アデルの快進撃を支える敏腕マネージャー、ジョナサン・ディキンズ
左からソニー・ミュージックのダグ・モリス会長 ジョナサン・ディキンズ アデル ソニーミュージック傘下コロンビア・レコードのロブ・ストリンガー会長 写真はラジオ業界誌ヒッツより。
アデルの快進撃が続く。それを支えるのが敏腕マネージャーのジョナサン・ディキンズだ。日本で音楽業界でマネージャーと呼べば、殆どが「付き人」だ。欧米のマネージャーはアーティストの才能を見抜き、成功への青写真を描く。
ジョナサン・ディキンズは他の一匹狼のマネージャーと異なり、音楽関連業界の中で育った。おじいさんのパーシー・ディキンズはイギリスを代表する音楽誌NME(ニュー・ミュージカル・エキスプレス)を1952年に親友と共同で創刊した。父のバリー・ディキンズはイギリスの代表的な音楽ブッキング・エージェンシーITBの共同経営者だ。アーティストをコンサート会場にブッキングする。ボブ・ディランやニール・ヤングやダイアナ・ロスといった大物のブッキング会社だ。ジョナサンの叔父、ロブ・ディキンズは長い間、イギリスのワーナーミュージックの会長だった。エンヤやコアーズを育てた人物だ。
ジョナサン・ディキンズは最初ワーナーミュージックの制作マン(A&R)としてスタートしたが実績は残せなかった。アーティスト・マネージメントの方が得意かもしれないと、2006年、自宅の寝室が本社の「セプテンバー・マネージメント」を設立した。ここでアデルと出逢う。アデルはこの年の5月、ブリット(BRIT)スクールという専門学校を卒業したばかりだった。アデルのデモ・テープに興味を持ったインディーズのXLレコーディングスの制作マン(A&R)であるニック・フゲットが親友のジョナサン・ディキンズにマネージャーをやらないかと持ちかける。アデルの卒業1ヶ月後の6月、セプテンバー・マネージメントは第1号のアーティストとしてアデルと契約した。この6月、アメリカではイギリス出身のレコード・マン、ロブ・ストリンガーがソニーミュージック・グループのトップに昇進する。
ニック・フゲットはアデルを慎重に育て、翌年(2007年)10月、ファースト・シングル「ホームタウン・グローリー」を発売、センセイショナルなデビューを飾る。翌2008年の1月、ファースト・アルバム「19」が発売されヨーロッパ中で大ヒットした。しかしインディーズのXLレコーディングスの親会社ベガーズ・バンケットには世界最大のマーケットであるアメリカには販売網が無かった。無かったと言うよりも、インディーズとしてイギリスとヨーロッパだけで稼げればいいや、という事だ。間もなくソニーミュージック傘下のコロンビア・レコードの社長になるロブ・ストリンガーはベガーズ・バンケットのトップもジョナサン・ディキンズも良く知っている。XLレコーディングスからのライセンスを受ける形で、アルバム「19」はアメリカでコロンビア・レコードから発売される。
アデルはマネージャーのジョナサン・ディキンズを信頼し、ジョナサンはアメリカでの成功に親友で実績のある、それも全米1位のレコード・レーベルであるロブ・ストリンガーに成功を託した。そしてアルバム「21」は全米だけで1100万枚を、「25」は発売40日で700万枚を突破する。
敏腕マネージャーと言えば、過去にエルビス・プレスリーのパーカー大佐が伝説だ。ビートルズにはブライアン・エプスタインがいた。またイーグルスには今もアメリカの音楽業界を牽引するアーヴィング・エイゾフがいた。最近ではマドンナのガイ・オセアリーやレディー・ガガのトロイ・カーター、ワン・ダイレクションのリチャード・グリフィスやジャスティン・ビーバーのスクーター・ブラウン。テイラー・スウィフトの実質的なマネージャーはビッグ・マシーン・レコード会長のスコット・ボルチェッタだ。
欧米ではマネージャーの取り分が大きい。アーティストの収入の15%から20%になる事もある。変な話だが、5人組のロック・バンドで1000万円の収入があったとしよう。仮にアーティストとの契約が15%ならマネージャーは150万円を貰う。残った850万円を5人で分ける。1人170万円だ。20%ならマネージャーが200万円。バンドのメンバーは160万円となり、逆転する。それだけマネージャーは、音楽制作に没頭するミュージシャンの傍らで、未来の成功への青写真を描く。ちなみにジョナサン・ディキンズはXLレコーディングスとアデルの契約を終了し、4作目のアルバムからは全世界のソニーミュージックから発売される。
今夜(12月14日)、米NBCテレビが1時間の特別番組「アデル・ライブ・イン・ニューヨーク・シティー(Adele Live in New York City)」を放送する。この番組前の8時から9時終了まで、NBCテレビの大人気音楽オーデション番組「ボイス」の優勝者が決まる最終回がある。7日に放送された「ボイス」の視聴者数は1215万人に達し、同時間帯では圧勝だった。最終回だからもっと伸びる。アデルの特番にとっては超追い風になる。こういった事案もマネージャーとレコード会社が綿密な計画をたてる。
記事提供元:洋楽天国
関連リンク
関連リンクはありません