広告・取材掲載

広告・取材掲載

単なる“再現”に留まらない名シーンの数々が、胸を焦がした伝説の一夜――MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」DAY1 : Petrichorレポート

アーティスト

SPICE

MyGO!!!!!の音楽を再生

  • YouTubeで聴く
  • Spotifyで聴く
  • Apple musicで聴く

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

4月26日・27日にKアリーナ横浜にて、“MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」”が開催。ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!』発のリアルバンド2組の合同ライブとなった本公演は、2組が主軸を担った直近2作のアニメのハイライトを生演奏などを通じて現実でも体現。さらにはsumimiやCRYCHICといった物語を彩ったユニットやバンドも出演する、物語を追いかけてきたバンドリーマー(※『BanG Dream!』プロジェクトのファンネーム)垂涎の公演となった。本稿では、そのうちDAY1 : Petrichorの模様をお届けする。

(C)BanG Dream! Project

(C)BanG Dream! Project

畳み掛けられる代表曲と名場面が、心を掴んで離さない!

開演を前に、メインスクリーンにはライブロゴが映し出され、場内には嵐を思わせるSEが。まさに副題にぴったりなこの演出が、期待と緊迫感をより高めていく。

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

そんな空気のなか、まずはステージにsumimiが「Here, the world!」のイントロとともに登場。イエローのペンライト輝く客席へと、キラッキラなポップチューンを笑顔で、ダンスやギターパフォーマンスとともに歌声を響かせ魅了していく。サビのキーフレーズでは揃えたダンスでキュートさも出したりと、初ステージの1曲目からsumimiらしさあふれるステージだ。曲明けには2人ともキャラクターとしての言葉を紡いでいき、新曲「Sweet Escape」の披露へと繋げる。夜空の似合うテイストのキャッチーなダンスポップは、星空のようにペンライトきらめく光景との相性抜群。この曲でもパフォーマンスもバッチリ連動させて息ぴったりに魅せ、観客を作品の、ライブの空気へと引き込んでくれた。

sumimiの降壇後、ステージには紗幕が下り、場内には祥子(CV.高尾奏音)のモノローグが。そして紗幕に曇天が映され雨粒が落ち、モノローグは燈(CV.羊宮妃那)のものへ。バックステージを描いたアニメ映像の導入へと繋がり、MyGO!!!!!の出番がスタートする。

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

1曲目にMyGO!!!!!が披露したのは、最新曲「聿日箋秋」。イントロとともにゆっくり紗幕が上がって5人の姿が現れ、その中央にはまっすぐ前を見据えて歌う燈(羊宮妃那 / Vo.)の姿が。A・Bメロはややじっくり歌い始めた一方で、サビに入るとその歌声には感情が一段とこもっていく。そして他のメンバーは楽しさもにじませながら、演奏という面から楽曲に魂を込める。Dメロ明けの間奏では愛音(立石凛 / Gt.)と楽奈(青木陽菜 / Gt.)による背合わせギタープレイでも場内を沸かせていくと、疾走感の強いナンバー「迷路日々」を続け、さらに観客の心を巻き込んでいく。この曲では、サビの最後にて突き出した手を握って拳にした燈から、ステージに立つ強い決意の現れのようなものも感じられた。

2曲歌唱後には羊宮が燈として言葉を紡ぎ、メンバー各々の自己紹介を経て「迷星叫」へ。落ちサビでは何かをこらえながら絞り出すように歌うなど、この日も心に何かを抱える人の声を代弁するかのように、歌声は切実さをもって響いていく。また2-Aメロでは楽奈がひとりだけステージ上手袖に歩いていったり、2サビ明け間奏では愛音がそよ(小日向美香 / Ba.)のほうを向いたりと、各メンバーが担当キャラクターとしてステージで生きていたのも心惹かれるポイントだった。そして「迷い続ける、この空とだから出会えた瞬間 ぜんぶあつめて、ここで叫びたい(燈)」との言葉から、そのまま「壱雫空」がスタート。青空のような色に染まった客席を前に、晴れやかかつ疾走感あるナンバーを浴びせていくMyGO!!!!!。大サビ直前には楽奈がジャンプを決めたりと、ここでも演奏・歌唱はもちろん魅せ方も含めて全力のアツいステージをみせ、4曲を駆け抜けていった。

