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橋本絵莉子、『新春ライブツアー2026「春のせい」』が閉幕 ファイナル・Spotify O-EAST公演のオフィシャルレポートが到着

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『橋本絵莉子 新春ライブツアー2026「春のせい」』

『橋本絵莉子 新春ライブツアー2026「春のせい」』

橋本絵莉子が、『新春ライブツアー2026「春のせい」』ファイナル公演を2026年1月15日に東京・Spotify O-EASTにて開催した。本記事では、同公演のオフィシャルレポートをお届けする。


日々の移ろいは緩やかでも、気づけば季節が巡っているように、橋本絵莉子も新たな時を迎えたらしい。昨年11月12日に配信リリースした新曲「春のせい」をタイトルに掲げた東名阪ツアー、その名も『新春ライブツアー2026「春のせい」』のファイナル公演が2026年1月15日、東京・Spotify O-EASTにて開催された。

橋本がツアーを行うのは2024年10月以来、1年3ヵ月ぶりとなる。「春のせい」はもちろんのこと、1stアルバム『日記を燃やして』、2ndアルバム『街よ街よ』の楽曲たち、さらにライブ初披露の楽曲や未発表の新曲もたっぷりと携えて臨んだ今ツアーは、ソロ活動をスタートさせて以降マイペースに歩みを重ねてきた彼女がいよいよ次なるフェーズに突入したことを予感させるものであり、このファイナル公演で魅せた朗々として頼もしい佇まいは、予感を確信に変えるに充分以上の手応えを目撃した全員にもたらした。

東京でのワンマン公演は久々とあってか、オールスタンディングの客席フロアは開演30分前にしてすでにぎっしりと埋め尽くされており、ウズウズとした熱気が立ちのぼっている。思えば前回のツアーファイナルもここ、Spotify O-EASTだった。同じ場所での再会というのも特別な気分に拍車を掛ける。そうして定刻を回ると同時に、場内の客電がゆっくりと落ちた。ジョニ・ミッチェルの「Both Sides Now」が流れるなか、ファンにもすっかりお馴染みとなったサポートメンバーの曽根巧(G.)、村田シゲ(B.)、北野愛子(Dr.)とともに橋本がステージに現れた。皆が衣装を白で揃えているのがなんとも彼女たちらしくて嬉しくなる(翌日公開された橋本のnoteによれば、新春ライブということでお餅カラーの白なのだそう)。

満場の喝采を浴びながら、橋本が右手をスッと高く掲げたのを合図に堰を切って溢れたのは「ワンオブゼム」の分厚いアンサンブルだった。『日記を燃やして』でも1曲目を飾る楽曲であり、前回のツアー、遡れば2022年の記念すべき彼女のソロ初ワンマンの幕開けにも奏でられたこの曲が鳴り渡り、橋本の歌声が放たれた瞬間、フロアいっぱいに歓喜が走る。まさに無敵のオープナー。ああ、これを待っていたのだと集った誰もが胸を熱くしていたに違いない。

ピンクのライティングも目に鮮やかな「ロゼメタリック時代」から、柔らかな音像が秋の透明で儚い陽射しを彷彿とさせる「fall of the leaf」、地球の自転・公転に思いを馳せつつ自身のちっぽけさをロックサウンドに託して軽やかに昇華した「タンデム」と続けざまに披露。「みなさん、こんばんは。今日は“春のせいツアー”に来てくれて本当にありがとうございます」と短い挨拶を挟みながらも、演奏したい気持ちがはやるのか、「じゃあ、いこう!」とすぐさまギターを構え、「かえれない」へとなだれ込んでいく橋本の意気がオーディエンスにも伝播し、興奮のゲージは上昇の一途を辿っていく。

なかでも序盤のハイライトと呼ぶべきは今ツアーにおいてライブ初披露となった「広い浅瀬」だろう。2022年、「宝物を探して」のリリースツアーで発売されたライブ会場限定CDの2曲目として収録されたレア楽曲だ。寄る辺なさを滲ませた橋本の歌が、彼女が全幅の信頼を置くメンバーの盤石にしてダイナミックなプレイに乗って泰然と空間を漂う。最初は溶けて消え入りそうな、しかし、バンドサウンドが次第にうねりを増すに従ってグッと存在感を増して聴き手に迫り、抑揚を効かせたサビのリズムも相まってその身を揺らさずにはいられなくさせるのだから、たまらない。浅瀬にいたと思ったら大海原に漕ぎ出していた、そんな錯覚さえ覚えるほどのスケール感にうっとりと呑み込まれてしまう。

 

通過点だからこその開放感が心地よい「踊り場」、独白のような捉えどころのない歌詞と演奏の太いグルーブがユニークな昂揚を醸す「人一人」、キャッチーなメロディと歌詞に散りばめられた橋本絵莉子のかけらが躍動的なポップネスに直結した「宝物を探して」と、中盤戦に並ぶのは『街よ街よ』を彩るキラーチューンたちだ。ここまでの流れを鑑みるに今ツアーのセットリストは彼女のソロとしての歩みを順を追う形で構成されているらしい。すると直後のMCにて「気づいている人もいるかもしれないけど、今回のセットリストは1stアルバムをやって、2ndアルバムをやって、という感じになっています」と本人から明かされた。加えて「今、3枚目のアルバムを作っています」という告白も。

