Small Circle of Friends、結成31周年を飾る13thアルバム「SLOW」リリース 混迷の時代に問う、”遅くあること”の意味

結成31周年を迎えたSmall Circle of Friendsが、13枚目のアルバム「SLOW」を9月3日にリリースした。
Small Circle of Friendsは、東京を拠点に活動する佐賀県出身のサツキと福岡県出身のアズマによるユニット。1994年にUnited Future Organizationのレーベル「Brownswood」からデビューした。2005年にはサイド・プロジェクト「STUDIO75」、2007年には「detective Takei Fumira.」を始動。これまでに全プロジェクトを合わせて20枚のフルアルバムを発表している。
今作は、11月1日の「レコードの日」に、前作「cell」に続きアナログレコードでのリリースも予定している。
アルバムリリースに伴い、9月の後半より各地でリリースライブやイベント出演が決定している。追加公演も予定されているとのことなので、詳細は公式サイトでチェックしてほしい。
アズマリキ= コメント
前作「cell」から約3年半ぶり、13枚目のアルバム「SLOW」リリースです。
その3年あまりの間、身の回り、そして世界の彼方此方で巻き起こる悲しみ、悪意、不安、絶望。それらを見て、肌で感じ、どこかに希望はないかと探し求めながら、生活を送る。その日々の感情から一曲一曲作っていく。
思えば Small Circle of Friends 史上、もっとも”今の世界”を意識したアルバムなのかもしれません。
タイトル「SLOW」に込められた意味は、今まで以上にじっくりゆっくり考え考え時間を掛けて作ったアルバムであるということ。今未来に必要なのは、歯止めの効かなくなった欲望のスピードに対してブレーキを掛けること。おおまかに言えばそのふたつです。
ムトウサツキ コメント
前回のアルバムcellで、私たちが思い気づき始めたことをどれだけ伝えられたかはわからないけれど、アルバム「SLOW」ができました。
実際このアルバム全体の4分の1ほどは、前回のアルバム「CELL」時にすでに存在していました。だから、言うならば7年ほどをかけ作っていることになります。この7年ほどの間の世界は、それ以前の自分と比べるとこれほどの感情の起伏、呼吸じゃ追いつかない焦り、それに形容し難い、およそ正気とは思えないような声にならないノイズみたいなことが見え進む世界を、これまで体験したことはなかったと思います。
「今まで世界はずっとこんな有様だったのか?」と自分の無知を修正する間も無く、世の中の混乱するスピードと同じような速さでパンデミックや災害や紛争、戦争、虐殺、それに酷い差別や排外主義は横行し起こり、現実に現れていく様は恐怖としか言いようがありませんでした。
そんな風に考え悲しみに暮れているのは私たちだけではないはずだ、と思ってはみるものの、この混乱を体感しても、日々の暮らしで精一杯だったり、気づかずに過ごす人もいるだろうと思います。それに実際、私たちがどれだけ悲しみに暮れたとて私たちの力ではどうにも変わらない世界に押しつぶされそうになります。
だけど壊れかけの世界が完全に壊れてしまわないように、私たちの言葉や行動、音楽という生業そのものの力を信じて、ほんの数ミリの足取りでも、世界の歩を進める手助けができたらと。そう願いながら制作を続けていきました。
そしてその中に残る、“やさしさの残骸”を拾い集めながら、「CELL」という作品をくぐり抜け、変わっていく世界を見つめ、「SLOW」は少しずつ、形を成していきました。
ただ私がこうやってアルバムレビューを書いている「今」も世界はジェノサイドをタイムラインで見ています。
成功体験なんて、もはやいらない。行動していることすら、希望だとは思っていない。むしろ、絶望を通り越しているかもしれません。でも、それでも、たかだか知れている、たった二人の力だけれど、これからも音楽を作り続け、抗い続けていこうと思っています。そして、日本の、世界の、プロテスト続けるアクティビストのみなさんを心からリスペクトしています。
最後に今回、色にまつわるタイトルは「円環色」。違う色に見えるのに、全ては繋がっている。色でぐるりと一回り。「バームクーヘン」の丸で結ばれているのでした。
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