曲明けには再び燈のモノローグが流れ、続いてTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』#1冒頭のAve Mujicaのステージの映像が流れると、そこに「KiLLKiSS」のイントロがゆっくりインサート。高尾奏音(Key.)演じる祥子、いやオブリビオニスの「さあ始めましょう 今宵のマスカレードを!」の言葉とともに暗転し、Ave Mujicaのステージがその「KiLLKiSS」とともに幕を開ける。真紅に染まった客席を前に、圧巻のパワフルな演奏と歌声を披露する5人。そこに込められた情念に思わず気圧されてしまいそうになるくらいの圧倒的な、こちらもあの物語を経たからこそのパフォーマンスをみせていく。また2サビ直前には、高尾の麗しくも挑発的な、オブリビオニスそのものな表情にも歓声が上がっていた。そしてそのまま続いた「Georgette Me, Georgette You」では、すり切り一杯の感情をあふれさせないようにしながら、繊細かつその心の震えを感じさせるドロリス(佐々木李子 / Gt.&Vo.)の歌声が心を捉えると、1サビ後はヘヴィなサウンドに合わせてそこに力強さを上乗せ。サウンドと良好に溶け合いながら観客の心を震わせる。そしてもう1曲、バンドはじまりのナンバー「Ave Mujica」でも妖しくダークで、それでいてパワフルなパフォーマンスが。一方で落ちサビ冒頭では、堕ちてゆく裏側の“哀しみ”のようなものもほのかににじませ、細かい部分の表現でも心を掴んでくれた。

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

演奏後には、作中での仮面を外すシーンをキャストが生披露。様々な意味でバンドとしてのターニングポイントになった場面が現実のものとなり、アモーリス(米澤茜 / Dr.)が他のメンバーの仮面を剥ぎ取るたびに客席からは大きな歓声が上がっていた。

そして再び下りた紗幕には、CRYCHICの物語をなぞるアニメ映像が。スタジオでのバンド練や5人でのカラオケなどの“思い出”が映し出されると、ステージにはCRYCHICの5人が制服姿で登場!「人間になりたいうた」から、演奏を始めていく。ここでの燈の歌声はMyGO!!!!!でのものよりもあどけなく、佇まいもどこかおっかなびっくり。両手でしっかりマイクを握りしめて、歌うことに精一杯だった頃の燈として立つ。他の4人も、そよや祥子は微笑みながらそんな彼女を見守り、逆に立希(林鼓子 / Dr.)はツンケンしていたりと、表情も含めて“あの頃”を表現していく。

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

歌唱後のMCでも声を震わせ、ひと言ごとに祥子のもとに助けを求めるかのように駆け寄る燈として羊宮が言葉を紡げば、「私たちの、とっても大事な曲です(燈)」と紹介した「春日影」の演奏へ。またもあどけなさのある燈の歌声とメンバーによる優しく清らかなコーラス、そして温かな演奏が、心にじんわりと染み込んでいく。Dメロでは燈が他の4人のほうを順に向き、最後には感情を爆発させて歌唱。そこでは立希の表情が笑顔へと変わったりと、メンバーの心情変化も感じさせる。そう、そこには「CRYCHIC」がいた。かつてあったかけがえのない温かな場所が、この瞬間、確かに存在していたのだ。

演奏直後のやり取りから“わかれ道”へと至る映像を挟み、時は進み再びMyGO!!!!!の出番。「碧天伴走」のイントロとともにゆっくり幕が上昇して二度目のステージが始まり、疾走感あるナンバーにエールを乗せて、力をいっぱいに込めて歌いゆく。そんな1曲の披露後には、ひとりスポットライトに照らされた楽奈が温かなギターの音色を奏でると、それに続いて「春日影(MyGO!!!!! ver.)」がスタートする。ここでの燈の歌声は、CRYCHICのときとは明らかに違うもの。片手マイクでこの歌を届ける先をしっかりと見据えながら、ひとつの芯を持った歌声で歌唱しており、CRYCHICとは明確に歌唱アプローチを変化させているのだ。しかも2-Aメロでは歌詞に合わせて指折り“愛”を数えたりと見せ方も作り込んで、微笑みながらこの歌詞で描いた温かな世界と、それに「今は届かない」というこの時ならではの切なさも感じさせる。そのふたつの燈の姿を、羊宮は音楽を通じて見事に描ききった。

感動と驚きをもたらした、突き詰められたパフォーマンス

そしてMyGO!!!!!も、ここからTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』のエピソードを再現。ア・テンポノートを手に朗読にソロで臨む燈や、その横でBGMとしてギターを弾く楽奈、そこから5人揃うまでの過程が描かれれば、そこから披露するのはもちろん「詩超絆」しかない。冒頭のポエトリーリーディングは、直前からの流れがあるからこその、音源よりも遥かに感情の乗ったものとなっており、単なる“再現”の域を遥かに超えたもの。この瞬間にしか観られない必見の、心に刺さる歌声と演奏が、観客の心を揺さぶっていく。そしてそれに心揺さぶられたのは、観客だけではない。5人が円を作って向き合い曲を奏でていくなかで、作中のそよ同様に小日向の目からは涙があふれる。この日ならではの心の動きが乗ったことで生まれたこの光景は、単なる「エモい」のひと言で片付けるにはあまりにも惜しすぎるもの。MyGO!!!!!の出番を締めくくるにふさわしい、すさまじい感情が渦巻いていた。

