【コラム】いよいよ日本にも本格上陸「音楽ハッカソン」とは

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music hackday tokyo 2014

Spotifyの国内展開もいよいよか?と噂される中、アプリやプラットフォーム、テクノロジーを短時間で開発して、それらを先進性や実用性で審査するイベント「ハッカソン」が日本でもここ最近開催されている。

「ハッカソン」という言葉自体あまり馴染みのない方もいるかもしれないが、テック業界ではFacebookやGoogleで有名であり、海外では様々なサービス開発の源となっている。既に音楽ハッカソンも世界では大きな盛り上がりを見せている。

そこで、今週の2月21日~23日にかけて行われるハッカソン「Music Hack Day Tokyo 2014」の司会と審査を担当する、Musicman-NETの特別連載でもお馴染みの榎本幹朗さんに今回の開催について話を伺った。 (Jiro Honda)
 


音楽とITの才能が出会う場所を

—まずハッカソンについて、どういうものなのか教えてください。

榎本:近年、音楽ビジネスはコンテンツ(音楽自体)を創る才能のほかにもうひとつの才能が不可欠となりました。魅力的なサービスを創る才能です。

ハッカソンというのは、週末などにプログラマやデザイナーたちが集まって、あるお題のもとに、誰がいちばんクリエィティブなアイデアを実現するか、腕を競い合うイベントです。今回のイベントは音楽に特化して競い合います。

もともとプログラマになる人たちは、クリエィティブな動機でその仕事につきます。「こんなアプリがあったら面白い。あんなサービスを自分で作ってみたい」などですね。それで学生時代、まず音楽系かゲーム系のサービスをたいてい構想するらしいのです。

ミュージック・ハックデイはそうしたプログラマたちが週末、クリエィティブな気分に戻って創造性を楽しむイベントです。音楽系アプリのアイデアを、二十四時間でどこまでクールに創ってみせるか、競い合います。

—その発祥というのは?

榎本:2009年、ロンドンです。イギリスの有力紙ガーディアンのビルで第一回が開催されました。ガーディアンはlast.fmSpotify等を早くから積極的に取り上げている新聞です。イベントを組織したのは、音声共有のSoundCloudで働くデイブ・ヘインズと、フリーランスでアプリを創っているジェイムズ・ダーリングです。

もともとlast.fmやYahoo!など音楽系サービスを営む会社が、個別にハッカソンを開いていました。だがこういうサービスはもっと小さなベンチャーも創っているので、どうせやるなら音楽系企業のみんなでやらないかとヘインズが考え、ガヴァメント・ハックのイベントを運営していたダーリングに相談したのがきっかけです。

—そして今回いよいよ音楽ハッカソン「Music Hack Day Tokyo 2014」が日本で開催されるわけですが、開催にいたった経緯は?

榎本:昨年、僕がSXSWに行った時、The Echo Nestの人たちと会いました。SpotifyやVEVOに楽曲レコメンデーション・エンジンを提供している会社です。その後、彼らは日本のミュージック・ディスカヴァリー・サービスのmusic Chefとパートナーシップを結び、彼らの楽曲レコメンデーション・エンジンに邦楽が乗るのを取り持ちました。おすすめアーティストの選定などで徹夜しましたよ(笑)。

去年の夏に彼らも来日しまして、そのときミュージック・ハック・デイを日本でも開きたいという相談を個人的に受けました。The Echo Nestは楽曲レコメンデーション・エンジンのAPIを提供しているので、最近、このイベントに力を入れていたんですね。

秋になって、The Echo Nestのエージェントに福山泰史さんが就任してプロジェクトが本格始動することになりました。福山さんはもともとエイベックスの音源などを手がけるサウンド・プロデューサーなんですが、サンフランシスコに住んでいることからIT系の仕事にも強く、音楽とITの架け橋を務めていらっしゃいます。

その後、SpotifyやGracenoteSendGridMusiXMatchそしてmusic Chefなどの協賛が決まり、開催にたどり着きました。

—なるほど。今回の「Music Hack Day Tokyo 2014」のテーマというのは?

榎本:SpotifyやThe Echo Nest、Gracenoteなどが提供するAPIを活用して、クールな音楽系のアプリを創るのがお題です。

Gracenoteも楽曲レコメンデーション・エンジンには力を入れています。このGracenoteのシステムですが、実は日本のエンジニアたちが活躍して出来上がっており、世界中の音楽サービスが活用しています。

音楽が大好きなプログラマが創った会社が、今では世界にインパクトを与えてあります。SpotifyやLast.fm、SoundCloudほか、切りがありません。

スティーブ・ジョブズも大学中退後、音楽好きのエンジニアという立場からキャリアをスタートしました。日本にもそうした才能がいるはずなので、そうした方々が飛翔するイベントになればと願っています。Sonyを創った井深さん、盛田さんも音楽好きのエンジニアでしたね。

—「Music Hack Day Tokyo 2014」にはどのような開発者の方々が参加する予定ですか?

榎本:ほとんどがどこかに勤務している音楽好きのプログラマさんたちだと聞いています。後はフリーランスのクリエイターさんや、学生さんたちですね。募集をはじめたら、あっというまに定員になりました。貯まっている情熱が、世の中から隠されていたということでないかと思います。

—週末の開催が楽しみです。それでは、最後に音楽ハッカソンに興味を持っている読者にメッセージをお願いします。

榎本:音楽とITの才能が出会う場所がなかなかないのが、日本の課題でした。『未来は音楽が連れてくる』の連載を始めた当初、そうした場をいつか創りたいという意図もあったのですが、実現したので毎年できるようにしていきたいと思っています。今回は定員から漏れた方も、これをきっかけに様々なAPIを研究してじぶんなりの音楽アプリを創ってくださればとてもうれしいです。

 

■Music Hack Day Tokyo 2014http://musichackdaytokyo2014.peatix.com/

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