夏の約束を果たすために「今の」茅原実里の歌が富士の森に響く 『Minori Chihara 12th Summer Live SUMMER CHAMPION 2020』レポート

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撮影:草刈雅之

2020.8.1(Sat)『Minori Chihara 12th Summer Live SUMMER CHAMPION 2020』@河口湖ステラシアターfor「Streaming+」


声優・アーティストとして活躍を続ける茅原実里が、2009年から続けている河口湖ステラシアターでのサマーライブ。ファンにとっても地元にとっても夏の恒例行事となっているこのライブだが、コロナ禍に揺れる今年は無観客での配信ライブとして8月1日に開催。無観客であることを活かした演出と構成で、茅原実里の「今」を濃密に詰め込んだ一夜となったライブの様子をレポートにてお送りしよう。このライブは8月9日まで配信にて視聴可能なので、この極上な真夏の夜の夢を体感するのは今からでも遅くはない!

コロナ禍を吹き飛ばすような熱い歌声とともに、茅原実里が再び夏の河口湖へ!

熱い太陽が照りつける快晴の富士河口湖駅からバスに乗り込み、地元の様々なお店や風景を眺めながら向かう先は富士山の麓、そこは茅原実里の歌声が待つ「約束のあの場所」森の中のコンサートホールだ。

リズミカルな音楽とともに繰り広げられるバーチャルライドで、配信を通して今回のライブに参加するファンの心は河口湖ステラシアターへと運ばれていく。そしてバックステージで手を重ねてゲキを飛ばす茅原実里とバックバンド「CMB」のメンバーや過去11年間のライブの振り返る映像を経て、いよいよライブの幕は上がった。

撮影:草刈雅之

撮影:草刈雅之

「みんなひさしぶりー!」

ライブTシャツ姿の茅原は、久々のライブへの嬉しさを爆発させるような今の気持ちにぴったりの曲「Freedom Dreamer」「Sunshine Flower」を熱唱。「私たちだけの今を忘れないで」「真夏の思いつきがやがては思い出へと」のフレーズと共に、ネット越しでも今の時間を共有しているファンに向けて茅原実里は歌とトークで「みんな聞こえてるー? もっともっと歌ってー!」と全開で語りかけてくる。

今回のライブに向けてのインタビューの中で「お客様がいないからこそできるようなアイデア」「配信だけだからこそできる楽しい演出」と語られていた今回のライブだが、二曲目では手持ちカメラで至近距離からライブ中の茅原を追い続けるという試みが盛り込まれ、躍動する茅原の息づかいすら感じられるような迫力と臨場感のある配信が繰り広げられた。

ライブフラッグを掲げた茅原が、マスク&フェイスガードのスタッフとともに旗を振りながらエネルギッシュに唄った「Lush march!!」を経て最初のMCタイムに。

「みんな元気ー? 会いたかったよー!」

「ライブがこうしてできることがメチャクチャ楽しいし、メチャクチャ嬉しいです!」

撮影:草刈雅之

撮影:草刈雅之

そう語る茅原はコロナ禍で延期になってしまったファンクラブ限定のキャラソンライブに触れて、その中から今日は二曲をセレクトしてキャラにバトンタッチして送るということに。そして茅原がステージ上でくるくると回転すると、ちょっとジト目気味でローテンションな『みなみけ』の南千秋モードに。そんな彼女のキャラソング「過度の期待にご用心」では、曲の合間に山梨の名産品アピールや千秋の定番ゼリフ「馬鹿野郎」も飛び出し、Twitterで実況するファンも盛り上がった。

続いて茅原に降臨したのは『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希で、クールにステージに立ち尽くしながら送る歌は「雪、無音、窓辺にて」。キョンに対する名ゼリフの数々を交えながら、仲間とのふれ合いの中で変化していく長門の心情を情感込めて歌い上げていき、声優・茅原実里としてのポテンシャルを改めて見せつけるキャラソンパートとなった。