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

その空気が祥子のモノローグにより少しずつ塗り替わっていくと、ブザーに続いて再びAve Mujicaのステージが“開演”。「Imprisoned XII」から、こちらもアニメクライマックスのエピソードをライブの場で体現していく。ややスローめなこの曲において、ドロリスの歌声は序盤ではぐっと想いを抱えながら、それをサビで爆発させて聴かせていくと、オブリビオニスが奏でるパイプオルガンの音色に続いて「Crucifix X」へ。ラウドなこの曲においては、アモーリスのドラムが演奏面に加え大きく振りかぶるなどといった魅せ方も含めて、実によくマッチしたものに。その他のメンバーも、仮面を外してのステージはそれ以前よりも激しくなっており、仮面を取ったことでさながら“自我”が芽生えたかのよう。そのまま続いた「八芒星ダンス」では、クラップ響くなかミステリアスな空気が場内を包むと、またもヘヴィなサウンドを響かせるムジカ。1サビ直前にはアニメ同様にモーティス(渡瀬結月 / Gt.)がギターをぐるりと1回転させるパフォーマンスを見事に決めて、場内のボルテージをさらにUPさせる。

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

続く「顔」では、冒頭のティモリス(岡田夢以 / Ba.)がフィーチャーされた演奏にドロリスの舌打ちが乗ると、またも歓声が。この曲ではそのティモリスによるパワフルかつスタイリッシュな魅せ方が非常に映えており、お立ち台に片足を乗せてのライトを浴びながらのプレイも堂に入ったものだった。そんな演奏に魅了された観客が、サビでは大きな「hey!」の声を上げていき、クライマックスに向けてさらなる一体感が。またこの曲に欲しいやさぐれ感と力強さを両立させて場を支配し切るドロリスのボーカルワークも見事なものであり、大サビではモーティスによる前方へのキックも観客を沸かせていた。

そして芝居シーンのアニメ映像から繋がる形で、ラストナンバー「天球(そら)のMúsica」へ。ほのかに哀しみもたたえたギターの音色を響かせつつ、力強くも清らかな歌声をドロリスが披露すれば、サビでは他のメンバーがコーラスでも曲を彩りさらに鮮やかにこの曲を表現。オブリビオニスは引き続き、どこを切り取っても祥子らしい麗しさとともに演奏していけば、モーティスとティモリスは1サビでステージ中央へと移動し向き合って、2コーラス目では両サイドへと展開。観客の近くで、その演奏を披露していく。そして大サビでは金の紙吹雪が降り注ぎ、終盤はアモーリスがスティックを左右に振りペンライトを先導。紙吹雪とペンライトによる無数の“星”の輝きが、Kアリーナ横浜に天球を体現してクライマックスの光景を彩り、アニメのカーテンコールシーンをもってこの日の演奏は全曲終了となった。

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

写真:ハタサトシ、関口佳代 (C)BanG Dream! Project

と、ここでステージ上にはこの日出演の11人が勢揃いして、順にそれぞれ観客へとメッセージを届けていく。まずsumimiとして初ステージを踏んだ反田葉月(純田まな役)が「この合同ライブにsumimiとして出演させていただけるのは嬉しいし、アニメ視聴者としては嬉しいシーンばかりで、私も本当に楽しかったです!」と喜びを伝える。また、羊宮は物語を振り返り「どの瞬間を切り取ってもとても美しくて。そのときは苦しい気持ちや『これでいいのかな』と思いながらみんな歩んできていたと思うんですけど、それも全部、こうして素敵な景色になっていると思います。今、苦しい・つらいと思っている方も、その1ヶ月後だったり1年後だったりに『この道でよかった』と思えるような素敵な道を歩めるよう、私たちも音楽を通して届けていけたらと思います」とエールと意気込みを送ってくれた。そして佐々木は「音楽って、言葉にできない気持ちや内に秘めている想いを変わりに響かせてくれるものなんだと感じました。私、『天球(そら)のMúsica』でシンガロングのときにイヤモニを外してみんなの声を聴きました。私たちにもあなたの想い、届いてます! みんなと一緒に、『その先』どこまでも行きたいです」と決意を述べ、そのまま「また皆さん、『その先』でお会いしましょう!」と締めて全員一礼し、DAY1は幕を下ろしたのだった。

反田が最後の挨拶で語ったとおり、アニメ視聴者にはたまらないシーンが次々現実のものとして登場し、胸を熱くしてくれた今回のライブ。それほどまでに衝撃と感動を与え得るものにしたのは、キャスト陣の細部に至るまでのこだわりと挑戦あってこそだったのではないだろうか。改めて、全ての出演者に拍手を送りたい。そしてMyGO!!!!!とAve Mujicaは、それぞれ次のライブの開催も発表されている。佐々木が語ったように「その先」で、今度はどんな景色を見せてくれるのか。今後の両バンドのさらなる飛躍への、期待が止まらない。

取材・文:須永兼次 写真:ハタサトシ、関口佳代

関連タグ

関連タグはありません