HY、令和初の沖縄カウントダウンライブで豪華出演者とともに新年を祝福

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「令和初CountDown Live in OKINAWA」

12月31日から1月1日にかけて、令和初となる沖縄最大規模のカウントダウンライヴ「令和初CountDown Live in OKINAWA」が開催された。

「CountDown Live in OKINAWA」は、2017年から沖縄コンベンションセンターで開催されており、地元・沖縄の出身のアーティストが集結して行われ、2017年はMONGOL800が、2018年はBEGINが企画、演出を務め、2019年はHYが担当。

今年は、HY、かりゆし58、DIAMANTES、D-51、BEGIN、MONGOL800、Rude-α(50音順)など、ベテランから次世代を担うアーティストまでが一同に会して、一夜限りのコラボも披露されるなど豪華なステージを展開。4,000人のチケットは、完全SOLD OUTし、まさに7時間に及んだ笑顔の絶えないステージで2020年を迎えた。

ライブレポート

令和を迎えての初のカウントダウンライブが、沖縄コンベンションセンター展示場で開催された。

沖縄県出身のアーティストたちが集い、県内外の人たちと一緒に“笑顔”で年を越そう、という趣旨で2017年から始まった沖縄発信のカウントダウンライブも、今年で3年目。MONGOL800が主催した初回のステージでキヨサクが、「今回はモンパチの20周年、次は誰かの周年記念という感じで、沖縄の模合(もあい)のように、親を交換しながら毎年やりたい」と言っていたとおり、2年目は、2019年にBEGIN主導で開催。そして今回は、2020年に結成20周年のアニヴァーサリーイヤーに入るHY主導による全面企画・演出で行われた。

BEGIN、MONGOL800、D-51、DIAMANTES、かりゆし58、HYという沖縄を代表するアーティストに加えて、今回は沖縄出身の若手を迎え入れ、次の世代へと繋いでいくカウントダウンライブが新たなテーマだった。その次世代アーティストが、今音楽シーンで注目を集めるコザ出身のラッパーRude-αと、オーディション枠で優勝した女性2人組「いーどぅし」。彼らが、令和初のカウントダウンにふさわしい新しい風を吹かせていた。

オープニングアクトの「いーどぅし」が、三線の音とともに爽やかな沖縄の風を感じさせてくれた後、「かぎやで風」が流れると、出演者全員がお米のかぶり物(HYがツアー中に手づくりした)をして登場。沖縄では誰もが知る天気予報のCMに使われている「お米の妖精」を歌う、まさかのサプライズ。普段では絶対に見ることのできないかぶり物の姿という、これも沖縄のカウントダウンならではのスペシャルだ。

HYの提案で、パーソナリティーの糸数美樹(ミキトニー)による一夜限りのラジオプログラムのスタイルで、ライブを繋げていく新たな試みで始まったこの日のライブ。トップバッターは、MONGOL800。「カウントダウン、遊びましょ!」というキヨサクのひと言で始まった曲は、HYの「隆福丸」。ブラスセクションを加えたスカアレンジで、「隆福丸」が疾走感のあるモンパチ色に。続いて、「あなたに」。激しいギターのカッティングと、サッシのドラムが重厚でタイトなリズムを叩き出すと、会場の誰もがジャンプを繰り返し、リズムに任せて身体も心も前のめりになる。

ここでモンパチのライブではおなじみの粒さんこと、パーティーダンサーの粒マスタード安次嶺を迎えて、「OKINAWA CALLING」。くねくね踊る粒さんのダンスと、“オー、イエー”というコール&レスポンスで、会場は一体に。モンパチが放つバンドパワーが、みんなを虜にしていった瞬間だった。

カウントダウン初出演のD-51は、「ファミリア」からスタート。家族や友や大切な人への感謝の想いを歌った2人の歌声に、会場の人たちは一気に引き込まれていく。

ここでステージにHY名嘉俊を呼び込み、モータウンビートのハッピーソング「Only You」を披露。名嘉のリードボーカルも聴けるスペシャルもあった。

「でっかい声で一緒に歌ってもらえたらうれしい」というYASUの言葉に、出だしから会場全体に歌声が響き渡った「NO MORE CRY」。4打ちビートと、ひとりじゃないことを忘れないで、というポジティブな歌に背中を押された人も多いのではないかと思う。

ここで音楽シーンの次世代を担う22歳のラッパー、Rude-αが登場。今回の出演は、彼の音楽が気になっていたHY仲宗根泉が、直接コンタクトを取って依頼したと聞く。そこに、沖縄の後輩アーティストと一緒にシーンを盛り上げ、繋げていこうという想いを感じる。

コザの街で仲間と遊んでいた夏の出来事を、今暮らす東京で思い返している曲「Mirror Ball」でライブは始まった。身体からみなぎるパワーをリリックに込めて発する彼のエネルギッシュなラップに惹かれる。東京で暮らし始めて都会の街に退屈していた時、「今見てるこの景色にも、全部意味があることに気づく瞬間を描いた」という「この夜を超えて」。悩みも痛みも歓びも受け入れながら歩んできた“今”を、リアルに紡いだ歌に心を揺さぶられたのは、きっと僕だけではないだろう。

「俺たちは音楽を使って、みんなとひとつになりたいんだ」という呼びかけに、空に向かって突き出した無数の腕が前後に激しく揺れる。テンションの上がったRude-αがアリーナに飛び降りるやんちゃさも印象に刻まれた次世代ラッパーのライブだった。

続いては、DIAMANTES。ワイルドなラテンナンバー「WANDA」の後、「ここで素敵な女性を呼びたいと思います」と告げて、深紅のロングドレス姿のHY仲宗根をステージに迎え入れる。デュエットした曲は、昨年他界した仲宗根の父がよく聴いていたという想い出の歌、サザンオールスターズの「真夏の果実」。しっとりと歌うふたりの歌声に導かれるように、会場全体に携帯電話の光が灯り、ゆっくり揺れる。とても感動的な光景だった。

