をスカウトしてくるなど、ニューズ社はメディア企業として広告売上をクリティカルな要素とは見ていた。ロイヤリティ支払いが産む莫大なコストを埋めるのは、構造上、やはり広告売上だからだ。

音楽中心のメディアは優良なユーザー層が集まる結果、ブランド価値が出るので、広告単価が飛躍的に上がる。MTVからホルトを招聘して社長につけたマードックはこれをよく理解していた。

だが、ここで上述した音楽再生プレイヤーとしての出来の悪さと、新しい音楽の発見をうながすレコメンデーション機能の劣化が響いてしまった。ユーザーはそのせいで、iTunesのように音楽の「ながら試聴」にMySpaceミュージックを使ってくれなかったからだ。

かわりに、気になった曲をクリックして楽しみ、それからおすすめプレイリストから、気になる曲をクリックして楽しむ、というYouTubeのような使い方になってしまった。一日の平均聴取時間が1時間を超えるSpotifyと比べると対照的である

YouTubeの視聴時間は、アメリカで一日平均たった15分弱。アメリカにおけるテレビの平均視聴時間4時間41分/日(日本人にはちょっと信じられない数字だが事実である)と比べるとあまりにも短い。この視聴時間の短さが、広告を売りにくくしていて、YouTubeの黒字化の足を引っ張ってきた(詳細は不明だがYouTubeはおそらく2011年に黒転している)。

YouTubeの視聴時間の短さは、目的の動画を楽しんだら、他のオススメ動画をクリックして視聴する文化に原因がある。これでは長期の視聴時間を創り出す「ながら視聴」がうまれない。ながら視聴が無くては、テレビCMに替わる動画広告も成り立たない。そのため、YouTubeは映像を扱いながらも通常のバナー広告が中心となっており、このせいでウェブ広告特有の広告単価の低さから脱却していない。

YouTubeと同じ事がMySpaceミュージックにもおこってしまった、ということだ。

かくて鳴り物入りで始まった音楽業界のファイナルアンサーはわずか3年で死に体となってしまったのだが、滅びの萌芽は最初に建てたビジネスモデルの中に潜んでいた、ということかもしれない。

 

レコード産業が戦いを挑む『イノヴェーションのジレンマ』

レコード産業に起こる継続的イノヴェーション(細い矢印)と破壊的イノヴェーション(オレンジの太い矢印)
▲レコード産業に起こる継続的イノヴェーション(細い矢印)と破壊的イノヴェーション(オレンジの太い矢印)。結局、レコード産業はSpotifyの株主となり、権利ビジネスへ回帰しつつある
出典:榎本幹朗著『未来は音楽が連れてくる』

『イノヴェーションのジレンマ』という経営学の名著がある。

この本でハーヴァード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授は、イノヴェーションには二種類ある、と説く。『持続的イノヴェーション』と『破壊的イノヴェーション』だ。

持続的イノヴェーションは既存の一流企業が得意としている。

既存の顧客の声を誠実に聴き、ニーズに応えて製品・サービスを改善してシェアを伸ばしてゆく。だが、ある日、ヴェンチャー企業が破壊的イノヴェーションを起こして既存の製品・サービスをひっくり返し、ごっそりとシェアを奪ってゆく。

既存の一流企業は、この新たな脅威に対抗しなければならない。ここで、イノヴェーションのジレンマが起こる。

経営学のもうひとりのグル、コトラーのポジショニング戦略では、この際に一流企業が打ち出すべき対抗策はカウンターパンチになる。市場を支配するリーダー企業は、チャレンジャー企業やニッチャー企業が出してきた新サービスと全く同じサービスを大量の資金を投入して踏襲することで、ニッチャーを潰し、支配的な地位を維持しようとするわけだ。

ここで、ニッチャー企業が繰り出してきたのが通常のブロウではなく『破壊的イノヴェーション』であったならどうすべきであろうか。リーダー企業も『破壊的イノヴェーション』を踏襲しなければならない、ということになる。

だが、実際には『破壊的イノヴェーション』を進めるならば、一流企業を一流企業たらしめている既存の優良サービスを自ら破壊してゆくことになる。一流企業は、自ら大切なメイン顧客層を削るマネはできない。だが、そうこうしているうちに破壊的イノヴェーションで快進撃を続けるヴェンチャー企業に大切なシェアを奪われてゆく。…

クリステンセン教授の『イノヴェーションのジレンマ』はまさに、CDメディアで史上最高の売上を経験した直後に、インターネットの普及でドツボにはまってしまったレコード業界の迷走を説明している。

だが、メジャーレーベルはニューズ社とMySpaceミュージックを立ち上げることで、果敢にも破壊的イノヴェーションにチャレンジしていった。敬意を表すべき行動だ。

楽曲のダウンロード販売というのは、CDのビジネスモデルとほとんど変わりない。が、MySpaceミュージックやSpotifyがやっていることは、パッケージ販売の代替ではない。

