まるでおもちゃ箱をひっくり返したよう! 川平慈英&長野博&松岡充&鈴木壮麻、ミュージカル『Forever Plaid』ゲネプロ&会見レポート

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オフ・ブロードウェイ・ミュージカル『Forever Plaid』(撮影:岡千里)

オフ・ブロードウェイ・ミュージカル『Forever Plaid』(撮影:岡千里)

2022年5月14日(土)、東京・よみうり大手町ホールからミュージカル『Forever Plaid(フォーエヴァー・プラッド)』が全国ツアーを始動させる。

スチュワート・ロス脚本による1990年初演のオフ・ブロードウェイのミュージカルコメディ。日本では2013年から日本版が初演され、2016年再演、そして、2020年の中止から2年ぶりに再演を迎える。演出は初演から板垣恭一が継続して務め、奇跡のハーモニーグループ『Forever Plaid』のメンバーも初演より引き続き、川平慈英、長野博、松岡充、鈴木壮麻が演じる。

ついに14日(土)よりはじまるファイナル公演。それに向けて行われたゲネプロの様子をリポートする。

不慮の事故で亡くなったはずのアメリカの4人組男性コーラスグループ「Forever Plaid」は、謎のステージで目覚める。戸惑う4人だが、ここにはバンドも、なんと観客も存在。──自分たちの夢だったショーができるじゃないか! と、意気揚々とショーをはじめることにする。歌を愛し、グループでの成功を夢見た彼らは、ビッグショーで披露するはずだった歌を次々と披露していく。全編通して、「Forever Plaid」のショーとMCで進んでいくという形式をとる。

リーダーはフランシス(川平)。彼は喘息でありながら明るく、全員を鼓舞し、前向きに引っ張っていく。はじめのころはやはり喘息が出てしまい、吸引しながらステージを所狭しと駆け回る。

ジンクス(長野)は緊張すると鼻血を出してしまう体質。ステージ中も興奮して何度か鼻血を出して、隅っこで鼻を抑えるシーンがある。興奮しすぎては!? と思うくらいだが、彼からすれば、すでにもう夢半ばで諦めたはずの舞台、逆に止まる方がすごいのかもしれない。

スパーキー(松岡)はジンクスの義理の兄弟。ファニーで明るく、おしゃれな彼は舞台の上でとても楽しそうにダンスや歌を披露する。

ひとりだけトランクを抱えたスマッジ(鈴木)は、生真面目で、大人しそうに見えるが多くの感情を抱えている。彼の低音はステージから客席を包み込むように響いていった。

舞台は1964年のアメリカ。世界中はビートルズブームに熱狂し、アメリカでも男性グループにスポットが当たっている。彼らはそんななか自分たちの歌声をアメリカ中に響かせることを夢見た半ばで亡くなったのだ。

高校で知り合った後、音楽スクールで学び、働きながらコーラスグループとして仕事を引き受けるようになった流れも語り始める彼ら。ポップスからバラードまで様々なハーモニーを披露する。

魅力的なナンバーが目白押しのなか、ピックアップするのは当時の人気番組であった『エド・サリバン・ショー』のパロディ! 見どころはたくさんあるのだが、1曲のなかでさまざまなコーナーを体現するメンバー……! こ、ここまでするか……! と思わず吹き出してしまうシーンも多い。

その他にも、作中には様々なキーアイテムも存在する。4人の一張羅のジャケット……スマッジのトランク……その意味があかされるシーンもとても素敵で、ジョークや感動に満ちている。彼らにもそれぞれ人生があり、音楽と仲間と出会い、志半ばで亡くなった。その儚さや理不尽さ、けれども、彼らのやんちゃさやひたむきさはステージを明るく彩ってくれる。

彼らの『死んでしまった』あとのたった一度のショー。観客としてそのショーを見ている存在として客席にいると、彼らの夢の舞台の素晴らしさに引き込まれていく。ただ、ショーには必ず終わりがくる。本作もその運命は避けることが出来ない。

2年ぶりのファイナル公演が走り出す『Forever Plaid』のステージを是非、生でご確認いただきたい。

オフ・ブロードウェイ・ミュージカル『Forever Plaid』(撮影:岡千里)

オフ・ブロードウェイ・ミュージカル『Forever Plaid』(撮影:岡千里)

ゲネプロ後、川平、長野、松岡、鈴木の4人が取材に応じた。

2020年は稽古中に全公演中止が決まった本作、毎日抗原検査やPCR検査を行いようやく初日を迎えるカンパニー。まずは、再演に向けての意気込みの質問があった。

川平は「前回、稽古中に中止が決定してしまったことはとても悔しかったが、またこういう状況下で明日が迎えられたことが嬉しい。心からありがとうと伝えたいです」、長野もそれに続き「どうしてもこのメンバーで再演したいという思いがあった」と続けた。

松岡は「再演ということが中々理解出来ない気持ちがあった。実際にステージに立って本当に再演するんだ」と漏らす。鈴木は「2020年の4月9日、ひとりひとり稽古場から荷物を運び出した虚無感が忘れられない。ずっとその感情が体のどこかにあったので、こうして同じメンバーで立てることが嬉しい」と話す。

前回中止から、実は4人で会うことは今回の稽古までなかったというが、川平は「ブランクはあるけど、もう9年このメンバーでやっていうるので、会ったらナチュラルに馴染んだ」とグループの居心地のよさを語る。「とはいえ、僕たちは年取ったんですよ(笑)。2年前ジャケットが『赤いちゃんちゃんこだね』なんて笑ってたんだけど、本当に還暦迎えたメンバーがふたりもいるから」と2年前に還暦を迎えた鈴木と、今年9月で還暦だという川平が笑う。

長野は「この年になると、カンパニーの最年少なんてなかなかないんですけど(笑)、ここでは末っ子なんです」とはにかむ。松岡も「この年になっても高校卒業してすぐの男の子を演じてるんですよ、すごい希望を与えますよね!」と記者を笑わせた。

今回は9年続いたカンパニーの『ファイナル公演』と銘打った公演でもある。

初日を楽しみにしている観客に向けて、「10年間、熱い応援を送ってくれてありがとうございます。ついにファイナル公演になります。『Forever Plaid』の4人は本当に、自分で言うのもなんですが、かっこうよくてやんちゃで、本当におもちゃ箱をひっくり返したように楽しいステージなんです! 是非、みてください」と、川平が代表してあいさつした。

ミュージカル『Forever Plaid』は東京公演(5月14日~31日)を皮切りに、神奈川(6月2日)、宮城(6月5日)、山形(6月7日)、大阪(6月11~13日)、広島(6月16日)、久留米(6月18~19日)、金沢(6月23日)、愛知(6月25~26日)と全国を回る。

東京凱旋公演は6月30日を予定している。

取材・文・撮影(一部)=森きいこ

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