ここで宮沢和史が登場。30年近い付き合いの中で、「DIAMANTESのこの曲を一緒に歌うのは初めて」という「沖縄ミ・アモール」をデュエット。大人の空気が会場を包み込む。さらに、NYブロードウェイアーティストの高良結香を呼び込み、首里城再建のために捧げた曲「WE ARE OKINAWA」を、参加メンバーたちと歌う。心をひとつに、ワンチームで、沖縄を、首里城再建を盛り上げていこうという想いを込めて…。

そして、大きな歓声を受けてBEGINがステージに現れる。

「今日は一緒にステージを作ってくれる音楽仲間のために、聴きたい曲はあるか?と聞いて、セットリストを組みました」と比嘉栄昇はいう。東京から離れた故郷を思う気持ちを歌った「防波堤で見た景色」。かりゆし58の前川真悟とデュエットした「ハンドル」。D-51との共演で聴かせた「誓い」。Rude-αとのコラボ「ソウセイ」など、沖縄のカウントダウンでしか聴けないスペシャルなステージに会場がひとつになる。

なかでも感動的だったのは、「三線の花」。イントロの三線の音が聴こえた瞬間、ここでも会場全体に携帯電話の光の花が咲いていく。光の花が揺れる景色、上地等の力強い口説(くどぅち)、会場に響く指笛、そして、床の間で眠る三線を手にした時に湧いてきたオジーとの想い出を歌った歌詞に心を打たれた。きっと会場にいた人たちも同じ気持ちだったのだろう。自然と湧き上がってきた大きな歌声が、その答えのように思えた。

次に登場したのが、3年連続のカウントダウン出演の「かりゆし58」。前川がワンコーラスをアカペラで歌う「オワリはじまり」からライブは始まった。今この瞬間を胸に刻みながら大切に生きていこう、という想いが歌に込められた曲に、会場にいる誰もが引き込まれていく。

「令和と平成の大晦日を沖縄で、あなたと音楽と一緒に過ごせるのは最高に幸せです」と前川の言葉の後で歌ったのが「ウクイウタ」。離れた街で夢を追いかける友に向けて、諦めたりすんなよ、おまえの背中を見守ってるやつが必ずいるからと、かりゆし58らしい胸にしみる応援ソングが歌われる。

そして、苦労をかけた母親への感謝の想いを綴った代表曲「アンマー」に続く新曲について、前川はこう話し始める。

「バンドを例えるとするなら、車だと思います。何人かの仲間と乗り込んで、何年も長い道程を旅して、パンクしたら直して走り続けます。でも時々その車を下りる仲間もいます。めちゃめちゃ寂しいです。そんな中、3年間車を下りていた中村洋貴が、戻ってきました。かりゆしのワゴンが5シートになりました!」と言って歌ったのが、「バンドワゴン-5seats-」。この曲を聴きながら、新たに始まる5人の旅が楽しみになった。

年越しまで、あと30分。HYがステージに現れると、会場全体から大歓声が湧き起こった。

「最高な年を迎える準備はできてますか?」「最高の笑顔を見せてくれますか?」「元気な声を届けてくれますか?」

新里英之が会場に言葉を投げかけるたびに、大きな歓声が戻ってくる。そして「トゥータン」からHYのライブはスタートした。アッパーな「PARTY」では、アリーナも2階席の人たちも、天井に向かって伸ばした両手が、波のように揺れている。

「思いきり歌ってくれますか? みんなの想いをこの歌にのせて!」という新里の言葉で、仲宗根がピアノで奏でる「AM11:00」のイントロが始まった。客席からの歌声が会場を覆いつくす。“この想いが君に届くように 願いが叶いますように…”。胸の中の想いを抱き続ければ、いつか願いは叶う。HYは、この歌でそうメッセージを伝える。

「366日」に続いて歌われた「ホワイトビーチ」が、2019年と2020年を繋ぐ曲だった。

客席から湧き上がった歌声が、会場をひとつにする。

そして、ついにその瞬間がやってきた。

ステージ後方のスクリーンに映し出された数字がカウントダウンを続ける。会場からも大きな声がカウントを刻んでいく。

「10、9、8……サン、二イ、イチ!」

次の瞬間、キャノン砲から銀のテープが会場に放たれる。きらきらと舞い落ちるテープの先に見えるスクリーンには、「Happy New Year 2020」の文字が映し出される。

「新しい最高の年に、新しい虹を作りましょう」と言って歌われたのが、「no rain no rainbow」。雨の後に、虹は架かる。どんなに傷ついても、その後には光が射して、心に虹が広がっていく。HYのステージは、ポジティブな想いを繋げるこの曲で幕を閉じた。

「今日出演してくれた素敵なアーティストのみなさんと一緒に、この曲をお届けしたいと思います」という新里が、参加メンバーをステージに呼び込んで、「島人ぬ宝」が歌われる。沖縄出身のミュージシャンたちが、沖縄に生まれたことを誇りに思い、誰もがこの曲を笑顔で歌い繋いでいきたいと願う。島人の心を歌った宝物のようなこの歌を、会場のみんなが大きな声で一緒に歌っている姿が、深く心に強く刻まれた。

令和最初のカウントダウンライブ。沖縄を代表するアーティストと次世代を担うアーティスト、そして県内外から集まった音楽を愛する人たちと一緒に、この場所にいられる幸せを実感した7時間だった。来年も、沖縄でカウントダウンライブが続くことを願って…。

(取材・文/伊藤博伸)

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