星街すいせい、2ndソロライブ「Hoshimachi Suisei 2nd Solo Live “Shout in Crisis”」のオフィシャルレポート公開

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星街すいせいが、1月28日東京・東京ガーデンシアターにて2ndソロライブ「Hoshimachi Suisei 2nd Solo Live “Shout in Crisis”」を開催した。1月25日に発売したばかりの2ndアルバム「Specter」収録曲を中心としたセットリストで、ライブ本編はオンライン配信も実施。ホロライブ所属タレントの中でも、音楽・アーティスト活動面での評価が高いことや、直前のTHE FIRST TAKE出演のインパクトもあり、公演の注目度は高かった。

アルバムリリース時のメールインタビューで「ライブが終わった後、1つの物語を見終わったような感覚にさせたい」と決意を見せていた星街。今日のライブは、まさに星街が生きてきたその軌跡をストーリーにし、“上演”されたかのような満足感があった。自身初の生バンド、かつ声出しありのライブとなり、星詠み一人ひとりにとってもさまざまな意味を持った日となっただろう。

会場のステージ上部には、7枚の縦長のモニターが並んでいた。定刻を迎えると、1stライブを含むこれまでの思い出が映し出され、エモーショナルな感情とともに期待をあおられる。

聞き慣れた「Stellar Stellar」のアカペラが堂々と響きわたると、そのたった1フレーズで空間が一気に星街色に塗り替わる。TAKU INOUEが手掛けたこの曲は星街の代名詞ともなっており、1st LIVEでは本編最後に歌われていたことから、ライブという物語の続きを感じさせる。星街が振付を踊るたびにあの日と同じ衣装の裾が揺れ、「その手を伸ばして」では星詠みたちと手を伸ばしあう。

「Stellar Stellar」が終わりにさしかかると、突然星街の姿にグリッチノイズが入り、観客たちがざわついた瞬間、衣装チェンジとともに「TEMPLATE」が走り出す。「熱くなる準備はできてますか?いくぞ有明!」とあおれば劇的な演出に興奮は最高潮、その熱は歓声と真っ赤なペンライトにこめられ、重低音に会場が揺れる。

会場のモニターに歴代の衣装が順番に映されたかと思えば、画面が割れるような演出が入り、「TRUE GIRL SHOW」へ。歌詞にお馴染みの自己紹介が入っていることから、会場では肉声で、配信ではコメントで、星詠みから全力の「今日もかわいい」が贈られた。

ここで今日初めてのMC。観客の声とエネルギーに一瞬圧されたようにはにかんだ星街だったが、改めてあいさつの掛け合いを楽しんだ。YouTube・TikTok LIVE での無料配信の終わりをアナウンスすると、なぜか会場の観客が「ええ〜!」と不満げな声を上げ、「君たちは(最後まで)見れるでしょ!」と突っ込む、声出しならではのお茶目な一幕も。

「今日はいつものアイドルVTuber星街すいせいとはちょっと違う私を、お見せできればと思います」との曲振りからロックチューン「灼熱にて純情(wii-wii-woo)」へ。作詞・作曲を田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が、編曲をボカロP「kemu」としても知られる堀江晶太が手掛けた曲で、怒涛のベーススラップと高音で鳴りまくるピアノをしたがえながら、力強い歌唱で歌い上げた。

その後はシークレットゲスト・みきとPを迎え、文字通り疾走感のあるナンバー「駆けろ」を披露。星街の歌唱にみきとPのギターとハモりが華を添え、この日だけのスペシャルなアレンジを届ける。MCでは星街がみきとPへのリスペクト心やレコーディング時のエピソードを明かしつつ、そのままみきとPの人気ボカロ曲「サリシノハラ」をともに披露した。

詩の一節のような心情描写がつづられたムービーに、会場は再び落ち着きと静寂を取り戻す。星街は、自身が作詞を手掛けた「デビュタントボール」をスタンドマイクでパフォーマンス。やがてピアノの音がリズミカルなものに変化すると、「褪せたハナミドリ」へつなぐ。この2曲では緩急のある歌唱と繊細な所作が際立ち、「かわいい」とも「かっこいい」とも違う、星街の新たな一面を垣間見せた。