「パッケージ販売やファイル販売ではなく、コンテンツのアクセス権をビジネスにする」

というこれまでになかった発想に基づいており、レコード業界がよって立ってきた「記録メディア(mp3含む)の販売」というレーゾン・テートル(存在理由)を奪ってしまうような事業転換だ。

MySpace社とのジョイントヴェンチャー設立の方針までは完璧だった。だが、ビジネスの実行段階に入ってから四大メジャーはニューズ社と共に判断ミスを重ねてしまった。

マードック率いるニューズ・コーポレーションのMySpace買収は、メディア史に残るド派手な失敗だった。MySpace本体を迷走で潰してしまっただけでなく、メジャーレーベルと立ち上げたMySpaceミュージックも、そしてMySpaceが買収したiLikeやiMeemも潰してしまった。

巨額の投資が転じて、ヴェンチャーの墓場と化してしまったこの失敗劇には、既存の優良企業が破壊的イノヴェーションのヴェンチャーを買収することのむずかしさを物語っている。

売却から半年後。久々にMyspaceの明るいニュースが報道された。ひとつきで100万人が新たにMyspaceへ加入するようになったという

復調の原因は「センスのあるオーナーに代わったからだ」としかいいようがない。Myspaceを買収したインターネット広告会社のSpesific Media(スペシフィック・メディア)社はまず大規模リニューアルを断行し、Myspaceはようやく軽快で使い勝手のよいシステムになった。次に Specific Mediaは、仇敵だったFacebookと手を組む道を選んだ。MyspaceのFacebookアプリを出したのだ。これが当たった。Myspace アプリは、Facebook上で、ひとつきに430万人が使うアプリに成長した(2012年7月1日時点。appdata.comから抽出した数字。なおSpotifyのFacebookアプリはMAUで2360万人)。

さらにSpecific Mediaは、とある象徴的な人物を共同オーナーに引き入れた。映画『ソーシャルネットワーク』でナップスター創業者のショーン・パーカー役を務めたジャスティン・ティンバーレイクだ。ミュージシャンでもあるジャスティンは、Twitterのフォロワー数を1200万(2012年7月1日時点)以上、持っており、音楽系のインタレストグラフでは最大級の影響力を持っている。

最後に広告モデルの運営上、必須だったパーソナライズド・ラジオ機能を強化し、「ながら視聴」を実現した。 Last.fm の創った『音楽SNS+パーソナライズド放送』という方程式を踏襲してきた感じだ。以上の戦略がMyspace復調につながった、ということだ。後述するSpotifyアプリをMyspaceが出せば、「あとはビジネスモデルの再構築次第」というところまで復活するかもしれない。

マードックは「Myspaceの経営ではあらゆる失敗をやってしまった」と早い時期にもらしている。Last.fmもそうだったか、けっきょく、ソーシャルミュージックの成否は、世間が考えるように、「流行次第」で決まるものではない。的確な未来を描き、そこから逆算できる経営者が指揮を執っているかどうか、にかかっているようだ。

Last.fmの章でもそうだった。やはり破壊的イノヴェーションはヴェンチャーの生え抜き経営陣に任せ、優良企業は物言わぬ株主に収まり、取締役を送るのは我慢した方が得策のようだ。

iMeemは、フリーモデルの限界を立証した。MySpaceミュージックは、コンヴァージョンレート(換金率)が低ければフリーミアムモデルは成り立たないことを教訓に残した。

いっぽうSpotifyのダニエル・エックは最初から、このふたつの真実に気がついていた。

著者プロフィール
榎本 幹朗(えのもと・みきろう)

 榎本幹朗

1974年、東京都生まれ。音楽配信の専門家。作家。京都精華大学講師。上智大学英文科中退。在学中からウェブ、映像の制作活動を続ける。2000年に音楽TV局スペースシャワーネットワークの子会社に入社し制作ディレクターに。ライブやフェスの同時送信を毎週手がけ、草創期から音楽ストリーミングの専門家となった。2003年ライブ時代を予見しチケット会社ぴあに移籍後、2005年YouTubeの登場とPandoraの人工知能に衝撃を受け独立。

2012年より『未来は音楽を連れてくる』を連載・刊行している。Spotify、Pandoraをドキュメンタリーとインフォグラフィックの技法を使って詳細に描き、 日本の音楽業界に新しいビジネスモデル、アクセスモデルを提示することになった。 音楽の産業史に詳しく、ラジオの登場でアメリカのレコード産業売上が25分の1になった歴史とインターネット登場時の類似点 や、ソニーやアップルが世界の音楽産業に与えた歴史的影響 を紹介し、経済界にも反響を得た。

寄稿先はYahoo!ニュース、Wired、文藝春秋、プレジデント、NewsPicksなど。取材協力は朝日新聞、Bloomberg、週刊ダイヤモンドなど。ゲスト出演はNHK、テレビ朝日、日本テレビなど。音楽配信、音楽レーベル、オーディオメーカー、広告代理店を顧客に持つコンサルタントとしても活動している 。

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Twitter:http://twitter.com/miky_e

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