第149回 株式会社ジャパンミュージックシステム 専務取締役 鈴木健太郎 氏【後半】

インタビュー リレーインタビュー

今回の「Musicman’s RELAY」は株式会社パインフィールズ 松原 裕さんからのご紹介で、株式会社ジャパンミュージックシステム(JMS) 専務取締役 鈴木健太郎さんのご登場です。基地の街・福生で生まれ育った鈴木さんは小学生の頃からヒットチャートを追いかけ、高校生の頃には音楽業界を志すようになります。そして、大学時代のイベンターでのバイトを経て、新卒でジャパンミュージックシステムに入社。早速、持ち前の行動力を発揮し、レーベル・プロダクション業務、アパレル業務、また現在も続くライブイベント「REDLINE」の開催など、JMSの事業を拡大させていきました。そんな鈴木さんにこれまでのキャリアと、JMSそして「REDLINE」の今後までお話を伺いました。

(インタビュアー:Musicman発行人 屋代卓也/山浦正彦)

 

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第149回 株式会社ジャパンミュージックシステム 専務取締役 鈴木健太郎 氏【前半】

 

 

5. 異種格闘技の布陣でツアーをまわる「REDLINE」

 

 

ーー JMSはディストリビューションだけじゃなくて、マネージメントとか業務内容を拡げていきますよね。

 

鈴木:入社当時は僕も一番下だったので、ディストリビューション業務しかさせてもらえなかったんですが、レーベル機能やプロダクション機能など、徐々にですがJMSの中に事業部として作っていきました。もちろん成果が出れば親会社は何も言わないので、「何をやろうが大丈夫」という感じもありました。それこそ僕が好きだったアパレル業務も始めましたしね。

 

ーー アパレルを始めるきっかけはなんだったんですか?

 

鈴木:今、Deviluseというブランド自体は15年前からあるブランドなんですね。Deviluseはもともと店舗がなくて、ロックのイベントに出したブースか通販で買うしかないブランドで、すごくロックの現場と密接なブランドだなと思って個人的に好きで買っていたんですが、ひょんなことからブランドをやっている人たちと会ったのが7年前です。デザイナーと、営業・経理などの管理業務をやっている人の2人でやっていたブランドなんですよね。その人たちも普通に仕事をしていて、仕事をしながらブランドをやっていました。

 

ーー あと、ライブイベント「REDLINE」も始められますね。

 

鈴木:「REDLINE」は今年で8年目になるんですが、始めたきっかけというのが、その頃って例えばギターロックのバンドはギターロックのバンドだけでツアーをまわる、メロディックパンクのバンドはメロディックパンクのバンドだけでツアーをまわるというか、同じジャンルでツアーをまわっていて、シーンが混ざっていなかったんですよね。

 

ーー ジャンルで分断されていたと。

 

鈴木:ええ。ある意味、異種格闘技の布陣でツアーをまわるということがなかったので、それを自分のイベントの企画としてやってみたいなと思ったんです。それで、ロックバンドにヒップホップ、J-POPもいる、そういう面白い組み合わせでやろうと思ったのが「REDLINE」を始めたきっかけです。

 

別のジャンルのアーティストを見てもらうことで、色々な刺激を受けて欲しいなと。カッコよくないならカッコよくないでしょうがないですし、逆にカッコイイと思ったらそれはそれで素晴らしい出会いだと思いますしね。その新しい音楽との出会いの場を作りたくて始めたのが「REDLINE」です。

 

ーー 「REDLINE」はツアーでまわるんですか?

 

鈴木:そうですね。会場は中規模のライブハウスだったりとか、東京ですとLIQUIDROOMやSTUDIO COAST、Zeppでやったこともあります。ツアーの仕切りは、コンサート制作会社でバイトしていたときに大体分かっていたので、そのノウハウが活かされました。

 

ーー 今年の「REDLINE」は大阪・ZEPP BAYSIDE OSAKAと東京・STUDIO COASTで開催されますが、過去にはかなりの日数で開催されたりもしていますね。

 

鈴木:一番印象に残っているのが2013年の「REDLINE」で、LIQUIDROOMで10日連続やったときですね。これはLIQUIDROOM史上初めてですね。最初は2週に分けるとか、5週に分けるとか考えていたんですけど、結局10日連チャンになって、ハードでしたが、かなりのインパクトは残せたと思います。

 

ーー 色々なジャンルのアーティストが出るわけですが、アーティスト同士のコミュニケーションはどうですか?

 

鈴木:初対面や打ち上げで仲良くなって、その後、一緒にツアーに出たり、お互いのイベントに呼び合ったりとか結構聞きますね。そういう交流が生まれるのが一番嬉しいですよね。

 

ーー ブッキングは全て鈴木さんが行うんですか?

