槇原敬之、総勢8名の豪華ミュージシャンと繰り広げたライブ キャリア30年超の貫禄をみせた圧巻のパフォーマンス

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撮影:三浦憲治、永井峰穂(アシスタント)

昨年10月に通算23枚目のアルバム「宜候(ようそろ)」をリリースしたシンガー・ソングライターの槇原敬之が、それを携えたツアー「槇原敬之 Concert Tour 2022 〜宜候〜」を開催。5月14日の東京TACHIKAWA STAGE GARDENを皮切りに、ファイナル公演となる7月22日の大阪・大阪国際会議場(グランキューブ大阪)までの全23公演を完走した。そのうちの1つ、東京・東京国際フォーラム ホールAで行なわれたコンサートの模様がWOWOWにて全曲ノーカットで放送・配信される。WOWOWオンデマンドでのアーカイブ配信版では、槇原敬之の歌詞の世界観をより一層楽しんでもらえるよう、歌詞テロップがライブに合わせて表示される。

ミニマルなアンビエントミュージックをBGMに、大石真理恵(Percussion)、屋敷豪太(Drums)、遠藤龍弘(Bass)、秋山浩徳(Guitars)、毛利泰士(Synthesizer Programmer)、松本圭司(Piano & Keyboards)、山本タカシ(Guitars)そしてバンドマスターを務めるTomi Yo(Piano & Keyboards)という、総勢8名のサポートメンバーを率いてステージに登場した槇原。まずはアルバム「宜候」の冒頭を飾る、ケルティックなメロディーが印象的な「introduction 〜東京の蕾〜」からこの日のライブはスタートした。

続く「ハロー!トウキョウ」を経て、自身最大のヒット曲「どんなときも。」のイントロが鳴り出すと、オーディエンスは2階席まで総立ちに。ステージの端から端まで練り歩きながら、言葉の一つ一つ確かめるよう丁寧に歌う槇原に、大きなハンドクラップで応えた。

セットリストは「宜候」を軸としつつも過去のヒット曲やセルフカバーなどを散りばめた、コアなファンからビギナーまで楽しめる内容。「遠く遠く」は槇原が1992年にリリースした3枚目のアルバム「君は僕の宝物」収録曲で、彼が故郷に住む友人に想いをはせた私小説的な内容の歌詞である。続く「特別な夜」では、久しぶりに再会した仲間の姿に“一人で頑張っている気持ちでいたけれど/そうじゃないって気づけた”と歌い、“ノスタルジック”をテーマに掲げた「東京DAYS」では、1人でいることに寂しさを感じつつも、そんな日々を“すばらしき毎日”と結んでいる。この日のMCで槇原は、「この曲順に僕の気持ちがぜんぶ詰まっています」と語っていたが、コロナ禍で帰省もままならず、会いたい人とも会えない状況が長らく続く、私たちの「孤独」にそっと寄り添うような楽曲を並べてくれたようだ。

ライブ中盤では、今回のツアーで衣装をデザインしたBEAMSのクリエイティブディレクターであり、槇原の朋友である窪浩志が登場。シンプルなネイビーのスーツに、アルバムタイトルにちなんで“出航の紙テープ”をあしらったユニークなステージ衣装への想いを語った。

コロナ禍で自身の愛犬や、大事な友人を何人か喪った経験をもとに、“あの頃がどんなに幸せだったか/今頃気づく”、“君と同じ名前がついた/悲しみと歩いて行こう”と綴ったフォークチューン「悲しみは悲しみのままで」や、“愛してる人に愛してることを伝えきれないようじゃ/まだまだだめかもしれない”と歌うミドルバラード「花水木」、“失くしたものの代わりに/手に入れたものを数えながら歩こう”と聞き手に語りかける、マンドリンをフィーチャーした「Counting Blessing」と続くライブ中盤は思わず涙腺が緩む。「チキンライス」は言わずと知れた、ダウンタウン浜田雅功との共同名義による2004年の大ヒット曲。作詞を担当した松本人志による、ほろ苦くユーモラスな幼少期の“貧乏エピソード”がまた心を震わせる。

続く「わさび」は須藤晃による歌詞に、槇原がメロディーをつけたピアノ曲。松本圭司のピアノをバックに、切々と歌い上げてみせると、会場からは大きな拍手が上がった。また、愛犬家で知られる槇原が、一緒に暮らしている猫の生態にインスピレーションを受けて作曲した「なんかおりますの」は、松本によるジャジーなアレンジが印象的だ。

ライブ終盤は、レインボーカラーの照明に照らされながら“多様性”を歌った「虹色の未来」、ゴスペルを取り入れた「僕が一番欲しかったもの」と畳みかけ、SMAPに提供した代表曲「世界に一つだけの花」を経てアルバムタイトル曲「宜候」で本編は終了。鳴り止まぬアンコールに応え、「君は僕の宝物」など3曲を演奏しこの日の公演を締めくくった。WOWOWでは、この公演の模様を全曲ノーカットで放送・配信する。

円熟味を増した、それでいてフレッシュなパフォーマンスに酔いしれた一夜だった。

文:黒田隆憲
撮影:三浦憲治、永井峰穂(アシスタント)

「槇原敬之 Concert Tour 2022 〜宜候〜」2022年7月13日東京国際フォーラム ホールA公演セットリスト

01.introduction 〜東京の蕾〜
02.ハロー!トウキョウ
03.どんなときも。
04.悶絶
05.遠く遠く
06.特別な夜
07.東京DAYS
08.悲しみは悲しみのままで
09.花水木
10.Counting Blessing
11.チキンライス
12.わさび
13.なんかおりますの
14.HOME
15.虹色の未来
16.僕が一番欲しかったもの
17.好きなものに変えるだけ
18.世界に一つだけの花
19.宜候

アンコール

20.Home Sweet Home
21.Love & Peace Inside?
22.君は僕の宝物

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