米ビルボード・アルバム・チャートが23年振りにアップデート

コラム 高橋裕二の洋楽天国

アメリカの音楽業界誌ビルボードが、今週のデータから、アルバム・チャート(Billboard 200)の作成で、定額制音楽ストリーミング・サービスのデータを加える事を決めた。

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従来は実物のCD(フィジカル)とiTunes等のデジタル・ダウンロード売り上げの集計だった。これにスポティファイやビーツ・ミュージックといった定額制音楽ストリーミング・サービス会社のオン・デマンド・データを加える。1500回の再生をアルバム1枚と計算する。

過去ビルボード誌は、レコード店からの売り上げ報告でアルバム・チャートを作成していたが、1991年、サウンドスキャン社のPOSデータでチャート作成を始める。2003年にiTunesストアーが始まり、チャート作成にデジタル・ダウンロードの売り上げを加える事になる。今回はそれに、定額制音楽ストリーミング・サービスからのオン・デマンドの再生回数のデータを加える。

ビルボードのシングル・チャートは従来、レコード店からの報告でチャートを作成していた。それにラジオ局での放送回数が加わる事になる。1980年代はCDに移行する時代で、アメリカではCDシングルが殆ど発売されず、ラジオ局での放送回数でチャートを作らざるを得なかった。iTunesストアーのサービスで、1曲毎のダウンロードが飛躍的に伸びる。ビルボード・シングル・チャートはラジオでの放送回数とダウンロード数で作成される事になる。そして聴き流すだけのストリーミング時代に突入。昨年(2013年)はYouTubeでの再生回数も加える事にした。日本やイギリスのチャートと異なり、アメリカのシングル・チャートは、「売れているかどうかより、今どんな曲が流行っているか」というチャートだ。

今回採用されるアルバム・チャートも、「どんなアルバムが流行っているか」というものになりそうだ。日本もそうだがアメリカでも音楽ファンは発売日や直後にアルバムを購入する。その後そのアルバムのセールスがどう変遷するのかはチャート上では分かりにくい。その点、オン・デマンドで聴ける音楽ストリーミング・サービスでは、新しくファンになった人達のアルバムの人気度が分かるという。新聞ニューヨーク・タイムズによると、このやりかたでチャートを作ると、9月に1位になったアリアナ・グランデの「マイ・エヴリシング」は、従来のチャートだと先先週36位だが、新しいやり方だと9位になる。またバーブラ・ストライサンドの「パートナーズ」は28,000枚を売って7位だが、新しいやり方だと13位に落ちる。アーティストによっては悲喜こもごもとなる。

パンドラ他無料のインターネット・ラジオのデータは今回のアルバム・チャート作成には無関係。今週発売の強力新譜はエミネムやビヨンセ。またスポティファイに音源提供をしていないテイラー・スウィフトのランキング。日本時間で来週木曜日朝に出るビルボード誌のチャートと解説が見物だ。

アメリカの音楽業界人は今回のビルボード誌のやりかたが、株式上場を控えているスポティファイにプレッシャーをかけるかもしれないとみる。レコード会社への音源使用料や音楽出版社への著作権使用料がフェアかどうかと。

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