 

鈴木:はい。僕が良いと思えば全部オファーして、その組み合わせを考えたりします。もちろんアイドルもいましたし、弾き語りのアーティストもいました。

 

ーー 逆にアーティストサイドから「出たい」という申し出もたくさんあるんじゃないですか?

 

鈴木:ありがたいことにそういうお話はありますね。逆オファーはすごく嬉しいんですけど、自分からブッキングしたいという気持ちが強いので、今も全て自分で決めています。

 

ーー やはりその作業は楽しいんですか?

 

鈴木:すごく大変ですけどね、楽しいですね。やはり自分が思い描くコンセプトでやっているので、それを誰かにやってもらうことになるとブレが出てしまいますし、「REDLINE」っていわば自分のアイデンティティの発信の場なんですよね。ですから、この「REDLINE」だけは自分一人でやっていくという気持ちが強いです。もちろん色々なスタッフに助けられて成立しているわけですが、そのスタッフにしても毎回同じメンツでやっています。

 

ーー 松原さんの「COMIN’KOBE」も一人でやっていると仰っていましたが、やはり刺激になっていますか?

 

鈴木:「COMIN’KOBE」はチャリティーイベントであり、僕らはそうではないので、単純に比較はできないですが、やっぱり松原さんの圧倒的な人望力とかいつも刺激になっていますね。とにかくメジャーレーベル、インディーレーベルの垣根を越えて本当に人望が厚い方なので。「なんでこんなに人望が厚いんだろう?」と思うぐらいみんなツアーでは松原さんのハコに絶対行きますしね。

 

ーー スタッフもボランティアだそうですし、そういうイベントが続いているのがすごいですよね。

 

鈴木:本当に素晴らしいと思います。もちろん「REDLINE」を同じようなイベントにするとかは一切なかったですけど、志みたいな部分はすごく刺激を受けましたね。

 

6. 「REDLINE」のヒントになったアメリカの「Warped Tour」

 

 

ーー 「REDLINE」の発展系のイメージはあるんですか?

 

鈴木:「REDLINE」は今年8年目、再来年が10周年なので、幕張メッセとか2万人規模でやってみたいという思いはありますね。

 

ーー フェスですね。

 

鈴木:でかいライブイベントみたいなイメージというか、でかいライブハウスみたいなコンセプトでやりたいなと。野外フェスは素晴らしいイベントがいっぱいあるので、野外は全然イメージになくて、基本的には屋内大型ライブハウスイベントを想定しています。あくまでも規制とかなく自由に遊べる空間というか、素晴らしい音楽に出会って欲しいみたいなところが一番のコンセプトでできたらいいなと思います。

 

ーー 幕張メッセ規模でやるとしても有名なアーティストを連れて来るわけではなくて、あくまでも鈴木さんの好きなアーティストでやるわけですよね。

 

鈴木:基本「REDLINE」に出てくれたバンドを中心です。一緒にここまで「REDLINE」を押し上げてきてくれたバンドに対しての感謝だったりとか、「REDLINE」の歴史を作ってきたバンドともう1回やりたいんです。

 

ーー 「REDLINE」で繋がったアーティストたちを何万規模の大きい会場に連れて行きたいみたいな?

 

鈴木:はい。それを今の子たちにちゃんとアウトプットしたいなという思いですね。

 

ーー 今年の「REDLINE」は、何バンド出るんですか?

 

鈴木:今回はZEPP BAYSIDE OSAKAで3バンド、新木場STUDIO COUASTで3バンドの計6バンドですね。

 

ーー 意外に少ないんですね。

 

鈴木:はい。昨今ライブイベントでアーティスト数が多いとなかなかお客さんが入りにくいという現状があります。やっぱり、1つのアーティストをより多くの時間観たいというお客さんのニーズがあるんですね。例えば、3バンドのところを6バンドでやると、40分セットが25分セットとかにせざるを得ない。そうするとお客さんはやっぱり物足りないんですよね。

 

ーー 客層はやはり圧倒的に若いんですか?

 

鈴木:今年は若いです。やっぱり出るアーティストの色によって、年齢層や男女比も大分変わってきますね。今年に関しては高校生から20代が多いんじゃないですかね。ですから「ライブハウス初めて来ます!」みたいなお客さんも多いと思います。

 

ーー 「REDLINE」のヒントはアメリカの「Warped Tour」だったそうですね。

 

鈴木:ええ。「Warped Tour」はアメリカ全土を廻るツアーなんですが、それも結構色々なジャンルのバンドが出ていて、いろいろ影響うけましたね。

 

ーー ツアーについている間にバンドメンバーとかスタッフに接触したんですか?

