コロナ禍で求められるサービスは“おもてなし”から“感染症対策”へ〜クラシック音楽・舞台芸術愛好家アンケート調査結果

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鑑賞者がコロナ後でサービス面に求める(求めた)もの

サントリーホールをはじめ、全国51施設でホール・劇場での案内業務や指定管理業務を受託するサントリーパブリシティサービスはクラシック音楽・舞台芸術愛好家に向けてアンケートを実施した。

調査の背景と結果

コロナ禍において、多くの文化芸術施設では、感染リスクの回避のため「空調設備整備」や「検温消毒対応」など様々な取り組みがなされている。サントリーパブリシティサービスでは、2019年の1年間で、オーケストラ/室内楽/オペラ/バレエ/ミュージカル/演劇のチケットを自身で購入・鑑賞した、全国1034名の男女に対しアンケート調査を行った。ウィズコロナ禍である今、鑑賞者が「文化芸術施設に求めることは何なのか」「文化芸術施設に求められることはコロナの前後でどのように変化したのか」その実態が見えてきた。

調査概要

  • 調査目的:クラシック音楽・舞台芸術におけるオンライン鑑賞実態調査
  • 調査期間:2021年1月29日〜2021年1月30日
  • 調査方法:インターネットリサーチ
  • 有効回答:1034名

調査対象

全国20代〜60代以上の男女、2019年に1回以上、オーケストラ/室内楽/オペラ/バレエ/ミュージカル/演劇のチケットを自身で購入し、公演を鑑賞した人

来場者の70%が「感染症対策は十分であった」と回答。現地に来ることで不安はある程度解消される

文化芸術施設に足を運んだ割合は、2020年は、「0回」と答えた率が25%を占めた。クラシック音楽・舞台芸術愛好家の中でも、コロナ禍においては、劇場・コンサートホールを避け、鑑賞を控えていた層が一定数あったことがわかった。控えた理由としては、感染症対策への不安が一番に挙げられている。

しかし、来場回数と感染対策に対する不安を分析してみると、一度でも来場があった層は、70%が「感染症対策は十分であった」と回答しており、現地に来ることで不安はある程度解消されていることがうかがえた。

「鑑賞者が文化芸術施設に求めるもの」は、”訪れやすさ・利用時の快適さ”から”安心安全性”へ

鑑賞者が施設面に求める(求めた)ものを、「コロナ前」と「コロナ後」に分けて質問したところ、図のような結果となった。コロナ前後を比較すると、「利便性(立地)」は1位→4位、「音響設備の充実」は2位→5位と大きくランクダウンした。一方、「空調設備の充実」は3位→1位、「ロビーの広さ」は9位→2位とランクアップしており、感染症対策への注目度の変化がうかがえる。

「化粧室の数の多さ」は、前後変わらず上位にランクインしている。しかし選択理由は、コロナ前は「利用時の快適さのため」から、コロナ後は「ソーシャルディスタンスが取れるため」が要因に変化したと見られ、一見変わらず求められているように見えるものにも、変化が内包されていた。現在、鑑賞者が施設面に求めるものは、「訪れやすさ・施設利用時の快適さ」から「安心安全性」に変容していると言える。

求められるサービスは、”おもてなし”から”感染症対策”へ

施設面だけではなく、サービス面に求める点もコロナ前後で大きく変化した。施設面と同様にコロナ前後を比較すると、「感じの良さ」は2位→4位、「豊富な知識」は5位→7位とランクダウン。一方で「清潔感のある見た目」は4位→2位、「着装(持ち物や装備)」は8位→5位にランクアップした。スタッフのマスク等の着用により、表情が読み取りにくいうえ、接触を避けるためにコミュニケーションが減少しており、また、感染リスクの不安から清潔感が重要視されている結果だと思われる。

スタッフ対応においてのフリー回答では、「感染症対策をしていない鑑賞者にはしっかりと注意して欲しい」など、感染症対策の徹底を求める声が多く挙がった。施設面においてのフリー回答でも、「確かな対策が実施されていること」を前提として、物品販売やサイン会などを求める声もあった。芸術文化施設には、サービス面・施設設備面両方から、「感染症対策のコントロール」が強く求められているようだ。

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