二度目のMCでのバンド紹介を終えて、ライブはアコースティックコーナーへ。連日続いていた雨も上がり梅雨も明けたということで、何と野外に場所を移してのアコースティックライブという無観客ならではの試みがここでも飛び出した。ステージ裏の出入り口から外に出ると、そこは背後の森から鈴虫やひぐらしの声が鳴り響いてくる芝生の広場という絶好のロケーションが。そしてみんなが一緒にいる時に唄って、一緒にライブ後の打ち上げ花火を見たかったという思いを込めた「Plumeria」「夏色華日」「ステラステージ」の三曲を、しっとりと歌い上げた。

撮影:草刈雅之

撮影:草刈雅之

「いま色々大変な時代になってしまっているんですけど、みんなの胸の中にある祈りが届くように歌いたいと思います」

再び屋内に戻ってきてのナンバーは、コロナ禍でファンに会えない現状だからこそ思いを届けたいという気持ちが歌詞にも綴られた「エイミー」「境界の彼方」の京都アニメーション作品主題歌を二曲連続で披露。そしてステージ上でCMBの「Theme of CMB」が演奏されている間に、茅原はスタジアム後方に設置されたお立ち台に登場。いつもはファンがステージを見つめる場所を縦横無尽に走りながら「Tomorrow's chance」「声もなく始まる世界」を熱唱。そしてそのままステージ上に戻るとライブでも定番のアガりまくりな激しいナンバー「TERMINATED」「Paradise Lost」を歌いきり、いよいよライブも終盤戦に。

自分の言葉でちゃんと伝えたい気持ち…そして新たなステップへ

「みんなどうもありがとー! 楽しんでますかー!」

「いや早い、あっという間にここまで来てしまった…」

ステージ上に飛んできたメスのクワガタを保護したりしながら息を整えると、茅原は5月に一部週刊誌で報道された件について「本当にごめんなさい」と頭を下げて、「そのことに対する今の自分の気持ちを話そう」と真摯な言葉を綴る。そして「みんなが私を呼んでくれて、今日このステージに立って唄うことができました」「今日このステージに立たせてくれて、唄わせてくれて、本当にありがとうございました」と、これからもファンのみんなのために歌う決意を語った。そして、そんな気持ちに重なるようなナンバー「Sing for You」をファンに送り、最後の方は涙声になる一幕も。

撮影:草刈雅之

撮影:草刈雅之

素直な自分の気持ちを歌と言葉で語ることでケジメをつけた茅原は「みんないくよー!」のかけ声とともに本来は客席があるアリーナへと駆け下りる。そしてそれと同時にホール内にはまるでファンのコンサートライトのようなたくさんの白い輝きに包まれていった。そんな中で「純白サンクチュアリィ」「purest note あたたかい音」を唄い、きっとネットの向こうで一緒に唄ってくれていたであろうファンの歌声に耳を傾けて「みんないっしょに唄ってくれてどうもありがとう!」と熱い感謝の言葉を贈った。

そしてラストはハッピをまとってセンスを手にして、夏ライブの定番曲「美歌爛漫ノ宴ニテ」を熱く激しく熱唱し、最後の打ち上げ花火をバンドメンバーとともに客席から見上げる茅原。

撮影:草刈雅之

撮影:草刈雅之

「私やっぱりライブが好きだなって思った! みんなにメチャクチャ会いたいよ!」

そして最後はマイクを外しての生の声で「みんなー大好きー!」の言葉で初の配信ライブは幕を閉じた。

様々な逆境を乗り越えて辿り着いた今回の夏ライブ。来年の夏には再び河口湖ステラシアターの客席から見ることができるようになってほしい…そんな祈りもこめられた真夏の一夜となった。このライブの様子は8月9日まで配信で見ることができるので、リアルタイムで見られなかったという人は、ぜひこの特別なライブの目撃者となって歌に込められた様々な思いを受け取ってほしい。

撮影:草刈雅之

撮影:草刈雅之

レポート・文:斉藤直樹

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