現時点での完成度は6割ほどと彼女が語る待望の新作は、なんとほとんどが曲先で制作されているのだという。この日のセットリストにもあった「慎重にならないか」を除いて、バンド時代から歌詞ありきでほぼすべての曲を手がけてきた橋本にとって実に画期的であり、これ以上にチャレンジングな試みもそうないのではないだろうか。手探りでソロ活動を進めながらも曲作りに関しては詞先を貫いてきたが「3枚目ではそれをやめてみようと思った」と彼女は言葉を続ける。「詞先だと詞が設計図になるけど、曲先はそれがないからその曲がどんな顔をしているのかわからないんです。でも、あとでわかる感じが楽しい」と声をはずませたその口ぶりに俄然、期待が募る。ちなみに「春のせい」はニューアルバム制作の一環としてリリースした楽曲であり、やはり曲先で作られたとのこと。また、この曲のリリースを記念して今ツアーの会場限定で販売される2曲入りCDの2曲目に収録されている「冬のせい」も同様だ。

何より目をみはったのは、歓喜と驚嘆に沸き返るオーディエンスに満を持して届けられたこの2曲の鮮烈なコントラストだ。春に作った曲だという橋本の説明通り、春風を想起させる曲調が柔和な清々しさをはらんだ前者に対し、ガラリとサウンドがいかつくなる後者は寒さ厳しい季節の、無性に殺気立ってしまう感覚が音符一つひとつに宿ったかのような、これまでの橋本にはなかったタイプのロックチューン。言葉遊びに近いタイトルの付け方も、曲調の対比も、曲先だからこそ生まれた発想かもしれない。初聴きゆえ、断片的にしか聞き取れなかったが後者に綴られた歌詞のワードは曲先でなければ出てこなかったのではないかと思わせるほど斬新に響いた。

この2曲のみにとどまらず、この日の終演後、深夜0時に配信リリースされたさらなる新曲「ゾーン30」、さらにはニューアルバムに収録予定の楽曲も1曲披露されるという大盤振る舞いに客席の熱狂もとめどない。90年代ギターロックやパワーポップを彷彿とさせるアッパーなニュアンスに心はずむ「ゾーン30」と、美しくも開かれたメロディが一度耳にしたら離れない、まだ名もなき新曲と、どちらもミュージシャン・橋本絵莉子の今なお底知れないポテンシャルを象徴しているようで、そら恐ろしくも頼もしい。

曲を重ねれば重ねるほどに凄みを増す演奏。極めつけはインストゥルメンタルナンバー「離陸」だった。2022年の1stツアーで初披露され、『街よ街よ』にも「離陸 ~Live at Namba Hatch, Osaka, Oct, 17, 2022~」として収録されているライブ人気の高い楽曲だが、まさか本編のラストがインストで締めくくられようとは。だが、これがとてつもなくよかった。楽しげに絡み合い、伸びやかに共鳴し合うこの4人ならではのサウンド。プレイに没頭する橋本の至福の表情からも彼女がどれだけこのアンサンブルを愛し、誇りに思っているのかありありと伝わってきて、観ているこちらの涙腺も緩む。

アンコールに応えて一人、アコースティックギターを抱え、再び登場した橋本は2019年に通信販売限定でリリースした「Demo Series Vol.1」に収録の「引っ越し」を弾き語り。サビの“246”(※東京から静岡まで伸びる国道246号線のこと)を“渋谷駅”と東京バージョンの替え歌にし、「……から来た?」といたずらっぽく問いかけるという演出でオーディエンスをほっこりさせる一幕もあった(ちなみに大阪、名古屋でもそれぞれご当地にちなんだ大通りの名称で披露されたという)。そのままアコギをかき鳴らし「やさしい指揮者」を歌い始める橋本のもとにバンドメンバーも再集結、包容力豊かな音楽で会場を満たしていく様は圧巻の一語だ。

「最後はみなさんで脱走して帰りましょう!」

そう橋本が呼びかけて、オーラスは「脱走」で大団円した。橋本と同じく曽根はアコギに、村田はタヒチアンウクレレに楽器を持ち替え、北野が刻む軽やかなリズムに合わせてオーディエンスもハンドクラップで参加。会場の全員で奏でた「脱走」での一体感は間違いなくこの日の最高をマークしたはずだ。『日記を燃やして』のなかでもファン人気の高いこの楽曲、“やってみて嫌だったらやめたらいいねって”“やってみて飽きたらやめたらいいねって”“ただやってみようと思ったから/やってみただけ”とあっけらかんと歌い上げる橋本の歌にどれだけの人が救われていることだろう。ステージの橋本たちと一緒になって手を打ち鳴らし、歌い、跳ねる。この瞬間の幸福にもはや理屈などいらない。“一年の中のたった一日”であり“人生の中のたった一瞬”のなんとかけがえないことか。

最後の最後は橋本の「せーの!」でバシッと締める、実に見事なエンディング。鳴り止まない拍手に橋本とメンバーは「ありがとうございました!」と一礼し、晴れやかな顔でステージを去った。今までならツアーファイナルは活動の一区切りでもあり、ファンはただ次を心待ちにするしかなかったが、今回は違う。なにせ3rdアルバムの制作が目下進行中であり、今年の夏頃までにはリリースの予定であることもこの日、橋本によってアナウンスされたのだから。おそらくは今ツアーの充実感も作品に少なからず反映されるのではないだろうか。また、アルバムに先んじて3月にも新曲を配信リリースするという。1月11日より放送中のTVアニメ『正反対な君と僕』のエンディングテーマを手がけたPAS TASTAの「ピュア feat.橋本絵莉子」にも参加、そのオンリーワンな歌声を毎週聴ける幸せも噛み締めたい。いよいよ訪れる橋本絵莉子の新しい季節、楽しみ以外に言葉がない。

文=本間夕子
撮影=古溪一道

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「Musicman大学」は世界の音楽業界の最新トピックスを解説。講師は『音楽が未来を連れてくる』の著者、Musicman編集長・榎本幹朗。「Talk&Songs」は月間500組ものアーティストニュースを担当するKentaが選ぶ、今聴くべき楽曲と業界人必聴のバズった曲を解説。

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