 

鈴木:この業界に入って「Warped Tour」へ行く機会があって、「ああこういう感じでやってるんだ。すごいな」みたいな。

 

ーー そういった経験をして上り詰めたバンドはやはりタフなんでしょうね。

 

鈴木:やっぱりアメリカのバンドって、どんな状況でもライブは崩れないですし、音の質感も違いますし、とにかくカッコイイ理由はそういった経験から培われているのかなと思いますね。

 

ーー 鍛え方が違う。

 

鈴木:違いますね。メンタルも強いですしね。あっちのバンドって普通のピザ屋とかでもライブやらなきゃいけないときとかありますからね。日本だとある程度良い環境が整ってライブできますが、アメリカだとフラットな空き地とか、無茶苦茶な状況でも演奏しなくちゃいけなかったりして、そりゃ強くなるよなと思いますね。

 

7. カッコイイものがきちんと伝わるように仕掛けていく

 

 

株式会社ジャパンミュージックシステム 専務取締役 鈴木健太郎 氏

 

ーー 鈴木さんは現在JMSの事実上の社長みたいな立ち位置なんでしょうか?

 

鈴木:いやいや(笑)。運営はしていますけど。

 

ーー 名刺には専務取締役とありますね。

 

鈴木:やっぱり現場に行きたいんですよね。僕はあくまでもクリエイティブとかアイディアとかをきちんと具現化する役割ですね。

 

ーー 社長さんと役割分担をされているんですね。

 

鈴木:そうですね。現場で率先的にやって、それをビジネスにしてというのが基本的な僕の仕事の在り方なので。社長になるとそこができなくなっちゃうんですよね。今の社長には自由にやらせていただいていますし、社長がいなかったらこれだけ自由に動けないので、とても感謝しています。

 

ーー 日常業務のうちで最も時間を割いていることは何ですか?

 

鈴木:今、何が流行っているかというアンテナを常に張ることですね。それは音楽でもファッションでも、高校生が今一番気にしているものでも、そういうのをちゃんと掘り下げることは怠らないようにしています。ウェブでも、テレビでも、ネットでも、その掘り下げる動きには時間をかけています。そうじゃないと作るものも遅れをとりますしね。

 

ーー すごいスピードで流行は変わっていきますものね。

 

鈴木:変わっていきますね。3か月とか半年でガラッと変わりますから。そこを怠っちゃうと、どんどんオールドな感じになっちゃいます。そういった情報収集には時間を割くようにして、残りは通常業務というか打ち合せだったり、現場だったりとかそういう仕事で24時間が埋まっちゃいますね。

 

ーー ライブもたくさん観ていますか?

 

鈴木:観ますね。現場から起こることというか、アイディアが浮かぶところも多いので、積極的に観に行っています。

 

ーー 鈴木さんのこの先の目標は何ですか?

 

鈴木:様々なミュージックシーンだったり、カルチャーシーンに対して、若い子がすぐに出会える分かりやすい導線を作ってあげたいですね。つまり、カッコイイものがきちんと伝わるように仕掛けていくのが一番の目標ですね。それがどんな形なのかはまだ定まっていないんですが、常にそこは探求していきたいですね。

 

ーー 最後になりますが、音楽業界で働きたいと思っている若者に向けてメッセージをいただけますか?

 

鈴木:若い子は絶対に良いアイディアを持っているはずなので、世の中の風潮とか市況とか、そういったものに流されないで、自分を信じて、とにかく踏み出して欲しいです。まず踏み出さないと何も見えない事実ばかりですから。それで駄目だったら駄目でまた自分の人生を見つめ直せばいいと思いますし、今の世の中は多様化していますが、それに対応している若者のアイディアが今、音楽業界でも必要なんですよね。なので、まず一歩踏み出して欲しい、と言いつつ今若者ってすごく出不精なんですよね。

 

ーー 若いんだから思いっきりやってもらいたいですよね。

 

鈴木:はい。やりたいと思ってやればいいですし、何かやろうとした意志の結果がこの世の中にあるわけですからね。逆に自分のアイディアがなかなか採用されなくて困っているなら、是非JMSに応募してきて欲しいですね。Musicman-netに載っていますから。

 


プロフィール

鈴木健太郎(すずき・けんたろう)

1981年11月16日生まれ
大学卒業後、新卒でジャパンミュージックシステム(JMS)に入社。
イベント事業ではREDLINE TOUR他、弊社所属バンドのツアー、イベント製作などを担当。他にDeviluseというブランドのアパレル事業なども行っている。

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