突然花吹雪が巻き起こったと思えば、その中から花が咲くように、2ndライブ新衣装に身を包んだ星街が現れる。黒を基調としたシックなドレスコートで、体の側面に沿うようにあしらわれた赤い薔薇が華やかだ。ジャジーな裏拍にポニーテールの毛先が揺れ、Ayase(YOASOBI)が提供した「みちづれ」を届け、そのまま「ゲームの主題歌を歌いたい」という夢をかなえた「7days」(VRアドベンチャーゲーム「DYSCHRONIA:Chronos Alternate」シリーズテーマソング)へとつなげる。

続いては根強い人気を誇る「バイバイレイニー」。軽快なカッティングが響けば、星街が2人目のシークレットゲスト・堀江晶太の登場を知らせる。横ノリのリズムに腕を大きく振りつつ、時折配信用のカメラに手を振るなどサービスも欠かさない。MCを経て、堀江(kemu)のボカロ曲からは「敗北の少年」をコラボ披露。原曲よりも激しいライブアレンジが星街の歌をさらにブーストし、贅沢すぎるステージに酔いしれる。

星街が右腕を高く掲げ、重厚感のあるコーラスが響けば、山内総一郎(フジファブリック)が手掛けた、ライブにて初解禁となる新曲「先駆者」を披露。<自分に期待して何が悪い><踏み出す先は未開の時代><壁を作るな、足を止めるな>といった熱いリリックには自分を鼓舞するメッセージが散りばめられ、VTuberの広がりの最前線で新時代を切り開いていく星街のこれからを予感させる。

そのまま休むことなく、12月に実写MVを公開した「放送室」。オレンジに染まったペンライトの光を浴びながら歌い上げ、続くMCでは「エンターテイナーとしてみんなに笑顔だけを届けたいのに、うまくいかないことがあったりして。そういう私の気持ちが歌詞に詰まっている曲」と紹介した。

本編最後に歌われたのは、「カゲロウプロジェクト」などで知られるじんが手掛けた「Newton」。感情的な言葉が並ぶ歌詞は生で聴くことでより気持ちを揺さぶられ、最後のメロディーラインを離れて叫ばれた「大好きー!」には、観客全員が心を撃ち抜かれてしまったことだろう。2ndアルバム最後の曲でライブも締めくくり、星街は一度ステージを後にした。

アンコールを経て再び映像が流れると、画面に現れる言葉は、これまでの葛藤や感情の吐露から、決意を示すものへと変わっていく。アンコール1曲目は「Damn Good Day」。ミドルテンポに星街の表現力が光り、聞き惚れたのもつかの間、続く「GHOST」のイントロが始まった瞬間に大きな歓声が上がった。MVのYouTube再生回数が現在1985万回を超えるヒットソングで、VTuberの存在の不確かさを幽霊にたとえた詞は星街自身が書いたもの。Cメロ後には一瞬の無音の後、星街が息を吸う音で一気に引き戻され、最後まで凛とした表情で歌う姿に目を奪われ続けた。

その後のMCでは、今回のライブやアルバムに込めた自身の苦悩や葛藤にも触れた。「最初はだれかに見つけてほしいと思ってやっていた活動なのに、たくさんの人に見てもらえてるからこその悩みも増えていって……気にしてる自分が嫌になったりもしましたが、今日、応援してくれてるこんなにたくさんのみんなを見られて、なんだか吹っ切れました!ありがとう。みんな生活の中で私と同じように苦悩や葛藤がそれぞれあると思うんですけど、今日はそんな自分を、乗り越えなくていいので受け入れて、笑顔で帰ってもらえたらいいなと思います」。

しっとりとした空気を観客との声出しや新衣装のスクショタイムで切り替えると、「最後の曲いっぱいいっぱい盛り上がって笑顔で帰りましょう!盛り上がる準備できてますか!」と満面の笑顔で叫び、アンコールラストの「ソワレ」へ。ヒットメイカー・ナナホシ管弦楽団が贈った爽やかなロックチューンは今日という記念日のエンディングにふさわしく、星街はすべてを置いていくかのようにパワフルな歌を響かせる。ラスサビで放たれた銀テープが流星群のように降り注ぐなか、ライブは大団円を迎えた。

現実とバーチャルのはざま、生バンドを従えた星街の歌声は、何よりも説得力のあるパワーをまとっていた。彼女はとうに“原石”ではなくなっている。その輝きはネットシーンにとどまらず、やがてメジャーシーン全体へ届くようになるだろう。

取材・文ヒガキユウカ
写真/Takashi Konuma

配信チケット アーカイブ視聴

  • SPWN:6,500円(税込)
  • ZAIKO:6,500円(税込)

※視聴チケットは 2023年2月28日20:00まで購入可能。

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